禁止級の超絶クソ強カードに転生したけどメインデッキに入れてくれない。 作:ガトー
[代替コスト]ライフ焼却:X
このカードのプレイコストは以下の行為によって代替できる。
・自分ライフゾーンのカードを半分墓地へ送る。
[プレイ時]切削:3
・自分の山札を上から3枚墓地へ送る。
サルベージ・カード:1
・自分の墓地のカード1枚を選んで手札に加える。
どうやらTCGアニメの世界観に転生(憑依?)したらしい。
ちょっとした小競り合いから世界の命運までカードバトルで決着をつける、そんな世界。
カードには稀に精霊?的な存在が憑いていて、ファイターと共に闘ったり絆を育んだりする。そんなファンタジーな存在が今生の俺である。
カードの精になって分かった事だが、この身体は意外と融通が利く。
適当なブースターパックに取り憑いてやれば、それだけで一国一城の主人ってわけだ。パック最後尾は貰いますよっと。
あとは周りのカードをいい感じの家具や装飾品に差し替えてあげれば快適空間の出来上がり。まことに都合の良い立場を得たものである。これぞ転生チートだ。羨め。
チートといえば、俺自身ハチャメチャに強い。強いと言っても所詮はカードでしかないがカード効果がクソ強い。
まず発動コストがない。
いや、無いと言ったら誤解を生むかもしれないが本来必要なエナジーを支払わずに発動できる。つまり強い。
代わりにライフを半分消費するが、ファイト開始時にデッキトップ10枚をライフゾーンに置くんだから当然埋まってしまうカードもある。
そこが掘れて墓地が肥えるのだから実質メリットしかない。当然強い。
そしてエナジーを使わずに発動できるという事はエナジーの属性に縛られずにデッキ投入できるという事である。色に依存しないなんて汎用性の塊か???
ここまでが俺の発動コストの話である。何か質問は?
……あー。ライフが奇数枚の時にどうなるかって?
ルール上、半分にする場合は端数切り捨てだな。当然、「払うライフを計算する時に」切り捨てるから残り5枚なら2枚を墓地に、残り1枚ならそのままコストを踏み倒せるのさ。強いだろ?
じゃあ次はプレイ時効果だな。
デッキトップ3枚を墓地送り。思ってたより控えめな効果だって?ちょっとは頭使ってくれよ!発動コストと併せて8枚肥えてるんだから既にド派手な効果だよ!!!
8枚ってつまりデッキの2割だからな???
そして最後の効果は墓地のカードを1枚手札に加える、だ。
え、弱そう?いやいや、冗談はやめてくれよ!手札の質はカードゲームにおいて何よりも大切な要素のひとつだろ?
1枚消費で1枚回収、1:1交換って奴だ。それが最低でも8枚の選択肢から選べるんだから弱い筈がない。
しかも対象はスペルでもエレメンタルでもアーティファクトでもなくて"カード"だからなんだって選べる。コンボパーツも集め放題だ。
つまり俺ってカードはとんでもなく強い。世が世なら即刻禁止カードに永久就職してしまうくらいに、だ。理解ったか?
……長々と説明したが、超絶クソ強カードに転生した所で今の俺は野良のカードの精でしかない。
当面はパックに憑いて俺の持ち主に相応しいファイターを見定めるとしますかね。
あわよくば美少女ファイターと絆を育んで世界の命運を賭けたファイト!いやー夢が広がりますなぁ!!!
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———…が……い……
ショップ大会準決勝敗退。
思い返せばその時の私は天狗になっていたのだろう。負ける筈が無いと思っていた試合に負けた私は幻聴を聞いた気がした。
———…が欲…い…?
対戦相手は黒単。フードを目深に被っていて相貌は確認出来なかったが、そのプレイスタイルは脳裏に焼き付いている。
———…が欲しいか?
笑いながらライフを自傷し、山札を墓地へ送る。共に戦う仲間である筈のエレメンタルすらも犠牲にしながら行うファイトは、簡単に受け入れられるものでは無かった。
———力が欲しいか?
デッキ強化をしなければならない。
半ば茫然自失となっていた私は吸い寄せられるようにカウンターへ向かってパックを購入した。
「嬢ちゃん、ベスト4おめでとう!」
なんと返したかは記憶にない。どうにか支払いを終えると脇目も振らずに自室に逃げ込んで鍵をかけた。
早くデッキを強化しなければ。
負けない為に。
「…ヒィ……ッ」
パックを開封すると異様な光景が広がっていた。
全て黒。
通例であれば各色満遍なく封入されているカードの異様な偏り。死の秘宝、屍蝋の天蓋、髑髏茸……
なかなかお目に掛かれないハイレアカードが一堂に会している。これは、偶然では、ない。
———こんごともよろしく。
パック最奥の死神が笑った気がした。
[黒]のカードは縁起が悪いからと敬遠されがちだが、特別危険はないので他のカード同様に扱っても大丈夫である。
………精霊憑きのカードでもない限りは。