極振りを殺す魔法   作:四脚好き

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気紛れが続くこともある。


防御特化と殺す魔法

???

────────────────────────―――――――――

 

 痛い、痛い、痛い、痛い痛い痛い痛い痛いいたいいたいたいたいたいたいたいいたいイタイイタイイタイイタイ痛いぃぃぃぃ!!! 

 

「あああっ!! え、あ、む、胸!? あ、穴は……開いてない……。ゆ、夢かぁ」

 

 私はベッドの上で飛び起きて自分の胸を確認する。しかしそこには大穴など開いてはおらず、傷口からこぼれ出るポリゴンもない。そこまで確認して私はここが現実であることを思い知る。

 

「あー、もう参っちゃうぅ」

 

 私、本条楓は『New Wolrd Online』というVRMMOゲームをメイプルという名前でプレイしている。あんまりゲームは得意じゃないんだど親友の理沙に誘われて始めたんだ。最初はよくわからなくて混乱することも多かったんだけど、色々なことが出来るようになって、わくわくなことが沢山あってとっても楽しかった! 

 ひょんなことから私結構強くなってたみたいで、第一回のイベントでは3位になっちゃったりもしましたー!

そしてそんな私のプレイスタイルはズバリ、VIT『防御力』に極振り! 他にもいろいなスキルのお陰もあるんだけどこれのお陰でどんな攻撃を受けても全然痛くないし、今まで一度もですしたことは無かったの!

 

 ……そう、前回のイベントまでは。

 

 前回のイベント。フィールド上のダンジョンを攻略したり他のプレイヤーと戦ったりしてメダルを集めていくというイベントの最終日、私と理沙ことサリーはイベント中に友達になったカスミと一緒にある洞窟ダンジョンの奥に篭っていた。 ダンジョンの通り道は『ヴェノムカプセル』で塞いでいたから安全だと思ってた。だからイベント終了までサリーとカスミと一緒にオセロとかいろいろなゲームをして時間を潰していたの。

 そしたら何の前触れもなく、いきなり私の胸がとっても熱くなった。何が起きたのか分からず正面を向けばあたりの景色はゆっくりとスローモーションになっていて、サリーとカスミがとても驚いた表情を浮かべてた。次に自分の胸に目を向ければ真っ黒い光線が私の胸を貫いていた。その光は私の防具も、スキルも、何もかもを貫通していた。光の元をたどれその光は『ヴェノムカプセル』さえも貫通していてそしてその奥にはまるで三日月みたいに歪んだ口だった。

 

「アレは誰だったんだろう?」

 

 幸いなことに私の分のメダルは同じパーティーのサリーが回収してくれていたからロストせずに済んでイベント終了後に新しいスキルもゲットできた。ただ、サリーはどうしても最後の私をキルした攻撃が気になるみたいで手に入れたスキルの試しもそこそこにログアウトしてイベントの中継映像を見に行っちゃった。

 色々考えたけど取り合えず……。

 

「汗びっしょりだから着替えないと……」

 

 

通学路

────────────────────────―――――――――

 

「おはようございます、本条さん」

「おはよう久羽くん」

 

  時たますれ違うクラスメイトに挨拶をしながら通学路を歩いていく。今朝の夢見が悪いせいかいつもより学校に行く足が重い気がするぅぅ。重い足取りをどうにかして動かして学校への道を歩いていく。

 

「あ、いたいた楓! おーい!」

 

 私を呼ぶ声が聞こえて顔を上げる。するとそこにはこちらに片手を上げながら近づいてくるサリーこと理沙の姿が。

 

「おはよー理沙」

「おはよう楓! ってそれよりもあの光線が何だったのか分かったの! ほらこれ見ながら行こ!」

 

 そういって理沙はスマホの画面を向けてくる。そこに映っていたのは動画投稿サイトにアップされていた第二回イベントの切り抜き動画。タイトルは『メイプルをキルした魔法使い、まとめ』……すっごいシンプル。

 理沙が動画を再生する。すると始まったのは圧倒的な蹂躙劇だった。

 動画のメインてあろう魔法使いの男の子が雷の槍を放てば相手の体を貫き、両手を頭上で組めばそこに宇宙が広がり、星が飛び散る。彼の周りに滞空し、近づいてきた相手に自動で突っ込んでいく結晶、三方向に飛んでいく光の輪、そして全てを腐らせる朱い花……。

 動画はもっとも再生された場所へと差し掛かる。すると男の子の体がメキメキと音を立てて変形する。そして出来上がったのは正に魔物だった。浅黒い肌に真っ黒な目、裂けた口、白い毛並み。

 

「これは……?」

「多分スキルだと思う」

 

 理沙に問いかければ理沙は真剣な表情で画面を見つめながら答えてくれる。

 

「モンスターに変身ってどんな感じなのかなー」

「さぁね。ほらここからだよ」

 

 理沙に言われて画面を見るとモンスターに変身した彼が洞窟に向かって腕を構えている場面だった。

 

「この、洞窟……」

「そう、あの場面」

 

 黒い光が彼の手のひらに集まり、蠢く。そしてゆっくりと彼は呪文の名前を告げた。

 

人を殺す魔法(ゾルトラーク) 

 

 黒い光は一本の線へと変わり洞窟へ真っすぐ跳んでいき、私の胸を貫いた。

 

 ここが現実だと分かっていても思わず身震いをしてしまう。その後は活躍しなかったのか切り抜き動画はそこで終わっていた。

 

「凄かったね……」

「うん。このプレイヤーが使っている魔法、どれも見た事がないの」

「それって……」

「全部魔法エディットで作り上げたんだと思う」

「えー!」

 

 思わず叫んでしまう。魔法使いではない私にとってはあまり縁のない機能だけど、多少の魔法も使うサリーが少し手を出していたのを見た記憶がある。

 

「魔法エディットってあのサリーもお手上げだったやつだよね?」

「まだお手上げじゃないよ! 今は少し……勉強中。ネットに掲載されてる脳天直撃魔法とかでも良いんだけど、せっかくなら自分だけの魔法作りたいじゃん……」

 

 自分だけの魔法……確かにカッコいいかも! 

 

「ってそこじゃないよ! もっと注目するところあったでしょ!」

「え?」

「モンスターに変身する前のこの顔! 見た事あるでしょ!」

「んー?」

 

 理沙がプレイヤーの顔をアップにして画面を近づけてくる。確かにこの顔は……、というかさっき挨拶した気が……。

 

「く、久羽くん!?」

「そうだよ楓! あのスカした感じのロン毛インテリヤクザ!」

「ちょっと待って理沙! 久羽くんのことそんな風に思ってたの!」

 

 親友の過激な一面を知っちゃったよー……。いや、前からそんな気配はあったかも……? 

 にしても……。私はジッと画面の中の男の子の姿を見つめる。『New Wolrd Online』ではプレイヤーの見た目は殆どリアルと変わらない。弄れる項目は眼や髪の色ぐらいだ。そのことを考えると私をキルしたこのプレイヤーは確かにクラスメイトの顔に一致している。

 久羽 累(くば るい)くん。高校生になってからのクラスメイトで今は隣の席の男の子。黒いロングヘアーにアンダーリムの眼鏡をかけていていつも物静かな男子。雰囲気は鋭い、切れ者といった言葉が似合う。理沙が言ったインテリヤクザという言葉もまぁ分からなくはない。だけど話してみると口調は優しいし、当番でなくても暇があれば他者の仕事を手伝ったり、先生にも信頼されてるし、かなり親しみやすく、社交性は高い。

 そんな彼がこんな風に怖い顔をして暴れ回ってる……。そして私を狙ってキルしたきた……。今後も『New Wolrd Online』を続けていくつもりだし、PVPのイベントもあるはず。なら私にとっての天敵は間違いなく久羽くんだ! 理沙と一緒に対策を考えないと……。

 

あれ? もしかしてこれ、漫画とかアニメでみる身近な人間が実は黒幕だった、みたいな展開!?  なんだろう……嫌いじゃない! わくわくしてきたかも!!よぉーし、次は絶対久羽くんに勝つんだから!!

 





物静かな切れ者「(おっほーーーーっ! 楓さんだ、楓さんだ、メイプルだ! いやー、どうしよう。いつ話しかけようかな!? 話しかけるのか? かけないのか? どっちなんだーーーーい!! 今はかけなーーーい! とりあえず挨拶だけしとこうか! "やっほー、初デスの感想は? 自慢の防御力はバカンスにでも行ってましたかー!?" ……おバカ!! どんな挨拶だよ、するわけないだろ!)おはようございます、本条さん」
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