2000年代初頭、日本で謎の連続失踪事件が起こった。
当時は他国による拉致なども考えられたが、その数年後、世界中を震撼させる大事件が起きる。
人の形をしていながら人ではない化物、通称『怪人』が現れたのである。
それは後に『異体』と呼ばれる者たちの第1号であった。
「ちくしょう、やっとあそこから逃げられたってのに今度はエージェントどもに追われるのか」
「しょうがないだろ、俺たちは異体...第2世代の連中が散々暴れまわったせいで俺たちにもすげぇヘイトが向いてんだから」
郊外の森の中を逃げ回る2人の男、彼らもまた改造人間『異体』その第1世代である。
彼らを拉致し、改造した組織『鉄血連盟』はほんの数刻前に壊滅した。
『対異体特化戦闘員エージェント』彼らによる拠点への一斉攻撃により組織は完全に壊滅、そかにいた異体たちもまた全員解き放たれたが、エージェントたちの矛先は異体たちにも向いた。
突然のことで抵抗すらできない異体たちを一方的に殺し始めたのである。
この2人もまたエージェントによる襲撃を受けたが、何とか撃退しここまで逃げて来たのだ。
「流石にここまで来ればエージェントの連中も追ってこないだろう、君はこの後どうする?」
「俺は...妹に会いに行く、連盟のクソどもに拉致されてから3年以上たってる。きっとあの子も大きくなって今ごろ高校生くらいになっているだろうから、もう一度顔を見ておきたいんだ」
一応自己紹介をしておこう、俺の名は狭間 翔、さっきから文句と質問でうるせえのが蔵田 透、俺らは2人とも3年前に鉄血連盟に拉致され、無理矢理改造手術を受けさせられた挙げ句に化物として戦うことを強制された者だ。
3年前、俺は妹に頼まれてアイツの好物の限定アイスを買いに町へ出かけていた。
まぁ、その帰りに俺たちを改造した鉄血連盟に拉致されてしまったってわけだ。
そこからは地獄のような毎日だったよ。
ここはどこだ?、俺の体どうなって?。
「被験体A049の改造を始める。まずは頭部を切開し脳の改造から始めよう」
おい、俺の体に何をする。
「A049、君は今から最強の改造人間に生まれ変わるんだ。光栄に思いたまえ?、このベースに適合したのは君が初めてだ」
やめろ、やめてくれ、俺の体をいじらないでくれ。
「ん?何やら脳内電気信号が高まっているな、もしや意識があるのか?。可哀想に、これからの手術はかなり大規模なものだからねぇ、意識を持ったまま受けるのはさぞかし辛かろう」
頼む、やめてくれ。
「だが、それを乗り越えてこそ私が選んだ最強の素体、故に手術はこのまま実行する」
嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
「さぁ、始めようか」
誰か、助けてくれ。
その後のことは詳しく覚えていない、気づいた時にはもう手術は終わっていて、俺は化物になっていた。
「そろそろ町につく、あんたはどうすんだ蔵田さん」
「私はまず役所に行くよ、多分死亡扱いにされてるかもしれないけど何とか社会復帰してまた普通の生活に戻りたいからね」
俺もこの後のことを考えないといけないな、妹に会ってそれからどうする?。
俺たちはもう人間じゃない、これからもエージェントどもは俺たちを追い続けるだろう、もしそれで妹が傷ついたら、俺は人間を憎まずにいられるだろうか?。
「不安みたいだね狭間君」
「あんたは不安じゃないのか?」
蔵田さんは鉄血連盟に捕まっていた時からの付き合いだが、妙にふわっとしていて掴み所のない人で、周りの空気をいつも明るくしてくれていた。
「不安はないとはいえない、でもそれ以上に...自由になれたことが嬉しいんだ」
「...蔵田さん、あんたやっぱり面白い人だよ」
この人のおかげで、俺や他の皆は正気を失わずに今日まで生きてこれた。
だからこの人には是非とも生き残って欲しいものだ。
「それじゃこの辺で別行動を取りましょう、2人で固まっていたらエージェントに見つかりやすくなってしまう」
「そうだね、それじゃこの辺でお別れだ...また会おう狭間君」
そう言って蔵田さんは去っていった。
「さて、そんじゃ...」
あぁやっぱり1人になるのを待ってたな。
「出てこいよ、俺を狩るために1人になるのをずっと待ってたんだろ?、エージェントさんよぉ」
建物の影から人影らしきものが姿を表し此方を見据えていた。
「ステルスモードの俺を探し当てるとは、やはり最強の改造ベースは伊達じゃないということか」
「風の流れが変だったからな、どうせすぐ後ろにいるんだろうと思っていたよ」
エージェント、俺たち異体を効率良く殺すために政府が召集した機密部隊だが、それはあくまで表向きの話。
その実態は...。
「んじゃさくっと殺しますか」
「お前ら、本当に狂ってるよ」
男は腰に装着されていた装飾品のようなものに手首に巻かれた腕輪のようなものを翳しとある言葉を囁く。
『着鎧...!』
その言葉とともに男の体には生物を模した機械的な鎧のようなものが装着される。
「対異体用殲滅外装A.V.A、俺たち異体を殺して得た因子を元に作成された狂気の発明、そんなろくでもないものよく着れたもんだな」
そう、こいつらは俺たちの仲間を殺して得た因子を使った装備を見に纏ったクソやろうども、いわば政府側の改造人間とでも言うべき存在なんだ
「狂気?、お前たちを殺せればなんでも良いさ、じゃあ...死のっか」
悪いが俺もそう簡単にやられるつもりはない。
「お前らが俺たちを殺すための力を持つように、俺たちもお前らを殺す力を持ってるんだよ」
俺は全身を力を込め叫んだ。
『異鎧転換!』
そう叫んだ俺の体がおぞましい音をたてながら変化を始める。
全身の皮が脈打ちながら形を変え、まるで虫の外骨格のような見た目になり、頭はバキバキと音を気色悪い音を出しながら昆虫のそれへ変化する。
「やはり、貴様が研究所のデータベースにあった被験体A049『デッドフライ』か」
『俺はお前らのことも人間とは思ってない、どうせ俺らと同じ人でなしの化物なんだ。だから...お前らなら遠慮なく殺せる』』
被験体A049、改造ベース『オニヤンマ』それが今の俺だ。