転生したら怪人だったので、見込みのある魔法少女を片っ端から悪堕ちさせる。   作:悪堕ちが性癖の一般成人男性

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悪堕ちしたら、卑劣な手も使う。

 

「奴隷の人達、そのままにして大丈夫なの?」

 

「問題ない。俺の能力を用いて記憶の改竄を行ったし、通報されるのを防ぐために全員気絶させた。それに、もう自由の身なんだから、目が覚めた後は自分達でなんとかするだろ。その気になれば、国に保護を求めることも出来るからなァ」

 

「そっか」

 

 悪人の死体まみれの洋館を後にするために、そそくさと車に乗り込む。

 人の気配を感じたのでトランクを覗いてみると、水色の髪を三つ編みにした少女。

 オークションで取引されていた魔法少女が、手足と口元を縛られた状態で横たわっていた。

 

「んー、んー!!!」

 

 魔法少女は、大きな呻き声をあげた。

 心なしか、私の姿を見て怯えているように感じるのは勘違いであろうか。

 涙目になっており、体も震えている。

 

 そういえば。

 怪人は彼女をターゲットと呼んでいたが、どうして捕まえようとしていたのだろうか。

 もしも、悪辣非道な理由だとしたら。

 その時は、制裁を行わなければ。

 ぐるりと振り返った私は、運転席に座る彼の顔をじっと見つめる。

 

「心配しなくても大丈夫です。お前様が思ってるような真似はしませんよ。煮たり焼いたり殺したりもしません」

 

「……何故、敬語」

 

「怖ぇんだよォ! お前、顔が!」

 

「…………顔が怖いっていうのやめて。あと、なんであの子を捕まえようとしたの?」

 

「別にこの子が欲しかった訳じゃねェ。俺達は少しでも多くの魔法少女を捕まえたいんだよ。そうする事で強くなるために……まぁ、詳細はアジトに着いてから説明する」

 

 長身痩躯なギョロ目の男ではなく、いつもの浅黒くて筋肉質な姿。

 やはり、怪人はこの姿と粗暴な口調が、一番似合っていた。

 ひょうきんな性格で、極偶に真面目になる。

 そんな彼には、これまで幾度となく助けられ、進むべき道を教えられた。

 そのため、魔法少女の女の子に酷いことはしないと信じたい。

 彼や総統は、他の悪の組織とは違って、非道な行いをしないと信じたいのだ。

 ここだけの話、なんだかんだで私は……心を許しつつあったから。

 我ながら、チョロい事この上ないけれど。

 

「はーい。そこの厳ついお兄さん、ちょっと止まってやー」

 

 洋館を出発して、30分。

 人気のない田舎道で、不意に呼び止められる。

 私達が乗っている車の前に立ちはだかったのは、二人組の少女。

 癖のある紫色の髪を持つオドオドしている女の子と、オレンジ色の長い髪と鋭い三白眼が印象に残る勝気そうな女の子。

 彼女らはそれぞれ、髪色と同じ色が基調となっているフリルの服を身に纏っており……魔法少女である事は明白だった。

 

 虐殺する前に結界を張っていたので、怪人や悪人共が外部に助けを求めることは不可能。

 それは全てが終わった後に、一人残らず気絶させた奴隷の人達も同様で。

 洋館での殺傷沙汰の犯人が私達である事がバレないように、事後処理だってキチンと行った。

 ……それなのに、何故?

 郊外の土地で虐殺が行われた事態すら知らない筈なのに、どうしてここにいるのだろうか。

 

「んー、んーー!!!」

 

「うるさい。黙って」

 

「……………」

 

 だが、そんな事はどうでもいい。

 彼女らが虐殺事件の存在を知らないとしても、縛られている魔法少女を見られたら終わり。

 弁明する余地すら与えられず、速攻で拘束されてしまうだろう。

 魔法少女の誘拐は、問答無用で死罪。

 私たち二人揃って、絞首刑だ。

 それだけは避けなくてはならない。

 そう考えた私が、怪人の方を向くと……。

 

「ククク……絶望的な状況になってきたなァ。どうするよ、元魔法少女さん」

 

 いつもと変わらない笑顔を見せていた。

 この事態が予想通りだとでも言いたげに。

 ……なるほど。

 これも、彼が意図して起こした事態なのか。

 奴隷市場に連れて行き、悪は自由であると語って、悪人や怪人を皆殺しにさせたように。

 元魔法少女である私と、現役の魔法少女を戦わせて……悪の道に進む覚悟が、本当にあるのかどうかを試そうという魂胆なのだろう。

 普段の姿を見ると、怪人は頭空っぽな厨二病にしか見えない。

 けれども、その実は道化を演じているだけ。

 馬鹿そうな言動の裏で、絶え間なく思考を巡らせているに違いない。

 だからこそ、私を悪の道へと導き、為すべき大義を指し示すことが出来たのだ。

 

 しかし、侮ってもらっては困る。

 私は、とっくの昔に腹を括っているのだから。

 己の理想を実現するためならば、魔法少女と戦うなんて、どうと言う事はない。

 既に、悪へと堕ちている事を。

 私の覚悟を疑う怪人さんに……とくと見せつけてあげることにする。

 

 

 

 

 

 全くもって、想定外だった。

 まさか……こんな辺鄙な場所で、魔法少女が現れるだなんて!!!

 運がないにも程があるだろ!!!

 というか、まだ朝の6時だぞ!!!

 子供は朝ごはん食ってる時間じゃねぇか!!!

 こんな時間から、魔法少女としての活動に励むなんて偉すぎる!!!

 パトロールなんて地味な仕事は、本来警察がやるもんなのに!!!

 

 しばらくの間、警察や魔法少女協会に洋館での虐殺が勘付かれないよう事後処理を行った。

 安全に帰宅するため、魔法少女の出現率が低いルートを通っていた。

 何もかもが完璧だったのに、なんでこんな事になってしまうのだろうか。

 トランクで横たわってる魔法少女を見られたら、俺達はお終いだ。

 あっという間に捕まって、絞首台送り。

 ようやく理想の悪堕ち少女と出会えて、これから夢のような日々が始まりそうだと言うのに、情け容赦なくゲームオーバー。

 そんなのは、絶対に許容できない。

 

 だが、どうする。

 強硬手段に出るしかない事は分かっているが、ここだけの話、俺は戦闘がさほど強くない。

 並の怪人と同等の力は有しているが、強力な魔法を持つ魔法少女と戦って勝てる自信はない。

 その上、元魔法少女である新人ちゃんに戦わせるのは、流石に酷だろう。

 彼女が滅したいのは悪人であり、出来るならば善人と交戦したくはない筈だ。

 

「怪人さん。申し訳ないんだけど……今すぐ車から降りて、あの子達の対応をして。その時に生じた隙をついて、私が奇襲を仕掛ける」

 

 心配は無用だった。

 新人ちゃんは足元に置いてあるナイフに手をかけて、臨戦態勢をとっている。

 要するに、戦う気満々だったのだ。

 判断が早すぎるが、めちゃんこ心強い。

 俺が知る限り、彼女が扱う魔法ほど奇襲に向いている能力はねーからな。

 ほぼ間違いなく、不意打ちは成功するだろう。

 となると、俺の役目は魔法少女の気を引くだけ。

 誰でも出来る簡単なお仕事。

 意を決した俺は車から降りる。

 ……これより、ミッションスタートだ。

 

「ど、どどど、どうひました? 俺、なんもやってないッスよ〜。どうして引き止めるんです〜?」

 

「治安維持の一環で呼び止めただけですけど……随分と挙動不審やな、自分。なんか車の中に隠してるんとちゃう?」

 

 畜生。

 俺には簡単な仕事すら出来ない。

 緊張すると吃ってしまう上にあがり症の俺には、極限状態での演技は難易度が高すぎた。

 『擬態』を用いて培った経験値は、何も意味を為さなかったのだ。

 言い訳ではないが、他の奴に成り変わってる時の演技なら自信があるのに……。

 

「隠してないッスよ。しっ、失礼ですね……」

 

「ふーん。じゃあ、何で助手席に座ってる子は変な仮面をつけとるん? ……実は、人間のフリをした怪人だったりしぃひんよな」

 

「そ、そっ、それはですねェ。彼女、そういう時期なんですよ。意味もなく仮面をつけたくなる年頃っていうか……俺が言いたい事、分かるでしょう?」

 

「あー、なるほど。そういう年頃なら、意味もなく仮面をつけても不思議ではないなぁ」

 

 何とか誤魔化す事に成功した。

 話の流れで新人ちゃんが厨二病になってしまったが、致し方ないだろう。

 しかし、そろそろ限界だ。

 頼むから、一刻も早く奇襲してくれ……!

 

「取り敢えず、車ん中見させてもらいますから。後輩ちゃん、トランク開けて」

 

「は、はいっ。わかりました、先輩」

 

「ちょっ、ダメ! 後輩ちゃん、絶対にトランク開けたらあかんよ!」

 

「えっ? え……?」

 

 もう、本当に、無我夢中だった。

 1秒でも時間を稼ぎたいので、先輩の魔法少女の口調と声色を真似て喋る。

 後輩の魔法少女を僅かでも困惑させるために。

 

「あー、もう! 気色悪いから真似すんなや! 後輩ちゃん、開けて! 不審者の言う事、聞いたらあかん!」

 

「プ、プライバシー! 何も罪のない民間人のプライバシーを不当に侵害するつもりなんか!? 貴方達はァ! 天下の魔法少女とは言えど、そんな暴挙許されませんだっしゃろォ!」

 

「だっしゃろォって、何やねん!」

 

「え、えっえっえっ」

 

 もうめちゃくちゃだった。

 車の中を見ようとする後輩の魔法少女を俺が引き止め、そんな俺を先輩の魔法少女が引き止める。

 側から見ると、俺は完全に狂人だが、周囲からどう見られるかなんてどうでもいい。

 ここまでお膳立てしたら、十分だからな。

 

「『縮地』」

 

 ボソッとした呟きが、不意に耳に届く。

 その刹那、車内にいた筈の新人ちゃんが……車を開けようとする後輩の魔法少女の正面に現れた。

 ……己の魔法を用いて、瞬時に移動したのだ。

 

「うぐっ!」

 

 新人ちゃんは、当惑する後輩の魔法少女の顎先を情け容赦なくぶん殴る。

 すると、脳震盪を起こした彼女は、力無くその場に倒れてしまった。

 しかし、それでも止まらない。

 流れるような動作で新人ちゃんは、先輩の魔法少女へとナイフを突き立てる。

 

「……っ」

 

 だが、先輩の魔法少女はすんでのところで突きを回避し、後方へと飛び退いた。

 中々に素晴らしい反射神経。

 俺と新人ちゃんに挟まれる形を避けるために、距離を取る判断も完璧だ。

 敵ながら、見事であると言わざるを得ない。

 

「その魔法は……ほんまどうなっとんねん。でも、そっちがその気なら、ウチの本気見せたるわ!」

 

 ゴゴゴと音が鳴り、地面が揺れる。

 恐らく、先輩の魔法少女は己の魔法を行使しようとしているのだろう。

 途轍もない圧力をひしひしと感じる。

 これからが、本番。

 演技や奇襲などは無しの真剣勝負が今、始まろうとしているのだ……。

 

「一歩も動かないで、魔法も解除して。でないと、この子の首を掻っ切る」

 

 俺も先輩の魔法少女も、物騒極まりない発言をした新人ちゃんへと視線を向ける。

 彼女は……身動きが取れない後輩の魔法少女の首元にナイフを突きつけ、少し動かすだけで頸動脈を断ち切れる体勢をとっていた。

 恐ろしいくらいに手際がスムーズで、瞳には光が灯っていない。

 脅しでも何でもなく、指示に反した瞬間に殺そうとしていると一目で分かる。

 ……いくら何でも覚悟ガンギマリすぎない?

 

「……わ、分かった。魔法は解除する。一歩だって動いたりせん」

 

 俺と同様に本気である事を感じ取ったのか、先輩の魔法少女は両手を挙げる。

 正直に言うと、俺もつられて手を挙げそうになってしまった。

 それくらい、今の新人ちゃんは怖いのだ。

 奇襲では比較的与しやすそうな後輩の魔法少女を狙って戦闘不能にする。

 そして、魔法少女だった時には絶対にしないような人質戦法を行って、そこそこ強そうな先輩の魔法少女を無力化する。

 

 全ての行動に無駄がなく、極めて合理的。

 文字通り、勝つためならば何でもする。

 卑怯な手であっても、人道的に非難される手であっても、躊躇いなく行使出来てしまう。

 何より、元魔法少女という経歴があるからこそ、魔法少女が嫌がる戦法がよく分かるのだ。

 まさか、ここまで新人ちゃんに悪の適性があったとは……興奮しすぎて、体が震えそうになるぜ。

 やはり、出会えて良かったと、心の底から思う。

 

「なぁ……君、ツバメちゃんやろ? 瞬間移動に似た魔法を使う子なんて一人しか思いつかんもん」

 

「…………」

 

「魔法少女になってから、まだ一年も経ってへんのに怪人を数十体も討伐して。今までに類を見ない異次元の成長速度やから、みんな君に期待してたんやで。100年に一人の天才。いずれ『七星衆』に届くかもしれん逸材や……とか言うてな」

 

「………………………」

 

「なのに……何で、こんな事しとるん? 君は悪に手を貸すような子では無かった。どんな時も生真面目で、真正面から職務に向き合っとった。やっぱり、原因となったのは、カナミが……」

 

「仲間に連絡するために時間稼ぎしようとしても無駄。この辺りには結界が張ってある。電波は届かないし、周囲の人々は我々の姿を視認できない。それは、魔法少女である貴女自身がよく理解してる筈」

 

 先輩の魔法少女は、悔しげに歯を食いしばる。

 多分、図星だったんだろう。

 因みに、俺は全く気が付かなかった。

 ……というよりも、奇襲がやけに遅かったのは結界を張っていたからだったのか。

 あまりにも用意周到すぎて、味方である俺でも恐ろしく感じるレベルになってきたな。

 こんなにも優秀な子を悪堕ちに導いた自分を褒めてやりたいくらいだ。

 

「怪人さん、その人とこの子を好きにしていいよ……これで、私が悪に堕ちた証明になるよね」

 

「ククク……ああ。これで、お前は立派な悪人だ」

 

 新人ちゃんの発言の意味がよく分からないが、取り敢えずそれっぽい返答をしておく。

 ここで狼狽えたりしたら、恥ずかしいからな。

 ひとまず、先輩の魔法少女と後輩の魔法少女は、アジトに連れて帰ろう。

 もちろん、煮たり焼いたりはしない。

 彼女達の魔法を有効的に利用させて頂くのだ。

 

「ウチらを、どうするつもりや……」

 

「俺達が更なる力を得るために……贄になってもらうんだよ。存分に怯え苦しむがいいぜェ」

 

「……この悪魔共が!!! 地獄に落ちろ!!!」

 

「言われなくても地獄に落ちるよ、私達は。だから、心配しなくていい」

 

 ゆっくりと近づき、首元に手刀を落とす。

 そうすると、恨み節を口にしていた先輩の魔法少女は意識を失った。

 想像していた展開とは大分違ったが……無事に戦闘が終わったのだ。

 魔法少女二人の確保にも成功したので、最高の結果だと断言できる。

 だが、それよりも、俺も新人ちゃんも無傷なので、ほっと一安心だ。

 

「お疲れさん。今回は大活躍だったなァ」

 

「うん。怪人さんも良い時間稼ぎだった。馬鹿な人の演技をするの……とても上手いね」

 

 にこりと微笑む新人ちゃん。

 ぶっちゃけ、時間稼ぎの時に演技はほとんどしていなかったのだが、口が裂けても言えない。

 演技でも何でもなく……純然たる馬鹿なのがバレたら、普通に死にたくなるからな!!!

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