自宅にテラー化した生徒が住み着いた   作:ミステイク

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すみません、幕間忘れてました。


幕間・失った者達

 本当に皮肉なのは、黒服とミライの行動理由が同じだった事である。

 ミライと直接対峙した理由は戦う事でも、ましてや仲間に引き入れる事ではなく。

 

 どうせ死ぬのなら、最後に自分を殺す相手の顔を見てみたかったに尽きる。

 万魔殿の生徒を連れ出した目的も直接対峙する機会を伺う為。

 

 ミライと対面した時、黒服に攻撃手段はなかった。

 もしもあの状況で銃を使われていたらきっと、いや間違いなく倒されていた。

 

「雷帝の遺産にも興味はありますが……」

 

 ミライの言葉はハッタリである、そう黒服は九割九分判断していたがデカグラマトンを味方に付けた時点でそんな事は些事だろう。

 

「デカグラマトン……あなたの目的は一体?」

 

 超高性能の人工知能、神の存在証明から分析、解析。

 新しい神を作り出す存在、だと思っていたがミライを助ける彼の者の行動は目的から逸脱している。

 本格的な色彩との敵対、早過ぎる戦いを想像していた黒服の不安は良い意味でも悪い意味でも外れた。

 

 引き篭もりのデカルコマニー、個人主義のマエストロ、ベアトリーチェも何かを計画して動いている。

 同士とも仲間とも一概には言えない関係の彼等との協力を考えていたが。

 

「少なくとも今はまだその時ではない……そう思っても?」

 

 そうして黒服は壊れた瓦礫の陰へと視線を向ける。

 現れた白い翼の少女、ティーパーティー━━聖園ミカ。

 

「その恐怖としての側面」

「半分正解、半分不正解かな?」

 

 顔は笑顔だが目は笑っていないミカに、黒服は正面から対峙する。

 そしてある一つの仮説を思いついた。

 

「私の邪魔をしたのはあなた……いえ、あなた達でしたか」

「達、って指してるのが誰かは想像に任せるけど、隠す意味もあんまりないかな?」

「色彩の力で理事を暴走させたのも」

「それは私かな、まああの時は幽霊みたいになってて、中身が出ちゃってたからどんな風に見えてたかは見た人にしか分からないけど……」

 

 笑顔のままのミカは、子供らしくない一切の情動を感じない瞳と銃口を黒服に向けた。

 

「しばらくミライちゃんと私は忙しくなるからさ、大人しくしてもらいたいなって」

「私を殺しますか」

「そんな酷いことしないって☆! 見逃す代わりに、って卑怯な事も言わないよ――――私はあなたがする最高の神秘捕獲の妨害、干渉をしない。その代わりにトリニティへの一切の干渉もしないで……それでどう?」

 

 そう言いながらミカは銃を下ろす素振りは見せない。

 黒服は選択肢などあってないような物だが。

 

「…………」

「契約成立。精々頑張ってね、応援はしないし失敗するだろうけどさ……何せ、先生が居るんだから」

「先生ですか……梔子ミライではなく?」

「わお、そんな表情できるんだね!」

 

 心底驚いたような顔をわざとらしい仕草を交えてするミカ。

 表情の変化をどう判断したのか分からないが、表情がなくとも黒服はとても不機嫌な声色を出した。

 

 黒服は自分でも驚いている。

 子供相手に苛つくなんて幼稚な感情を今更表に出すとは思っていなかった。

 

「大丈夫、だってミライちゃんがそう言ったんだから」

 

 先程までの何も映していなかった瞳に色が宿り、ミカは大きな翼を広げた。

 

「お願い、アロナ」

 

 そしてミカの姿はその場から消えた。

 

 

 ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 トリニティ総合学園、ティーパーティーのミカ専用のセーフハウス。

 まだ没収される前の、屋根裏部屋とは掛け離れた広さと設備に懐かしさを感じつつ、ミカはベッドに愛しい友を寝かせる。

 

 既に空の色は暗い、明かりを灯せばミライが起きてしまうとミカはそのまま近くの椅子に腰掛けた。

 静かな呼吸を繰り返して目を瞑るミライの姿を見て、ミカは頬に流れてくる熱いものを感じる、ような気がした。

 

「やっぱりダメかー、でもまあ魔女にはお似合いの罰かもね!」

「…………ミライちゃんをどうする気なの」

 

 喋り掛けられ、背後に立つ炎をミカは一瞥した。

 元の姿から程遠い、変わり果てた存在。

 

「まず私を見て驚かない? 来るのが遅いー! とか、どうして元に戻ってるのー!? とか!」

「………」

 

 真面目に答えないのを見て炎、ホルスは視線をミカからミライへと向ける。

 

「ミライ、ミライミライミライミライ……!」

 

 倒れて眠るミライの顔の上で、ヒナは縋るように被さって見つめていた。

 大切な宝物を愛でるように、愛しい相手へと囁くように。

 そう本人は認識しているのだろうが、ミカとしてはさっさと離れて欲しいのが実情だ。

 

「正直、もうそういう感覚は薄いんだけど、嫉妬心とかはあるから離れてよ。ミライちゃんもそれじゃあ休めないでしょ」

「……ミライ、ミライ。そうね、休ませて、休んでもきっとまた……ああ! もう傷付かないで……! ああ、ごめんなさい……私がもっと早く」

「はぁ……」

 

 対話する機能が欠落している。

 なんとかミライから離す事は出来たが、ヒナは未だに本人にしか見えない悲劇を見続けている。

 

 精神的な部分で大きな変化があったミカと違い、ヒナは弱いままにそうなった。

 

「安心してよホシノ……ああ今はホルスちゃんか。ミライちゃんは私が必ず守ってみせるから!」

「あなたが守っても、この子は誰かの為に自分で傷つくよ……ヒナちゃんが心配してるみたいに」

「ミライちゃん風に言うなら、そこが良い所でもあるんだけどね〜」

「…………」

 

 ホルスは何も答えない、だが彼女の言う通りの事にはなるだろう。

 ミカが守っても、ミライは自分から傷付きに行く。

 

「出来ればあなたにもお願いしたい事が色々あったんだけど、どうやらスタンスの違いがあるみたいだね。ハッピーエンドを望んでる訳じゃないみたい」

「私は、ミライちゃんが無事ならそれでいい……それ以外はもう、どうでもいい……」

「アビドスの生徒達のことは? もういいの?」

「…………」

 

 苛立つような気配をミカは感じた、しかしホルスが激昂して攻撃するようなことはなく背を向けて部屋から消えた。

 どうやら壊れているのはヒナだけではないらしい。

 

「いや、壊れてるのは呼ばれて来た子みんな同じか」

 

 そうしてミカは鏡に映る自身の姿を見た。

 そういえば此処に鏡があった事を忘れていた、昨日から変わらずそこにあった筈なのに。

 

 そしてミカは鏡に写る自分の顔に手を添える。

 

「罪も罰も償う機会も、全部なくなっちゃったけど……やり直しだなんて傲慢な事考えてないけど」

 

 昔の自分、過去の自分。何一つ変わっていない、変わる、反転する前のミカエル()ではない――――聖園ミカ()の肉体。

 

「あなたは魔女じゃないよ」

 

 鏡に映るは白い翼の天使。

 裏切りの魔女は、もう生まれない。




聖書の天使ってすごくグロいらしい
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