転生したら怪人だったので、見込みのある魔法少女を片っ端から悪堕ちさせる。   作:悪堕ちが性癖の一般成人男性

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悪堕ちしたら、強化イベントがある。

 

 魔法少女の捕獲の任務は、無事に完了した。

 奴隷市場のクズ共を一掃したり、帰宅途中に魔法少女と二人と会敵した……など。

 様々なトラブルはあったものの、無傷で帰還できたため、成功と言って良いだろう。

 そして、数日後。

 私達は今……。

 

「新人ちゃんの初任務達成祝い! 楽しい楽しいパーティの始まりだァ!」

 

「いえーい!」

 

 謎に元気な総統が、クラッカーを鳴らす。

 怪人の手によって、テーブルクロスが敷かれた机の上に、多種多様なピザが置かれていく。

 マルゲリータに、ビスマルク。

 ペパロニに、ペスカトーレ。

 どれも美味しそうであり、お腹が空いてくる。

 

「ククク……俺の手作り特製ピザを見てると、食欲がそそられるだろ? いただきますをしたら、遠慮なく食らい尽くすがいいぜェ」

 

 真っ白なコック帽を被り、シンプルな柄のエプロンを着た怪人が、腕を組みながらニヤリと笑う。

 正直、あまり似合っていなかった。

 因みに、私は「本日の主役」と書かれた襷と、カラフルなパーティハットを被らされている。

 当然ながら、似合っていないだろう。

 何と言っても、私は表情の変化に乏しいので。

 

「ふふふ、初任務なのにも関わらず、魔法少女を三名も確保するとは……本当に新人ちゃんは素晴らしいねぇ! ピザも美味しそうだし、今日は最高の日だねぇ! 怪人一号くん、ビールだ! ありったけのお酒を持ってきてくれ!」

 

 普段、気怠げな総統もテンションが高い。

 隣に座る私のパーティハットを弾き飛ばし、頭を無限になでなでしてくる。

 まさに、キャラ崩壊極まれり。

 けれど、無邪気にはしゃぐ総統の姿を見ていると、年下ながらに微笑ましい気持ちになった。

 

「お任せください、総統。キンキンに冷やした物を持ってきます。ツバメはコーラでいいか?」

 

「……う、うん。大丈夫」

 

 怪人は鼻歌を歌いながら、飲み物を取りに行く。

 ……初めて、名前を呼ばれた。

 それも、自然な流れで。

 物凄く今更だけど、怪人はコミュニケーション能力が非常に高くて、距離を詰めるのが上手。

 外見こそ全く違うものの、性格といった面ではカナミ先輩とよく似ていて。

 だからこそ、私は……かなり早い段階で心を開いたのかもしれない。

 

「飲み物を持ってきましたよ。チンタラしてるとピザが冷めちまうんで、メシの時間を始めようじゃねェですか」

 

「ありがとう、怪人一号くん。それでは、手を合わせて……」

 

「「「いただきます」」」

 

 三人揃って、食物に敬意を表する。

 次いで、私達は思い思いのピザに手を伸ばして、口へと運んでいく。

 

「……おいしい」

 

「ククク……当たり前だろ。この俺が丹精込めて作ったピザなんだからなァ!」

 

「至福のひと時とは、正にこの事だねぇ。自分の体に気を遣わずに食べるご飯が一番美味しいよ」

 

 見た目に違わず、怪人の手作りピザは絶品。

 はしたないと分かっていながらも、食べる手が止まらない。

 和気藹々とした雰囲気で食卓を囲み、豪華な料理を貪り食べる。

 こんな体験は、いつぶりだろうか。

 

 魔法少女になる数日前に、父親が怪人に殺されて、私は天涯孤独の身となった。

 怪人が暴れる影響によって、今の時代を生きる人々には生活的な余裕がない。

 私を引き取ってくれるような人は居なかったので、魔法少女になってからは一人暮らしを始めた。

 もちろん、カナミ先輩と食事を共にする事も多々あったが、基本的に夜ご飯は一人きり。

 コンビニ弁当か、スーパーで惣菜を買って、温めて食べるだけの簡素な食事。

 この頃の私にとって、食べるという行為は生命を維持するためにやらなければならない事。

 楽しむような代物では無かった。

 だけど、今は違う。

 

「マルゲリータが美味すぎる……これは、総統権限だ。残りのマルゲリータは私が全て食べるぞ!」

 

「あ、あんまりですよ、総統。俺、まだ一切れも食べてないのにィ!」

 

 今の私には、ちょっと個性的だけど、一緒にご飯を食べる仲間がいる。

 食べ物の味を純粋に楽しめる。

 ……きっと、もう一人で食べる事は無い。

 そう考えると、心がポカポカする。

 温かい食卓が精神に安らぎを与えてくれるのだ。

 カナミ先輩のことや、悪人を一人残らず殲滅することは、絶対に忘れたりしない。

 忘れたりはしないけれど……今、この瞬間だけは束の間の幸せを味わっていたかった。

 

「あっという間に平らげてしまったな。明日以降も頼むよ、料理上手の怪人くん」

 

「ええ、任せてください。それでは、俺は皿洗いをしてきますね」

 

「私も手伝う」

 

「何言ってんだ。今日の主役に皿洗いさせる訳ねぇだろ。大人しく、座っとくんだなァ!」

 

 空の皿を持って、キッチンへと向かう怪人。

 リビングに取り残されたのは、ソファに寝転がる総統と、ぼーっと椅子に座る私だった。

 ……これは、丁度いい機会かもしれない。

 

「総統、質問をしてもいいですか?」

 

「ああ、構わないよ。お腹いっぱいの私は機嫌がいい。何でも答えようじゃないか」

 

「一体何の目的があって、魔法少女を捕獲しているんですか?」

 

「……なるほど。至極真っ当な疑問だねぇ。実物を見た方が早いから、私に着いてきたまえ」

 

 総統はすくっと立ち上がって、ゆっくりと歩き始める。

 リビングを抜けて、結構長い廊下を進み、突き当たりにある階段を降りて地下へと向かう。

 そうして、セキュリティがしっかりしている鋼鉄の扉を開けると、怪しげな研究室が視界に入る。

 様々な機械が置かれている中で、一際存在感を放っていたのは、人一人分のスペースがある緑色の液体が入った機械。

 悪の組織のアジトに訪れたばかりの私が入った機械の中には……二人の少女の姿。

 私と怪人が捕獲した、オレンジ色の髪の魔法少女と紫色の髪の魔法少女が入っていたのだ。

 彼女らは気を失っているのか、或いは、眠りについているのか。

 瞳を閉じた状態で、微動だにしない。

 

「ふふふ……案ずる必要はないよ。怪人一号くんと出会った時の君と同じ。傷の手当てをしているだけさ。もう彼女らに用はないのでね。治療が終わり次第、解放する心算だ」

 

「解放してしまうんですね」

 

「君が言わんとしている事は分かるが、全くもって問題ないよ。怪人一号くんの『洗脳』の能力を用いて、我々に不都合な記憶は消去している上に、今の彼女達は一般人。魔法が使えなくて不老でもない……ただの少女なのだから」

 

 総統は意味ありげな笑みをこちらに向ける。

 対して、私は驚きを隠さないでいた。

 魔法少女を一般人にする。

 そんな事、本当にできるのだろうか。

 

「普通の人間には不可能だろうね。だが、私の魔法……いや、能力は『奪取』。文字通り、ありとあらゆる物を盗み取れるこの能力を用いて、彼女達から魔法少女としての力そのものを奪ったのさ」

 

 その発言を耳にした時、頭の中に散らばっていた記憶の欠片が繋がっていくような感覚を覚えた。

 以前にも言及したが、魔法少女の魔法も、怪人の能力も、基本的に一人一つ。

 なのにも関わらず、怪人は……怪人一号は複数の能力を持っていて。

 現時点で判明しているものだけでも『擬態』と『洗脳』の二つが挙げられる。

 更に、多くの能力を有する理由は「裏ワザがあるから」だと、本人は言っていた。

 これらの情報から推測すると。

 

「もしかして、総統は……魔法少女から奪った能力を、怪人一号に与えているんですか? だから、少しでも多くの魔法少女を確保したいと」

 

「御名答と言いたいところだが、少し惜しいかな」

 

 外れてしまったか、と思ったのも束の間。

 くるりと振り返った総統は、多種多様な物が散らばっている机を漁り始めた。

 書類の束を退けて、機械の部品を放り投げ、空のペットボトルをゴミ箱に入れる。

 そして、ゴミやガラクタの山の中に埋もれていた物体を取り出し、高々と掲げた。

 彼女が手に持っているのは、オレンジ色の刃が印象に残る刀。

 どことなく、オレンジ色の髪を持つ魔法少女を連想させるデザインの武具だった。

 

「私が魔法少女を捕獲しているのは、怪人一号くんを強化するためだけではない。魔法少女の力を付与した武器を製造し、悪の組織の一員となった人物に渡す事で、戦力の底上げを図るという目的もあるんだよ。というわけで、この刀は君に授けよう」

 

 なるほど。

 やはり、この刀は……オレンジ色の髪の魔法少女の魔法が付与されているモノなのだろう。

 総統が差し出した刀を受け取った私は刀身を鞘から出して、試しに魔力を流してみる。

 そうすると、刃がうっすらと光り輝いた後に、バチバチと稲妻が走り。

 付与されている魔法がどのような性能なのか、大体理解した。

 

「随分と強力な魔法ですね。本当に、私で良いんですか?」

 

「寧ろ、君だから良いんだよ。こういっては何だが、怪人一号くんは戦闘向きの性格をしていないからね。新人ちゃんの方が有効的に扱えるだろう」

 

 私の方が有効的に扱える……か。

 ……私は、無力だった。

 無知蒙昧で、実力も低い。

 だから、カナミ先輩の力になれなかった。

 悪に堕ちなければ、正義を成せなかった。

 けれど、この力があれば。

 これから、数多の魔法少女から力を奪って、強くなる事が出来れば……。

 確かな実力を有するシオウどころか、ありとあらゆる悪にだって勝てるかもしれない。

 そう思えて、気分が高揚した。

 

「し、失礼します!」

 

 ギュッと刀の柄を握り締めていると、実験室に聞き慣れない声が響き渡った。

 少なくとも、怪人一号ではない。

 となると、来訪者は何者なのだろうか。

 そんな疑問を胸に、後ろを振り返ってみると。

 

「お願いします! 出来る事なら何でもするので、私を仲間にしてください!」

 

 そこにいたのは、奴隷市場で確保した魔法少女。

 水色の髪を三つ編みにした女の子が、こちらに向かって深々と頭を下げていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 私の人生を一言で表すのなら……最悪という言葉が最も適していると思う。

 まずは、生まれた環境が最悪。

 母親は娼婦で、父親は分からない。

 育児放棄は日常茶飯事で、飯を与えてもらったらマシなくらい。

 母親は若い男と遊んでばかりで、保護者としての責任感は微塵も持ち合わせていない。

 オマケに口癖は「学校に行かせる金は無いから、義務教育が終わったら働け」だった。

 もう最悪としか言いようがない。

 

 次に、魔法少女になったのが最悪。

 14歳の頃、変なマスコットに話しかけられた。

 

「ボクと契約して、魔法少女にならないかい?」

 

 その言葉を耳にした時、クソ喰らえと思った。

 魔法少女なんて、絶対になりたくない。

 シンプルに怖いし、死にたくないし、怪人と戦うなんて、真っ平御免だったのだ。

 しかし、最悪な事にマスコットの言葉を耳にしたのは私だけではなかった。

 

「絶対に魔法少女になりなさい。これは命令よ。ならなかったら、殺す」

 

 性悪な母親も、耳にしていたのだ。

 私が断る事を匂わせると、ヒステリーを起こし、魔法少女にならなかったら殺すとまでいった。

 恐らく、彼女は金が欲しかったのだろう。

 魔法少女として働いて得られる金は、中卒の女子が働いて得られる給料とは比較にならない額だったから。

 本当に、最悪としか言いようがない。

 

 その上、魔法少女協会と一部の魔法少女が最悪。

 魔法少女の業界は夢見る女児が想像するような世界とはかけ離れた物だった。

 『七星衆(しちせいしゅう)』と呼ばれる、魔法少女協会の中でも屈指の実力者達による権力争い。

 圧倒的な力を持つ彼女らに、小判鮫の如く付き従う魔法少女達による対立。

 本来、仲間である魔法少女同士が反目し合う現状を放置する魔法少女協会の上層部。

 どれもこれも、醜い事この上ない。

 もちろん『七星衆』の中にも、普通の魔法少女の中にも、まともな人間は数多くいるが、あまりにも悪い奴らが目立ちすぎていた。

 魔法少女という立場を利用して、悪事を働く奴らが一定数存在したのだ。

 例を挙げると、怪人と人間のハーフだからって理由で同じ魔法少女を虐める奴がいたり、自らの知名度を活かして民間人から金をせしめる奴がいたり。

 ……真面目で優しい奴が損をして、利己的で性格の悪い奴が得をする。

 それが、この世界の不文律だったのだ。

 

 最後に、怪人に囚われたのが最悪。

 嫌々ながらも、魔法少女としての職務をほどほどにこなしていたある日。

 相方の魔法少女と共に市街地の警備をしていたら、何十体もの怪人に襲われた。

 一人一人は雑魚だったが、数が多い。

 奮戦も虚しく、あっさりと私は捕まった。

 

「あー……こりゃ、もうダメっすねー」

 

「え、ちょ、待っ、見捨てるつもりじゃないよね!? お願いだから、助けてよ!」

 

「無理無理カタツムリーっす。うち、まだ死にたくないんで、これにておさらばっす!」

 

「ふざけんなー!!!」

 

 それに、相方にも見捨てられた。

 まさに、踏んだり蹴ったり。

 怪人達によって、私はアジトへと連れてかれる。

 その果てに、悪趣味な金持ちに奴隷として売られる運びになったのだ。

 もう、本当に最悪としか言いようがない。

 

「見てください、彼女の美貌を! 魔法少女は不老の存在。この美しさが衰える事は未来永劫ありません! それでは、1000万からスタートです!」

 

 何処にあるのかも分からない辺境の地の洋館内で、悪趣味なオークションが始まる。

 もちろん、商品は私。

 

「うおおおお!! 1200万!」

 

「1500!!!」

 

 脂ぎったおじさん達が、大声を上げる。

 私に気色悪い視線を向けながら。

 この人達に買われてしまったらどうなるか。

 想像するだけで、吐き気がした。

 

 誰でもいい。

 本当に、誰でもいいから助けて欲しい。

 怪人達の根城に足を踏み入れる馬鹿は居ないと理解していながらも、そう願わずはいられない。

 その時だった。

 

「……断罪する。一人残らず」

 

 私にとって、救世主であり……更なる地獄へと導く極悪人でもある少女が現れたのは。

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