隻腕のシド・カゲノー   作:読者0

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続きは反応次第になります。

頭があまりよくないから説明が下手になってます。


失ったもの

僕はシド・カゲノー。

今年で14歳になる転生者だ。

前世ではどこにでもいる一般人Aを演じながら将来の夢である「陰の実力者」になるための修行をしていた。

とはいえ学生にできることなんてたかが知れている。

技を鍛え、肉体を鍛え、知識を蓄えその時に備えていた。

だが僕の理想の陰の実力者は無敵の存在。例えどんな攻撃...それが核であっても死なないのが僕の理想だった。

悩みに悩んだ末僕は答えに辿り着いた。

 

『魔力』

 

ファンタジーに登場する万能の力。

ありとあらゆる方法を試して魔力を得ようとした。

ある日夜の森の中で全裸で木に頭を打ち付け、魔力を得るための実験をした帰り道ついに魔力を発見した。

.....と思ったらトラックのライトで、道に飛び出した僕は撥ねられあっさりと死んだ。

痛みもなく急に目の前が真っ暗になり、一瞬の事だった。

 

そして僕は今の世界に転生した。

赤ん坊からの再スタート、今までの努力が踏みにじられたみたいで気分が良くなかったが魔力がある世界に転生した喜びに比べれば割とどうでも良かった。

産まれた家は辺境の男爵家、両親と姉がいた。

両親の仲はなんと言えばいいのか分からないがいいとは思う。

姉は....お転婆とかそんな優しいレベルの人ではなかった。

僕の態度や言動が気にいらなかったら言葉よりも先にまず僕の首を絞める。初めて首を絞められたのは9歳の時だが本気で怖かった。

前世でバール片手に暴走族に突っ込んだ時よりも、傭兵を相手にした時よりも怖かった。

そんな姉も15歳の時に誘拐されて帰ってきてからは多少大人しくなった。

ちなみに助けたのは僕。

たまたま盗賊狩りをしていた時に拾った悪魔憑きになっていた女の子にノリで悪の組織の設定を作って話したら真に受けて気づいたら組織のトップにされてた。

姉さんを誘拐したのがその悪の組織だったので組織トップとしては動かないと示しがつかなかった。

その組織も気づいたら100人超えてたし、ノリで話した悪の組織は実在していたし、新しい拠点も手に入って万々歳と思っていた。

だが僕は忘れていた、人生は上手くいかない。

トラックに撥ねられてあっさりと死んだように予想が付かないことが起きることを。

14歳の時にそれを思い知った。

 

 

 

「外れだ」

 

今日の盗賊狩りの成果は0。

いつもなら美術品やら、酒やら、金貨があるはずなのに今日の盗賊は何も持っていなかった。

食料はあったがそれも数日分だけ、それ以外何もなかった。

わざわざ外泊の許可まで取ったのに何も成果が得られないなんて時間の無駄だった。

 

「ん?」

 

歩いているとそれ(・・)と出会った。

全身が黒い霧か煙のような人型のナニか。

この世界にはエルフや獣人がいるがその特徴は見当たらない。

何より不気味なのが生物とは思えない.....生きているものを相手にしているとは思えない。

前に戦った霧の龍も世界から切り離された存在だから不死とかいってたけど生きているという感覚はあった、なのにこの黒いナニかからはそれが全く感じられない。

そこに1人分の空白があるような感覚を感じる。

 

「ぐっ」

 

瞬きすらしていない、視線も外していなかったのに接近されていた。

そしてボトリと左腕が落ちた。

黒いナニかは武器を持っていない。手刀で切り落とされた。

痛みは遮断しているから直ぐに動ける。

 

「アトミックソード」

 

胸に剣を突き刺し魔力を放ち消滅する。

黒く途轍もなく不気味なナニかは消滅した。

なのに不安が消えない、先程感じた不気味さのせいでずっと不安が付き纏う。

切り落とされた腕を拾い、切断面を合わせる。

 

「治らない....」

 

この程度なら何の問題もなく治せる。

そのはずなのに治らない。

新しい腕を作り出そうとしても作れない。

原因は何だ?

......これが原因?

 

「殺さずに生かしておくべきだったのか?....いや、考えた所で無駄だな。それにアルファ達が傷つくよりはいい」

 

僕だから反応して左腕で済んだが、もしアルファ達だったら確実に死んでいた。

原因は分かった、でもこれが原因だとすると治すのはまず無理だ。

 

「アイツに聞いてみるか」

 

正直好きではない。

会うたびに老人臭い説教なのか嫌みなのか分からない小言を吐かれるから好きではないが会うしかない。

 

 

 

「いるんでしょ?出てきてよ」

 

僕がトップを務める組織シャドウガーデンの本拠地アレクサンドリア。

深い霧に包まれた森の中で、霧の発生源に呼びかける。

 

「また来たのか」

 

霧の中からゆっくりと龍が現れる。

日本の神話で見る蛇のような龍ではなく西洋型の翼を持った龍。

 

「ちょっと調べて....」

「あの犬の娘をなんとかしてくれんか?」

 

ほら始まった。

 

「手当たり次第に暴れまわるから五月蠅くてかなわん。あの娘はお前の言う事なら聞くのだからもう少し落ち着く様に言ってくれ。それとあの猫の娘もだ、あの娘が煽るから余計に酷くなる。お前も組織の長なら部下の手綱がぐらい握ったらどうなのだ?」

 

この前も聞いたよそれ。

できるものならもうとっくにやってるよ。

手綱を握れ?あれは手綱をかけたらその瞬間に食いちぎって暴れ回るから手綱を握る以前の問題だ。

 

「あの娘はお前の子を望んでいるのだからいっその事、子をつくれば大人しくなると.....」

「調べて欲しい事があるんだけどいいかな?」

 

恐ろしい事を言うな。

そんな事したらまた100人子どもを作るとか言い出しかねない。

 

「これを調べてほしいんだけど」

 

切り落とされた左腕を差し出すと目を丸くして驚いている。

 

「お前が腕を切られるとは.......明日は槍でも降るのか?」

 

不死の龍に言われると傷つくな。

 

「.....待て、何故治さない?お前ならこの程度は大したことではないはずだ」

 

気づくのが遅い。

 

「それを調べて欲しいんだ」

「治すのは無理だぞ?」

「違うよ.....えーっと、概念?そういうのを調べて欲しいんだ」

 

こいつなら腕を治せない原因は分かるはずだ。

霧の龍が僕にかけた加護は僕の解釈が正しければ、概念的なものだ。

僕から正体に繋がる痕跡を残さない限りその正体は霧に包まれたように隠される。

解釈が正しければそのはずだ。

それに気の遠くなる年月を生きているこいつなら心当たりもあるだろう。

 

「....お前一体ナニ(・・)と戦った?」

「黒い人型の煙」

「.....腕で済んだのを喜ぶべきなのか、倒したお前の成長を喜ぶべきなのか分からないな」

「酷くない」

「シャドウ、お前の左腕は....」

「治らないんでしょ?それと.....」

「左腕の存在(・・)が消されている」

 

やっぱりか。

僕のは治療ではなく再生の方が正しい。

肉体の情報を設計図のようにして管理し、負傷すれば設計図通りに肉体を治す。

消されているのだ、シド・カゲノーの肉体の設計図から左腕の存在が。

記憶がいじられたわけではない、生まれた時からの記憶もちゃんとあるし記憶の中の僕には左腕が付いている。

 

「詳しく言うとシャドウという人間を構成する要素から左腕の存在が消されている」

「だから繋げるのも無理なのか」

 

僕という個人を構成する要素から左腕の存在が消されている。

切り落とされた腕は確かに僕の腕だ、細胞も血も僕のものだ。

だがこの腕は繋げようとしても異物として扱われるから繋げない。

 

「スライムも駄目なのか」

「無理だな」

 

スライムで腕を作ってみるけど、ただぶら下がっているだけのようなもの。

僕の操作能力なら本物の腕と遜色なく動かせるはずなのにそれができない。

動かそうとしてもスローモーションのようにしか動かせないし、力も全くこもっていない。

 

「落ち着きすぎではないか?」

「そう?普通でしょ」

「普通の人間は腕が無くなれば冷静ではいられん」

 

武器は命を奪うことのできるものだ。

握ったのなら体の一部がなくなること、命が奪われるような事になるのは当然の結果だ。だから僕の腕がなくなるのは当然の結果だし受け入れなければならないことだ。

でもこれはあくまで僕の考えだ、他人に押し付けるものではない。

もしアルファ達に同様のことがあるのなら僕が代わりに受ければいい。

 

「どうするつもりだ?」

「腕は諦めるしかないね」

「それもそうだが、あの娘達にどう説明するつもりだ?」

 

.....あ。

 

「.....手伝ってくれない?」

「断る」

「僕だと上手く説明できなさそうだから手伝って欲しい」

「私が一緒にいけば、私が切り落としたと言いかねんぞあの娘達は」

 

流石に....流石にそれはないでしょ。

 

「大丈夫だって、そこまで思い込み激しくはないはずだから」

「....そうだといいがな」

「.....たぶん」

「今何か言ったか?」

 

どう説明したものか。

泣かせずに説明したいんだが難しそうだ。

 

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