透き通った空に浮かぶ星   作:哲学の階司書補

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どちらかというとセリカンティウス


走れセリカ

 セリカは激怒した。必ず、あの素性の知れない先生を除かないといけないわ! と決意した。セリカにはホシノ先輩の思惑が分からぬ。

 セリカは、アビドス高等学校の1年生である。バイトを探しながら、そこそこに勉学に励んで暮らしてきた。けれども大人に対しては、人一倍繊細であった。

 きょうお昼前、セリカは家を出発し、少し離れた柴関ラーメンにやってきた。セリカは学校思いである。アビドスは9億もの借金を抱えている。セリカはそれゆえ、せめて利子だけでも返済すべく、はるばるバイトにやってきたのだ。

 先ず、エプロンに着替えて、客の来店を待った。待てども待てどもあまり客が来ない。面接に来た時も、大賑わいという程ではないにしろ、そこそこな客入りだったものだ。のんきしてたセリカも不安になって来た。大将に、何があったの? 前面接の時はこんなじゃなかったのに、と問いかけた。

 

「この前の地震が原因じゃないかなぁ」

 

「そんなに被害はないって聞いてたけど……」

 

「直接じゃなくて、それ以来市街地でヘルメット団を見かけるようになっちゃってね」

 

「なんですって!?」

 

 聞いて、セリカは激怒した。

 

「大人しくなったと思ったのに!」

 

 ドゴォオオン、と爆発音がする。

 セリカは単純な子供であった。エプロンを着たまま、銃を引っ掴むとのそのそと店を出て行った。たちまち彼女はヘルメット団に取り囲まれた。カイザーからの支援を無くしたとはいえ、今までの装備が無くなった訳では無い。

 

「ひゃっはー! 支給品もなくなって困ってたところだ! お前を人質にしてやるぜ!」

 

 囲まれていると言っても数は知れてる。そう思いながら回避、反撃を続けているが、どうしても火力不足で増援を呼ばれてしまう。

 いくらセリカとはいえ、数の暴力には抗えない。少しずつ体に傷を増やしていき、足元もふらついてきてしまう。

 

「自分の躰に気を遣う様にしなさい。ホシノ達が哀しむのは本望ではないだろう?」

 

 セリカが今最も嫌っている大人の声がする。走馬灯なのかな、ならもっといい思い出が良かった、なんてことを考えていたが、その声に続いたのは自分を気絶させる銃声ではなく。

 

 ジャキン、という金属質な音と、空を駆ける黄金の線。バタバタと倒れていくヘルメット団。

 

 あれだけ嫌っていた、突然現れたヘイローを持たない大人。そんなのに助けられたことに、セリカは自分が不甲斐なくなってしまう。

 息を整え、何とか視線を上げてビナーを探すがどこにもいない。代わりに聞こえてきたのは、

 

「おーいセリカちゃん! 大丈夫かい! お客さん来たけど、無理しなくていいからねー!」

 

 まだバイト中なことがすっかり頭から抜けていたセリカは、慌てて柴関ラーメンに戻って行った。

 

 

 

「なんで先生が最初のお客さんなのよー!」

 

 ヘルメット団との戦闘後、店にやって来ていたのはビナーだった。

 ビナーは特に揶揄うこともなく、普通にラーメンを食して帰った。

 その後、店前のヘルメット団騒動が落ち着いたからか、数は少ないが何人かのお客さんは来てくれた。

 今日最初の客に対しツンツンしてしまっていたため、接客の前に大将から、笑顔笑顔、と言われてしまった。至極真っ当な指摘なだけに言い返すことも出来ず、余計にフラストレーションが溜まる悪循環。

 帰り道、助けてもらったお礼も言えてなかったことに気づき、更にモヤモヤするセリカであった。

 

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