有栖の家に居候を始めてから半年。坂柳家には頭が上がらないほどお世話になった。学校に通っていなかったが、しっかりとした戸籍があったからホームスタディとして処理してくれた。他にも読書に参考書、鍛錬する場所まで提供してくれたからホワイトルーム時代に感覚も戻ってきた。本を読み漁ることで集団を支配する術もなんとなく見えてきた。
「優里くん、今日もチェスをしましょう」
最近の悩みといえば有栖からチェスを毎日のように挑まれることだ。有栖は天才だ。俺が何回か勝ってもすぐに対応されてしまう。しばらく負け続けて俺が学習して有栖に勝つと、またより一層攻めが苛烈になって結局俺が負けることになる。
「__この鬼畜ロリめ」
「何か言いましたか?」
有栖の氷点下の視線が突き刺さる。
「イエ、マリモォ」
「そうですよね、あの橘家の三男が鬼畜ロリなんて言うはずありませんもんね。__今日は覚悟してください」
有栖さん、その笑顔は怖いっす。
__有栖に五連敗し、最後にはキング以外の駒を取られて嬲られた。
やっぱりドS鬼畜ロリじゃないか!
東京都高度育成高等学校の入試も終わり、入学まであと少しとなった。
「優里くん、入学試験は満点ですか?」
「事故がなければ満点だな」
「私もです。あれくらいは簡単でしたよね」
そう有栖と話していると成守さんが俺に話しかけてきた。
「優里くん、入学すると3年間外部との連絡が取れなくなるけど、本当に橘家に連絡しなくていいのかい?」
心配そうに聞いてきたので
「いいんですあんな家。まあ茜お姉ちゃんには会いたかったですけどね。」
「そうかい、、(橘茜が在籍していることは内緒にしておこう。サプライズだね)」
「まあ茜お姉ちゃんに会うために価値ある人間にならないといけないので。5年後くらいには会えるように頑張りたいですね」
入学式当日、学園へ向かうバスがあるとのことなのでバス停へ向かおうとする。
「どこへ行くのですか優里くん。あなたもリムジンですよ」
「え、普通にバスがいいんだけど」
「ダメです」
有栖はそう言うと杖で俺の足の小指を攻撃する。
「痛ぁ、わかったわかった、わかりました有栖様!」
「わかればいいんです」
リムジンに乗り込み学園へ向かい出した。
元々5歳までの記憶があり、茜お姉ちゃんのために、綾小路清隆を倒すために10年間生き抜いてきた。感情の起伏はこの1年もあり人並みになっただろう。しかし1度歪んでしまったものは元には戻らない。
__価値ある集団を支配することで自らの価値を証明する__
「価値」と「支配」に執着する橘優里は実力主義の学校でどんな爪痕を残すのか。
「支配して己の価値を証明してやる__」