息抜き投稿2回目
◎・毒竜の迷宮・
「
「火炎噴流!」
黒い光と炎の流れがヒドラに直撃し残りわずかであったHPを削り切った。ヒドラは地に伏してポリゴンへと還り宝箱へと姿を変える。赤髪の少女が宝箱へと駆け寄り中身を確認する。そんな少女の背中に声をかける。
「どうだ、ミィ」
「……はずれだ、師よ」
前回私が助けた少女『ミィ』と共にレベリング兼魔素集めに一層でも屈指の難易度を誇るダンジョン『毒竜の迷宮』に訪れてみたのでずか……。既にマラソンを開始して二時間、私たちの望むような魔素は入手出来ていません。
「うぅむ」
顎に手を当てながら、ミィの様子を観察する。一見なんともないようですが、少しばかり呼吸が浅く早い、目の焦点もまばらなような気がしますね。出会った時もですが、私とミィの間にはかなりレベル差がある。その差を少しでも埋めようとミィは精力的にマラソンしていますが、ここらが限界でしょう。
「ミィよ、一度街に帰るぞ」
「な!? だ、大丈夫だ、師よ! まだMPポーションにも余裕はあるし、HPも全然減っていない!」
焦ったように近づいてきて喋り出すミィの頭をゆっくりと撫でて落ち着かせる。
「HPは減っていなくても、VRで体力を使わなくても精神に疲労は溜まるのだ。一度街に帰り気分転換することも必要だろう」
「……師がそういうなら」
どうやらミィも納得してくれたようで私の提案に頷いてくれた。ボスを撃破した後に出現するダンジョンの入り口へ送還する魔法陣に触れ、毒竜の迷宮を後にする。
「そういえば、師は運営からのお知らせをみたか?」
「知らせ? そう言えば確認していなかったのぅ……」
迷宮の入り口から街へ戻っている道中。襲い掛かってくるモンスターを焼き払いながらミィがそんな事を聞いてきました。……ここらのモンスターはもう片手間で倒せるようになりましたか、やはりこの子には優れた才覚があるみたいですね。にしても私の真似なのかは分かりませんが、大分強気な口調のロールプレイを始めたミィ、魔法使いとしての優れた力にこの強気な性格(実際は気弱なのだが)すでにネットの一部では可笑しなファンが出来始めているらしく師としては少しばかり心配です。
あぁ、今は運営からのお知らせでしたね。さて、メニューからお知らせ、お知らせっと。
「……『第一回イベント』のぅ」
「ああ、そうだ! 内容は専用マップでのPvP。ポイント制で与ダメージや他プレイヤーを倒した数でポイントプラス、被ダメージや死亡回数でポイントマイナス。そして上位10名には限定の記念品が貰えるらしい」
目をキラキラとさせながら私に説明してくれるミィ。ふぅむ、もしかしたらミィは『限定』といった類の言葉に弱いのかもしれませんね。そんなミィを横目に自身のステータス画面を開く。
| クヴァール Lv48
HP 300 /300 MP 200/200
【STR 10】 【VIT 10】 【AGI 60】 【DEX 50〈+10〉】 【INT 230〈+15〉】
装備
頭 【職人の眼鏡】DEXを+10 体 【魔印のローブ】INTを+5 右手 【空欄】 左手 【空欄】 足 【旅人のズボン】 靴 【革のブーツ】 装飾品 【魔術師の指輪】INTを+10 【蒼い雫の首飾り】MPを毎秒2回復 【空欄】
スキル
【魔法の心得Ⅲ】【高速詠唱】【無手詠唱】【MP強化中】【MP回復速度強化中】【MPカット中】【魔法威力強化中】【火魔法Ⅲ】【水魔法Ⅲ】【風魔法Ⅲ】【土魔法Ⅲ】【闇魔法Ⅲ】【光魔法Ⅲ】【魔法の探究者】【遠距離攻撃Ⅲ】【状態異常攻撃Ⅲ】【気配遮断Ⅰ】【気配察知Ⅱ】【採取速度強化小】【釣り】【潜水Ⅱ】【水泳Ⅱ】【料理Ⅱ】 |
……。
「よ、良かったら私と一緒にイベントに参加―――「見送る」――え?」
「儂の魔法は今だ完成に遠いからのぅ。イベントの期間中も暫く探索や魔素集めに奔走しようと考えている。それに少しばかり作りたいものがあってのぅ」
「そ、そうなのか……残念だ」
んー、どうやらミィは私と一緒に参加したかったみたいですね、申し訳ない。しかし私も目標を持ってこのゲームに参加している身、いつか名を広めるためにもPvP形式のイベントには参加しませんといけませんねぇ。
「すまんのぅ……。それでミィは参加するのか?」
「え? あ、あぁ、そうしようと思っている」
「そうか。……ミィ、お前は強い。必ず上位10位以内に入れるだろう。お前の強さ、この儂が保証する。全力で行ってこい」
「! 分かった、師よ!」
私の励ましで元気を取り戻してくれてよかった。ミィは可愛いですからね、カッコつけている表情も凛々しくて素敵ですが、やはり笑ってくれている方が良い。そうこう話している内に私たちは森を抜けて街へとたどりついた。
「……ククク」
やはり何度来てもこの街は良い。鎧を着こむ騎士がいて、魔法使いがいる。しかして同時に侍がいて、盗賊や勇者だっている。なんでもありのファンタジー。
「心が躍るのぅ」
「師よ、また顔が恐ろしくなっている」
「ん? あぁ、すまんのぅ」
道理で道行く人が私の顔を見てはギョッとして道を開けると思いました。昔からなのですがどうやら私は興奮するとかなり恐怖を感じる笑顔を浮かべてしまうようで……。困ったものです。口元に手を持って行き顔を揉もうとする手をミィに止められる。
「ミィ?」
「師よ、少し屈んでくれ」
「?」
何をしようとしているのかは理解できませんが、ひとまずミィの言う通りに屈む。そうするとミィの両手が私の頬に当てられグニグニと私の頬を揉む。あぁ、これは……。
ミィの、おそらくは十代の少女のきめ細かく、しっとりとしながらも少女体温……とでも言うのでしょうか、ほんのり温かみのある手が私の頬を揉みこんでいくッ! 興奮から異常なまでに上がり、見た者に恐怖を感じさせていた口角の辺りの筋肉がそっと解れていくのがわかる! 徐々に弛緩してゆっくりと落ちてくる口角ッ! 確かに私は笑みを浮かべた後口を隠し、口角の辺りを揉んで力を抜くようにしていたが、ミィはそんな事も覚えていたのか! そして今ッ! 師である私の事を思って、自ら私を癒そうとしてくれているッ!別の意味で興奮してきて口角上がるわッこんなん! あああぁぁぁ! いけません、イケませんよ、私! 落ち着きなさい! 私は何!? そうッ! 偉大なる魔法使いになる男で、この子の師匠です! いつも余裕たっぷりにクールで! 知的で! あ゛っ゛! 小声で『モミモミ』とか言ってる、かっわいいーーー♡ 私の弟子、ちょー可愛いんだが!? こんなん、この 『New Wolrd Online』の宝だろうがよッ! 運営は早く国宝認定しろッ! やっぱ、するな! 弟子の可愛さは私だけが知っていればいい! どけ! 私は師匠だぞ!
「……もう良い。感謝するミィ」
「ん、師の役に立てたなら良かった」
ふぅ……。どうにかこうにか心を落ち着けた私はミィにそう告げて立ち上がる。師匠の為にここまでしてくれた弟子にはお礼が必要だろう。
「ミィ、あそこの喫茶店に行くぞ。例に菓子の一つでも二つでもご馳走してやろう」
「そ、そんなお礼なんて! 私の方がいつも師にお世話になってるし……」
「儂が馳走したいのだ。師の我儘を叶えてくれるかのぅ、弟子よ」
「……それなら仕方がない。ご馳走になる師よ」
そう言ってほほ笑むミィ。もう、本当に可愛いんだから、何個でもご馳走しちゃう!
◎・・・
やはりVRMMOという物は素晴らしい。なにせ、どれだけ美味しいものを食べても一切太らないし、味のぶれもない。稀にあるだろう、その日の店主の調子やこだわりで味が変わる店が、そういう店も悪くないし、嫌いではないのだが、気に入った味がもう二度と味わえないことだってあり得る。そう考えれば、このプログラムで出来た料理はいつも同じ味で安心して食べれる。ただ気になる点と言えば、注文してすぐに料理が届く点だろうか。それが良い点でもあるのだが、私は料理を注文して届く間までにある調理の音や友人との会話も楽しめる人間だったのでね、残念だ。なんて事を考えながら店を後に、ミィと話す。
「これからどうする? 儂は一度ログアウトしようと思っているが……」
「私はイベントに向けて調整ついでにもう少しレベリングしようと思っている。イベントまで一週間だからな」
「そうか。なら、これを」
私はアイテム欄からある魔術スクロールを取り出してミィに渡す。アイテム『白紙のスクロール』アイテムドロップや店買いが出来る一般アイテムで、魔法エディットで作った魔法を記録することで『記入済の魔術スクロール』へと変化する。一般的に魔法エディットで作った魔法はその作成者だけが使えるが、こうしてスクロールに書き写し相手に渡すことで渡された相手も記入された魔術を使えるようになるのだ。
「これは……っ!」
「儂が作成した魔術の一つ『炎帝』だ。渦を巻いて飛ぶ二筋の巨大な火球を生み出す。超火力で相手を焼き払うことが出来る。燃費はまぁまぁだが、威力は折り紙付きだ。火魔法が得意なミィであれば十分に使えるであろう。儂からの激励だ……勝ってこいミィ」
「師匠! 私、絶対に十位以内に……いや、一位になって見せるから!」
渡した魔法のスクロールを握りしめたミィがそう強く宣言して見せた。参加はしませんが、イベントが楽しみになって来ましたよ。
ミィ、頑張れ。
独自設定
・「
・火炎噴流 杖の先から火炎を放射する魔法。 簡単に言えば火炎放射器
・『スクロール』関連
・『炎帝』はクヴァールの作成したオリジナル魔法