Blue Skies give me so much hope. 作:あーねむ 草の民
「ヴァイパー7-1…ライフル」
◯
2時間前、USMI所属の2個機械化歩兵大隊と1個戦車大隊が北部のキルボックス・ウィスキーへ前進を始めた。そしてヴァイパー戦闘飛行隊はその近接航空支援を行うため、砂漠の真上15000ftに翼を広げている。さっきのブリーフィングではギャドフライ、ゲッコー、ガネフのレーダー波に関する報告を聞いた。昨日CAPにあたったF-15Cに至ってはチャフを使い切って帰投してきたらしい。些か旧世代的ではあるものの、旧ソ連の機動性のある防空コンプレックスがAOに展開されていることは、我々にとって大きな脅威となっている。そんな場所に、これから地上部隊支援を目的に飛び込むのだ。
右MPDを操作し、ウェポンステーション画面を表示する。緑の表記で左から順にAMRAAM、マーベリックが2発、JDAMが2発と記され、右翼にも同様に兵装が搭載されている。
「ヴァイパー7-1、ウェイポイント3を通過」
『2』
AOであるキルボックス・ウィスキーに突入すると同時に特徴的な音が鳴り、思わず顔を顰めながらRWRディスプレイを確認する。2時方向に「8」と言う数字があった。
『7-2、レーダースパイクSA-8。隠れたイモリが早めに出やがった』
「ワイルドウィーゼルがもう来る。ほら、上を見ろ」
テイラーが言い終わるより早く、更に5000ft上空をF-16CJ2機がマッハ2で追い抜いていく。ECMポッド、空対空兵装を持った機体とHARMを備えた機体のSEAD部隊だ。
『セプター2-1、マグナム。ディフェンディングノースウェスト』
『2-2コピー』
右主翼からHARMを撃ち出したセプター2-1が一定間隔でチャフを放出しつつ北西へブレイクする。続いて2番機も離脱。白い尾を引いて短時間で上昇したミサイルは、およそ20秒後にSA-8のレーダー目掛けて地面に飛び込んだ。同時にRWRディスプレイから8の文字が消える。
「こちらヴァイパー7-1。セプター2-1、グッドキル」
『セプター2-1、滞空ポイントで待機。ヴァイパー7、良い狩りを。アウト』
セプター2-1から激励を背に、地上部隊の主要交戦地域である市街地とその近郊を10時方向の視界に入れる。F-16の良好な視界ははっきりと市街地の遠景を映す。頭に叩き込んだ地図と視覚情報を照らし合わせながら、ブリーフィングで聞いたJTAC達のコールサインを思い浮かべる。
RWRに新たな反応はない。兵装の確認のためにディスプレイとキャノピー間で視線を行き来させていると、JTACであるコールサイン「テキサス6-1」から支援要請の無線が届いた。
『ヴァイパー7-1、ヴァイパー7-1。こちらテキサス6-1、敵の強力な火力で前進が止められている。近接航空支援を要請』
「こちらヴァイパー7-1。ヴァイパー7エレメントは即応可能」
『ヴァイパー7-1、テキサス6-1。ウィスキーセンター(市街地)ブロック13から14で進入せよ。確認次第チェックイン』
「ヴァイパー7-1」
JTACからの要請を受け取り、高度14000ftから13000ftに降下し、市街地方向へ操縦桿を切る。それと同時に、こちらの編隊が使用可能なアセットとコンディションを報告するために新たな情報を伝える。
「ヴァイパー7-1、ミッションNo.4819A、こちらはF-16Cヴァイパー2機編隊。現在ウィスキーセンターの北10マイル高度13000を飛行、方位2-0-0から進入する。武装は2機ともマーベリック2発、JDAM2発、ガンを500発。支援可能時間は40分、ライトニングER装備の為カテゴリー2が可能。VDLコードは7123と7162、ABORTなし」
『6-1コピー。攻撃クリアランスはテキサス6-1が指定。ターゲットエリアの天候は良好、IP進入までの間IPウィスキーセンターの東で待機せよ。ゲームプラン受領準備完了し次第知らせ』
機体の状況及び装備の伝達のお返しに、ターゲットエリアの報告と指示が来た。幾つかの黒煙と白いスモークが立ち昇る街中では、味方部隊がゲリラ相手に壮絶な市街戦を繰り広げているだろう。ふと、いつか見た湾岸戦争の写真を思い出す。炎が上がる無数の油田を背景に、広大な砂漠を見下ろすストライクイーグルやヴァイパーの編隊は、脳内で勝手に自分と重なり合った。
作戦中だぞと独り言を言いながら思考を振り落とす。彼らもそうだったんだろうか。余計な考えが頭を離れることは無かった。
「ヴァイパー7-1、ゲームプラン受領用意よし」
『ヴァイパー7-1、タイプ1管制。BOT、2発のマーベリックを使用、30秒の間隔。9lineの受信用意でき次第報告せよ』
タイプ1管制。JTACが支援機と目標を完璧に目視できなくてはできないこの方式は、最も厳格な管制と言われている。
「テキサス6-1、ヴァイパー7-1レディ」
『IPウィスキーセンターより進入、方位2-7-0左へオフセット、13マイル。目標高度300ft、2両のBMP、CM 348 173。マーク無し、ブルー目標南800m、左旋回でIPウィスキーセンター、ブロック14へ。リマークス用意』
無線に耳を傾けつつ、ここまでの内容を全てメモへ記す。かなり汚い文字だが、読めないわけではないので問題ない。
「…7-1レディ」
『FAH2-8-0から3-3-0、高度3000ft以上を保持』
「ヴァイパー7-1、目標高度300ft、CM 348 173。最終攻撃方位2-8-0から3-3-0、高度3000ft以上を保持」
操縦桿から伝わった電気信号が翼を動かし、機体が緩やかな旋回を始める。砲火によって大きな穴や弾痕が目立つ市街地が、こちらを恨めしそうに見上げていた。
『ヴァイパー7-1、テキサス6-1。復唱よし。ヴァイパー7-2、復唱せよ』
『こちらヴァイパー7-2、目標高度300ft、CM 348 173。FAH2-8-0から3-3-0、高度3000ft以上を保持了解』
『ヴァイパー7エレメント、復唱よし』
無線を聞き流しながら旋回を続け、指定されたIPへと近づいていく。後ろに首を回すと、主翼と座席シートの向こう側にホウェットストーンの機体が小さく見えた。
エレメントはIPに到達。旋回を終えて、市街地を正面に捉える。ウェポンステーション画面を操作し、マーベリックを選択。右MPDに映し出された赤外線映像には、白と黒のトーンで浮き上がった街並みがある。
「ヴァイパー7-1、IPインバウンド」
『ヴァイパー7-1、こちらテキサス6-1。継続せよ』
「ヴァイパー7-1、コンタクトBMPs。7-1 IN」
『7-2 IN』
『テキサス6-1、ヴァイパー7と目標を視認完了。クリアードホット』
JTACからの攻撃許可を確認し、画面の中央を2両のBMPに持っていく。目標は街を南北に貫く道路を塞ぐように壁をつくっており、南側から進行している味方部隊を足止めしていた。
「フライトリード、北の方をやる」
『2、南の目標をロック』
高度13000ftから撃ち下ろされたミサイルは、ただのIFVにとって過剰な程の威力だろう。そんなことを考えつつ、低い建物で隠れることもできない敵に哀れみを込めて、
「ヴァイパー7-1…ライフル」
翼下ハードポイントから滑り出したマーベリックは、白い噴煙をあげて母機から躍り出る。広いデルタ翼が空気を鋭く裂き、熱源目掛けて一直線に突き進む。重力と推進剤によって超高速で滑空したミサイルが、道路で足止めをしていた1両のBMPの突き刺さる。薄い天板をぶち抜いた爆風とメタルジェットが内部の乗員をミンチ肉へ変え、弾薬庫に直撃。誘爆を起こして大爆発を起こす。キツく閉められたハッチでさえも、内部からの爆圧に耐えかねて職務を放棄しひしゃげる。
『ヴァイパー7-2、リードの着弾を確認。IN』
『こちらテキサス6-1。ヴァイパー7-2、リードの着弾から南10m、クリアードホット』
『ヴァイパー7-2、ライフル』
同じくウィングマンもマーベリックを発射。攻撃を完了した2機は予定通り市街地上空を北東へ抜けていく…ところだった。
離脱するために左へと操縦桿を倒したところ、何かが見えた。真下の市街地、建物の屋上に白いものが見える。白い塊は徐々にその体を引き延ばし、細い線となってこちらに向けて伸びてくる。RWRは鳴っていない。
「MANPADS!ヴァイパー7-1ディフェンディング!」
操縦桿を倒して90度ロール。回避機動を取ろうとするが遅かった。背中に強烈な衝撃を受け、コックピット内で首が大きく揺られる中、どうにか落ち着いて周りを見回す。エンジンなどもごっそりやられたらしく、HUDやMPDには何も映っていない。機首が回転し始め、コントロールフィックスが不可能だと悟るや否や、オンにしていた射出座席のハンドルに手を伸ばし、力の限り引っ張り上げた。
すみません、本当にすみません…サボっていたのは事実です…
誤字などがあればどうか報告をお願い致します。