透き通る世界で二度目の答えは出せるのか   作:回り針

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対策委員会編です。ネタバレになるかもしれませんが一応警告を。

首輪付きさんの参戦は原作本編でいう途中からになります。そこの所ご注意ください。

あと、あらすじにも記載がありますが、原作未プレイの為に台詞がだいぶ違ったり、性格のズレが起きていることが良くあります。その上でご覧ください。それらを確認していないのにも関わらずキャラの性格が違う、台詞が違うと言った苦情は一切受け付けません。


第一印象 変な人

 

 

 

 

 

「アビドス砂漠?」

 

 

 

 

如何にも高そうなオフィスで、灰銀色の髪の少女――標根イサネがおうむ返しの様にそう聞き返す。

 

 

「そう!アビドス砂漠よ。私たち名指しで依頼が来たのよ!」

 

 

イサネの反対に座るいかにもなコートを羽織る少女――陸八魔アルはとても嬉しそうにそう言った。

 

 

ここはブラックマーケットの一角、最近再開発によって建てられた企業ビルの中の一部屋。便利屋68のオフィスだ。高級感漂うそのオフィスの中でイサネとアルは机を挟んで向き合う形でソファに座り、世間話をしていた。

 

「アビドス砂漠ねぇ・・・聞いた事ないね、どんな場所なの?」

 

「砂漠って言うから、なんといっても一面に広がる砂じゃないかしら?」

 

・・・何とも馬鹿な会話である。その近くで便利屋の帳簿を眺めていたカヨコは呆れたように溜息をつきながら、

 

「社長、私たちはこれからそこに仕事をしに行くんだよ。どんな場所かってことくらい調べておかないと。」

 

「仕事?あぁ、依頼が来てるって言ってたね。」

 

「そう!そうなのよ!しかもかなりの大口のね!」

 

カヨコの仕事と言う言葉に反応したイサネに更に反応したアル。カヨコはこりゃもう駄目だと首を振り、会話から離れつつ懐から取り出したスマホでこれから向かう場所についての情報を集める。ちらりと視線を向けると、そこには何故がある3つ目のソファに寝転がり可愛い寝息を立てているムツキの姿があった。そして改めてイサネに視線を戻すとソファに座っている銀灰色の髪を持ったイサネの姿が見える。そしてイサネはその体に何かを抱ている。

 

 

―――伊草ハルカだ。

 

 

イサネはソファに足を広げ、その股の間にハルカを挟み、両腕でハルカの体を抱きしめている。そして時折ハルカの頭を撫で繰り回している。一方のハルカは顔を真っ青にし、生まれたての小鹿の様に体を震わせている。よく見ると若干涙目だ。普段肌身離さず持っている彼女の愛銃【ブローアウェイ】は今なぜかカヨコの目の前の机の上に置いてある。

 

しかし、イサネはそんなハルカの様子など一切を無視し、アルとの世間話を続けている。またアルもイサネのハルカを放す気はありませんと言う意思の象徴の様な雰囲気とこれから自分の元に流れ込んでくる大金に目を輝かせ、イサネに依頼についてべらべらと喋ってしまっている。本来なら流石に何か指摘する事があってもいいのだが、イサネがハルカに一切の危害を加える気が無い事とこれからの事も相まってハルカの事は余計に意識の外にあるようだ。

 

「なんでも砂漠にあるとある廃校舎を制圧すれば良いらしいわ。推定される戦力も大したことないし、何より私達に加えて傭兵も居る!まさに夢の様な依頼だわ!」

 

おほほほ。と手を頬に当てて高笑いするアルに対しイサネはいたって冷静だった。

 

「でも、戦場において絶対と言う言葉は存在しないよ?その辺の対策は出来てるんでしょうね?」

 

まるでこれから何が起きるのかお見通しと言わんばかりにそう警戒を呼び掛けるイサネだったが、今のアルにはそんな声は届いていなかった。イサネはそんな様子のアルを尻目に、

 

「依頼主、カイザー・・・・ねぇ・・・」

 

とだけ呟くと、途端に人相を変えてハルカに意識を向け始め、

 

「ハルカちゃん、それじゃ一緒に昼寝しようか~。あはは?そんなに怖がらないでぇ?」

 

「ひぃぃぃぃ!?ご、ご、ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい、あぁぁあぁぁぁ・・・」

 

そのまま嫌がっているのか怯えているのか分からないハルカと一緒にソファに寝転び、ハルカを抱きしめながら寝始める。1時間ほど前にいきなりここに来たイサネはハルカを見つけるや否や前に便利屋と戦った時に見せたほぼ瞬間移動の様な速度でハルカに飛びつき、ショットガンをするりと彼女の手から外して机に置き、ハルカを抱っこ。そのままソファに座ってアルと雑談を始めてしまった。本人曰く暇だから遊びに来たらしく、何故ハルカを抱っこしているのかについて聞くと、

 

「んー、なんとなくね。」

 

と言われ、理解を諦めてしまった。

 

よってこうして1時間以上ハルカはイサネの腕の中に居る。流石に可哀そうになってきたが、たちの悪い事にイサネの様子も弱者を虐める者のそれではなく、ちゃんと愛でている?からこそやめろと言うに言えない。

 

「はぁ・・・」

 

改めて溜息。カヨコはこの収拾のつかない状況に匙を投げ、依頼の遂行の為にアビドス砂漠についての情報収集に専念する。しかし――

 

「この依頼によって私達便利屋68はより高く飛躍を遂げて見せるわ!」

 

「あぁぁああぁぁ・・・ひぃぃぃぃぃ・・・!」

 

「んぁぁぁ・・・動かないでぇぇ・・・だきまくらぁ・・・」

 

(あまりにもうるさ過ぎる・・・)

 

こんな半ば地獄の様な状況に、便利屋68の頭の切れる参謀と言えどまともに集中できるはずなど無かった。そしてこんな喧しさでも平和そうな寝顔の一切を崩すことなく寝続けるムツキの精神の図太さを少し羨ましく思ったカヨコであった。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

その日の夜、結局夜ギリギリまで便利屋68のオフィスで馬鹿をしていたイサネはブラックマーケット内にある住宅ビルの一室で、一人机のパソコンに向かっていた。そのパソコンの画面には砂漠の画像と、アビドスに関するデータが複数表示されている。

 

(・・・アビドス砂漠かぁ・・・向こうを思い出す。)

 

イサネの頭の中にあるのはキヴォトスに来る前のあの景色。一面が砂で所々に廃墟が点在しており、完全なる不毛を感じさせたあの戦場。リンクス達の戦場。

 

(スピリット・オブ・マザーウィル、あれが一番記憶に残ってる。砲の弱点を物ともしないシンプルで単純に強い。ネクストの攻撃規模では要所を狙わない限り効果的な損害を出せない程の巨体。砂漠を見るとたまに思い出す・・・空飛ぶあの玉は忘れよう・・・あれは何かの悪い夢だったんだ。)

 

スピリット・オブ・マザーウィル(SoM)。BFFの所有するAFで、数あるAFの内で古参に位置する年代物でありながらそれでいて最強と呼ばれていたAFで、弾切れと言う要因ではあるがかのホワイトグリントを撃退したという驚異的な戦果を持つ。武装も超長距離の砲台、無数のミサイルランチャーと機関砲、そしてノーマル部隊。挙句の果てにはカタパルト付きの滑走路まで搭載している最大最強を体現した存在だ。

 

しかし、SoMにはミサイル砲台が破壊されると内部の爆薬が炸裂。その衝撃がフレームに伝播するという致命的な欠点が存在する。イサネ・・・もといイレーネはその弱点を突き、SoMを増援のキルドーザー諸共撃破し、その実績によって、イレーネの存在が企業の目に止まる事となった。

 

・・・最も、その後に世界中全ての人間に認知される存在になるのだが、それはまた別の話だ。

 

「昔はキヴォトス最大の勢力を持ち・・・えぇ?生徒会長が70人?トップがそれほどの数で内部抗争をしているとは・・・信じられない程の規模・・・」

 

アビドス高等学校の過去の規格外さを目の当たりにし、さしも規格の外に居た者(イレギュラー)の首輪付きことイサネも驚きを隠せない。しかしその情報は更に続いている。

 

「砂嵐によって衰退・・・?この規模が?あぁ、大規模が何回にも渡って起きたのか。・・・で?え?今は在校生が5人だけ・・・5人ねぇ・・・え?5人?少なすぎない?学校じゃなくて小隊規模しかないの?」

 

アビドス高等学校。かつてキヴォトス一の規模とその歴史を誇り、各学園から羨望と畏怖の眼差しを受け、街中で迷子になるほど巨大な自治区を誇ったが、何度も発生する大規模な砂嵐によって環境の変化と共に徐々に衰退。その対策に多額の資金を投入するも改善が見込めず、今やその殆どが砂に飲み込まれてしまった。

 

(ふぅん・・・まさに盛者必衰を体現したかのような学園ね。何か面白い発掘品とか埋まってそう・・・よし、行ってみるか。情報収集飽きたし、向こうで便利屋とも会えるかな?)

 

そう心に決め、イサネはデスクから立ち上がる。そしてベッドのすぐ近くに広がっている武器や物資の山を見て、アビドス砂漠を探索するための必要物を算出する。

 

「武器弾薬はもう少し多い方が良いね、砂漠ならスモークグレネードの数を削って爆発性の高いのにしよう。あとレーションと水、テントは・・・嵩張るのは嫌だなぁ。」

 

物資や装備の山をひっくり返しながら持っていく物を決め、買い揃えるべき物をメモしていく。

 

「砂地だと・・・この今使っている2丁も駄目ね。最新なのは良いけど、極地での安定的な使用が出来るか・・・いや、1丁だけ持っていこう。動作テストも兼ねる。となると構造がシンプルで隙間の多い奴か・・・まぁ、行けば分かるでしょう。」

 

書き留めたメモとスマホ、財布を持ち、護身用にハンドガンを腰に巻いたホルスターベルトに突っ込み、外へ出る。家の鍵を閉め、そのままブラックマーケットにその身を躍らせる。

 

 

(アビドス砂漠・・・ははっ、今からもうワクワクしてきた。)

 

 

その顔は心の中の溢れ出る冒険心を隠し切れていなかった。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「何をしているの?アコ。」

 

 

『ひ、ヒナ委員長!?』

 

 

広大な土地に響く絶対強者の声。無数の声が一瞬で静まり返る。

 

 

ここはアビドス砂漠。正確には僅かに残った砂まみれのアビドスの街。そこでアビドス高校の廃校対策委員会、便利屋68、そして先生は軍服の様な制服を着た無数の生徒――ゲヘナ学園の風紀委員会と対峙していた。そしてまさに一触即発の時、今の声が現場に響き、この人数の指揮を執っていたと思われるホログラムの人物がそれに驚いたという状況だ。

 

双方、突如のイレギュラーに一体これはどうなってるんだ状態になっている。それは、先生とて例外ではなかった。そして何やらその声とホログラムが何かを話している。

 

(なるほど、このホログラムの生徒、天雨アコって子は自らに自由に使える指揮権が無いのにも関わらずこれほどの大部隊を動かしたのか。)

 

その様子はここからでもよく聞こえる。会話から聞くに風紀委員長はヒナと言う名前らしい。そしてその風紀委員長の叱責がホログラムに映るアコに容赦なく降り注いでいる。そして、

 

「・・・はぁ、全員、武器を降ろしなさい。これ以上の戦闘に意味はないわ。」

 

『本気ですか!?これからのエデン条約の為にシャーレと言う不確定要素はなるべくコントロール下にあったほうが――』

 

叱責を受け反省の様子は示すものの、部隊の退却には反対の様子のアコ。しかし、ヒナはその反論の一切を斬り捨てる。

 

「うるさい。そういうのは万魔殿のすることであって私たちの出る幕じゃない。・・・向こうが何かアクションを起こすかは不明だけど、私に独断で部隊を動かした貴方が何かを言う資格はない事は事実よ。それと、後で反省文ね。」

 

『うぅ、はい、わかりました・・・申し訳ありません。』

 

話が終わったようで、ヒナはそのまま先生に近づいてくる。対策委員会と便利屋の皆は戦闘態勢に入りかけるも、ヒナの「銃を降ろして、せめて謝罪くらいはさせて欲しい。」と言う言葉に構えかけていた銃を降ろす。

 

 

「初めまして、先生。ゲヘナ学園風紀委員会委員長の空崎ヒナよ。今の事については本当に申し訳ない事をしたわ。完全に私の監督不届きよ。本当にごめんなさ――」

 

 

そう言い、頭を下げようとした時だった。

 

 

 

「え、すっごい大部隊。もしかしなくても来たら不味い場所に来ちゃった?これ。」

 

 

 

一切の知性の感じられないような能天気な声が響き渡る。ヒナの威圧と指揮によって穏やかさを取り戻しつつあった空気が完全に凍り付く。

 

この場に居た全ての者が声の方向へ視線を向け、先生も声の方向を向く。するとそこには――

 

 

「わぁ、すっごい見られてる。」

 

 

D.U.シラトリ区での作戦で一緒に戦った標根イサネだった。あの時の歴戦の風格を感じさせる顔つきが嘘みたいに呆けた顔をしていた。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「わぁ、すっごい見られてる。」

 

 

・・・これ以外に言う言葉が無い。というかあのホログラムの人の目線がなんか冷たい。

 

 

家を出てアビドス砂漠に到着した私はそのコジマ粒子の汚染の無い砂漠に感動して涙を流し、適当に散策と言う名の迷子になりつつも調査拠点に適した場所は無いかと砂漠を彷徨いながらやっと誰か住んでそうな気配のある建物群を発見したのだ。よっしゃあ町見つけたと意気揚々と近づいたらこんな大部隊に出くわしたという訳だ。うん完全な事故だ、私は何も悪くない。

 

・・・だというのに、だというのにだ。

 

『ちょっと!そこの変な人!今ヒナ委員長が話している最中です!知性の感じられない声で叫ばなないでくれませんか!?』

 

ホログラムの人から辛辣な苦情が入る。って言うか変な人はお前だ。なんだその横乳は、恥だと思わんのかね、あんな露出をしておきながら。流石に変な人呼ばわりは嫌だと言い返す。

 

「変な人はそっちだろー!なんだその横乳は!女性の大事な所ガン晒しで恥だと思わないのかー!この露出狂がぁー!」

 

『なっ!?わ、私は露出狂ではありません!それにこれは蒸れるから・・・!』

 

好機。そう感じたイサネは更にある事無い事言って横乳の人に畳みかける。

 

「ならもっと別の手段があるだろー!なのになんで露出と言う選択肢を取ったんだー!やっぱり見られて興奮する変態なんじゃないのかー!」

 

『し、失礼な!?風紀を取り締まるこの私がそんなことで喜ぶ訳ないでしょう!言いがかりは止してください!そ、そもそも、貴方は一体誰なんですか!名乗りもしないでいきなり妙な事口走って・・・!』

 

場の真剣ムードは完全に崩壊してしまっている。その様子を諦めたように眺めていたヒナがちらりと風紀委員会の委員の様子を見ると、

 

「やっぱり行政官のあの格好って・・・?」

 

「そうなんだよ、見られて喜ぶ変態なんだよ。」

 

「あまり言ってやらない方が良いよ。人のは人の趣味があるから。」

 

一方では、

 

「真相はどうなの?ねぇ、イオリちゃん。」

 

「私に聞くな!そんなの知るわけないだろ!知りたくもないよ、そんなこと・・!」

 

(人の趣味だと思って放っておいたけど、何か言った方が良かった・・・?)

 

ヒナはその様子を見てアコの反省文の枚数を倍増しようと心に決め、自らの愛銃である軽機関銃の【終幕:デストロイヤー】を持ち、今だあまりにも下らない口論をしているイサネにすたすたと歩いていく。

 

『ですから、貴方は何なんですか!?いきなり人を露出狂呼ばわりって、貴方の方が頭おかしいんじゃないですか!?』

 

「いい加減見苦しいぞー!認めたらどうなんだー!第一初めに変な人って言ったのはそっちだろー!大人しく業を受け入れ―――ごばぁっ!?」

 

その頭に向けて銃身で殴りつける。何故かメガホンを構える体勢だったため頭の位置が若干低く、その鋼鉄の銃身がクリーンヒット。イサネは打撃を頭部に受けた時特有の声を上げつつあっけなく地面に倒れ伏す。ヒナはその様子を極めて冷めた目つきで眺め鋭い声で一声。

 

「起きてるんでしょう?さっさと起きなさい。」

 

ヒナの声を受けて地面に叩き伏せられたイサネはのっそりとその体を起こす。そしてヒナは更に続ける。

 

「いきなりうちの部下に随分な挨拶ね。それで、貴方は一体何処の誰なのかしら?」

 

その声はまさに魔王と評するに相応しいものだった。イサネはその声にぴくりと反応したかと思うと、さっきの変なテンションを取り戻し、

 

「よくぞ聞いてくれた!我が名は標根イサネ!報酬と引き換えにあらゆる仕事をこなす、生粋のアルバイターだ!」

 

「そう、で、所属は何処?」

 

妙な自己紹介をガン無視。ヒナは淡々と質問を続ける。イサネもその様子に流石に状況を理解したのか、真面目に答え始める。

 

「所属は・・・ない。今の所は色んなバイトで稼いでるしがないの傭兵バイトよ。」

 

「ここに来た目的は?」

 

「えぇっと、何か面白そうなの無いかなぁって。」

 

「面白そうなの・・・?」

 

ヒナがイサネの目的の真相をいまいち測りかねていると、アコが反応する。

 

『待ってください、標根イサネさんですよね。ブラックマーケットで最近有名になっているって言うあの。』

 

その情報にすかさずヒナが答える。

 

「本当なの?その情報は。」

 

『はい。なんでも、ブラックマーケットに最近現れた傭兵バイトで、自らを首輪付きと名乗り、勢力関係なし、仕事の内容も関係なくあらゆる組織や個人の依頼を受け、その成功率は驚異の100%。これまでに幾度とも企業の刺客や彼女を嵌めようと動く者達が居ましたが、その試みは全て失敗。彼女に仕掛けた組織はそのほぼ全てがブラックマーケットの勢力図から消えています。』

 

アコの報告を聞き、場が騒然となる。当たり前だろう、最早ブラックマーケットに少しでも関わる者にとって首輪付きの名を知らない者は居ないのだから。アコは更に続ける。

 

『そして、情報部のデータによると今そちらに居る便利屋68とも交戦した記録があり、かなり一方的に押し込んでいたとの情報もあります。そんな彼女の実力と実績から、ブラックマーケットでは万物の天敵と称される人物です。』

 

「最近、ね。道理で聞かない名前だと思ったわ・・・」

 

アコからのイサネの驚異的な実力とここまで一切の名前を聞くことが無かった理由に納得していると、渋い顔をしたイサネが居たが、極めて無視を決め込む。すると、そこに先生が話に入ってくる。

 

「やぁ、イサネ。あの作戦ぶりかな?今日は何しにここに来た感じかな?」

 

「先生こそ。私は単純にここの砂漠地帯に何か面白いものないかなーっておもって、探索ついでに色々拾っていこうかなって。」

 

知り合いのように話す二人に、ヒナは尋ねる。

 

「二人とも、知り合い?」

 

「そうだね、何日か前に私主導の作戦の時に連邦生徒会が雇ったみたいでね。」

 

『連邦生徒会が・・・!?』

 

こればっかりはヒナもアコの声に同意だ。あの連邦生徒会が、連邦生徒会長が居なくなってから一切の問題介入をしてこなかった連邦生徒会が一時的とはいえ雇った人物。それが何を意味するか、分からない者は居ないだろう。・・・本人を除いて。

 

「連邦生徒会?あぁ、あの依頼の事?あれは防衛室の怠慢だから。作戦の主力のヴァルキューレの全体的な練度が不足しているのにも関わらず狂犬を筆頭とした実力のある人達が居ない状況であの規模の作戦を強行しろって言ってんだから。全く大変だね、生徒会長代行も、やっぱりイキる無能を抱えると上は苦労するし、無能の下に付いた下は苦労する。」

 

「イサネ、そういうことは言うものではないよ。前も言っただろうけど、彼女も彼女らなりに必死に頑張っているの。それを否定することは良くないよ。」

 

イサネの批判を即座に咎める先生。発言の内容的にも前に一回以上はこのやりとりをしていることが窺える。イサネは先生の注意にゆるく返事をすると、

 

「まぁ、機能不全も納得な気はしないでもないけどね。会長一人消えただけであそこまで滅茶苦茶になるんだから、それだけの業務を捌いていた会長の後詰めなんて代行も可哀想としか言えないね。なまじ優秀で有能なだけに。」

 

と連邦生徒会長代行である七神リンを哀れむ。その様子は、過去に何度もその様を見てきているかの様な冷めた印象を与え、その言葉にも何処か説得感があった。

 

「何か、知っていそうね。」

 

「いいや、なにも?ただ、上が使えない組織は大変だからって事なら実感したね。でも貴方の所は大丈夫みたいね。その顔、2徹?3徹?」

 

「っ、それは・・・」

 

急に話の対象がこちらに向き、さらに思ってもいなかった事を突っつかれ、返答に困るヒナ。

 

「まぁ、他所の組織だからと言ってしまえばそれまでなんだけど・・・少しお節介を。仕事の依頼なら、この生粋のアルバイター、標根イサネにお任せあれ。金さえ貰えれば、あらゆる仕事を遂行いたしますわ。なんと、お互いに初対面サービスという事で一回目は半額でお受けいたしましょう。あぁ!なんてお得なんでしょう!」 

 

芝居がかった口調でいきなり自身を売り込み始めるイサネ。若干胡散臭い。ヒナはその様に困惑しつつも、

 

「わ、分かったわ。力が欲しくなったら依頼させてもらうわ。」

 

と返す。そして先生の方へ向き直り、改めて謝罪をする。そしてその際に先生に何かの情報を話しているようだったが、イサネは知ろうとし過ぎた者がどうなったかを知っているので耳を塞いで聞いてませんよの意思表示。そして、先生との話を終えたヒナはそのまま大部隊を連れて帰っていった。

 

そしてこの場に残されたのはアビドスの対策委員会、便利屋68、そして先生とイサネだ。この中で唯一イサネと関わりのない対策委員会の生徒達が誰この人?状態になっている。最も、イサネとて誰この人達状態ではあるのだが。

 

「アビドスの皆、紹介するよ。彼女は標根イサネ。傭兵バイトを生業にしている子で、えっと、何処の学園に所属してたりとかは・・・」

 

「無所属よ。悪く言えばその辺に居るヘルメット団と同じならず者って所ね。」

 

「そんなことは無いよ。ちゃんと依頼を受けて、それを遂行する。それに誰構わず銃を向けたりしないだけでも十分立派だと思うよ。」

 

先生のあくまでもちゃんとした生徒で通すつもりの紹介にイサネは余り良い感情を向けられない。なんせどこまで行ってもイサネのやってることは金で動く傭兵だ。イサネ自身で受ける依頼は選別しているが、そんなものは信頼材料にならない。

 

「え!?傭兵の人なの?じゃあ、この前アビドスを襲撃した便利屋68の雇った傭兵?」

 

「ん、流石に違う。こんな人居なかった。」

 

黒髪で猫耳のある生徒が敏感に反応するも、銀髪のこれまた獣の耳を持つ生徒がそれに反論する。襲撃という事は便利屋68へ出された大口の依頼と言うのはやはり罠だったという訳だ。イサネは心の中で静かに合掌。

 

「あーあ、だからある程度の下調べはしておけと忠告したのに・・・」

 

「やっぱり!何か知ってたんじゃない!さっさと吐きなさいよ!」

 

「まーまー、いいんじゃないのー?結局何とかなったし、ね?先生。」

 

黒髪の少女のきつい声にピンクの小柄な少女がイサネを見ながらゆったりと反応する。しかし、

 

(・・・私が何か隠している事、疑ってるな。でも、言ってどうにかなる隠し事だったらどれだけ楽な事か。人は殺すもんじゃなかったか?答えを急ぎ過ぎたとは思えないんだけど。)

 

その眼は明らかにイサネの事が信用できない、または何か裏があると確信している眼だ。が、言った所でどうにかなる問題でもない。たかが人一人に人類20憶人分の命の咎を払いきれるとは到底思えない。ましてや――

 

(ははは、そっちだって傷を隠すための猫被りで、どうにかなると思っているのかな?そうして広がり続ける傷を見た時、本当に耐えられる?本当に傷かは分からないけど、でもその眼はもう教えている様なものだよ。何かを奪われましたって眼。)

 

人相で人を読むのは向こうだけの芸当じゃない。イサネも同時にこのピンクの長髪の少女が心の中に何かを隠している事を看破していた。こういう腹の探り合いになったらもうまともな関係なぞ築けない。企業同士の様にお互いの腹を探り合いながらの水面下での戦いにしか発展しない。

 

そこで話を変える様に先生に自己紹介をしてもらった。便利屋については皆知っているようで、便利屋の人達も用があるからと別れと再会を誓って帰っていった。そしてどうやらこの子たちがアビドス高等学校の生徒で間違いないらしい。

 

「で、先生はここで何してるの?」

 

「アビドスの生徒達から救援のお手紙が来てね、それで今アビドスの借金を何とかしようと頑張っている所。」

 

まさか借金を抱えていることまで話すとは思わなかった。そしてそれに黒髪の少女――黒見セリカが怒り出す。

 

「ちょ、ちょっと!なんで部外者に言うのよ!」

 

「うん、流石に迂闊ね、先生。」

 

彼女の反応はもっともだと、イサネもそれに同意する。

 

「ほら!イサネにも言われているじゃないの!」

 

「うぅ、ごめんなさい。」

 

こいつ本当に先生か?と言いたくなるほど口が軽いというか、どうも生徒達に甘いというか・・・セリカに叱られてしょんぼりしている様が何故か妙に様になっている先生。本当に大丈夫なんだろうか。いまいち大丈夫には思えない。

 

「んー、とりあえず帰りませんか?いつまでもここにても何も始まりませんし。新しい生徒さんもゲット出来そうですし。」

 

ベージュの髪に綺麗な葉っぱのような緑色の瞳の少女――十六夜ノノミがそう提案する。

 

「確かにそう。これで在校生の数が増やせる。」

 

その声に銀髪のケモミミ少女の砂狼シロコが便乗する。

 

「え、何?これから私何されるの?逃げるよ?普通に。」

 

「大丈夫です。ちょっと所属が変わるだけなので・・・」

 

「うん、大人しくお縄に着くべき。」

 

どうやら本気らしい。さしもイサネも恐怖を覚える。が、流石の先生も見逃せなかったようだ。

 

「そんなことしちゃ駄目だよ!?」

 

「ん、止められた。無念。」

 

「無理矢理生徒にするという事はしませんがイサネちゃんもどうです?」

 

どうやら強制アビドス生徒化せずに済みそうだ。簡易拠点の目処も立っていないのでノノミの提案に頷く。ピンク髪の少女――セリカとピンク髪の少女、もとい小鳥遊ホシノの目が怖いが、セリカはまぁ大丈夫だろう。問題はホシノだ。止まっている間に何かされなければいいが。

 

 

一抹の不安と期待を抱えて、イサネはアビドス高校の校舎へと案内されていく。

 

 

 

 




所々自分でも納得のいく説明が本文中で出来なさそうな点の補足。
1.冒頭のイサネがハルカを抱きしめていた場面。=あれは筆者がハルカ良いよねって人だからです。もし自分が先生だったらやってみたい事なので。(最推しではない) 
2.その後の自宅でアビドスについての情報。=某百科事典に乗っている一般でもわかりやすい様な情報に絞って載せました。この情報はまだ広まって無いやん!と言われたら土下座しか出来ません
3.首輪付きのヨコチチ弄りについて=「つい弄りたくなってしまった」(byうちの首輪付き談)抗議の仕方がミノリ風なのは御愛嬌。
4.最後の方でホシノのユメパイセンのトラウマに気付いた?=気付いたではなく、何か隠していると勘付いた。だからその何かまでは分からない。
5.もしかしてアビドスとは険悪なまま進むのか=ホシノと首輪付きの腹の読み合いの場面で危惧したが、流石にそれはない。アビドス編2章が終わるまで全員との一定の信頼が出来る様に組んであるが、ホシノのユメパイセントラウマについては厳しい意見。
6.おめぇ文字数の割に話の展開進まなさすぎだろ!=申し訳ございません。返す言葉もございません。

こんなところになります。分かりにくくてごめんなさい。
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