Blue Skies give me so much hope. 作:あーねむ 草の民
高度13000ft。地上の街が雲により白く霞んで見え、荒野が地平線の向こうまで続く。
「こちらエンフィールド1-1、ヴェイル1-1、リクエストボギードープ」
『こちらヴェイル1-1、ピクチャークリア』
AWACSの無線によると敵機はなし。今回は接敵もなくCAPを終わることができるだろう。ウィングマンがエンジントラブルで帰投した今、2機のMIG-29でも脅威になりうる。現在私が搭乗しているのはF/A-18Cホーネット。F-16に劣る速度とバカみたいな兵装搭載量が特徴の艦載マルチロール機だ。AIM-120CとAIM-9Xを搭載し、レーダーに映る不明機をいつでも撃墜できるよう待機している。
「頼むから誰も来るな…よ!?」
目の前に光の玉が数十個、風切音と共に真下から上空へ上がっていく。否、これは曳光弾だ。機銃だ。考えるより早く操縦桿を左に倒し、引く。一瞬だが真横を上昇しながら通る機体が見えた。まずい、機影からして敵は
「エンフィールド1-1、エンゲージングバンディット!敵機はSu-35、機数1!」
無線で状況を伝え、キャノピー越しに上空を見る。フランカーは尚も上昇し、高度を稼いでいる。ホーネットは双発の癖に速度が出ない。恐らく奴を追って上昇すると失速し、そこで墜とされる。この状態での最適解は、相手を低高度に引き摺り込むこと。左を見ると、砂で覆われた山がある。これを使って戦闘を行う。と、その前に。
「くれてやる!」
この状態でのAMRAAMはただのお荷物でしかないので、ボアサイトモードで相手にぶん投げる。
「エンフィールド1-1、マッド・ドッグ!」
機首を一気に上に挙げ、敵機に向けてショット。操縦桿を引き、頭上を通って目の前に地上を持ってくる。そのまま垂直に降下し、山へ向けて機首を動かす。その間に残りのAMRAAMを投棄。上昇を終えたフランカーは位置エネルギーを速度エネルギーへ変換し、自機を高速で追ってくるはず。山間部に逃げ込み、山を巻くように飛行して敵機の引き離しとあわよくばマニューバキルを狙う。
「…追ってこない?」
山間部に入った。600ftの低空で飛行しているため、左右は山の砂色で埋め尽くされ、空は頭上だけと言っていい。だが、肝心のフランカーが追ってこない。しかし後ろばかり見ていると、山間特有の起伏のある地形にキスをしてしまう。追ってこないということは、未だに山の手前で旋回しているということ。
現在敵機と山を挟んで反対側にいるはず。山頂から飛び出してサイドワインダーを発射。そうすれば敵の意表を突ける。しかし失速の可能性があるため、この瞬間だけアフターバーナーを使用する。
操縦桿を引き、スロットルを1番前まで倒し、一気に山頂へ向けて上昇し始める。山肌の岩が鮮明に見え、瞬時に景色は後ろへと置いていかれる。地上との距離はおよそ10mほど。山へぶつかる可能性があるためもっと強く操縦桿を引く。頬が地面へ引かれ、体全体が無理やり座席へ押し付けられる。肺が潰れるように息苦しく、マスクの中で息を荒くするが十分に酸素を取り入れられない。視野が狭くなっていく。音が離れていく。視界が黒く染まりそうになる。まだ、まだ終われない。操縦桿を引く手だけは緩めない。
「ーーーーーーーーッ!!!」
山頂を超え、急に視界が開ける。すかさず操縦桿を倒し、機体を180度回転させる。さっきまで頭上にあった空は姿を消し、代わりに茶色の大地が広がる。操縦桿とスロットルを思いっきり引き倒し、主翼が折れるのではないかという勢いで背面降下してシーカーオープン。
視界が暗くなる中必死に目を開き、音を聞く。ヒートシーカーの特徴的なノイズのような音が鳴り、HUDの向こうの黒い影を囲むように緑の円が表示される。ノイズが甲高い音となり、ロックしたことを示す。また180度回転して背面飛行を終え、敵機が旋回する先へ機首を向ける。
「エンフィールド1-1、FOX2 to FlankerE!」
翼端のパイロンからサイドワインダーが射出され、白い煙が弧を描いて敵機の進行方向へ伸びていく。フランカーは連続でフレアを射出しながら機首上げをし急減速。サイドワインダーは空中で静止するような機動をするフランカーに対応できず、横を通り過ぎる。
「映画じゃねぇんだから」
機銃に切り替える。レーダーレティクルの円、その真ん中の点を影に重ね、通り過ぎざまに大量の20mmを吐き出す。機首から白い煙をあげながらフランカーの横を通る。後ろを見ると右主翼やコックピットを失った鉄塊が破片と油、炎を撒き散らして今まさに砂上へ墜ちようとしていた。
「エンフィールド1-1、スプラッシュ1バンディット、Su-35」
機体を傾け、煙が上がる墓標を中心に左旋回をする。
「パイロットのイジェクトは確認できず」
水平飛行に戻り、呼吸を落ち着ける。敵機は直前までレーダーに映っていなかった。おそらくは谷を縫うように来たのだろう。だとしたらとんでもない技量だが。
「エンフィールド1-1、ビンゴフューエル。一度チェックアウトする」
『ヴェイル1-1了解。幸運を祈る、アウト』
夕陽に照らされるホーネットは巣に向けて飛んでいく。
なんかいつもより長い気がする…(今更)
これを書いている途中に模試とかを挟んだので投稿が少し空きました。すいません許してください、なんでも許してください…
感想と評価を置いてくれても構いませんよ?(乞食)