__施設内に爆発音とサイレンが鳴り響いた__
「チャンスだ!みんな逃げるぞ!」
そう言って僕は走り出した。襲撃者に捕まらないためだろうか、煙幕が貼られたことで教官から離れることに成功した。
「清隆を連れて逃げろ!」
やはりこの施設の人間は最高傑作であるあいつが最優先なのだろう。俺はあの4人を置いて逃げ出し、あいつが俺と逆方向に走り出したのが横目で見えた。
そして俺は1人でホワイトルームから脱出した。
「これからどうしようか・・」
一文無しでこの身1つで外に出たのだ。とりあえず人がいなそうな廃工場で寝ているといきなり腹部に強い衝撃を受けた。咄嗟に受け身をとり立ち上がると、そこには地元のヤンキー集団がいた。
「おい兄ちゃん、ここが俺らの溜まり場とわかっての所業かぁ?」
10人くらいだろうか、特に武装もしていないし勝てるな。
「あたりまえだ。雑魚がイキがってたから懲らしめにきたんだよ。」
そう言って挑発すると襲い掛かってきた。
__当然⭐️勝利__
「ということで有金いただきまーす。」
チンピラどもの財布から金を抜き取り、数万の金を得た。
「方針は決まったな。不良どもから金を回収しつつ、色んなとこを転々として一箇所に止まらないようにしよう」
金を巻き上げ、満喫で寝泊まりする。そんな生活を数ヶ月続けていた。そして身を隠せる場所を探していたところ、ちょうど良さそうなところを発見した。
「東京都高度育成高等学校か・・。入学すれば3年間外部との接触が不可能なのは都合がいいな」
しかし自分は住所不定で学生ですらない。このままでは入学できないと頭を抱えていた。
そしてある日日課のランニングをしていたところ、路地裏で杖をついた銀髪の少女が数人の女子と不良に囲まれているのを見つけた。不審に思い気配を消して近づくと、囲んでいる女子の1人が杖の少女を蹴り飛ばそうとした。
「か弱い少女を囲んで何をしてるんだ」
少女にあたる寸前で足を抑えた。
「は?あんた誰だし」
蹴ろうとした女が文句を言ってる隙に少女を背に守るようにして割り込む。
「事情は知らんが流石に見過ごせないな」
「邪魔すんじゃねえよ!」
不良が仕掛けてきたから返り討ちにすると女子生徒は逃げ出した。
「取るもん取らないとな」
俺が不良どもの財布から金を抜き取っていると、銀髪少女が話しかけてきた。
「あの、助けていただきありがとうございます。お金を抜き取っていますがそんなにお金に困っているのですか?」
「残念なことにこれで食いつないでいるのでな。見逃してくれると助かる」
そう言って金を仕舞い込んで立ち去ろうとすると、
「見たところ未成年ですよね。もしよろしければ食事をご馳走しましょうか?」
「いいのか?初対面で不良から金巻き上げている奴だが」
「ええ、恩人ですから。私は坂柳有栖です。お名前聞いてもよろしいですか?」
「橘優里だ」
名を名乗ると坂柳は目を見開き少し考え込んだ。
「橘・・?その顔立ち、もしかしてあの橘家の血縁者ですか?」
「一応な。秘密にしてほしいが直系の三男だ。」
本来ならこんなこと言わずに立ち去るべきだ。しかし目の前の少女がとんでもなくタイプの美少女であり、橘家と聞かれた嬉しさからかつい答えてしまった。
「三男はずっと海外にいると耳にしたのですが・・。聞いた以上は見過ごせません、一緒に家にきていただけませんか?」
「えっと、それは流石に悪いというか危ないというか・・」
「これでも坂柳家です。身の安全は保障します。」
このまま1人で返すのも危ないし、タダ飯だと思うことにするか。
「わかった。世話になる」
表通りに出ると目の前にリムジンが止まった。
「有栖様、連絡がありませんでしたが大丈夫でしたか?」
車から出てきた黒服の男が尋ねた。
「ええ、少し厄介ごとがあっただけで問題ありません。隣の方は恩人ですので家に招待します。身分は確かです」
「かしこまりました。主様に連絡しておきます」
そう言って坂柳がリムジンに乗りこんだので続いてリムジンに乗った。
リムジンの中で運転している黒服が坂柳に尋ねた。
「有栖様、その方とはどういった経緯で知り合ったのでしょうか」
「校外学習の帰り道に不良に絡まれていたとこを助けていただいたんです。班のメンバーと不良がグルだったので危ないところでした。」
「そうでしたか、班の方々には然るべき処置をしておきます。改めて有栖様を助けていただきありがとうございます。お名前を伺ってもよろしいですか?」
「橘優里です。有栖さんがお礼をしたいということでしたので・・」
「主様にもしっかり伝えておきます」
リムジンから降りると豪邸が広がっていた。はるか昔にいた橘家本邸に劣らないデカさだ。
「さあ優里さん、こちらへ」
豪邸へ案内され、自分が汚れていたから風呂に入るように言われた。
「こんなでかい風呂を1人でゆったりできるのなんて久しぶりだな。ここんとこずっと満喫のシャワーだったからな・・」
風呂から出ると食事処へ案内された。すでに坂柳とその父親と思しき人が座っていた。
「待たせてしまったようですみません」
「構わないよ。私は有栖の父である坂柳成守だ。娘を助けてくれてどうもありがとう」
「人として当然のことをしたまでです。」
そういうと成守さんは微笑んだ。
「君は橘家の人と聞いたが本当なのかい?」
「はい、本当です。と言っても5歳の頃からとある教育施設にいたので社交界味は出ていませんでしたが」
「その施設の名前を聞いてもいいかい?」
「
すると2人は目を見開き驚愕していた。
「ホワイトルームだと?!」
「ご存じなのですか?」
「ああ、これでも政界に身を置くのでな。出資もしている。」
すると有栖が躊躇いながら尋ねてきた。
「あの、5歳の頃からホワイトルームにいるとのことですが今何歳なのですか?」
「15歳だ。あの施設には10年近くいたことになるな」
「ホワイトルームは確か現在活動停止中のはずだが…」
成守さんが呟いていたので
「ええ、数ヶ月前に襲撃があったのに乗じて逃げ出してきました」
「そうだったのかい。君はこれからどうするつもりなんだい?」
「東京都高度育成高等学校に入学しようと考えてました。あそこは3年間外部との接触がないそうですから」
すると成守さんは
「私はそこの理事長をしていてね、有栖も来年入学予定なんだ。ちょうどいい、うちで保護して入学できるようにとりはかろう。」
なんという偶然。学校へのコネクションをこんなところで得られるとは。
「自分にとっても渡りに船です。どうか助けていただけませんか?」
「当然。有栖の恩人だしホワイトルームの子だからね。これからこの家に住むことになるけどいいかい?」
「住む家もないので大助かりです。本当にありがとうございます。」
こうして住む場所を手に入れ、高校への入学が決まった。
「これからよろしくお願いします。優里くん。」
そう言って有栖は微笑んだ。
「ああ、よろしく有栖」
3年間の身の安全を確保した出会いだった。