自宅にテラー化した生徒が住み着いた   作:ミステイク

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遅れてすみません。


第二章・愛を忘れた女神
第一話・再発


 学園都市キヴォトスにある、トリニティ総合学園の生徒。

 容姿、成績や健康状態は分からない、まだ転校してきて数日ほどなのでテスト勉強すらした事がない。

 人混みに紛れればすぐに見失ってしまうくらいには存在感がない、周囲に居る者達が並いるモデルを吹き飛ばすほどの圧倒的美を誇るせいだろうが。

 もしもこれが物語なら彼女は背景に映るモブその一、そう彼女は認識している。

 

 死を恐れているようで恐れていない。

 恐怖心があるように見えてないようである、実際あるのかどうか分からない。

 その場その場でコロコロと主張が変わり自分の都合の良いように記憶を改変する、精神が強いのか弱いのかもよく分からない少女。

 

「言い過ぎじゃない?」

 

 と、言う人物がトリニティに居るらしい事を聞かされた黒い羽の少女は率直な感想を返した。

 その人物へではなく教えてくれた者に対してのものだが、いやある意味ではその人物へ返したとも言える。

 

「いえ! ミカ様から聞いた話を端的に纏めました。その人の具体的なエピソードとかもありますよ、なんでも幼馴染と喧嘩をしていた上級生の友達を催眠術で操って数週間に渡って一緒に遊んで放置したとか。ゲヘナの生徒会長を泣かせたとか!」

 

「催眠術なんてある訳ないじゃない、変な本の読み過ぎよミライ」

 

「それコハル()()()が言いますか?」

 

 出鱈目な話に付き合う義理はない、だが委員会の憧れの先輩からの指示があったが故にコハルはこの転校生(仮)の案内係に任命された。

 先輩の期待に応えてあげたい気持ちからコハルはやる気こそあったが、正直代われる人が居るなら代わって欲しいと思い始めて来た、まだ数日しか経っていないのに。

 

「あ、見てくださいコハルちゃん。なんですかねこれ、人型の穴がありますよ! 人型の銃弾があるんですかね?」

 

「知らないわよ」

 

「そうですか、話は変わりますけどコハルちゃんの頭のそれってアクセサリーですか?」

 

「そんなの聞いてどうするのよ」

 

「可愛いですねって言いたくて」

 

 変な話をしたと思ったら、なんの脈絡もなく話が変わって急に人を褒めて来る。

 言葉にし難い、ポアポアとした気持ちになってコハルは自分の指を弄る。

 

 そういう話に乗せて変な気を起こすつもりなのだろうか。

 

「と、突然変なこと言わないでよ!」

 

「そうです話は戻るんですけど、その転校生の人ってどこに居るか知ってます?」

 

「聞きなさいよ! ていうかまだその話続けるの!?」

 

 どういう伝手か知らないがミライは何故かティーパーティー、他の学園でいう生徒会長に位置する聖園ミカと関わりがある。

 変な時期に突然転校してきたのも疑問だが一番分からないのはそこだ。

 まあ考えても分からない事を考えるつもりはないのだが。

 

「その転校生ってアンタの事じゃなかったの?」

 

「私のどこがそんな異常者に見えるって言うんですか!」

 

「会って数日くらいでなんとなく……」

 

 まあ異常者は言い過ぎだとは思う、良くて変人くらいじゃないか。

 

「まあ転校生がもう一人居るっていうのは聞いてるけど、会ってどうするのよ?」

 

「私と同じ転校生が居るなら会ってみたくて、もしかしたら私のことを知っているかもしれませんし」

 

 数日の間、あまりにも気安くそんな気配を感じさせなかったのでコハルは忘れていた。

 

「そういえばアンタ、記憶喪失だったわね」

 

 

 ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 記憶喪失などと言うフィクションのような状態になってミライは混乱よりも非現実的なまでの美しさに心臓が止まるような錯覚を覚えた。

 後から銃火器や戦車をごく普通に見かけることの違和感などどうでもいい。

 

「おはようミライちゃん」

 

「え、天使?」

 

 世界中の宝石や芸術作品を並べられても目移りする気がしない。

 圧倒的な美しさを持つ少女にミライはそう口にしたが、実際本当に天使の特徴と一致していた。

 

 純白の翼と頭の上に浮かぶエネルギーを感じるリング状の何か。

 そう、まさしく天使であった。

 

「ふふふ、相変わらずで安心した。全然起きないから心配したよ、半年くらい待たされた気分」

 

「それは……すみません?」

 

「あははっ! 冗談だよ、一日くらいしか経ってないって。でもごめんね、本当はもっと早くに会いに行きたかったんだけど色々と立て込んでねー? 渡したいものも……あ、先にこっちの事情から話した方が良いかな? 実は私も呼ばれて来た側なんだよ、私で三人目でー」

 

「あの」

 

 落ち着いて考え、ミライは天使に質問する権利を望んで手を挙げた。

 

「はいミライちゃん、何か質問?」

 

「とりあえず……あなたの名前を教えてくれませんか? それと、私の苗字も」

 

「……」

 

 微笑む天使の表情から柔和な笑みが消え、色を失った瞳がミライへと向けられる。

 黙っていても美しい。

 

「……この世界終わったかも」

 

 それから天使、聖園ミカの力を借りてミライは記憶喪失のまま保護の名目でトリニティ総合学園の生徒として入学した。

 ミライの前の学園は機能が停止しているが故の措置だと聞いたもののあまり理解できなかった。

 

「それで、このトリニティに来たんですよね。やっぱりそれ以前の事は思い出せませんか?」

 

「すみませんセリナ先輩、何もわからなくて」

 

 学生にしては設備が整い過ぎている、部室というよりも本当の病院のような場所で定期検診をミライは受けていた。

 記憶喪失なのは事実であり、治療の為に救護騎士と呼ばれる保険委員のもとに定期的に通うように言われている。

 

「でも聞いた限りではミカ様ともお知り合いだったんですよね、ミカ様から詳しい事情をお聞きできないでしょうか?」

 

「ミカ様は私の事を一方的に知ってるだけで個人的な事は詳しくなくて、記憶を戻す手伝いは難しいと言われました!」

 

「……個人的に知っているにしてはとても仲良しそうな話しようでしたけど」

 

 飽くまでもミライから聞いただけだが、一方的に知っているにしては随分と親しげではないかとセリナは訝しむ。

 しかしわざわざ隠す理由も思い付かず首を傾けた。

 

「隠し事をする理由があるんでしょうか」

 

「ミカ様がそう言うならきっと大丈夫ですよ。ミカ様が難しいと言うなら記憶は戻らないでしょうから、諦めて第二の人生を歩むしかありませんね」

 

「そこまで諦める必要はないのでは!?」

 

 記憶が戻らない理由はミライの積極性の無さもあるとセリナは内心考える。

 その理由はミカへの強すぎる敬慕の念が原因だ。

 ティーパーティーの生徒を尊敬する気持ちは理解できる。セリナもトリニティを導く三人の生徒会長に全く憧れの感情がないと答えたら嘘になるだろう。

 だがミライのそれは少々度が過ぎているようにも見える。

 

「この学園ミカ様のグッズ売っていないんでしょうか? 雑誌は手に入れたんですけど、あとシスターフッドってどうやって入部すればいいんですかね?」

 

「シスターフッドに入部なされるんですか?」

 

「はい! シスターとしてミカ様への信仰を集めようと思って!」

 

「……」

 

 セリナは自分が上手く笑みを浮かべられていると信じたい。

 カルト宗教にハマった人を見るとこんな気持ちになるのかと、シスターフッドはカルトではないが、このままではミライはいずれミカを信仰する宗教組織を作りかねない。

 

(私がなんとかしないと!)

 

 そうミライを説得しようとしたところで、部室の壁が爆発した。

 爆風と共に煙が二人の間を通って部室に広まる。

 

「けほっけほっ、なんです!?」

 

 崩れた壁の向こう側から影が見え、煙から出て来たのは背中に翼を持った小柄な少女。

 

「まさか」

 

 現れたのはガスマスクを着けた銀色髪の謎の生徒。

 危険な雰囲気を纏う武装した生徒の格好を見てミライは直ぐ察したように言葉を発した。

 

「その翼いいですね! あなたもミカ様推しですか!?」

 

 ミライはどこまで行ってもミライであった。




記憶喪失に対する呼ばれて来た人たちの反応

その1「…………こうなるって分かってた。常にヘルメットを着けさせるべきだね」
その2「ミライミライミライミライミライミライミライ」
その3「やっちゃったじゃんね⭐︎」
タブレット「やってしまいましたね……」
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