転生したら怪人だったので、見込みのある魔法少女を片っ端から悪堕ちさせる。   作:悪堕ちが性癖の一般成人男性

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エピローグ

 

 夢か、幻か。

 ここ数日で色々な体験をした私は、ついに頭がおかしくなってしまったのだろうか。

 先輩は病院で寝ている筈だ。

 こんな都合の良いタイミングで現れる訳がない。

 それに、目覚めたとしても、私がいる場所を知る方法なんてないじゃないか。

 だから、これは現実じゃない。

 妄想に違いないのだ。

 

「答えてよ……ツバメちゃん。これは、一体どういう事なの? 私、もう訳がわからなくて……」

 

 ボブカットの茶髪、タレ目ぎみな瞳。

 年齢の割には豊満な胸部、身に纏っているのは水色の病衣。

 そして、何よりも幾度も耳にした優しげな声。

 私の五感から伝わる情報全てが……彼女は、カナミ先輩本人であると言っていた。

 

 ならば、擬態しているのか。

 怪人1号のような他人に成り代わる能力を持つ魔法少女か怪人が、先輩になりすましている。

 そうとしか、考えられない。

 

「それ以上、近寄らないでください」

 

「……嫌だ」

 

「近寄ったら、斬り殺しますよ」

 

「斬れるものなら斬ってみてよ、ツバメちゃん。私は納得するまで、帰らない。その結果、殺されても絶対に恨んだりしないから」

 

 カナミ先輩はしっかりとした足取りで、こちらに向かって歩み寄ってくる。

 発する言葉に偽りない覚悟を胸にしながら。

 ……先輩は、間違いなく、先輩だ。

 擬態したとしても、言動の違和感は消せない。

 発言内容も歩き方の癖も、何もかも全てがカナミ先輩そのもの。

 能力を用いて誰かが成り代わっている可能性は、万に一つでもないだろう。

 その事実が私の心を蝕んでいく。

 

 カナミ先輩にだけは見られたくなかった。

 私が悪の道に進み、人を殺す姿を。

 だから、目を背けた。

 悪の組織のアジトにある緑色の液体を使えば、先輩が目覚めるかもしれないという可能性から。

 そして、そのツケが今、回ってきたのだ。

 これ以上ないほどに、最悪な形で。

 

「ツバメちゃん。まずは、お話ししようよ。じゃないと、何も分からない」

 

 ……ああ、そうか。

 恐らく、この展開を望んでいたのだろう。

 カナミ先輩を仮死状態にして、悪趣味な手紙を偽造したクソ野郎は。

 きっと、そいつが眠っていた先輩を起こし、私にとって一番嫌なタイミングで、この場所を訪れるように仕組んだ。

 そうとしか考えられない。

 要するに、嵌められたのだ。

 私は……いや、私達は。

 

 これから、彼女に言わなければならないことを考えると、刀を持つ手が微かに震え、意識が朦朧とし、呼吸が僅かに荒くなり、吐き気を覚える。

 出来ることなら、今すぐ逃げ出したい。

 でも、それでも、私は……。

 

 

 

 

 

 

 私が目を覚ましたのは、不思議な声を聞いたからだった。

 ごちゃごちゃになっている脳みその中で響き渡るのは、奇天烈な声。

 

「カナミちゃん……起きて。急がないと、取り返しのつかないことになっちゃうよ。今すぐ、ボクが指定した場所に向かうんだ」

 

 その声に誘われるように目を覚ます。

 瞼を開けると、見知らぬ天井。

 周囲を見渡すと、見知らぬ病室。

 至って健康体の筈なのに、何故病院にいるのか。

 必死になって考えてみても、記憶が混濁しているため、よく分からない。

 ふと側にある机を見ると、一枚の便箋が置いてあった。

 「ツバメちゃんへ」と書かれた開封済みの封筒と共に。

 興味を惹かれた私は、中身を見る。

 そして、即座に走り出した。

 眠っていた時に聞こえてきた声の通り……取り返しのつかないことになると察したから。

 

 魔法少女の姿に変身して全力疾走したら、あっという間に謎の声が指定した座標に到着する。

 目印となるような建造物も何もなかったが、迷いはしなかった。

 何故なら、何の変哲もない土地にしか見えないこの場所には、結界が張られていたから。

 それも、馴染みのある手法。

 私が結界を張る時と全く同じ方法で。

 この張り方をするのは、私と……直々に結界を張る方法を教えたツバメちゃんしかいない。

 何を目的に張ったのか、さっぱり分からないが、物凄く嫌な予感がして。

 その予感は見事に的中してしまった。

 

「ツバメ、ちゃん……?」

 

 思わず、名前を呼んでしまう。

 すると、ツバメちゃんは私の存在に気がついたらしく、視線をこちらに向けた。

 そんな彼女が、刀を突き刺していたのは……事ある毎に嫌がらせをしてくる嫌な先輩。

 中郷潮雨さんだった。

 すでに絶命しているのか、瞳に光はない。

 どこからどう見ても、ツバメちゃんが殺したとしか思えなくて、血の気が引いた。

 ……私は、間に合わなかったのだ。

 

「何……してるの……?」

 

 問いかけても、ツバメちゃんは答えない。

 私の顔を見たまま、一向に動かないでいた。

 

「答えてよ……ツバメちゃん。これは、一体どういう事なの? 私、もう訳がわからなくて……」

 

 思った事を全て口にしてしまう。

 知らず知らずの内に長い間眠っていて、起きたら後輩が人殺しになっていた。

 ……こんなの、あまりにも唐突過ぎて理解が追いつかない。

 けれども、落ち着いて考えてみると、何故そうなったのか、原因は大体分かった。

 病室に置かれていた手紙の内容から察するに、ツバメちゃんは私が自殺したのだと思っている。

 そうして、その理由となったのはシオウ先輩だと思ってしまったのだろう。

 だからこそ、彼女を殺す事を画策してしまったに違いない。

 実際は、自殺なんかしていないのに。

 

「それ以上、近寄らないでください」

 

「……嫌だ」

 

「近寄ったら、斬り殺しますよ」

 

「斬れるものなら斬ってみてよ、ツバメちゃん。私は納得するまで、帰らない。その結果、殺されても絶対に恨んだりしないから」

 

 脅しに動じず、歩みを進めていく。

 きっと、私達は……何者かの手によって、弄ばれている。

 悪意ある誰かによって、関係をぐちゃぐちゃにされようとしている。

 だからこそ、話し合いがしたかった。

 互いに思いの丈をぶつけて、状況のすり合わせをするべきだと確信したのだ。

 それに、必ずしもツバメちゃんがシオウ先輩を殺そうとしたとは限らない。

 シオウ先輩がツバメちゃんを殺そうとして、返り討ちにあった可能性もあるのだから。

 

「ツバメちゃん。まずは、お話ししようよ。じゃないと、何も分からない」

 

 しっかりとツバメちゃんの顔を見る。

 そうすると、露骨に彼女の目が泳ぎ始め、手足が微かに震え出した。

 間違いなく、動揺していたのだ。

 ……やっぱり、ツバメちゃんはツバメちゃんだ。

 一見するとクールだが、実のところ、人一倍繊細な性格をしていて、誰よりも正義を重んじる。

 その本質は、何も変わっていない。

 故に、私達は絶対に分かり合える筈……。

 

「……勘違いしているようなので、先に言っておきますが。私がこいつを殺したのは、カナミ先輩の死が理由ではないですよ」

 

「…………え?」

 

「質問しますが……先輩は何故、悪人が生まれると思いますか?」

 

「な、なんでだろう。悪い事をしないと、生きていけなかったり。悪い事をするのが、楽しい人が一定数いるから……とか?」

 

「違います。この世界に悪人が生まれる理由は『許されてしまうから』なんですよ」

 

 ツバメちゃんは淡々と言葉を紡ぐ。

 手足も震えてはいないし、目も泳いではいない。

 寧ろ、ギュッと拳を握り締めており、目は据わっている。

 何処となく、何らかの覚悟を決めてしまったように見えた。

 

「殺人は行う人間が少ないのに、いじめはやる人間が多い。それは、いじめをしても裁かれないからです。どちらも同じ他人を害する行いだと言うのに。決して許されてはいけない蛮行である筈なのに」

 

「だからこそ、許さない事が大切なんです。どんなに軽い罪であろうと、同じ罰を。如何なる悪人に平等な死を与えるべきなんですよ。故に、私は決めたんです。私自身が、悪人の処刑人になろうと」

 

「怪人も悪人も、正義の名を語って悪を成す存在も。法律では裁かれない悪も、全て全て、私が殺す。一匹たりとも残らず、制裁する。そうすれば、最後に残るのは純然たる善人のみ。穢れのない美しい世界のみ。理想の楽園が出来上がるんですよ」

 

「シオウ先輩を殺したのも、その一環です。先輩がどうとかは関係なく、奴が悪人だから殺した。ただそれだけ。私がこのような思考に至った理由が何であろうと……たとえ、悪意ある何者かに仕組まれた結果であろうと関係ありません」

 

「私はこれから死ぬまで、悪を裁いていきます。ありとあらゆる人間に恐れられる……立派な悪人の一人として」

 

 ……言葉が出なかった。

 無口ではなく、多弁で。

 無表情ではなく、真剣な表情で。

 何よりも、正義ではなく、悪を掲げて。

 淡々と己の理想を語るのは、私の知るツバメちゃんでは無かった。

 理想も志も、全てが歪んでしまった……悪に堕ちている少女だったのだ。

 

「カナミ先輩。どうか、私に手を貸してくれませんか? そうして、100年後も、1000年後もずっと一緒に生きましょうよ」

 

 ツバメちゃんはこちらに手を差し伸べる。

 私はようやく、理解した。

 分かり合う事は不可能であると。

 だって、彼女は……真面目で勤勉で、一度やると決めた事を曲げない性分なのだから。

 一度、歩み始めたらもう止まらない。

 こちらに戻ってくることはないのだ。

 

「ダメだよ。だって、私が悪事に手を染めてしまったら……同じ境遇に生まれた人達がもっと苦しむ事になる。やっぱり、どこまでいっても怪人の子は化け物なんだってレッテルを貼られちゃう。それだけは、絶対に許容できないんだ」

 

 躊躇いがちに、手を払いのける。

 ちょっと前に、同じ生まれの女の子に出会い……私は心に決めた。

 自分の命は「怪人と人間のハーフ」というだけで虐げられる人が、少しでも笑顔でも暮らせる世界を作るために消費すると決意したのだ。

 だから、私はツバメちゃんに協力できなくて。

 否応にも、決別しなくてはならない。

 

「…………ふふふ。先輩はそう答えると思っていました。なら、これでお別れですね」

 

「見逃すとでも思ってるの?」

 

「その台詞は、自分の立場を弁えてから発するべきだと思いますが」

 

 ツバメちゃんがそう告げると、彼女の後方で倒れていた二人の人物が立ち上がる。

 浅黒い肌の男性と仮面をつけた少女は、何も言う事なく武器を構えた。

 恐らく、彼らはツバメちゃんの仲間。

 同じ悪の道に生きる同士なのだろう。

 

「さようなら、カナミ先輩。いつの日か、貴女が私を殺しに来る日を……楽しみに待っていますよ」

 

 口元を歪ませたツバメちゃんと、彼女に付き従う二人の仲間は、颯爽と立ち去っていく。

 病み上がりであったため、ここに来るまでに魔法少女の力を使い切ってしまった私は見送る事しかできなくて。

 

「う……く、うううううっ……」

 

 緊張の糸が切れた私は力なくその場にへたり込み、瞳から大量の涙が流れ落ちていく。

 走馬灯のように脳裏に浮かんでいくのは、幸せだった頃の大切な記憶。

 緊張しきった彼女と出会い、一緒に任務に臨み、ショッピングや食事に行って仲を深め、果てには互いの生い立ちや夢を共有した。

 それら全てが、かけがえのない思い出であり。

 ツバメちゃんと共に過ごした日々は、絶対に忘れられないと断言できる。

 ひたすらに苦しくて苦しくて、仕方がない。

 敵対したとは言えど、嫌いになんてなれない。

 

 どうして、こうなってしまったのか。

 何度も考えてみるけれど、一向に答えは出ない。

 ……だけれど、自分がやるべき事は、はっきりと分かっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 それから数日後。

 ツバメちゃんが魔法少女協会を裏切り、シオウ先輩と取り巻きを殺害した話は瞬く間に広まった。

 魔法少女だった身でありながら、悪事を成す。

 前代未聞とも言える存在は危険視され、彼女の動向を追う特務部隊も結成されるそうだ。

 そして、私は。

 

「よく来たね。市浦鹿波さん」

 

 一人の女性に呼び出されていた。

 艶やかな長い黒髪に、成長が止まっているにしては高い背丈。

 どこか威厳のある雰囲気を身に纏い、奇妙な仮面をつけている彼女のコードネームはゼロ。

 『七星衆』の中でも頭抜けた実力を有しており、魔法少女協会の頂点に立つ……数百年もの時を生きる、原初の魔法少女であったのだ。

 そんな偉大な存在を前にした私は、緊張しすぎてカチンコチンになってしまう。

 

「まずは、謝罪させて欲しい」

 

 そして、ゼロは……脈絡もなく、頭を下げた。

 初対面で尚且つ立場も低い私に向かって、迷う事なく謝罪を行ったのだ。

 

「え、えええ、いや、なんでですか!?」

 

「君がシオウ達に虐げられていた事実。迅速に対応する事ができなかったのは私の不徳の致すところ。こんな謝罪で罪が消えるとは思わないが、それでも謝らせて欲しい」

 

「い、いやいや、そんな。お忙しい身のゼロさんが対応するなんて無理ですよ。悪いのは、揉み消していたシオウさんの父親。第六区の上官で……」

 

「だがしかし、部下の愚行は管理不足の上官の責任でもある。そのお詫びと言っては何だが……どの地区に配属されたいか、要望は全て受け付けよう」

 

 ……なるほど。

 私を呼んだのは、何処の地区で勤務したいのか、要望を聞くためだったのか。

 だが、これは都合が良い。

 何処の地区に配属されたいか。

 その問いの答えは一つしかなかった。

 

「宇井森燕の動向を追う、特務部隊への配属を希望します」

 

 ツバメちゃんの別れ際の言葉に嘘偽りはなく。

 誰かが止めるまで、悪人を殺害していく事が分かりきっているから、阻止しなければならない。

 更に、彼女は悪人を殺し尽くした後に、死を選ぶつもりで。

 ……それも、私に殺される事を望んでいる。

 

「さようなら、カナミ先輩。いつの日か、貴女が私を殺しに来る日を……楽しみに待っていますよ」

 

 でなければ、こんな言葉は出ない。

 だから、ツバメちゃんが命を賭けて悪を成すつもりなら、私は命を賭けて彼女を止める。

 どんな手を使ったとしても。

 

 それと同時に私を昏睡させて、ツバメちゃんを悪の道に進むきっかけを作った人間の正体も調べる。

 どのような目的があって、私たちの関係を引き裂いたのか……知らなければ気が済まないから。

 

「……本当にいいのか? 特務部隊の目的は宇井森燕の捕縛ではなく、殺害。君が望むような結果にならないと思うが」

 

「はい、構いません。彼女を討つ覚悟は、とうの昔に決めています」

 

 これから歩む道は修羅の道だ。

 きっと、私とツバメちゃんは幾度も戦い……何度も殺し合うと断言できる。

 必死に説得した末に改心し、ハッピーエンドだなんて、絶対にありえないだろう。

 私にも彼女にも譲れない理想がある。

 互いに相容れないと理解しているが故に、どちらかが死ぬまで終わらなくて。

 

 しかし、それで構わない。

 憂いも後悔も、戸惑いもあるけれど。

 凶行に走るツバメちゃんを見逃して……後悔だけはしたくなかったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 市浦鹿波が立ち去った後の執務室。

 仮面を被った、ゼロと呼ばれている少女と、愛らしい姿をした一匹のマスコットが対面していた。

 

「いやぁ……やっぱり、いたいけな少女が葛藤する様を見るのは楽しいねぇ。手間暇をかけて、色々と細工した甲斐があったものだ」

 

「悪趣味極まりないな」

 

「そう言わないでくれよ。変わり映えのない生活を送っているとさ、刺激が欲しくなるものじゃないか。ボクと同様に、数百年生きている君なら分かってくれるだろ?」

 

「全くもって、理解できないよ」

 

「……ああ、そう。相変わらず、気が合わないねぇボク達は。まぁ、利害の一致で協力しているだけだから、一向に構わないけれども」

 

 片や、楽しげに語り。

 片や、不満げに押し黙る。

 部屋には険悪な雰囲気が流れており、とてもじゃないが談笑するような空気感ではない。

 しかし、マスコットが意に介す事はなかった。

 

「それにしても、中郷潮雨。彼女は、本当につまらない最後だったな。死ぬ直前に小物らしく泣き喚くと思っていたのに……変に強キャラぶっちゃってさ。やっぱり、カタルシスがないと盛り上がりにかけるよね。もっと、軽めの過去を持つ差別主義者を差し向けるべきだったと反省しているよ」

 

「…………」

 

「……はいはい、良く分かりましたよ。愚痴の一言すら聞けない、君の器の小ささがね」

 

 やれやれといった感じでマスコットは嘆息する。

 依然として、仮面をつけた少女は机に両肘を立てて寄りかかり、不満を露わにしていた。

 

「でも、希望通りだっただろ? 正義を信じる少女が力を得るために闇に堕ちた。これで、計画の第一段階は完了。キミの妹ちゃんが創設した悪の組織によって……世界の変革が始まる。因みに、第二段階も進めているよ。もうすぐで準備が終わる」

 

「……そうか」

 

「キミはボクの事を悪趣味だと批判したけれど、その言葉そっくりそのまま返させてもらうよ。なんせ、キミは何百年も前からこの計画を進めていたのだからね。大厄災を共に生き抜いた妹を裏切り、魔法少女協会を腐敗させて。本当に、酷いマッチポンプだよね……ねぇ、お願いだから教えてくれよ。キミは一体、どんな目的があって」

 

 次の瞬間。

 仮面の少女が手を叩く。

 すると、つらつらと能書を垂れていたマスコットが、ぶちゅんと音を立てて潰れた。

 愛らしいフォルムは見るまでもなく、勢い良く吹き出した血は執務室の床を真っ赤に染める。

 それでも、不快感は拭えない。

 マスコットの姿は依代に過ぎず、何度殺したとしても生き返る事を理解していたから。

 

「……ほんと、疲れるなぁ。でも、頑張らないと」

 

 少女は仮面を外し、ため息を吐く。

 次いで、執務室の机の引き出しから、色褪せた一枚の写真を取り出した。

 そこに写っているのは、楽しげな表情でピースサインをする黒髪の少女、幼い頃のゼロと……浅黒い肌の活発そうな少年。

 怪人一号、その人だった。

 

「……キミだけのために一生懸命終わらせた世界。心ゆくまで楽しんでくれたら嬉しいな」

 

 少女は笑う。

 あまりにも歪み切った偏愛を携えて。

 





 これにて第一章は終わりです。
 大学の定期試験があるので、それが終わり次第、第二部を開始する予定です。
 申し訳ないですが、1週間ほどお待ちください。
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