自宅にテラー化した生徒が住み着いた   作:ミステイク

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第二話・太陽は常に見ている

 結局、このホシノはなんなのか朝の支度が終わるまで何一つ分からなかった。

 分かった事はホシノは彼女に対して攻撃意思がないと言うこと。

 意思疎通は難しいが、敵意は見られず暴れることもない。

 

 即殺されるような事は無さそうとだけ分かった。

 

「まあそれが分かっただけ安心かな、殺されるかと思った……」

 

 起きた瞬間バッドエンドの始まりと考えた彼女だったが、胸を撫で下ろす。

 もっともホシノの考えが読めない以上、完璧に安心は出来ないのだが。

 それに心配は別にもあった。

 

(ホシノがテラー化して此処にいると言うことは……アビドスは……)

 

 あまり考えたくない事である。

 ホシノがテラー化している異常事態、犯人は黒服か地下生活者だと思われる、若しくは色彩と無名の司祭達。

 だが犯人は今のところどうでもいい、問題なのはホシノがテラー化した際に近くに居た者達の安否である。

 

 今のところテレビやネットでアビドスに事件が起きたというニュースは入って来ない。

 人が少ないせいで、アビドスの情報が手に入り難い。

 

 動かないホシノへと近づき、彼女は直接聞いてみようと恐る恐る話しかけた。

 

「あの〜ノノミさん達ってどうしてます? 無事……ですか?」

「…………」

「ど、どうしてそんな姿になったんです? イメチェン?」

「…………」

「あの一回で良いんで動いてないのに暑いよ〜って言ってくれませんか?」

「…………」

「ダメか…」

 

 ホシノがテラー化した原因は十中八九彼女の大事な先輩だったユメか、後輩のシロコ達が関与していると彼女は知っている。

 それを直ぐに確かめる術を彼女は持っていない訳だが、間違いなくその辺が原因だろうと確信していた。

 

「直接見に行くしかないか……アビドス、迷わず行けるかな〜。行こうとしても止められたから土地勘がないし……遭難に備えて準備して行った方が……でもどうせ死ぬからな〜」

 

 ここがバッドエンド時空のキヴォトスであれば最早彼女どころかキヴォトスの住民全員に未来などない。

 そう考えているものの彼女は念の為にと荷物をまとめて玄関へ向かう。

 

(今頃シロコもテラー化して無名の司祭に取り囲まれてるのかな? 時系列完全におかしいけど……また別のバッドエンドなのかな? 先生が来る前に終わるってどうしようもないじゃん)

 

 憂鬱そうな顔をして扉を開けて家を出た彼女、とその後ろから付いてきたホシノ。

 

「え、付いて来るんですか!? ちょっとそれは不味いというか……ご近所さんに見られたら色々と誤解されるというか……変な意味じゃないですよ?」

 

 側から見ても人間味のない、キヴォトスの住人としても異形に近い姿をしているホシノを見られたらどう説明しても怪しまれる。

 怖がられて逃げられるだけなら兎も角、攻撃されてホシノが敵意を持って行動し始めるのが一番怖い。

 

 テラー化してしまったと言っても理解出来ないだろうし、この威圧感のある姿を見て無駄に警戒されてしまう。

 

(どう誤魔化そうかな? 某騎士王みたいにレインコートを着せる? この赤いエフェクトが邪魔だしな〜)

「あの、どうか家で大人しく……ゲームとかありますからそれで暇つぶし」

「でね!」

「そうなんだ! アハハ!」

「おぼ! 不味い!?」

 

 生徒達の声と足音を聞いて咄嗟にホシノを庇うように隠す。

 腕を大きく振って出来るだけホシノが見えないようにするが全く背後は隠せていない。

 

「あわわ! あばばば!!」

「? あの子一人でどうしたんだろ?」

「さぁ? あ、そうだ思い出したんだけど昨日人気のスイーツ店が近くで出来てさ!」

 

 生徒達が訝しみながらも自宅の前を通り過ぎて行ったのを見届け、彼女は深く息を吐いた。

 背後に隠したホシノの姿はなんとか見られていなかったようで安心する。

 

「ふぃ〜、上手く隠せて良かった……でもやっぱり隠して連れて行くのは無理だね、大人しく家で待ってて……あれ?」

 

 後ろに隠していたはずのホシノへと彼女は振り向くが、ホシノの姿は何処にもない。

 跡形もなく、最初からいなかったかのように消えていた。

 

「…………すごくいい匂いだったなぁ」

 

 彼女の言葉に空気は静寂で返した。

 

 

 ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 姿を消したホシノを探そうかと彼女は考えたが、追いかけられる程の身体能力もないのですぐに諦めた。

 それよりもアビドスの状況を確認する事を優先した。

 

「まあ、全部がぶっ壊れちゃうなら意味ないよな〜」

(私がなんとか出来れば良かったんだけど。そんなに上手くは行かないよね〜)

 

 ドラえもんの如く家に現れたが、未来を変えようにもホシノの願望を推測して考えると色々と手遅れである。

 

(可哀想とは思うし助けてあげたいけど……無茶を通り越して無理だよな〜)

 

 テラー化してロックなビジュアルに変身したホシノ。

 見た目だけならカッコいいのだがその変身経緯は非常に心苦しいとしか言いようがない。

 彼女の罪悪感、トラウマに絶望、大切な人を亡くした気持ちに蓋をして膨れ上がった後悔がテラー化へと導いた。

 

 が、残念な事に彼女にホシノの心の闇を浄化する程の言葉は持っていないし、反転した者を戻す方法も持っていない。

 

『次は城森駅、城森駅です』

「もう少しかな」

 

 誰もいない電車の中、彼女は窓から見える外の景色を眺めながら目的地まで待つ。

 砂に覆われ廃墟と化した街、ゆっくりと砂漠化して行くアビドス自治区の風景。

 

 一見してまだ何も起きていないようにも見える。

 もっともアビドスが既に荒廃し切っているので惨劇が起きたあとなのかなど判別しようがない。

 

(えっと……学校はこの方角かな)

 

 地図を見て学校までの道のりを確認、しようと思った瞬間に爆発音と大きな揺れと共に電車が急停止した。

 

「わにごと!?」

 

 揺れに驚いた彼女は座席から転がり落ちて倒れる。

 爆発音は鳴り止まず銃撃音が増えて段々と彼女の方に音が近づいてくる。

 

(ま、まさかやっぱりバッドエンドが始まって!?)

 

 終わりの始まりを予感し彼女は青褪めた。

 

「うわああ! 助けてー!」

「ひええええ!!」

 

 別の車両に乗っていた乗客の悲鳴を聞き、その直後に彼女の乗る車両の出入り口が爆発によって吹き飛ばされる。

 

(ホシノテラー? シロコテラー? 若しくはセトとか!? ……それにしては攻撃の仕方が地味だな)

 

 恐怖か、以前の忘れられた神々か、無名の司祭によるキヴォトス崩壊なのかと彼女は考えてそれにしては攻撃の仕方が爆発や銃撃とキヴォトス流ばかり。

 そう疑問に思うと、爆発の煙の中からヘルメットを被った少女達が歩いてきた。

 

「この車両は私達が占拠した! 大人しく水と食料とお金を置いてけええ!!」

「ヒャッハー!!」

「あー、なんだ良かったぁ〜」

 

 電車を襲撃して止めたのは世紀末なヘルメット団だった。

 予想していた展開ではなかった事に幸と彼女は安堵するが、渦中の真ん中に居ることに変わりはない。

 

 安心に息を吐く間もなくヘルメット団は起き上がる彼女と目があった。

 

「おいそこのお前! お前も早く出すもん出せよ! 持ってるだろ!」

「え!? あ、はい! えーっと、水筒と飴玉なら……」

「本当に水と食料寄越すんじゃねえよ!? お金だけ置いていけ!」

「お、お金は五千円くらいしか……」

「嘘吐け! もっと持ってるだろ! ジャンプしてみろ!」

「そ、そんな事を言われても……死ぬつもりだったし正直持ち合わせが……」

「え? こいつ今なんて言った?」

 

 古い脅し方をするヘルメット団に彼女は困る。

 彼女はアビドスに骨を埋めるつもりだったので本当に最低限の持ち物しか持ってきていない。

 

「あ! 定期券に一万円くらい入ってますよ!」

「要らねえっ! ……一万円か……どうする?」

「一応貰っておけばいいじゃない?」

「よし寄越せ!」

 

 武力で奪うなら直接店を襲撃して奪えば良いのではとも思うが、彼女は敢えて何も言うことはなかった。

 抵抗しても勝てないと分かっている彼女は大人しく持ち物を渡そうとして。

 

 目の前の全てが消し飛んだ。

 

「…………!?」

 

 反応が遅れた彼女は何が起きたのか理解していない。

 

 突如としてヘルメット団が消滅した、彼女にはそう見えた。

 

 だが実際には外へと吹き飛ばされており、苦しそうに蹲っている。

 

「うぅ……」

「な、何が起きた!?」

「お前の仕業か!!」

「え!? いやいや! 私はなにも!?」

 

 倒れているヘルメット団に駆け寄る増援に睨まれて銃口を向けられる。

 彼女は慌てて両手を挙げて無力だと知らせるが、知ったことかとばかりにヘルメット団は引き金を引く。

 

 より早くに、彼女の前を赤い閃光が走りヘルメット団達は宙を舞った。

 

(今度はちょっとだけ見えた! 一瞬だけど今のって!)

 

 銃撃音さえない、爆発したかのような音が三回続く。

 

 小さな悲鳴と呻き声が微かに聞こえたような気がしたが、赤い衝撃が全てを掻き消す。

 

 土煙が晴れ、ヘルメット団は列車の側で無惨な姿で倒れ伏していた。

 

 その中央には、幽鬼のように銃を構えるホシノの姿。

 

「助けてくれてありがとうございます!」

「…………」

 

 腕を振って彼女は感謝を伝える。

 ホシノは彼女に一瞥すると風が吹き、煙の中に隠れ再び姿を消した。

 

「なんか本当にサーヴァントみたいだ」

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