ようこそ支配者がゆく教室へ   作:藤村凛

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説得。そして心境の変化へ

4月の第3週、発言力強化の策として小テストの過去問配布をする予定だ。抜き打ち小テストに備えた功績でクラス内の地位も向上できるはずだ。

朝のHRが終わり星之宮先生が教室から出た後に教壇に立つ。

「みんな、少しいいかな。先輩から聞いたんだけど月末に小テストがあるらしいんだ。その過去問を貰ったから是非使ってほしい。一之瀬、配るの手伝ってもらってもいいか。それと出来れば解き直しもするようにお願いしてほしい」

最後の頼みごとは一之瀬にだけ聞こえるようにして頼み込んだ。当然彼女は了承し、

「みんな、せっかく橘くんが持ってきてくれた過去問だから有効に使おう。私も頑張るから、みんなも解き直しをして過去問を解けるようにしよう!」

一之瀬がみんなに呼びかけると賛同の声が上がる。やはり彼女は人を惹きつける。

 

昼休み、席に座っていると一之瀬から話しかけられる。

「橘くん、過去問用意してくれてありがとう。今日の放課後空いてる?相談したいことがあるんだけど、、」

一之瀬からの相談事か。俺も話したいことがあったからちょうどいい。

「ああ、空いている。相談事の前に一之瀬と神崎の2人に話したいことがあるから、先にそっちを済ませてからでもいいか?」

「うん、もちろんだよ。放課後よろしくね」

一之瀬は女子のグループの方に戻って行った。

 

「というわけで神崎も放課後空けておいてくれ」

隣にいる神崎にも声をかける。

「なぜ俺は事後承諾なんだ・・まあいい、それより飯行くぞ」

 

 

放課後、一之瀬と神崎の2人を集める。

「2人は上級生の教室を見に行ったことはあるか?」

「俺はないな」

「私は近くは通ったけどちゃんとは見てないかも」

2人とも気づいてなさそうだ。

「それじゃあ上級生のフロアに行くぞ。あまり長居できないからよく観察してほしい」

 

上級生のフロアを回った後に2人に声をかける。

「言いたいことは何となくわかったか。人に聞かれたくないから俺の部屋に行くぞ」

2人を俺の部屋に連れて行く。

 

「一之瀬、上級生の教室を見て気づいたことはあるか」

「座席の数が少なかったね」

「そうだ、なんでだと思う」

一之瀬に再度尋ねると彼女は口ごもる。

 

「退学したから机の数が少ないんじゃないか?」

神崎が冷静に言い、続けて

「すべてのクラスが40人を下回っているし、数も均等ではないだろう。であれば各クラスから退学者が出たと結論づけるしかないのではないか」

神崎はちゃんと現実が見えているな。

 

「でも、上級生の元々の人数が少なかったんじゃないかな、、」

一之瀬は元気のない声で言う。

「その可能性もゼロではないが、それは今日の本題から逸れる」

一之瀬もわかってはいるのだろう。それでも上級生の数多くが退学している可能性を考え、元気をなくしている。

やはり彼女は支配者には向いてない。善良すぎる。

そう考えていると神崎から声がかかる。

「それで橘は俺たち2人に何の話をするんだ」

やっと本題へ入れる。

 

「誰がBクラスを率いるかの話だ。Bクラスのリーダーはこの3人の中から選ぶしかないから2人を集めた」

 

2人は顔をを顰める。

「リーダーと言っても今学級委員長をやっている一之瀬じゃないのか」

「現時点ではな。俺は今後の話をしている。」

すると一之瀬が

「私は向いてないってこと・・?」

と自信なさそうに聞いてきた。

 

ここからの説得が1つの正念場だ。彼女にはリーダーではなく参謀やサブリーダーになってほしい。

「いいや、一之瀬には人を惹きつける魅力がある、善良な人だ。争いがないのであれば一之瀬ほどのリーダーはいない」

そう一之瀬に力強く言う。決して彼女を否定したいわけではない。

「その言い方だとこれから争いが起こるとでも言うのか?」

神崎は怪訝な顔をしている。

 

「それは何とも言えない、だが__、」

一之瀬の目を真っ直ぐ見て、覚悟を問うように問いかける

 

「他者を攻撃し、勝つための手段を選ばず、仲間を見捨てることもあるかもしれない。それが戦い抜くリーダーだ。お前にその覚悟があるか。みんな仲良くじゃない、勝つために何でもするんだ。」

 

「わ、私は・・」

 

「それでも一之瀬がリーダーになるなら、俺は全力で支える。もし争いのリーダーになれないと考えたとしても、それは逃げじゃない。適材適所だ。俺がリーダーになる。」

 

一之瀬は何も返さない。いつも輝いている瞳には不安と葛藤が入り混じって影をさす。

 

「まあ、今すぐって話じゃない。来るべきときが来たら決断してほしい。その選択を尊重する。」

 

言いたいことは全部いった。どうなるかは一之瀬次第だ。有栖のように派閥争いなんてしたら勝ち目がないからな。リーダーとして機能する前に説得する必要があった。

しばらく沈黙が続いた。

 

沈黙に耐えきれなくなったので神崎に問う。

「神崎はさっきの話を聞いてどう思った?」

「橘の意見に反対するところが見つからない、って言うのが正直なところだな」

「そうだよね・・」

一之瀬は弱気に反応する。

 

「俺はリーダーの器じゃない。だからこそどっちがリーダーになっても俺は支えよう。一之瀬の相談もあるのだろう、あとは2人で話し合ってほしい。また明日」

そう言って神崎は部屋から出ていき、一之瀬と2人になった。

弱気の一之瀬をどうにかしよう。

「暗い空気になっちゃったし、お茶入れる」

そう言って俺はこの空気を変えるべく立ち上がった。

 

 

「どう、少し落ち着いたか?」

「にゃはは、、、少し落ち着いたかな。ありがとう」

そう言って一之瀬はお菓子に手を伸ばす。

「とりあえず一之瀬の相談を聞こうか」

そう言うと、一之瀬は話し始めた。

 

「私、中学で生徒会長やってたからこの高校でも生徒会に入ろうと思ってたんだ。それでも面接ですぐ不合格と言われちゃってね。そしたら橘先輩が弟が生徒会入ったから相談すると良いって言ってくれたんだ」

 

__お姉ちゃんに頼られた!(シスコン)

 

「なるほどね。ちなみに生徒会の中に憧れている人はいるのか?」

「南雲先輩かな、BからAに上がって今もAクラスみたいだし。」

 

そりゃあこんな純粋な少女が南雲先輩を慕っていたら、生徒会には絶対入れないな。

「解決案を出す前にだ。生徒会に派閥があるのは知ってるか?」

一之瀬はキョトンとしている。

「堀北派と南雲派に分かれているんだ。生徒会の1年が南雲派にならないようにするために、堀北先輩は不合格にしたんだ」

 

「生徒会に派閥があるなんて知らなかった、、じゃあ私はこのままだと生徒会に入れないってこと?」

「会長が根負けするまで一之瀬が頼み込んだりしない限りはな」

「にゃはは、流石にそんなことはしないよ!」

 

一之瀬に笑顔が戻る。それを見てホッとする。俺は一之瀬に笑顔でいてほしいらしい、、

「生徒会に入るには、2つに1つだ。堀北派と南雲派を選ぶ。そうすれば一之瀬なら入れる。俺としては堀北派を薦める」

「どうして??」

「南雲先輩の噂ややろうとしていることを聞いたことはないのか?」

「うーーん」

 

そう言って一之瀬は思い出そうと頭を揺らしてる。

「あ!2年生全体を支配してるってのは聞いたことある。」

「そうだな。それと噂では女子をもののように扱っているらしい。先輩に会ったことあるが、嘘とは思えないんだ。

それに南雲先輩がやろうとしていることは一之瀬に合わないと思うぞ」

 

「どういうこと?」

「徹底した実力主義にするとさ。要は今以上に退学者を増やすらしい」

「にゃにゃ?!」

 

一之瀬は猫みたいな反応をする。

「その方針だとしたら私には合わないね・・」

「そういうことだ」

「それなら納得だね。南雲派にならない、ってすれば良いんだもんね。相談に乗ってくれてありがとう」

そう言って一之瀬は帰る支度をしようとする。

 

「もう良い時間だし、夜ご飯ここで食べてかないか?」

 

__俺は何を言ってるんだろうか。一之瀬なんてただのクラスメイトとしか思っていない。何ならリーダーの座を引き摺り下ろそうとしていたはずである

 

「__くん?」

 

__一之瀬の光に影が差しているのを見たくない、そう思ってしまった。おかしい、あれだけ利用していたはずなのに

 

「橘くん!」

 

目の前に一之瀬の顔がある。

「たうわっ!」

動揺して思わず後ずさる。

「急に返事がなくなったけどどうしたの? あ、ご飯は相談のお礼に私が作るよ」

「お、おう」

「じゃあ待てっててねー」

一之瀬はキッチンに向かっていった。




突然の一之瀬フラグ。
いざ一之瀬の笑顔が曇るのを見ると、主人公は笑顔でいてほしいと思う。
一之瀬の笑顔は茜お姉ちゃんの笑顔と重なるからなんですねー

最初は有栖ヒロインの一之瀬曇らせだったのに、、流れ変わったな
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