<<混合合宿の説明割愛>>
バスの中で混合合宿の説明を聞いていた。
「他クラスと同じグループにならなきゃいけないのが面倒だな・・今回は帆波が活躍しそうだ」
俺は小さくつぶやいた。
先生の説明が終わった後、俺と帆波はみんなの前に立つ。
「今回は男女で別れることになる。男子の指揮は俺が、女子の指揮は帆波がとる。基本的には俺たちのクラスは2、3のグループに分けて他クラスを受け入れつつ、Aクラスで過半数を占めるようにする。あとは他のクラスの戦略次第で臨機応変にいく」
「私が女子の指揮をとるよ。私たちなら集団での生活に強いから、みんなで勝とう!」
帆波の掛け声にクラスが盛り上がる。
こうして俺たちはバスを降りた。
全学年がバスを降り、グループを組むように指示された。
1年で集まったところで、葛城が声を上げる。
「俺たちBクラスはBクラス14人で1つの小グループを組む。どこかのクラスからあと1人を募集する。だがそれだけでは不満も出るだろう。これより5分だけ時間を設ける。その際に此処に加入した生徒は何があっても道連れの退学にさせないと誓おう。無論、故意に点数を下げない場合においてのみではあるが。そしてそれ以外の6人はどんな配置になっても文句は言わない方針だ」
葛城の案に龍園がすぐさま野次を入れる。
「ククッ、相変わらず引き篭もったことしか出来ねえなあ、葛城。お前は何も見えちゃいねえ。そうだろ橘」
「そうだな、だが俺は反対するつもりはないぞ」
俺は龍園に聞かれたのでそう返す。
「ククッ、Bクラスが引きこもってるんじゃあ、A、C、Dで組むしかねえよなあ」
「そうだな」
「・・・僕たちもそこに入るしかないね」
俺と平田が龍園に追従する。
「3クラスで4グループ作ったらどうなるかぁ。ククッ、Bクラスの6人が入るとこ無くなっちまうな?」
龍園が煽る。実際その通りなのだ。3クラスで60人、4グループ最大で60人とピッタシになってしまうのだ。
「な!?おい龍園、それは・・」
「ククッ、俺たちも3クラスで籠るだけだぜ。グループが決まらなかった奴らは退学だな、Bクラスが吹き飛ぶぜ」
もしこのままいけばBクラスは誰もグループを組むことができなくなり、Bクラス男子が全員退学になる。
「俺にグループを決める権利を譲るか、1人50万ptで残り6人を3クラス同盟に入ることを選ばせてやる」
龍園が葛城にふっかける。
「・・・わかった。グループ作成権をお前に譲ろう」
葛城が龍園に折れた。
「ククッ、葛城にはお荷物を背負ってもらうぜ」
龍園の言葉を聞き、俺は提案する。
「A 、C、Dは主力12人で他クラスから1人ずつの15人グループを作る。Bクラスは各クラス6人を受け入れた上で3グループ作る、なんてのはどうだ?」
「クククっ、最高だな!Bクラスに足手纏いを押し付けて俺らは点を稼ぐってわけだ。Bクラスは退学にならずに済むんだ、これくらい受け入れてもらわねえとなぁ?」
龍園は愉快そうに俺の提案に賛同する。俺と龍園がBクラスはぶりをしているから、平田も黙っている。
「こんな不平等を受け入れろっていうのか!」
葛城は怒気を込めて言うが、彼になすすべはない。
「ククッ、俺たちはBクラスをはぶいてグループを組んだっていいんだぜ?」
龍園の言葉が決め手となり、1年男子のグループが決まった。
グループが決まったところで、南雲先輩が近づいてきて声をかけてくる。
「意外に早く決まったな。丁度いいし、このまま大グループを作成してしまわないか?」
「構いませんよね。堀北先輩」
「ああ。こちらもその方が都合がいい」
堀北先輩が賛同したところで南雲先輩が提案する。
「どうスかね。ドラフト制みたいなので決めるのも面白くありませんか。1年生の小グループの代表者6人でじゃんけんして指名順を決める。勝った順に2年と3年の小グループを指名して行けば、大グループの完成です。公平かつ短時間で決まりますよ」
「1年生の持つ情報は少ない。公平性に欠けていると思われる」
「公平に決める事なんて不可能です。結局持っている情報量には差があるんですから。1年はどうだ。何か意見があるなら言ってくれ」
南雲先輩の言葉に1年は反対の声をあげない。
「それじゃあ俺たちは待ってるから。お前たちで選んでくれ」
1年のグループ代表は俺、平田、龍園、葛城、的場、橋本だった。
じゃんけんで勝った俺は堀北先輩がいるところを選ぶ。龍園は南雲先輩のところを選んだようだ。
大グループ作成が終わったところで、南雲先輩が堀北先輩に声をかける。
「堀北先輩。偶然にも別々の大グループになったことですし、ここは一つ勝負をしませんか」
「いい加減にしろ。俺とお前に関係ない者が大勢の試験で勝負を受けるつもりはない」
堀北先輩は勝負に乗らない。
「俺と堀北先輩の1対1です。あくまでも元生徒会長と現生徒会長の個人的な戦いを希望してるだけです。あなたはもうすぐ卒業していなくなってしまう。その前にあなたを超えることが出来たのかどうか、それを試したいんスよ」
「ふむ・・他を巻き込まないのであれば考えてやる」
堀北先輩は他への迷惑を考えているようだ。
「巻き込むな・・ですか。相手グループの足を引っ張るのも一つの戦略だと思うんすけど」
「それはこの試験の本質ではない。己のグループを高めることでのみ勝負になる」
「ってことは、俺のグループと堀北先輩のグループの勝負なら受けてくれるんすね?」
心なしか嬉しそうに南雲先輩は言う。
「他のグループへの関与した時点で無効だぞ」
「勝負を受けてくれるんならこちらも飲みますよ・・。グループの平均点勝負でいいっすか?」
「・・ああ」
2人が勝負することが決まったようだ。
堀北先輩との話を終えた南雲先輩は俺の方にきた。
「よう、優里。お前にも面白いものを見せてやるよ」
「そうですか、楽しみにしていますね」
こうして男子の大グループが決定した。
昼食の時間、俺は帆波と合流する。
「女子グループの方はどうだった?」
「坂柳さんがつっかかってきたけど、1年は大きな問題はなかったよ。あ、茜さんと同じ大グループになったよ。でも茜さんのグループがAクラス以外で組まれてたのが気になったな・・・」
お姉ちゃんが1人になる、、、何らかの思惑が動いてるかもしれないな。
「お姉ちゃんの様子を見てもらってもいい?」
「もちろんだよ!」
夜、消灯時間前に2、3年生が部屋に来る。
「1週間の朝飯当番だが、各学年で均等に担当するので構わないか?」
「はい、それで問題ありませんよ」
俺は先輩の意見に同意する。
翌日から順調にカリキュラムをこなしていく。
俺のグループはAクラスで固めているため、特に問題はない。
途中に別グループの龍園に絡まれたが。
「ククッ、今回はバケモンが大人しいな」
「特別やることもないしな。集団でカリキュラムをこなすだけだ」
昼食の時に帆波にお姉ちゃんの様子を聞く。
「茜さんはグループの人から不自然なくらいに責められてたよ、、正直見てられないよ」
「それは南雲先輩の策略の可能性がある。男子の方で堀北先輩と勝負することになっているからな。帆波はお姉ちゃんが責められてるのを見つけたら、生徒会として見過ごせないって言って止めてほしい」
「わかったよ」
「手が足りなかったら有栖を使ってほしい。舌戦で有栖に勝てるやつはそうそういないし。」
「そうだね、、必要だったら坂柳さんにもお願いするよ」
夕食後、俺は星之宮先生のもとを訪ねる。
「先生にお願いしたいことがあります。先生は保健医だからある程度自由に動けますよね?」
俺は先生にポイントを払い、作戦を伝える。
「わかったよ。これは教師として見過ごせない事態になるからね、任せてよ」
「ありがとうございます。明日は様子見に徹してください。動くのは明後日からです」
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side帆波
3日目、茜さんのグループを見ると茜さんは滅茶苦茶ないちゃもんを付けられている。
「橘さんの指示のせいで全然上手くいってないんだけど!」
「私はただ、、、」
茜さんはいちゃもんに対して反論せず俯いてる。
「橘先輩はおかしなこと言ってませんでしたよ。これ以上の誹謗中傷は生徒会として見過ごせません」
私の言葉に3年生は立ち去っていく。
「茜さん大丈夫ですか。私は茜さんの味方ですよ、堀北先輩に何とかして貰いましょう」
「ありがとうございます、、でも大丈夫ですよ、堀北くんに迷惑はかけられません」
茜さんは1人で抱えようとしている。私は3年生を何とかすることを決めた。
私は協力者を作るべく、隙間時間に坂柳さんに声をかける。
「坂柳さん、お願いしたいことがあるの」
「何でしょうか」
「この試験では橘先輩が狙われているの。何とかするために協力してほしいの」
「何故私がしなければならないのでしょうか?」
「もちろん坂柳さんにメリットがあるよ。1つは優里くんの大事な人を守ることで恩を売れること。2つ目は私が坂柳さんに優里くんとのデートをセッティングする。坂柳さんは優里くんのことが好きでしょ?」
そう簡単に頷かない坂柳さんに私はメリットを提示する。
「・・・いいでしょう、乗せられるのは癪ですが協力してあげましょう。優里くんを取られても文句言わないでくださいね」
「ありがとう。それと私と優里くんの繋がりは崩れないと信じてるから問題ないよ」
私は消灯時間前にユキちゃんに声をかける。
「ユキちゃん、手伝ってほしいことがあるんだ。消灯から30分後に外に出るよ」
「私に拒否権はないんでしょ・・」
私だってこの1年間優里くんをそばで支え続けてきたんだ。優里くんがやりたいことも何となくわかる。
私は消灯後ユキちゃんと外に抜け出した。
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消灯から30分後、俺は外に抜け出して星之宮先生と合流する。
「先生、協力ありがとうございます。ボイスレコーダーは大丈夫ですか」
「当然よ。佐枝ちゃんの弱みを握るために常に持ち歩いているもの」
相変わらず私情を挟みすぎる先生だが今回は役にたつ。
しばらくして帆波と姫野がくる。
「姫野を連れてきてくれてありがとう。よく俺がやろうとしていることがわかったな」
「優里くんは表だって動くことと影で動くことを両方同時にやるからね。ユキちゃんが適任だと思って」
流石帆波だ。
「その通りだ。姫野にやってほしいことがある。三年生の行動を影で監視してほしい。そして橘先輩を貶める発言をこのボイスレコーダーで録音してくれ。もちろん報酬は用意する」
「わかったわよ・・それだけでいい?」
「姫野はこれから体調不良の生徒として動いてもらう。そしてカリキュラム中は先生に付き添って貰って過ごすんだ。これはグループに先生を追加することで3年の動きを牽制する、先生お願いしますね」
「もちろんよ。明日の昼食の時に私に訴えてちょうだい。そこからはグループに付き添うわよ」
「3年を妨害していればフラストレーションが溜まるはずだ。帆波はみんなを使って常に目を光らせてほしい」
「わかったよ」
「試験前日か当日に3年がヤケになって動くかもしれない。先生はことが起こったらお願いしますね」
これで解散する。
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side帆波
「星之宮先生、昨晩から姫野さんの体調が著しく悪いです。万が一のためにこれから先はグループに同行してもらえないでしょうか」
私は4日目の昼食時に大グループ全員がいるところで先生に声をかける。
「何言ってるのよ!体調不良は自己責任でしょ。先生が個人に付き添うなんて聞いたことないわよ!」
案の定3年生が突っかかってくる。
「ポイントで先生の行動を買います。それに橘先輩も体調が良くないように見えます。グループ内に体調不良者が2人もいるので、先生にお願いすることはおかしくないはずです」
私は3年生に反論する。
「ポイントで購入することはできるよ。でも他のグループから怪我人や体調不良者が出た場合には付き添えなくなるからね」
「もちろんです。よろしくお願いします」
先生の同行を取り付けた。先輩たちは動揺してるし、不満そうだ。
「茜さんは絶対に守るから。優里くんのためなら私は何だってやるよ」
私はそう呟いて昼食を終えた
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4日目の深夜、俺は気配を消して外に出ていた。先生の同行があった以上、南雲先輩が何かしら動くと踏んでいたからだ。案の定南雲先輩は外に出て女子生徒と密会していた。俺は気配を消して近づき、動画撮影を始める。
「ちょっとどうするのよ。先生がグループに同行するなんて聞いてないんだけど」
「問題ない、どうせ生理かなんかだろう。こっちで負傷者を作って保健医を引き離す。先生がいなくなったら橘先輩の妨害を再開するんだ」
南雲先輩は自信満々に対策を伝える。だがお姉ちゃんの妨害を指示した証拠を手に入れた以上、彼に先はない。
「わかったわよ。ついでに1年の一之瀬も何とかしてくれない?いちいち注意してきてうざいんだけど」
「帆波は正義感が強いからな。2年を動かすから帆波がグループの輪を乱しているように持っていけ。最悪の場合、2人が試験を受けられないようにしてしまえばいい。多少の暴力は俺がどうにかできる」
今度は帆波を中傷する気か。だが帆波はその程度で負けないはずだ。十分な証拠を手に入れた俺はその場から立ち去った。
お姉ちゃんと帆波を狙ったことは絶対に許さない。失墜させてやる。
次の日、男子全員で山道10キロ走があった。怪我人が出るにはうってつけだ。
「隆二、柴田。俺は別行動をする。グループの指揮は頼んだ」
「わかった。大丈夫だとは思うがリタイアはしないでくれよ」
隆二は察したのか俺を送り出す。俺は別行動してスタートから南雲先輩の跡をつける。南雲先輩は小グループを率いてコースからずれた人気のない方へ移動していった。
南雲先輩が足を止めたので俺は隠れて動画の撮影を始める。
「お前ら、今から2人怪我をしてリタイアしろ。これまでの点数から2人くらいなら問題ない。いくぞ」
南雲先輩は2人の生徒を突き飛ばす。何回かやって生徒は出血して服も傷だらけになった。
「これでリタイアして保健医のところへ向かえ」
証拠を手に入れた俺はその場を立ち去って、全力でゴールへ走った。これで男子の動きは終わりだろう。あとは最後の仕上げをするだけだ。
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side帆波
「星の宮先生、男子生徒で怪我人が出ました。傷が多いので治療をお願いします」
「わかりました。姫野さん、橘さん、私は保健室に向かいます。何かあったらきてください」
他の先生に言われて先生はグループから離れた。これも策略なのかもしれない。
先生が離れてからまた茜さんへの過剰な中傷が始まった。
私が止めに入ると今度は2年生が私に中傷を始めた。
「一之瀬さんはそんなに3年生がメンバーに注意しているのを止めてるけど、試験をクリアする気あるの?先輩方は橘先輩に改善を求めているだけよ。これ以上は一之瀬さんが試験の妨害をしているように思えてこないかしら」
3年生も便乗して私を責め立てる。
「帆波ちゃんは注意をしただけじゃないですか!妨害なんてするはずありません!!」
千尋ちゃんが大声で私を庇う。ごめんね、先輩の妨害は事実なんだ。
これ以上は無理かもしれない、私はそう判断する。
「申し訳ありませんでした。生徒会としていじめに繋がりそうなことを未然に防ごうとしただけで、妨害する意思はありません。先輩方が橘先輩を善意で注意していることがわかったので、これ以上私が言うことはありません」
「生徒会としての行動はわかるけど、私たちだって退学がかかっていて必死なの。これ以上はやめてほしいわ」
「わかりました。申し訳ありませんでした。
私の行動を制限できたことに満足した3年生は引き下がる。
これまでの私の注意と先生の同行が無くなったんだ、これからより一層茜さんを責め立てるに違いない。何とかしなくちゃ・・・
夕食後、私は坂柳さんに接触する。
「坂柳さん、知恵を貸してほしい」
「ええ、協力すると言いましたからね。状況を教えてください」
私は妨害して先生を使ったこと、これから苛烈になることと優里くんも動いていることを伝える。
「なるほど、、、おそらく優里くんは南雲会長を陥れる証拠を集めているはずです。彼は敵対者には容赦しませんから。そうすると女子側では、、、いいことを思いつきました。一之瀬さんの負担が大きいですが」
坂柳さんは策を思いついたようだ。
「教えてほしい。私は優里くんのためなら何だってやるよ」
「わかりました。簡単に言うと3年生を煽って手を出させるのです。暴力事件を起こして失格にさせます。小グループを失格にさせます」
「、、それだと茜さんの退学回避に繋がらなくない?グループ全員退学になったらどうするの」
「橘先輩と一之瀬さんを被害者にするのです。橘先輩の立場を被害者にすることで他の人と区別させます。橘先輩が優秀な成績を残していれば、嫉妬による事件という構図にできます」
「確かに茜さんへの中傷の不当性は何度も訴えてるし、数人の先生にも訴えているよ」
「加害者が被害者を道連れにする、こんなことを証拠があってできるはずがありませんから。それにこれは南雲会長潰しの一手にもなります。仕掛けるなら明日の夜か試験当日の朝です」
こればっかりは私1人では決められない。
「今日の夜も優里くんに会うからそれで決めるよ」
「ええ。煽る時には私も一緒に煽りますから」
そう言って坂柳さんは嗜虐的な笑みを浮かべる。彼女の煽りは相当ひどくなるだろう。
消灯後、私は優里くんと密会して坂柳さんの案を伝える。
「有栖の策か、、、正直かなり効果的な一手だね。俺もそれは考えていたけど、帆波に危害が加わるからしないでいたんだ」
「私のことを思ってくれるのは嬉しいけど、私は優里くんのためなら何だってするよ。私たちは2人で背負うんだよ」
私の言葉に優里くんは目を見開く。
「そうだね、、、今回で南雲先輩を失墜させる。有栖の策を実行しよう。決行は試験当日で先生を巻き込もう。朝食と試験開始の間は先生の目もないから乗ってきやすいはず、それに男女分かれるから南雲先輩も把握できない。それで結果発表の時に全部暴露しよう」
「優里くんの敵は私の敵だよ。私たちは2人で何もかもを背負うんだもん」
優里くんの敵には容赦しない、私は改めて決意した。
有栖「私の方が優里くんの考えを理解していますから」
帆波「いや、私の方が優里くんのことわかっているよ。心も体もね」
有栖「(−_−#)ピキピキ」