剣咬の虎に入った青年 作:氷結界の龍トリシューラ
今回は2日目の夜と3日目のスタートです。
剣咬の虎が復活する所からスタート。
剣咬の虎2日目の夜
「お前達の事情は分かった。」
ローグの説明を聞いたミネルバはフリスを一瞬見たが、ギルド全体を見回しながらこう言った。
「まず初めに言っておこう、
父上の事では無い!!、
唖然とするギルドメンバーにミネルバは尚続ける。
「お前達の第1印象はこうだ、
最強ギルドであるはずの剣咬の虎で威張っていたわりには大した実力も無く、他のギルドの嘲笑を甘んじて受け入れ尻尾を巻いて逃げた奴らだ。
全員が注目する中、ミネルバはスティングの方を向いた。
「スティング!!、白竜の滅竜魔導士であるお前が競技パートでは相手に頭を踏み付けられ、煽られた挙句、何もしないまま大会から逃げ出すのか!!!」
「う、そ、それは…」
ミネルバの言葉にハッとするスティング。
自分は大会で大鴉の尻尾に散々馬鹿にされた挙句、何もしないまま、ギルドを辞めて逃げようとしていた事に気づいた。
ミネルバは視線の先を変える。
「ユキノ!!、そなたはこのままで良いのか!!!
カグラ相手に完敗した挙句、大鴉の尻尾に馬鹿にされた分は全てそこの新人に尻拭いしてもらい、これからもお荷物として生きて行くつもりか!!!」
「っ…」
それを聞いてユキノも目が覚める。
自分は何をやっているのだろう。対戦では実力差で敗北し、ギルド全体が大鴉の尻尾の嘲笑を招いた。
隣にいるフリスによってその空気はかき消されたものの、ジエンマの件も含めてユキノはここまでずっとフリスに頼りきりである。
何も出来て無い。
ユキノが固まったのを見てミネルバはフリスを見る。
「そこの新人、フリスと言ったな、一先ずお礼は言う。そなたのお陰でギルドの面目は紙一重で保たれた。父上の事も特に何も言うまい。」
「あ、ああ…」
一先ずフリスに礼を言うミネルバ。それを狼狽えながらも受け入れる青年。
しかしそれで終わりでは無い。
「だが、それとこれとは話が別だ、お前、このままギルドを辞めて他に移ろうとしたところで良いギルドに入れると思うか?」
「……。」
「ふ、確かにスティングはともかくローグは王国のギルドに詳しい、だが彼らとて今のままでは評判は良くないのだ。そんな状態で紹介されたお前がユキノと一緒にギルドに入れると思うか?」
「何とも言えない…な…」
ミネルバの言う通りだった。
仮にスティング達が紹介したギルドにフリスが入れたとしてもだ。
そのギルドが剣咬の虎として大会に出ていたユキノやスティングまで受け入れてくれるかは分からない。
フリスがギルドを脅せば話は別だが、
「その通りだ。少しは話が分かるようだな。」
フリスが反論してこなかった事にミネルバは内心ホッとしながらも話しを続ける。
強引にでも押し切られるとミネルバの声はギルドメンバーに届かない。
フリスが何か考える前に次の一手をミネルバは打つ。
「ついでにだ。まだユキノ、スティングもそうだが、彼女達の汚名はひっくり返せて無い。分かるな?」
「……。」
「お主はこのままで良いのか?」
ミネルバは再度フリスに押しかけた。
フリスは暫く考え込んでいたが、やがて静かに首を振った。
「そうだな、出来るなら挽回させたい所だ。」
「そうだろう?」
「だが、それは難しいのでは無いか?」
フリスの問いにミネルバはフッと笑う。
そして口を開いた。
「そうだな、彼らだけでは難しいだろう。」
「……。」
「だが、打つ手はある。」
打つ手はあると言うミネルバ。何となく可能性は薄いが思い当たる節があるのかフリスも口を開いた。
「……まさか…」
「そのまさかだ…、」
一拍置く。この後を強調するように。
「ギルドの名を復活させる為、そなたにとっては良い依頼が我がギルドに舞い込む様にする為に、
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大魔闘演武3日目
競技パート
妖精の尻尾Bチーム選手席
「いよいよ3日目ね。」
「競技パートは誰が出ますか。」
「そう言えばミストガンは何処に行ったんだ?」
ミストガンの姿が見当たらないと辺りを見回すBチーム。
何処かに行ったようだ。
「仕方ないわね今日のゲストは評議員だもの。」
「だな、んで誰が出る?」
「俺を出せ。」
「ガジルは昨日出たでしょー。だから私が出るよ。」
「出た内に入るか!!」
出ようとするガジルを押し退けたのはリザーブ枠のカナ。
「おいおい、酒回ってないか?」
「あまり飲み過ぎないでね?」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫、大丈夫〜、」
Bチームの皆が心配する中カナは出ていこうとした。
その時だった。
会場がざわついた。妖精の尻尾Bチームにもチャパティの実況が聞こえてくる。
「おーっと、こ、これは、どういう事だ、
「何だ?」
「え?」
「お、おいおい、あいつは!!!」
「昨日のっ!!」
Bチームの面々は目を見開く。
「昨日のバトルパートに出た、ユキノ・アグリアに変わって出てきましたっ!!、
ギルドの面々に背中を押されて出てきたのはっ!!
毎年出ているミネルバ・オーランドに代わるのはー!!!」
会場が一気に湧いた。
「新人、フリス・スウェードだー!!!」
「「「「「「何ーー!!!!!!」」」」」」
一気に荒れる会場。
蒼銀髪の青年が会場に立った。
昨日会場全体を揺らした青年フリスが毎年剣咬の虎の選手として選出されているミネルバに代わって出てきたのだから荒れるのは当然だった。
「おいおい、あんな奴出すのなんて有りかよ!!!」
「ミネルバはどうしたー!!!」
「うわっ!!、ヤべえ奴が来たぞっ!!」
「来るなー!!!、引っ込めー!!!!お前なんかが出るのは反則だー!!!」
「「「そうだ、そうだー」」」
「お、俺、ロックオンされて無いよな……」
昨日の事もあって会場全体が荒れまくっている。観客魔導士問わず。フリスを糾弾し、野次を飛ばす。中には震える者も多数いるが。
「お、おいおい、ミネルバあそこにいるぞ!!!」
「はあ!?、何であんな奴がミネルバの代わりに出場してるんだよ!!!」
「おいおい!!剣咬の虎のマスターやってるデカい奴がいないぞ!!!」
「な、何が起きているんだ!!」
名を呼ばれたミネルバはと言うと剣咬の虎の応援席で寛いでいる。剣咬の虎の応援席に彼らのマスター・ジエンマはいない事にますます騒つく会場。
「あ、あそこにいるのユキノじゃね?」
「本当だ、今日は出ないんだな。」
「ざ、残念だなー、凄く可愛いかったのに……」
ミネルバの隣にはユキノも座っていた。
少なくとも今日はユキノが出ない事が分かり落ち込む者もいる。
ユキノは表向きには落ち着きを払っていた。表向きにはだが、
「ふ、予想通りの反応だな、」
「ミネルバ様…、コレじゃ、フリス様が…」
会場に糾弾されるフリスを心配するユキノ。それに対してミネルバはフンと鼻を鳴らした。
「ふ、仕方無いだろう、これしかお前達が生き残る術は無いのだからな。」
「確かにそうですけど…。」
「なら黙って見てるが良い。」
余裕の笑みを浮かべながら楽しそうに話すミネルバの言葉にユキノは確かにそうだと思うが納得はしてない。
「ま、そなたにも機会があれば挽回のチャンスを与える。今日は黙って見守るのだな。妾も奴の実力が見たい所だ。」
「はい、ありがとうございます。」
「そうだ、もっと喜ぶが良い。父上もいないのだからな。」
「そうですね、
でも、意外でした、ミネルバ様がこんな方法を取るなんて」
ユキノの言葉にミネルバの眉がピクリと動く。
が、いつもの表情に戻る。
「ふ、そんなに意外か?
ビクンと肩が揺れる剣咬の虎の応援席にいる面々。
ユキノは慌てて誤魔化そうとする。
「いっ、いえっ、あの、別に変な意味は無くて…」
「ふ、分かっている。だが、深い詮索はするな。」
「は、はい…。」
一瞬ギロりとユキノを睨んだミネルバ。
彼女にも探られたく無いものがあるのだろうとユキノも前に視線を戻した。
会場は尚荒れている。
「てか、こんなの有りかよ!!!」
「あいつ選手じゃ無いだろー!!」
フリスを指差す会場の面々。そんな中実況のチャパティのアナウンスが入る。
「えー、大会規定により、
ギルドメンバーの内の1人を代わりに本戦に選出することができます!!!
よってフリス選手の出場、これは違反ではありませーん!!!」
「な、何だと!!!それじゃあ!!!」
「マジかよ!!!」
「ほ、本当に出るのか!!!!……」
チャパティの説明に会場は少し収まったと思ったらまた荒れ出した。
フリスの出場について不満はありそうだが。
一応納得はした者もいるようだ。
観客の興味はフリスの実力へと向けられはじめた。
妖精Bチーム選手席
出ようとしていたカナは冷や汗をダラダラとかいていた。
「え、えっと、ま、私に任せな、」
「いや、俺が出る。」
フリスを見て震えながら出ようとするカナの肩を止めたのはラクサスだった。
「どんな競技か分からねえが俺が行こう。」
「そ、そうかい、悪いね、任せたよ。」
代わりに自分が出ると言うラクサスにカナは肩を撫で下ろす。
「気をつけてね、ラクサス。」
「あ、あいつにやられるなよ!!」
「が、頑張ってください。」
「期待するな…。」
ミラジェーン達の応援にラクサスはため息を吐いて出ていく。
剣咬の虎ー選手席
「遂に出たか、フリス…」
「彼の実力をまさか見られるとはね。」
「あいつなら、種目にもよるが、まず大丈夫だろう。」
「パワーなら尚、楽勝だな。」
スティング達、引き続き選手として出る者は出ていくフリスを静かに見守る。皆、何処か高揚した様子で、彼の背中に期待の眼を向けている。
闘技場
「(……広いようで狭いな…。)」
闘技場の中央付近でフリスは会場全体を見渡した。
既に他のギルドからも出場選手が出てきていたが、誰も青年に近づこうとはしない。
大鴉の尻尾のオーブラは勿論、その他のギルド、妖精の尻尾Aのエルザ・スカーレットも警戒の視線を向けてフリスを観察している。
聖十大魔導士のジュラも来た。彼もフリスを見ていた。
そんな中、フリスに近づく1つの影。
「よう、」
フリスがそちらを見ると金髪の大男がいた。妖精の尻尾Bチームラクサス・ドレアーだった。
「ここで、お前が出てくるとはな、期待してるぜ。」
それだけ言うとラクサスは青年から離れた。
「ルールを説明するカポ、」
審判のカボチャが出てきてルールの説明が始まる。
場に巨大な何かが現れた。大きな魔物の城。中には百体の魔物がいる。魔物は魔法を具現化させたものなので、観客を襲う事は無いが。
出場者はまずクジを引いて魔物を倒す順番を決める。そして、順番毎に倒す数を言い、その数の魔物が出て来るのでそのまま城に入り、その魔物と闘う。
魔物は強さがD〜Sランクに別れており、出てくる順番はランダムだが、どのランクのモンスターも1体1点扱いである。
ちなみにSランクの魔物は聖十大魔導士でも倒せる保証は無いとか。
モンスターに倒されたらそこでリタイア。そのターンは得点無しでその前のターンまでに倒したモンスターの数がそのまま得点になる。
「まずは順番を決めるカポ、」
カボチャがクジの入った瓶を出場者に向ける。
近くにいたフリスはそのクジを一番に引き抜いた。
そのクジの番号は……
剣咬の虎が復活しました。
活躍?したミネルバさん。
クジ引きでフリスはどの番号を引いても平気そうですね。