ようこそ支配者がゆく教室へ   作:藤村凛

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追放。そしてホワイトルームへ

__橘財閥の三男に生まれた橘優里は異端者だ。完全記憶能力を持つことで幼少期から自我があり、周囲の大人たちには薄気味悪い子供に写っていた__

 

「茜お姉ちゃん、この本読んで!」

「夏目漱石のこころですか?!そんな難しい本、私は読めないですよ・・」

「それでもいいから、茜お姉ちゃんと一緒にいたいの。」

母乳を必要としなくなってから父と母の顔を見ていないが、自分にとっては茜お姉ちゃんの笑顔だけがこの冷たい家の中での光だった。

優里が5歳になった時にその平穏は無くなった。

 

「お前にはこれからとある教育施設に入ってもらう。」

数年ぶりに会話する父からそう告げられた。

「何故ですか?僕が気味が悪いからですか、それとも後継者争いですか?」

「両方だ。お前の存在は橘家のノイズになる。戸籍は残してやるがもう会うことはないだろう。」

__理不尽すぎる。親に会いたくはないがお姉ちゃんと会えないことに耐えられる気がしない。

「お前が茜にくっついているのは把握している。どうしても会いたいのであれば結果を出せ。会う価値のある人間になったならば考えてやる。」

そう言って父は去って行き、自分は大人達に連れ出された。

「会う価値のある人間になる」

その言葉だけが自分の頭にこびり付き、僕は橘家を去ることとなった。

 

 

 

やって来たのは真っ白な部屋だった。大人達に囲まれて同年代の子供達がテストに取り組んでいる様は異常に見えた。

「この子が今日から四期生に配属される橘優里だ。」

教官のような人に紹介されたのにも関わらず周囲の反応は薄い。自分は大人達の手のかからない方であると思っていたが、ここまで反応が薄いと気味が悪い。普通の施設でないと感じつつ、僕の白い部屋での生活が始まった。

 

 

「ご飯が美味しくない!!」

この施設の1番の不満はご飯が不味いことだ。腐っても名家の血筋のおかげだろうか。完全記憶能力とそこそこ恵まれた身体のおかげで日々のテストと戦闘訓練はそこまで苦ではなかったし、脱落者が出ていく光景にも慣れた。しかしこの不味いご飯だけはいつまで経っても慣れない。モチベーションのためにもご飯を美味しくしてほしいと言ってみたが、栄養素が完璧なご飯だから変更する必要がないと一蹴された。

____________________________________________________

 

この施設に来てから4年も経つ。それなのに僕はずっと2位止まりだ。どうしてもあの綾小路清隆に勝てない。カリキュラムを淡々とこなしてトップで居続ける。

「会う価値のある人間になる」

そう決めたはずなのに僕はまだこの施設で価値を出せてない。このままカリキュラムをしているだけではあいつに勝てない、あいつの方が上位の才能を持っている。先天性の才覚と後天的に積み上げられたもの、僕はその両方ともあいつに劣っている。今僕にできることは日々の積み上げをあいつより多くすることだ。このままではお姉ちゃんに会えない。

そして僕は睡眠時間を削り自己研鑽の時間を増やし始めた__

 

 

 

「勝てない勝てない勝てない勝てない勝てない勝てない!!!綾小路清隆に勝てない!!」

 

もう睡眠時間を削り始めてから三年が経つんだぞ。能力を上げるためにやれることは全部やっている、それなのにあいつに勝てない。7年もあれば僕も流石に理解している。

 

「綾小路清隆は学習の天才だ」

 

同じ時間で吸収できる量が違いすぎる。下手したら僕の倍くらいのペースで学習し続けている。所詮僕はそこそこ出来る凡人でしかなかった。綾小路清隆に個人では勝てない。7年かけて僕はそう結論づけた。このままでは価値のある人間になれない。方針を変える必要がある。個人で勝てないのであれば集団で戦うしかない。

__そのためにも僕は__

 

__俺は__

 

__集団を率いる支配者になってやる__

 

__そして絶対にお姉ちゃんに会う__

 

そう決意してから俺は支配者になるための行動を始めた。

 

完全個人主義のこの部屋であいつに対抗する集団を作るのは容易ではなかった。同期の優秀な奴は総じて他者への関心が薄いのだ。感情が希薄なせいで綾小路清隆を倒す集団として機能しない。結局個人プレーに走るせいで目的が達成できない。俺かあいつに強い執着を持つ人間でないとあいつを倒すための集団になれないと考えた。

 

俺に執着させる奴を作るために脱落候補のやつを助けることにした。落ちこぼれで泣いていた雪、やる気を無くしていた士郎を上位にすることで俺への忠誠心を植え付けた。感情が希薄なやつには通じなかった帝王学の知識や人心掌握術を使うことで容易に配下にすることができた。綾小路清隆に執着が強い奴は五期の中にいた。あいつを崇拝している天沢一夏、憎しみを抱いている八神拓也。最初は相手にされなかったが俺らが集団で挑むことで、これまで見えなかった癖や弱点がわかるかもしれない__。そう説得することで同盟のような形で協力を取り付けることに成功した。

教官には集団戦闘訓練で生徒同士が戦うことでより競争を促せるのでは_などと言って綾小路と戦う時間を作ることに成功した。あいつに集団戦闘を仕掛け続けることで連携が強化され、俺らの戦闘力は上がった。しかしそもそもあいつは軍人相手の対集団戦のカリキュラムをクリアしていたから、1撃も入れられないまま1年が経った。

 

14歳の冬、たまたまあいつが足を滑らせた隙をついて1撃入れたとこで__

 

__爆発音とサイレンが鳴り響いた__

 

 

 

 

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