獅子動乱し、竜に喰らいつく   作:区星

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脳内将棋盤

 脳内将棋盤……? いや、あったけど使わなくなっちゃった。八一くんとか、あいちゃんならさぞ立派なものがあるんだろうけど。別に見えたところで負担かかるし、そもそもあの当時、あんまり自分の脳内将棋盤がよく見えてなかった気がするし。そんなこんなで符号だけで考えて形勢判断とかするようになったけど。

 

「正直盤面見て読めば良くない? あったところでそんなに使わないでしょ?」

 

「実際僕も滅多に使いませんからね、対戦相手の方から見たらどうなってるかな?ぐらいで、ほぼ符号で読んで形勢判断に使うかな、という感じですね」

 

 昔のように脳内将棋盤を引っ張り出したけど、やっぱりあの頃と変わらない。ピンぼけした盤面と駒だった。

 

「やっぱりこれじゃ読めないね。わたしにはこれ(脳内将棋盤)はあんまり向いてないと思う」

 

 符号に戻すとスラスラと読みが浮かんでくる。他の人は違うんだろうけど、私にとってはこっちの方が楽で素直な感覚に近い。

 

「はっきり言えば脳内将棋盤が何面あるかとか、読みが速い遅いとかってそんなに重要じゃないと思うよ。今の有利不利がしっかりとわかる方がよっぽど大事。自分の感覚が正しくて信用出来るなら、どんなに強い相手でも抗える」

 

 名人はそこを揺るがしてくるらしいけど。

 

「そういえば、脳内将棋盤が多いと多面指しが楽になるって八一さんから聞いたんですけど、どう思います?」

 

「別に感覚だけで読まなくていいなら目隠し多面指ししてもちょっと精度落ちるぐらいでそんなにしんどくはならないと思うけど」

 

「え?」

 

「え?」

 

 ………えっ。

 

「なんならやってみよっか?3面ぐらいで」

 

 インターネットだから相手が目隠ししている保障はない、ないけど信頼関係があるので問題はない。

 

 ………

 

 ……

 

「なんで……そんなにけろりとしてるんですか、本当に人間なんですか?」

 

「息を吸うのに考える必要ってないじゃん、そういうことだよ?むしろ3面とも序盤で力戦に誘導したはずなのによく全部まともに指せてるね?反則どころか目立った悪手もないの、天才ってやっぱり違うなぁ」

 

「……」

 

「黙り込むのやめてよ、本当に人間じゃないみたいじゃん。ちょっと勘弁してってば。ねぇ」

 

 その後3面指しが終わった後無言で通話を切られた。創多のバカ。

 

〜〜〜〜〜

 

「脳内将棋盤は使えない、符号の方が読みやすい。感覚で指した方が異常に早く楽に指せる」

 

 本当に蘭さんって人間なんですか?ソフトが人間のフリをしているって言われてそんなに違和感ないですよ。

 

 目隠し三面指しはなんとか僕が2面を投了に追い込んで、残りの1面で頓死させて完全勝利になった。本音をいえばしんどいけど、それはそれとして蘭さんの終盤はちょっと脆かったなって。

 

 正直それも人間アピールと言われるとアレだけど、普段から評価値的に次善から三番手あたりのトリッキーな一手も混ぜてくるので迂闊に一直線で読めないから体力使うんだよね。八一さんもすごいけど蘭さんの方がやっぱりおかしい。

 

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