透き通る世界で二度目の答えは出せるのか   作:回り針

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ははは!全力出せば一話書き上げるなぞ、一日で出来るわぁー!!ははははは!(満身創痍)


ホシノ奪還作戦 依頼:カイザーPMC基地襲撃

 

 

 

 

眼前に広がるカイザーPMC基地。その上を通り抜ける砂埃。

 

 

 

 

 

基地の正面門の約200m先、無数の岩の乱立する内の一群、そしてその岩の上。

 

 

 

「先生、こちら首輪付き。配置についた。先生の合図で先制攻撃を開始する。」

 

 

 

小さな声で無線機に声を掛ける少女――標根イサネは、自分の足元に並んでいる装填済みのロケットランチャー3本とその横にあるその弾6発を眺めながら先生と無線で会話をしている。

 

『こっちも準備できたよ。ヒナ、そっちはどう?』

 

『風紀委員会も配置についたわ、カイザーからの攻撃は私達に任せなさい。ここで全軍止める、誰の一人も先生には近づかせない。』

 

先生とヒナの会話。イサネはそのやりとりを聞きつつ、サスペンダーに掛けてあるアサルト2丁の動作確認を行う。マガジンを引き抜き、チェンバー内に銃弾が残っていない事を確認し引き金を引いたり、アタッチメントを弄ったりしながら会話の終わりを待つ。

 

『・・・分かったわ、先生も気を付けて。通信を終了する。』

 

その声と共にヒナが通信から離脱する。指揮官が前線に出ている上に成功が大前提となっている作戦の為、無線が混線するのは避けるべきだという意見の元、アビドスの防衛組と基地の襲撃組の無線は分かれている。

 

『イサネ、準備は良い?そろそろカウントダウンを始めるよ。』

 

先生の声で、武器をサスペンダーに掛け直して足元にあるロケットランチャーに手を添える。

 

 

 

――一呼吸。

 

 

 

「準備完了、いつでもどうぞ。」

 

 

『カウントダウン、始めるよ。10、9、8――』

 

 

イサネはロケットランチャーを引き金に指を置かずに構える。その身はまだ隠れている。

 

 

『6、5、4―――』

 

 

一呼吸。そして引き金に指を添える。

 

 

 

『3、2、1――』

 

 

 

呼吸を止める。照準をカイザーPMC基地の燃料タンクと思わしき建物へ向け、身を乗り出す。

 

 

 

 

『0。作戦開始。』

 

 

 

引き金を引く。ロケットランチャーの先端に装填されていたロケット弾が煙と火を噴きながら照準の先へと飛んで行く。イサネはそれを見ずに手に持っている銃身を地面に置き、その隣に置いてあった装填済みのランチャーを拾い上げて構える。狙いは一射目と同じだ。

 

大まかな照準で引き金を引く。そしてそれを地面に置き、3本目を拾って構える。今度は別の建物に狙いを付ける。装甲車両が入っていると思われるシャッターのついた建物だ。

 

「パワーローダーくらいなら、お前らにとって安いものだろっ・・・!」

 

その言葉と共に引き金を引く。発射が終わると同時にその砲身を捨て、地面に置いてあるロケットランチャーの二つに手慣れた様に弾を装填し、そのまま片手に1本づつ構えて発射。今度は3つ全てにロケット弾を装填、そのうちの二つをロケット弾の爆発によってわらわらと出てきたオートマタの群れに向けて発射。右手に持っている砲身に弾を詰め、左手にあるランチャーは捨てる。予めリロードの終わっていた筒を左手に持ち、イサネは今いる岩場から基地へ向けて一直線に飛び出す。それと同時にイサネを緑の薄い膜が覆うと同時に、背から発する強烈な閃光。

 

 

 

「いぃっくぜぇぇぇぇーーッ!!!」

 

 

 

大気を震わせる咆哮と共に両手に持つロケットランチャーを構えつつ音速を超える速さで基地へと突き進む。

 

 

『ロケット弾、燃料タンクと格納庫へ直撃!先生、動くなら今です!』

 

 

『分かってる。行くよ、皆。イサネ、無茶だけはしないでね・・・!』

 

 

無線機からオペレーターのアヤネと潜入チームともに居る先生が指示を出す。イサネはその声を聞きつつも、その心には消える事の無い火が激しく燃え盛っていた。

 

 

 

「あーっひゃっひゃっひゃっひゃぁーッ!!!」

 

 

 

イサネの口から迸るその顎の外れた様な狂笑が、戦いの火蓋を切る音とカイザーPMC基地に何かよくないものが訪れた音の二つを奏でていた。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

爆炎、轟音。

 

 

 

いつも通り平和だったカイザーPMC基地は今、騒然となっていた。

 

 

「くそがっ!襲撃者は誰だ!早く探し出せ!」

 

 

似た様なデザインのオートマタが殆どの中、肩幅身長共に大きく、一風変わった容貌をしているロボットが周りにいるオートマタの兵士達に何事かを怒鳴っている。この男こそカイザーコーポレーション傘下カイザーPMCの代表取締役、カイザーPMC理事と呼ばれる者だ。

 

「くそったれ、天下のカイザーに喧嘩を売るなど・・・絶対にタダでは置かんぞ・・・!」

 

カイザー理事は低くそう唸るも、一向に上がってこない襲撃者特定の報をただ待っていた。一度心を落ち着かせんと立ち上がって窓から外の景色を眺めようとすると、机に置いてある無線機から報告が上がる。

 

『襲撃者と思わしき者を発見!正面から突っ込んできます!車よりも速い速度です!』

 

「なんだと!?おい、早く迎撃しろっ!」

 

車よりも速い速度という言葉が理解出来ず、そのままマニュアル通りの迎撃指示を出す。しかし、車よりも速い速度を出すことの出来る者がマニュアルに記載されている程度のイレギュラーな訳が無い事はすぐに理解させられた。

 

『うわっ!こいつロケットランチャー持ってやが――ごっ!?』

 

『撃って来やが――ぎゃぁぁぁああああっ!?』

 

『はぁ!?撃ち終わった砲身を鈍器みたいに・・・こ、こっちにくるなぁぁっ!』

 

次々と聞こえてくる悲鳴から分かる地獄のような惨状。恐らく数は1。信じられない事だが、その1に一方的に蹂躙されている様だ。堪らずカイザー理事も無線機に向かって叫ぶ。

 

「何をやってる!早く撃て!敵の数は一人しかいないんだろうが!」

 

『撃ってます!何なら何発かは命中している筈なんですが・・・!くそ、バリアだ。敵はバリアを持っている!弾が弾かれる!』

 

「ちっ、ゴリアテを出せ。出せるだけだ!」

 

どうやら敵はバリアによって銃弾が効かない様だ。それならと理事はすかさずゴリアテの使用許可を出す。いくら銃弾を無力化しようとも大型機械での運用を前提としたガトリングは耐えられまいと、質量で潰してしまえばバリアとて脆い筈だと踏んだが、それも敵の思考の内だった様だ。

 

『こいつっ、起動中のパワーローダーに!?あぁっ!!?爆発!?』

 

『嘘だ・・・銃弾なんて通さないパワーローダーの装甲がパンチ一発でまるで紙のように・・・』

 

『歩兵部隊!そいつの動きを止めてくれっ!こいつの持ってる銃、パワーローダーの装甲を抜いてくるっ・・・!だめだ!ダメージ限界、脱出す――はぁ!?こい―――』

 

無線から聞こえてくるのは只々一方的にやられる兵士達の悲鳴や絶叫。ゴリアテすら出してもどうにもならない様だ。更にカイザー理事の元に上がってくる報告には敵の撃つ銃弾は戦車やゴリアテの装甲ですら撃ち抜く程の貫通力を持っている様だ。対物ライフルと言った貫通力に秀でた武器を持っている訳では無いのにも関わらず。

 

 

「役に立たん奴らだっ・・・!」

 

 

怒り心頭と言わんばかりに机を叩く理事。その頭の中ではこの事態を如何に上に報告するか、敵を如何にしてやろうかと考えているが、それが叶う事はない。

 

 

 

―――カイザーPMCの喉元には、もう獣の牙が突き刺さりつつあるのだから。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「はは、はははははっ!」

 

 

 

乾いたというより、愉悦を謳う様な笑い声を上げながら灰銀色の髪を硝煙の香る風に躍らせながら戦場を舞う少女――標根イサネは、もう何回目かも数えてないコジマ粒子を圧縮して纏わせた拳を兵士の胸へと叩き込む。その直後に炸裂するコジマ粒子の緑の輝きを見ながらサスペンダーからアサルトライフルを引き抜き、2丁アサルトライフルのスタイルをとる。PAで自らの肉体を覆い、狙いを定める。次に何処へ動けば最大の被害を出せるか、どれだけ楽しいか。それだけを基準に戦場を庭のように駆けまわる。

 

 

(いつもと違う・・・いつもよりも血が滾る・・・この感じ。戦闘時の昂揚(バトルハイ)だけじゃない・・・もっと別の何か、私の中にある何かが・・・何かを喰らって目覚める感じが。)

 

 

しかし、イサネは両手に持ったアサルトライフル引き金を引きながら、戦場をかの白き閃光のように駆けながら、自分の中で何かが目を醒まし、餌を求めて蠢き出す様な感覚を知覚していた。

 

 

(獣・・・?ではない?なら、これは一体何?私を中から喰らっていくこの不快さと全能感の正体は、獣でないなら一体何・・・?)

 

 

起動を始めたパワーローダーのコックピットのあると思われる場所に飛び乗り、右手のアサルトライフルを左脇に挟みつつ空いた右腕を振り上げる。コジマブレードならぬコジマパンチだ。

 

 

(懐かしいようで、知らない・・・もしかして、これが私?)

 

 

拳を叩き込んで無力化したパワーローダーを蹴って再び二丁小銃で撃ち続けるも、イサネの表情に笑いは無く、だただ自分を襲う知っているようで未知の感覚に戸惑うだけだった。

 

 

 

―――だからイサネは気付かない。

 

 

 

自らの握るアサルトライフルから射出される銃弾が緑に光る粒子を纏っていることを。

 

 

 

そして自分の瞳は明るく鮮やかに緑の輝きを灯していることを。

 

 

 

そのヘイローを形成する粒子が、異常に増幅し、高速に対流していることに。

 

 

 

―――そして、そのナニカが、イサネの中にある()を見つけた事を。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「シロコ、その監視カメラ撃って。その後はドローンで敵の後方を狙って。セリカ、ノノミを狙う奴を優先して撃って。ノノミ、準備は良い?2秒後に掃射。」

 

 

先生が的確な指示で3人に指示を飛ばす。

 

「ん。」

 

シロコが監視カメラを銃撃。放たれた銃弾は監視カメラのレンズを貫通し、そのままカメラの一部が地面に落下する。

 

「このぉっ、さっさとくたばりなさいっ!」

 

セリカが握る愛銃【シンシアリティ】で、銃口の先がセリカの右横に立つノノミを狙っている兵士に照準を定めて引き金を引く。そしてそのタイミングで、ノノミが100kgは軽く超えるガトリングガンを腰だめに構え、

 

 

「発射~♪」

 

 

その声と共に、その声色に似つかわしくない弾幕が狭い通路の先に居る兵士達に殺到する。

 

「うぎゃぁぁっ!」

 

「は、早く、上に救援を――ぶべっ!?」

 

ガトリングガンから放たれる無数の銃弾に刻み込まれ、後ろに居た兵士達はシロコの操るドローンの爆撃によって吹き飛ばされ、応援を呼ぶことすら出来ない。・・・最も、応援を呼んだところで来るはずも無いのだが、そんなことを知らない屋内の兵士達は応援を呼ぼうとしては打ち倒されを繰り返していた。

 

「よし、皆、先へ進むよ。アヤネ、周囲に反応は?」

 

『周囲に反応なし。イサネさんがかなりの数を外で釘付けにしています。屋内に居る兵士の総数も少なくなっています。』

 

「ありがとう。よし、このまま行こう。」

 

先生の言葉に頷き、そのまま通路を駆けていく。狭い通路に、4人の足音が響き渡る。しかし、それを追える者は、もう基地の内部には残っていない。

 

「ヒフ・・・ファウストの砲撃も基地に上手くダメージを与えているし、便利屋の皆が内部を掃討してくれているおかげで戦力の分散が上手く出来ている。」

 

外の地獄とは裏腹に、内部での密かな戦いはもう終わりに差し掛かっていた。

 

 

 

――最も、ここで油断するような者が誰もいないからこそのこのスピーディーさなのだが。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「もういい!私自ら出る!」

 

 

 

いつまで経っても襲撃者を無力化はおろか傷一つまともに付けることの出来ない兵士達に業を煮やし、カイザー理事は怒りを言葉に出しながら部屋を出る。通路を早歩きで進み、曲がり角を数回曲がり、無事な格納庫への扉を開く。

 

 

「おい!あれを出せ!今すぐにだ!」

 

 

格納庫に入るや否や整備士のロボットたちへ向けてそう叫ぶカイザー理事。整備士はその声に反応し、今行っている作業を中断して慌ただしく動き出す。

 

「整備士長、あれはあとどれくらいで動かせる?」

 

「はい、量産の目処が立ち次第量産する試作品の為、あと1分もあれば起動が可能になります。操縦は理事が自ら?」

 

「そうだ。よく調整しておけよ。役立たずの兵士共に新兵器のお披露目だ。」

 

そういうカイザー理事の目の前に鎮座するのは原型こそゴリアテに近いものだが、その大半に改造や追加された武装が搭載されており、これまでのゴリアテというパワーローダーとは一線を画すものであることは素人目にも分かる事だ。

 

さっきまでそれに誰一人として近づく者などいなかったその機体に、理事の声一つでそれに群がるように整備士たちが集まり、出撃前の調整を始める。

 

少しの後、整備士長と呼ばれたロボットが声を張り上げる。

 

「理事、準備が出来ました。おい、みんな離れろ!試作機が起動するぞー!」

 

理事はその言葉に従い、そこに鎮座する巨大なパワーローダーの装甲に空いた穴――コックピットへの入り口へと身体を入れ、期待を起動させる。機体から排熱の為の空気が至る所から排出され、その巨体が滑らかな動きで動き出す。

 

「地上への出口はこちらになります。ご武運を。」

 

『フン、地上でいつまでも這い回る虫けらを踏み潰すだけだ。そんな挨拶などいらん。』

 

見送りの整備士を一瞥し、そのまま地上へと出るハッチへと機体を進める。

 

 

 

「いつまでも好き放題やりやがって・・・目にもの見せてくれるわぁっ!!」

 

 

 

外部スピーカーを切った機体のコックピットの中で、カイザー理事は叫ぶ。

 

 

 

――既に取り返されてはいけないものを取り返されている事に気付かずに。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

予備のマガジンの尽きたアサルトライフルの銃身で兵士の頭部を殴りつける。

 

 

 

「ぐばぁぁっ!!」

 

 

 

頭部を殴り飛ばされたにしてはやけに聞き取りやすい悲鳴を上げつつ地面に倒れ伏せる兵士。だが、その周りにはまだまだ多数のオートマタの兵士が立っている。

 

(体力ならまだ余裕がある。全然動けるし、疲労特有の体の重さもない。まだ、まだ全然戦える。でも、それ以上に私の中で蠢く何かが・・・それのせいでずっと頭の中に何かが差し込まれた違和感が抜けないせいで戦闘に集中できない。)

 

戦闘開始からどれだけの時間が経っただろうか、1時間?2時間?それともまだ10分も経ってない?潰した名前の知らないパワーローダーの数は15を超えてから数えてないし、倒した兵士の数は初めから分からない。イサネの足元以外にも地面に転がる数をざっと見ても100は容易に超えるだろう。

 

しかし、イサネの動きは時間が経つにつれ格段に悪くなっていた。オートマタの兵士に後れを取るほどでは無いが、それでもペースが落ちている。

 

(あぁ・・・くそったれが!違和感がっ・・・頭の中で反響するこの違和感が余りにも不快すぎる。体は動くのに、何も考えられなくなるっ・・・!)

 

そう、イサネのスタミナが尽きたという肉体的な問題では無い。先程よりイサネの頭の中に突き刺さった違和感、もといイサネの中を動き回る何かがその思考を強烈に邪魔しているのだ。そのせいで本来なら一体潰した後に更に動けるはずの時間が逆に潰されてしまっている。唯一に救いとしてはカイザーPMCの兵士がこの動きの悪化にすら着いて行けていない事だろうか。

 

 

『イサネさん、動きが戦闘開始時より遅いというか、悪くなっているようですが、大丈夫ですか?』

 

 

無線機から自分を心配してくれるアヤネの声すら今のイサネにとっては鬱陶しい騒音の一つでしかない。

 

 

「大丈夫だからっ・・・気にしないでっ・・・!それより、先生は上手く進んでる・・・?」

 

 

左手に持ったアサルトライフルを撃ちながら語気荒くそう無線機に返す。現実の肉体の動きを阻害するレベルの意識障害が起きたなら本来は撤退が普通なのだが、今のイサネにその択は無かった。頭の中に差し込まれる違和感と同時に戦闘時の精神的昂揚がイサネの思考から撤退という選択肢を排除していた。

 

強烈な違和感と戦闘時昂揚(バトルハイ)によってぐちゃぐちゃになった思考でイサネは考える。

 

 

(戦い続ければ・・・戦って戦って壊し続ければ・・・この正体が分かるはず・・・私は、それしか知らないから・・・それだけが、私に出来る事だから・・・殺す事だけが、私の唯一の特技だから・・・)

 

 

一歩踏み出す。その足に力を込め、縮地のように前方へ跳ぶ。その先に居る兵士の顔面に左手に持ったライフルの銃口を顔面に叩き込み、ワントリガー。零距離で発射された緑の粒子を纏った銃弾が僅か数発で機械の頭部を貫通し、兵士1人を無力化。

 

「があぁぁぁぁっ!!」

 

頭を掻きまわされる不快感を声にして吐き出しながら右手でハンドガードを握ったライフルでその周囲に居る兵士を片っ端から殴りつける。左手に持ったライフルの銃撃と合わせて。

 

動きが悪くなったとはいえ、それは戦闘開始時と今のイサネを比べただけであり、カイザーPMCの兵士からすれば超地獄が地獄になったくらいの差でしかなく、次々とオートマタをなぎ倒していくその動きに一切の澱みは見られない。

 

 

 

―――その時だった。

 

 

 

(戦って戦って、壊して壊して、殺し続けて・・・その先に・・・私は何を見たんだっけ・・・?)

 

 

 

突如イサネの頭をよぎった疑問。キヴォトスに流れ着く前、人類種の天敵として、首輪付きとして、ひたすらに殺し続けた。空を平気で穢し続ける人類を粛正するために、これ以上空を汚さない様に終わらせるために。その先にイサネ――イレーネが見た光景とは一体何だったのだろうか。一体、自分は殺戮の果てに何を見たのだったか。何もわからずじまいだったのではないだろうか。

 

一度そこに行き着いてしまうともう駄目だった。ぐるぐると当てもない思考が頭を支配する。ただでさえ正体不明の獣に食い荒らされている思考領域が更に埋め尽くされる。

 

 

――イサネの動きが止まる。まるで人形のようにその場から動かなくなる。

 

 

今の今まで暴れ回っていたイサネ見せた不自然な停止に、周囲に居た兵士達もその不自然さに、不審なものを見るように一定距離を保ちつつもそこから攻撃に移れない。戦場に静寂の幕が下りる。

 

 

『イサネさん!?大丈夫ですか!?せ、先生、イサネさんの動きが・・・!』

 

 

『なんだって?イサネ!聞こえる!?今すぐそこから離脱するんだ!』

 

 

イサネの様子を逐一観察していたアヤネがついに表面化したその異変に声を荒げる。その報を受けた先生もイサネに離脱するよう指示を飛ばす。

 

 

(何を見た・・・?私は・・・?クレイドルを墜として、コロニーを焼いて、逃げ惑う人を消し炭にして、その先に・・・一体、何を・・・?)

 

 

―――届かない。

 

 

(世界を敵に回して、友を、戦友を、この手に掛けて、無垢を穢して、それに咽び泣く母を踏み潰して、それで、そこに何を見た・・・?)

 

 

『イサネさん!お願いします、動いて下さいっ!そこに居たら、捕まってしまいます!!』

 

 

『イサネ!イサネ!!くっ、作戦に無茶が生じてでも囮の提案を退けるべきだったかっ・・・!』

 

 

 

―――聞こえない。世界の音の全てが遥か彼方だ。

 

 

 

(そ、そう、だ・・・た、確か、殺して、燃やして・・・壊したんだ。そしてふと見上げたんだ・・・空を、あ、おい、そ、そら・・・を。)

 

 

 

 

――空。

 

 

 

 

 

―――青い空。

 

 

 

 

 

 

―――――何者にも穢される事の無い、絶対の青。

 

 

 

 

 

 

 

――――――そして、私の心奪われたもの。

 

 

 

 

 

 

(青い空。)

 

 

 

 

心の中に巣食った何かの正体。頭に差し込まれた違和感から見える隙間の色。合致し、その一点に収束していく。今の今まで何が何処にあるかも分からなくなっていた思考が急速に発散し、意識が極めてクリアになる。

 

 

ふと空を見上げる。透き通った青。穢れすら飲み込む青。

 

 

 

「青い、空。」

 

 

 

意識の端に自分をを無力化せんと近づいてくるPMC兵士達の気配が感じられる。イサネは先程の思考の纏まりの無さから一転、極限まで単一化された思考を以て答えを弾き出す。

 

 

(全て・・・殺してやればいい。)

 

 

 

「はは。」

 

 

 

その口から小さな笑いが零れる。周りが静かでなければ、聞こえない程の小さな声。

 

 

 

 

―――その直後、緑光が全てを喰らい尽くした。

 

 

 

 




結構飛ばして描き上げました。恐らく誤字脱字とかなり浅い内容な気がするのですが、ご容赦いただけると幸いです。

それにしても、意外と戦闘描写入れると文が進まないですね。いや普通に困るんだが。


次回 首輪付き、覚醒?
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