極振りを殺す魔法   作:四脚好き

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乙女を殺す魔法

教室

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 通学路で本条さんに会えた興奮でおかしな挨拶をしそうになったのをどうにか抑え込み、自分を追い越していく本条さんの背中を見送ってから少したった。恐らく今頃、本条さんは白峯さんと教室でお喋りしている頃合いでしょうか? 

 あの二人……登校滅茶苦茶早いんですよねぇ……。それで二人で始業まで仲良くお喋り、"百合の花"が好きな一部生徒たちの間ではあの二人の絡みは大変有名で人気なものです。実際は……どうなんでしょうかね? 

 私は"そういう"趣味も理解はしているので、全然どちらでも構いませんが。ただ気になるのはどちらがタチなのかと言う事だけです。やはり男勝りなところがある白峯さんでしょうか……?

 ただまぁ!? リボンを解いて髪を下ろした状態になり、日中の溌剌した姿からは想像できない程しおらしくなった白峯さんを本条さんが優しくベッドに横たえる、というものも大変ッ、素晴らしいものだとは思うのですがね!!??

 

「……ふぅ」

 

 もう少しで教室に着くことですし個人的な妄想はここまでにしておきましょうか。続きは今晩にでもしますか。そう片を付けて教室に入ろうとドアに手を伸ばす。

 

「く、久羽くん!?」

「そうだよ楓! あのスカした感じのロン毛インテリヤクザ!」

「ちょっと待って理沙! 久羽くんのことそんな風に思ってたの!」

 

 教室の中から聞こえた声にビタリと手が止まる。今の声は間違いなく本条さんと白峯さんの声……。その余りの声の大きさに私も止まりましたし私の後に続いて教室入ろうとしていた後ろのクラスメイト達も動きを止めてしまいました。にしても……、インテリ……。

 

「おはようございます、月村さん、バニングスさん。時に質問なのですが私は……そんな風に見えますか?」

 

 教室のドアに伸ばしていた手を引っ込めて後ろに振り返り私は自分の後ろにいた二人のクラスメイトに話しかける。

 

「あ、あはは……」

「確かにそっち側の人間には見えるわね」

 

 私の質問に二人のクラスメイトはそれぞれ異なった返事をしてくれました。苦笑いを浮かべて誤魔化そうとしているのが月村すずかさん。バッサリとそっち側の人間だと言い切ったのがアリサ・バニングスさん。異なる返事をしたとは言いましたが、思っていることは一緒でしょうね。

 

「……キャラ変」

「止めときなさい。不気味なだけよ」

「ちょっと、アリサちゃん! ごめんね、累くん。でも私も累くんは今のままで良いと思うな」

 

 私が今後このクラスでの立ち回りをどうしようかと考えて呟くとバニングスさんは私の考えをバッサリと切り捨てながら教室に入っていった。そんなバニングスさんを追いかけながら月村さんも私の考えを否定する。

 まぁ、お二人がそういうならそういうことなんでしょうね……。そう結論を出して私も教室に入りました。

 

「おはようござ「あああーーーっ!」……います」

 

 私が教室に入るのと同時に本条さんが大きな声を上げて私を指さす。その大声のせいで何事かと既に教室にいたクラスメイト達には注目されますし、私が入室する前の二人の"インテリ"発言がそれを加速させ何やら教室内に私と白峯さん、本条さんの仲を勘ぐるようなヒソヒソ声が聞こえる。私については別に何ともないのですが二人にまで被害が及ぶのはいただけません。

 

「……」ニコッ

「ひィッ」

 

 ひそひそと話をしていたクラスメイト達に彼女たちに聞こえないようにもう少し声を潜めてという思いでにっこりと笑顔を向ける。すると私の意思が伝わったのかクラスメイト達は視線をこちらからずらして黙りました。

 

「そういうところよ」

 

 なにかバニングスさんが呟いていたがよく聞き取れなかった。私が席に着くとささっと机の前に白峯さんと本条さんが寄ってくる。瞬間、私の鼻腔を満たすJKの香り。おっほ、良い匂い。なんで女子ってこんなにいい匂いするんだろ? 洗剤や香水でもないその"人"の香り。それなのにこうも嗅いでいて心地よくて、興奮するなんて……。ホントJKってすごいよなぁ……。

 

「おや、白峯さんに本条さん、どうかしましたか?」

「久羽! ちょっとアンタに聞きたいことがあるんだけど?」

「ごめんね、久羽君。少しだけ私もお話、したいかな?」

 

 白峯さんは机に手をバンっと置いて身をこちらに寄せる白峯さん。あぁー! いけません! いけませんよ、白峯さん! しっかりとネクタイをしていなくて、第一ボタンを開けてるときにそんな前のめりになっては! 見えてはいけないものが見え……見えッッ! 

 

「ふぅーむ……構いませんよ。私も聞きたいことがありますし。……初デスはいかがでしたか、メイプルさん?」

「!?」

「やっぱりアンタ!」

 

 見えたッ! 見えてしまった! やったぁーーーーーーッ!

 

「はい。あちらでの名前はクヴァールと申します。ぜひ、よろしくお願いします」

「え、あ、う、うん。私は知ってると思うけどメイプル」

「私はサリーね。アンタもゲームとかするのね。ちょっと驚いた」

 

 水色かぁ……。確かに白峯さんにはよく似合ってる。派手な装飾も無くてかすかにあるワンポイントが大変すばらしいと思います。

 

「まぁ、数は多くありませんが『New Wolrd Online』は得に楽しませてもらってます」

「それはやっぱりあの魔法関連?」

「……やけに踏み込みますね? 私の対策の為に情報を得ようとしているでしょう?」

「……」

「ふ、二人とも、顔が、顔が笑顔なのに怖いよ!?」

 

 にしても、隣の本条さんのせいで分かりづらいですが白峯さんも結構"ある"んですねぇ……。

 

『New Wolrd Online』 第二層

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「ふむ。待ち合わせはこの辺りのはずだが……」

 

 放課後、私は『New Wolrd Online』にログインして第二層の広場へと向かい目的の人物を待つ。……にしても。

 

「見られておるな」

 

 道行く人々がどうも私のことをチラチラと見ています。前回のイベントでは私の獲得メダルは金一枚のみ。メダル獲得数ランキング上位五名がイベント後発表されたが、そこに私の名前はありませんでした。にも拘わらず私がこれだけ注目を集めているのはやはり……。

 

「メイプルを討ったことが大きいかのぅ」

「その通りだ、師よ!」

「ぬ?」

 

 私がふと呟くと後ろからそれを肯定する声が聞こえる。こ、この声はッ!?

 

「ミィか」

「久しいな、師よ!」

 

 我が愛しのプリチープリチー弟子のミィでは無いですか、やったー!! ふんふんと少し興奮気味に胸張って腕を広げちゃってカッコつけて! ほんっとうに可愛いな!! まったくミィは最高ですね!!

 

「して、どうかしたか?」

「特にという訳ではないが師の姿を見つけたのでな。どうだ、久々に共に魔素周回と行かないか? それに今なら魔素の他にも手に入るものがあるからな」

 

 あ、ぁぁぁぁぁぁ、久々のミィからのお誘い! なんで、なんでよりによってこのタイミングで……。

 

「むぅ……すまぬ、ミィ。今日は先約があるのだ。また後日誘ってくれぬか?」

「なっ……」

 

 ショックを受けたのか固まってしまうミィ。あああああ! 本当に、本当にごめんなさーい! なんで、なんでこんなことに……。

 

「予定がなく、ログインする予定の日を後でチャットに送っておこう。その日なら共に過ごせる」

「本当……?」

「あ、ああ、もちろんだミィよ」

 

 落ち込み過ぎて若干ロールプレイ崩れてるやんけ!?

 

「じゃあ、今日は我慢する。……またね、師よ」

「あぁ。済まないなミィよ」

 

 なんだがしわしわした顔をしながら立ち去っていくミィを見送る。うぅ……本当に申し訳ない。私もしょんぼりとしながら改めて待ち合わせ場所で待機しているといきなり型を強くたたかれる。

 

「ぬぅ!?」

「よ、お待たせー」

 

 叩いた犯人の方を見やるとそこにいたのは白峯さ……。

 

「今はサリーか」

「お、なんだー? もしかして本名の方で呼びそうになった?」

「うむ」

「ははは、そういう所はやっぱりゲーム初心者なんだね。メイプルも同じことしてたよ」

 

 白峯さんこと、サリー。そういえばメイプルはどこでしょう? 辺りを軽く見まわしますがどこにも見当たりません。まぁおっちょこちょいで約束の時間に遅れるというのも彼女らしいのですが……。

 

「あぁ、メイプルなら今日は来ないよ」

「なに?」

「昼間のアレが大分響いてるみたいで3日間はログインしないって言ってた」

 

 あぁ、昼間のアレですか……。サリーの言葉に日中、学校で起きたことを思い出す。どうやら本条さんはこの『New Wolrd Online』が初めてのVRMMOだったらしく、時間加速の中で過ごした7日間は彼女の行動に大きく影響を及ぼした。クラスメイトと廊下でぶつかった時には武器も盾もないのに構えをとったり、体育のドッジボールではカバームーブを使って回避しようとして顔面にボールが直撃したりと散々な目にあっていた。長時間VRMMOの中で過ごしたために体が無意識的にゲーム内の動きをしようとして現実で悲惨な目に合う。VRMMO初心者あるあるを今日の彼女は拗らせていました。

 

「まぁ、事情を知っている身からすると見ている分には大変愉快であった」

「……」

「なんだ」

「いや、ロールプレイをしているとは事前に聞いてたけど……違和感が凄い」

「ふぅむ、そうか? すまんが、慣れてくれ」

 

 すっごい真顔で突っ込みしてくるじゃん、サリー。びっくりしすぎて私もさっきのミィみたいにロールプレイ外れる所でしたよ。

 

「して何をする?」

「実は探してるものがあるんだよね」

「む?」

「これ、『光虫』」

 

 そういってサリーが見せてきた画像には光り輝く金色の虫がいた。

 

「これは……スカラべか?」

「いや、光虫だって。ともかくこの虫がフィールドのどこかに湧くようになってるの。それでコイツを見つけて討伐すると『光虫の証』ってアイテムを確定で落とすの。そしてこの証は新要素『ギルドホーム』を買うために必要なの」

「ギルド……」

 

 あぁ、いつかミィが予言していましたが、実装したんですね、ギルド機能。

 

「そうメンバーを集めてホームを決めるとギルドが結成できるの!」

「なら今日我々がすることは……」

「光虫の捜索と資金集め!」

「了解した」

 

 それから私とサリーはフィールドを回り、光虫が良そうなダンジョンや、隠しクエストなどが無いかを探して回りました。そうして過ごしていると意外なことが判明しました。

 

「ねぇ、クヴァール。アンタと私、意外に相性いいと思わない?」

「同感だ」

 

 いや、まぁ、今朝こそ少しピリピリとしましたが、その後の休み時間も『New Wolrd Online』について語り合っていると自然と仲良くなったというか、ゲーマーとして話が合うというか……最終的に本条さんが拗ねてしまうという事態にもなりました。そして帰り際に『New Wolrd Online』で会おうという流れになったのです。本条さんは来ませんでしたが。

 

「前衛がいるとこれほどまでに楽になるものなのか……」

「私も多少魔法は使えるけど、やっぱり専門職には及ばないね」

 

 基本的にソロかミィと組むことが多かった私は前衛の存在と言うものの偉大さを思い知ることになりました。いやぁ、ミィと組むと基本的に近づかれる前に火力でごり押しするか、引き撃ちしか先方がありませんでしたからね。

 

「これほどまでにボスの動きを気にせずに魔法の行使に集中できるとはな」

「私のステータスだとどこか器用貧乏になりがちだし、メイプルは防御特化だし、高火力アタッカーがいるのは心強いよ」

 

 そして今、私たちは目的だった光虫の証を手に入れて、時間も時間なのでログアウトしようという話になりました。

 

「目的の物もゲットできたし今日はありがとう!」

「こちらこそ、貴重な体験をさせてもらって感謝する」

「あと、さ……」

「ぬぅ?」

「これ! 私のフレンドコード! また連絡するからさ、時間あったらクエストとか回ろうよ!」

 

 そう言って表示されたIDを自分のメニューに打ち込み、フレンド申請を出す。

 

「勿論だ。またいつでも誘ってくれ」

「お、申請来た来た。承認っと」

 

『サリーとフレンドになりました』

 

 メッセージウィンドウにそう表記される。

 

「それじゃあ、また明日!(学校のこと)」

「うむ。また明日(学校のこと)」

 

 そうして私はログアウトしました。

 

???

────────────────────────―――――――――

 

「また、明日(ゲームのこと)……? し、師よ……。私の、私の誘いは断ったのに。誰なんだその女は、師の一体何なんだ、あの女は……。い、嫌だ、取られたくない。師なのに、私の師なのに……」

 

 

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