透き通る世界で二度目の答えは出せるのか   作:回り針

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これ前話投稿してから気付いたんですけどあの終わりからどうやってここの初めの展開作ればいいか分からないんですけど...(馬鹿)

くそっこうなったらコジマパゥワを逆流させるしかねぇッ!!

俺はッ!人間を止めるぞッ!jojoォォォォォーーッ!!!(死)



少女を狂わせた緑の輝き

 

 

 

 

―――――閃光。

 

 

 

 

 

 

昼間の、そろそろ夕方に差し掛かるであろう時間帯、アビドス砂漠にあるカイザーPMC基地より、数百m離れた砂漠の砂地にて、そこには不毛な砂漠に似つかない上品な制服に身を包んだ生徒達と迫撃砲がいくつも並んでおり、昼間の間から絶え間なく砲撃を続けていた。

 

 

――しかし、

 

 

「あ、あれは・・・一体・・・」

 

「光・・・?いや、爆発・・・?」

 

「ここからでもはっきりと観測できる程の規模とは・・・」

 

 

その射手を担当している者達は突如カイザーPMC基地に発生した巨大な閃光の如き爆発に皆が皆驚きの感情を隠せずにいた。

 

 

「み、皆さん、落ち着いて下さい!とりあえず砲撃は一時中止、状況の確認に専念してください!」

 

 

動揺する生徒達の間に響く声。声の主は彼女らと似たデザインの制服を着、頭には目の部分に穴をあけ、額の部分に5と書かれた紙袋を被っている。―――そう、トリニティ学園2年生、阿慈谷ヒフミ、もとい覆面水着団リーダー、ファウストだ。

 

「爆発閃光、消えました!」

 

「ヒフミさん!カイザーの兵士達はまだ残存しています。どうされますか?」

 

「先生から指示が来るまで砲撃を続けてください!」

 

上がってくる報告を聞き、ヒフミはすかさず砲撃再開の指示を出す。ヒフミの指示を受け、射手達は迫撃砲の周りに移動し、砲弾の装填、照準、砲の仰角修正を素早く行う。

 

 

「「「てーっ!」」」」

 

 

射手長の声により一斉に迫撃砲が火と共に轟音を撒き散らしながら砲弾を撃ち出す。その砲弾達は緩い山なりの軌道を取り、カイザーPMC基地へと降り注ぐ。

 

 

「またか!早く発射位置の特定は出来ないのか!」

 

「そんなこと言ってる場合じゃない!基地内で敵が暴れ回ってるんだぞ!それに、今の光だって一体何が起きたのやら・・・!」

 

不明の巨大な閃光によって大混乱に陥っていた兵士達は再び開始された砲撃によってさらに混乱を招き、最早指揮が通じる状況ではなくなっていた。

 

 

 

「第二射装填・・・よし!」

 

「こちらも良し!」

 

「行きますよ!照準そのまま、てーっ!」

 

 

「「「てーっ!」」」

 

次々と撃ち出される砲弾は、カイザーPMC基地に更なる被害を与えていく。しかし、このまま全てが上手く行っている訳では無い。

 

「ヒフミさん、第一迫撃砲分隊、第二迫撃砲分隊、ともに残弾無し、第四と第五も残弾あと僅かです。それに6迫撃分隊の内の一つに装填時の不具合が発生。これ以上の支援は難しいかと。」

 

「そうですか・・・」

 

作戦開始時からずっと砲撃を行ってきたのだ。いくらそのための部隊を連れてきたと言えど、数時間休みなしで撃ちっぱなしとなると砂漠に持ち込める砲弾の搭載数では流石にここいらが潮時となってしまう。

 

「・・・分かりました。心残りはありますが、ここで切り上げましょう。皆さん!砲弾の残っている砲は最後の一射をお願いします!撃てない砲の皆さんは引き上げの準備を始めてください!最後の一射は私の掛け声でお願いします!」

 

「はい、では、撃てる砲のみ装填開始!最後の一発です。必中を心がけてください!」

 

砲撃の出来る迫撃砲が砲弾の装填を始め、そうでない砲は迫撃砲を牽引車に繋いだり、周囲の道具の片付けに入る。ヒフミはその様子を見ながら手に持った無線機に向かって話し出す。

 

「先生、迫撃砲による支援はこれで最後になります。アビドスの皆さん、頑張ってください!」

 

『うん、支援ありがとう、ヒフ――ファウスト。』

 

名前を間違えそうになりつつも感謝を示す先生の声を聞き、無線を切る。

 

「ヒフミさん、最終射、準備完了しました。」

 

その声を聞き、ヒフミは鋭い目つきで基地を見据え、指示を出す。

 

 

「目標、カイザーPMC基地、被害の無い建物!」

 

 

そこで一度言葉を切り、一呼吸。迫撃砲の射手は砲の狙いを基地にある被害の少ない建物へと向ける。

 

 

 

「てぇーーっ!!」

 

 

 

鋭く響いた声に従う様に発射される砲弾。その砲撃は、確かにカイザーPMC基地に重い被害を刻んでいた。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

一般的な形容詞に分類されるであろう地獄のような光景という言葉が生温くなった戦場で、一匹の獣――否、少女は何かを叫びながら、笑いながら、オートマタひしめく基地の中をまるで無人の野の様に駆け回っていた。

 

 

 

「空だ!青い空だ!!これこそが私の望んだ空だ!誰にも!もう誰にも汚させやしない!!あーひゃっひゃっひゃっひゃぁぁーッ!!」

 

 

「ひぃぃぃ!こいつ、なんなんだよ!誰か、何とかし――」

 

 

悲鳴を上げた兵士が言葉を言い切る事もなく、また呻き声を上げる事も無く吹き飛ばされる。ついさっき動きを止めたと思ったら強烈な光によって周囲に存在するもの全てを薙ぎ払ったこの少女は、光が収まるや否や目にも止まらぬ速度で再び蹂躙劇を再開したのだ。

 

 

「あは、あは、あははは!ははははははっ!?空!そらぁ!あおいそらぁ!!私の!私だけのぉ!」

 

 

完全に狂ってしまったように見える少女――イサネは普段ヘイローにしかない筈の緑の輝く粒子を体中から放出し、ライムグリーンの瞳はこれまで以上に彩度が強くなり、日の元に見ても強く発光している。そしてヘイローはその円環を形成する粒子を大量に放出しており、ヘイローそのものを形成する粒子は非常に速い速度でその輪を対流している。

 

「畜生、畜生!なんなんだよ、こいつは!早く終わってくれよ!化け物が!」

 

「うわぁぁっ、来るなぁっ!止め――」

 

悲鳴すら上げる事が出来ないまま打ち倒される兵士達。立ち塞がるものを全てなぎ倒しながら戦場を縦横無尽に駆け回るイサネの姿はまさにブラックマーケットに君臨する万物の天敵と称するに相応しい、もしくはそれ以上の蹂躙劇だった。

 

「死ねよ!死ねよ!死ねよぉぉぉぉっ!!空を荒らす虫共がぁぁぁああああーーッ!!!あひゅっ、ははっ!ははははっ!」

 

「ふ、ふざけんな!勝手な事抜かしてんじゃ―――」

 

イサネの妄言に何かを返そうと叫んだ兵士の上半身と下半身が一瞬のうちに泣き別れする。だが、その様子を周りの兵士達が認識する前にイサネは自身を銃撃するパワーローダーのキャノン砲へと跳躍。今にも破裂せんと漲る緑の輝きを放つ粒子を纏った右腕をその砲身へ向けて振り下ろす。

 

 

―――炸裂、閃光。

 

 

インパクトと共に炸裂する緑の光がパワーローダーの上部をゴミの様に消し飛ばし、コックピットと思わしきスペースに居た兵士の頭部がイサネの視界に映る。すかさず残った下半身に着地し、腰にぶら下がっている最後のグレネードのピンを抜き、そのスペースに入り込むように落としてパワーローダーの下半身を蹴って離脱する。

 

直後にコックピットの奥深くに落ちたグレネードの爆発によって炎上するパワーローダーを視界の端に捉えつつ、初めに視界に映った兵士の一群に向かって地を蹴る。地を蹴りながら、その背から弾ける光。音速を超えて加速するその体躯、再び兵士達の目からイサネの姿が消える。

 

 

「くそがっ!どこに消えやが――あ。」

 

 

イサネの狙いにされた兵士達の群れの一人が突如消失したように見えるイサネに、思わず毒づいた時、彼の目の前には左手にアサルトライフルを持ち、右手に何処から引っこ抜いてきたのか、長さ60cm程の鉄の棒きれが握られているイサネの姿があった。

 

イサネはそのまま右手に持つ鉄棒を目の前に居る兵士目掛けて一閃。只の鉄棒だというのに、鈍器でしかないというのに、兵士の首目掛けて超速で振り抜かれたそれは兵士の首をまるで業物の刀剣を振ったかのように切断する。

 

その余波によって発生した風圧を横顔に受けつつイサネは兵士の群れを駆け抜ける。彼女の右手に握った鉄棒が振るわれる度にオートマタの体の一部が宙を舞うか、戦場に銃声に引けを取らない程の金属が拉げる音が響き渡る。

 

 

その時だった。爆発と轟音と共に、本部のあると思われる方向から瓦礫が兵士達が吹き飛ばされ、イサネの足元やその周囲に転がる。

 

 

「あーはっはっはっは!空!私のぉ、私だけのぉっ!あは、あはははッ!ははは――――あ?」

 

 

何かから解き放たれた様な、それでいて尚壊れた笑い声(絶叫)を上げていたイサネの笑いが止まる。それと同時に闘争に完全に飲み込まれていたイサネの目の焦点が一つになり、その顔から笑いが消える。体中から放出されていた緑の粒子も霧散する。

 

(しまった、つい我を忘れてしまった。いくら意識障害があったと言えど、流石に今のはまずかったか?というか、作戦はどうなったんだ?)

 

自我の戻ったイサネが辺りを見回すと、作戦開始時には大勢いた兵士達も数えられるほどまでに減少しており、明らかに自分が暴れたであろう痕跡がそこら中に刻まれていた。自我が消えていたと言えど、意識自体は残っていたためか、自らが戦いと蹂躙の愉悦に浸りながら体を動かしていた感覚を思い出しながら心の中で呟く。

 

(・・・あの頃に、戻ったみたいだった。ただただ人類を殺す事だけを考えて、他の事の一切を歯牙にも掛けなかったあの頃に。戦いに心を燃やし、自らの答えの為に全てを消し去ることに執着していたあの時に。)

 

 

その時、

 

 

『貴様かぁ!我がカイザーに楯突く大馬鹿野郎というのはぁッ!!』

 

 

如何にも怒り心頭と言った様子の低い男の声が外部スピーカーのフィルターを通ってその場に響き渡る。イサネも思考を中断させ、声の方向を向く。するとそこにはこれまで幾度となく潰してきたパワーローダーに形状こそ似ているものの、肩部にあたる部位にはミサイルポッド、主峰と思わしきキャノン砲が付いている筈の砲からは明らかに火薬由来ではない光が充填しており、機体の色も黒い。

 

『貴様ぁ、カイザーに楯突くことがどういうことかを思い知らせてやろう・・・!』

 

『見るがいいッ!この技術の粋を集めた超強化外骨格!最高純度の装甲と最新のアクチュエーターを搭載した最新にして最終兵器をぉッ!』

 

「だっさ!」

 

その余りに他のパワーローダーと比べても色以外に大きな変化の無い物を最新にして最終兵器と声高に言われ、イサネも思わず思ってもいない事を反射でそう答える。

 

『なぁッ!?貴様、これをダサいだとぉッ!絶対に許さん!粉々にしてくれるわぁッ!!』

 

イサネにとって今の発言はつい反射で言ってしまった事で、その外見に対して特に思うことも無いのだが、どうやら黒いパワーローダーに乗るパイロットはその声が逆鱗に触れたらしい。怒りを大声で喚き散らす。イサネはそれを無視し、近くに倒れている兵士からライフルとそのマガジンをいくつか拝借、左手に持ったライフルの残弾が予備マガジン含めてほぼ残っていない事を確認すると、おもむろに地面に投げ捨てる。拾ったアサルトライフルがまだ動くことを確認し、マガジンをベルトにあるマガジン入れに挿す。

 

『まさか貴様、そんな豆鉄砲でこれを相手するなどと言うんじゃないだろうな?はっはっは、辞めておけ、そんなものはこの装甲の前では何の役にも立たん!』

 

その様子を見ていた黒いパワーローダーのパイロット――カイザー理事が嘲笑するように、そして自らの乗る機体の装甲を誇るように言う。

 

「その装甲をお前自身が持っていない割にはよくそんな自信満々に言えるものね。」

 

理事を煽るようにそう返すイサネの目は、既に勝利を信じて疑わない絶対の確信が見て取れた。

 

(あれの発現のさせ方は・・・まだ覚えてるはず、多分。それに、いくら銃弾が効かずともやり様はいくらでもある。)

 

アサルトライフルが動いた時に落とさないようにグリップを少し強く握る。

 

 

『まずは貴様のその戦意から消し去ってやろう!』

 

 

その声と共に頭部にある砲がレーザー特有の光を放つ。やはりあの砲はレーザー砲の様だ。イサネは足に力を込め、重心を下げる。

 

 

 

―――光芒。

 

 

 

レーザー砲から圧倒的な光の奔流が放たれる。それと同時にイサネ地面を蹴っては前に出る。数瞬前にイサネの居た場所がエネルギーによって焼き払われる。しかし、当のイサネ本人は既に黒いパワーローダーの懐まで潜り込んでいた。

 

 

「とりあえず、関節はどれくらい頑丈だ?」

 

 

その独り言の後に黒いパワーローダーの左足の関節部に銃弾が叩きつけられる。殆どの銃弾は弾かれてしまう。その直後にその巨体に見合わない速さでイサネを吹き飛ばそうと黒いパワーローダーが前進。人ならざる程の反射神経でそれに反応したイサネはその突進を回避し、つい今しがた自分が銃撃した脚関節を注視する。

 

(ほぉん・・・硬いは硬いけど関節はやっぱりある程度弱い訳ね。力を力で真っ向から叩き潰すのも悪くないけど、そればかりだと勘が鈍りますし、少しは頭を使いますか。)

 

心の中でそう決めると、イサネは黒いパワーローダーの銃撃やミサイル、照射され続けるレーザーを躱しながら周囲の状況を頭に叩き込む。

 

(うーん、あれの装甲を抜くだけの打点が作れそうなものは無いか。あーあ、一体誰なんでしょうね、こんなになるまでここ壊したのは。)

 

さっきまでの自分の行いを棚に上げ、基地にあるものであの装甲をどうにかするべく思考を回す。

 

(あのレーザー砲、上手く誘爆出来ないかなぁ・・・狙撃銃みたいな一発の貫通力のある武器があれば行けそうかな?それとも、動きを止めさせて無理矢理コックピットに穴開けるか?)

 

現在イサネの頭に思い浮かんだ二つの案。レーザー砲を発射の際のエネルギーチャージを狙って砲身内にダメージを与えて誘爆させる案。二つ目に基地に建物に衝突させて動きを止めた所にイサネのコジマ粒子を纏った一撃(コジマブレードモドキ)をコックピットすぐの装甲に叩き込んで無理矢理破壊する案。相手の力を上手く使った搦め技と己の力で全てをブチ抜く力技。

 

(搦め手が駄目だったら力技にしよう。よし、そうと決まればまずは貫通力のある銃が欲しいな。)

 

戦場における迷いは死に直結する。イサネは黒いパワーローダーの攻略法を決めると、即座に動き出す。攻撃を躱し続けていたイサネがパワーローダーに背を向け、走り出す。黒いパワーローダーはそれに追従するようにイサネを追い回し、銃撃を浴びせるも、やはり当たることは無い。

 

『逃げてばかりかぁ!それでもブラックマーケットで天敵と呼ばれた貴様の在り方なのかぁ!』

 

カイザー理事が何事かを言っているが、それを無視して狙撃銃を探して基地内を走り回る。が、何処を探しても一発の威力に優れた武器は見当たらない。どうやらこの基地には狙撃銃を扱えるだけの実力者は居ないかいたとしても数はそう多くない様だ。カイザーPMCの練度の低さに呆れつつ、気持ちをリセットするために空を見上げる。するとそこにはシャーレのロゴが刻まれたヘリが一機、上空を旋回するように飛んでいた。

 

「連邦生徒会・・・?腰がAF並みに重い生徒会がわざわざ辺境の一基地まで?っておわぁっと!」

 

ミサイルの爆風をいなしながら不審に思うイサネ。しかし、すぐにその下らない思考を振り切る。今自分が戦っているのは目の前の黒いパワーローダーだ。自分に言い聞かせながら策を練る。

 

(高貫通力の銃火器は無い・・・なら、さっきのやつを試してみるか・・・?)

 

さっきのやつ。イサネが頭の中にあった違和感に苦しんでいた時からあったコジマ粒子を纏った銃撃。気付いたのはパワーローダーから逃げ回りながら半ば発狂していた時の記憶を掘り起こしている時、つまりほぼ今だ。

 

(コジマゼリー程の空気抵抗の軽減は見込めないが、活性状態のコジマ粒子を纏わせるだけでも、結構な貫通力にはなるんじゃないか・・・?)

 

BFFのスナイパーライフルの弾に塗布されていたコジマゼリーとかいう聞いた時は絶対食い物と勘違いして食って死んだ奴いるだろと思ったあのよく分からない塗布物を思い出しながらコジマブレードモドキの要領でコジマ粒子を操作。そのまま銃口を黒いパワーローダーの恐らくカメラがあるであろう位置へ向けて引き金を引く。すると先程までは銃弾を一切受け付けなかった装甲が僅かに削れているのが確認できた。

 

『くそ、カメラを狙いやがって・・・ええい!すばしっこい!』

 

どうやらカメラもついでに破壊できた様で、奴の視界を一部奪うことが出来た。それを確認しつつ、岩陰に潜み、頭の中で情報を整理する。

 

(装甲にダメージあり・・・でも、コジマブレードモドキと比べてちょっとなぁ・・・使い道がないなぁ。)

 

確かに黒いパワーローダーの装甲に傷を与えることは出来たが、傷と言っても腕に纏わせる(コジマブレードモドキ)と比べて費用対効果が薄すぎる。そこで先程の記憶の中でパワーローダーの装甲がイサネの銃弾でゴリゴリと削られていく様子を思い出す。

 

(だとするなら、さっきあの白いパワーローダー(量産型)の装甲を撃ち抜いた時と今では何が違う・・・?)

 

先程の自らの戦いと今の黒いパワーローダーとの戦いにおける違いを記憶の中から探り出す。

 

(ええと・・・?確かさっきは異常な昂揚のせいであまりはっきりと覚えていないけど、さっきはもっと周りの緑色が多かった様な・・・?)

 

『だぁぁもう!何処にいる!何処に隠れた!』

 

カイザー理事の苛立った声が聞こえる。本当ならここから飛び出て中身諸共吹き飛ばしてやりたいが、ここは頭脳を使って撃破したい。それはイサネの下らないエゴでしかないが、それでも実戦における勘を鈍らせたくないと戦術的勝利を飾る為、思考に集中する。

 

(その緑色はコジマ粒子なのは確定だ。だがそれは私のヘイローからしか放出されていない筈・・・視界を埋めるほどの量は体中から放出させる以外に方法は無い。)

 

――考える。

 

(でも、放出するだけでそこまでの貫通性を持たせることは出来る・・・?いや、この場合は否だろう。只放出するだけでは体力の浪費と同じ・・・)

 

 

―――考える。

 

 

(放出するんじゃなくて生成量そのものを増やす。これだ、恐らくこれで間違いない。なら、どうやって生成量を増やす?これまでにあった事例を思い出せ・・・ヒントは、ネルと殴り合った時が一番近いか?あの時以降でコジマ粒子を大量にばら撒いた前例はない。)

 

 

 

―――考える。

 

 

 

(さっきとネルと殴り合った時の共通点は何だ?どっちも戦いだった、ネルの時は派手に一撃貰ったが、今はほぼ無傷だ。身体の消耗度合いじゃない・・・体力だってまだ余裕がある・・・ならなんだ?体の問題でないなら心の問題か?精神状態・・・確かネルの時はここで動かなかったらもう戦う機会が無いからって・・・あっ。)

 

 

 

―――思い至る。

 

 

 

(そうか!どっちもそこそこの殺意か闘争心が私の中にはあった。つまり条件は精神の昂揚・・・つまるところ私の心の持ちようという事か!はははっ!理解ったぞ!)

 

 

自らに起きた現象を理解したその時、

 

 

『そこに居たかぁ!!もう逃がさんぞ!確実に踏み潰してくれるッ!!』

 

 

「やっべ、考え事に意識割き過ぎた。」

 

 

遂にカイザー理事の乗る黒いパワーローダーが岩場の影に隠れていたイサネを発見する。イサネは戦闘中にも関わらず思考に意識を割き過ぎていた己の失態を反省。自らの仮説を実証すべく潜んでいた岩陰から出てある程度飛び回れる広さのあるスペースに出る。

 

『もう何処へも逃がさん!』

 

そう怒鳴りながら黒いパワーローダーはイサネの正面にまるで退路を塞ぐように立ち塞がる。

 

『こんなにも手こずらせやがって・・・このツケは必ず払ってもらうからなぁぁッ!!』

 

「・・・はは、ははははっ。」

 

カイザー理事の声に乾ききった笑いで返すイサネ。目を瞑り、本番(メインディッシュ)はこれからだと自らを奮い立たせる。ツケを払うのはカイザー理事だと、自分がこの企業の腐った走狗にこれまで好き勝手やってきたツケを払わせるのだと、他人事ながらそう心に決める。

 

 

「あはははっ。」

 

 

自然と口角が上がる。武者震いのせいか体中がぞわぞわする。またしてもイサネのヘイローから溢れる緑の粒子が対流を早め、瞳もそれに伴い円環と共に輝きを灯す。

 

 

 

―――逃げ回るのは終わりだ。撃ってこい、腰抜けが(臆病者)

 

 

 

先に動いたのはカイザー理事だった。理事の操作に従い、黒いパワーローダーは肩に着いたミサイルポッドから幾筋もの白煙を吐きながらミサイルが飛翔する。イサネは発射音と同時に目を見開き、自身の体を緑に輝く薄い膜――PAで覆い、正面からイサネ目掛けて飛んでくるミサイル群に突っ込む。

 

『ミサイルに正面から突っ込むとは、馬鹿なのか?』

 

常識的に考えても明らかにおかしなイサネの行動に思わずそう漏らす。そしてミサイルによってボロボロになったイサネの姿を幻視する。しかし――

 

 

「あーっはっはっはっはっはッ!?効く訳ないねぇそんな玩具がぁぁーーッ!!」

 

 

『なんだとぉ!?』

 

 

爆炎から飛び出してきたのは無傷のイサネ。よく見ると緑に輝く薄い膜の様なものが彼女の体を覆っており、流石の理事もこれこそが兵士の報告にあったバリアだと確信する。しかし、次の瞬間、カイザー理事は起こった出来事に自分の目を疑う。

 

 

『はぁぁ!?この装甲にダメージだと!?』

 

 

そう、爆炎を突っ切ったイサネは理事の乗る機体へ向けて手に持つアサルトライフルで銃撃をした。そこまでならいい、どうせ銃弾が弾かれて終わるだけだ。だが、実際は銃弾や爆弾による爆発を受けても碌に損傷を与えられない筈のこの装甲をイサネの撃った緑の粒子を纏う銃弾はものの数発で穴を空け、コックピットにあるモニターに機体損傷の警告を出させたのだ。

 

「うぇぇい!予想通り!油断したねぇ、慢心の権化が!はははははははッ!」

 

悪戯の成功した子供のような掛け声からの嘲笑。カイザー理事はそれに反応する余裕はない。試験段階でも銃弾やグレネードによる爆発を受けても傷つかなかった自慢の装甲がいとも容易く撃ち抜かれたのだ。

 

『このっ、だが、これは耐えられまい!そしてその位置では躱せないなぁッ!?』

 

苛立ちのままにレーザー砲をチャージ。その照準をイサネに向け、トリガーに指を掛ける。イサネの位置は丁度レーザー砲の直線状かつ空中だ。回避する手段などある訳ないし、あの薄い膜では大出力のレーザーは耐えられないだろう。カイザー理事は勝ちを確信する。

 

 

 

――――――それが、それこそが、イサネ(天敵)が張り巡らせた罠だと気付かずに。

 

 

 

頭部のレーザー砲の内部に光が灯った事を確認したイサネは自らの愛機(ストレイド)を操作する感覚で自身から溢れるコジマ粒子を操作。跳躍によりそのまま地面に落ちる筈の体の軌道をブースターを操作する感覚で制御、光が充填されつつある砲に向かって直進、砲身にぶつかる前に空中で体を捻りながら宙返り、レーザー砲の上を通過するコースを取る。

 

照準に捉えていたイサネの姿が目の前からいきなり消えたように見えたカイザー理事はレーザー砲のチャージが完了している事を忘れてイサネを探す。だが、もう手遅れだった。

 

 

 

「はははっ。」

 

 

 

―――上から聞こえる乾いた笑い声。

 

 

イサネは上下反対のままレーザー砲の上を通過しながらアサルトライフルを掲げ――自身の下にあるレーザー砲の付け根に向け、引き金を引く。

 

カイザーPMCの兵士が持つ一般的なアサルトライフルから吐き出された銃弾の列は緑の粒子を纏い、一直線にレーザー砲の付け根へと突き進み、その頑強な砲身の鋼材を食い破り、その中にあったエネルギーを直撃する。

 

 

――殺った。

 

 

そう直感したイサネはそのまま地面に着地。すぐさま距離を取り、黒いパワーローダーを見上げる。

 

 

―――異音からの轟音。

 

 

黒いパワーローダーは一瞬の沈黙の後、レーザー砲が爆発し吹き飛ぶ。その次に動力部と思われる機体の中心部にそのエネルギーが逆流し誘爆。機体の内側から吹き飛ぶようにして上半身が爆発し、左右についていたガトリング砲も爆発によって片方は吹き飛び、片方は地面に落ちる。

 

 

「どぉぉわぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 

そんな叫び声と共に小爆発を繰り返しながら炎上する機体の前方、イサネの後ろで何かが地面に落ちる音がする。イサネが振り向くとそこには来ている服の所々が焦げ付いたカイザーPMC代表取締役である理事が何とか体を起こそうとしている光景が目に映った。

 

 

―――大獲物だ(玩具だ)

 

 

イサネの顔つきが完全に獲物を見つけた肉食獣のそれに代わる。もしくは悪人の顔のそれとも言えるだろうか。イサネは手に持っていたアサルトライフルを捨て、地面に落ちていた黒いパワーローダーのガトリング砲の砲身を掴む。

 

「ん、よっと。」

 

軽い掛け声と共に機械駆動前提のガトリング砲がいいとも容易く持ち上げられる。

 

「へっへっへ。」

 

まさに悪党の様な笑い台詞を吐きながら持ち上げたガトリング砲を肩に上手く担ぎ、やっと起き上がったカイザー理事に向かって歩いていく。

 

「くそぉっ・・・!ん?お前は・・・えぇっ!?うっそ!!?」

 

近づいてくるイサネに気付いたカイザー理事はイサネに敵意を向けようとするも、イサネの肩に担がれた明らかに人が持っていいサイズと重量ではないガトリング砲を見て目を剥く。

 

 

「さて、今までやりたい放題やってくれたんだ・・・払ってくれるよね?この代償。」

 

 

まさに死の宣告。イサネは肩に担いだガトリング砲を軽々と横薙ぎに振り、自身の周囲を薙ぎはらう様にして再び肩に担ぐ。

 

「くっ、金か!?金が欲しいんだな!?いくらなんだ、言ってみろ!いくらでも払ってや――」

 

「100万C。」

 

「は?」

 

イサネの口から出た知らない単位にカイザー理事とて思わずそう返さざるを得ない。当のイサネは前世におけるACパーツの値段単位のCOAM(コーム)が伝わっていない事に首をかしげていたが、ここがキヴォトスであることを思い出し、再び口を開く。

 

「だーかーらー、100万Cだっつってんでしょ。あ、100万Cは円換算だと大体100億円位ね。」

 

「ひゃくぅ!?えぇ!?100億ぅ!?」

 

幾ら企業と言えどACやそれに準ずる巨大な兵器群の技術をまだ有していないキヴォトスの企業にとって、それも大企業の傘下企業となると100億という数字は雲の上の数字の様だ。因みにこの100万Cという値段はかつてイレーネがクレイドル03を襲撃する時とアルテリア施設カーパルス占領の依頼での報酬金の額と同額で、リンクスの頃から報酬金なぞ大して数えもしなかったイレーネが特に高かったと唯一覚えている報酬金だ。

 

・・・余談ではあるがカーパルスについては後にしれっと企業連に報酬をせびってみたものの、1億殺しておいてなんだお前(虐殺者に払う金は無い)という反応が返ってきただけで結局貰えていない。

 

「で、払ってもらえる?100万C・・・じゃなかった100億。」

 

「ばっ、払える訳無いだろう!そんな狂った額!そもそも一体何に使うん――」

 

 

―――がちゃり。

 

 

カイザー理事の目の前に突き付けられるガトリング砲の銃口。イサネはガトリング砲の銃口を突き付けたまま呑気に喋り出す。

 

「これさぁ、動力源以外の機構が全部ここで完結してるからさぁ、私の力でモーターに電力流せばこれこのまま撃てるんだよね。しかも結構残弾ある感じだからどう?最新型の的になってみる?」

 

「え・・・?」

 

「あ?分からなかった?こうだよ。ほら。」

 

明らかに思考が追い付いていない理事に事実を示す為、ガトリング砲の銃口を上に向け、動力源から電気を受け取る部分にコジマ粒子を流し込んで無理矢理と言う形だが稼働させる。

 

すると空に向けられた6つの銃身はそのまま回転を始め、その1秒後に毎秒100発近い銃弾を空へばら撒き始める。イサネは弾切れのタイミングでコジマ粒子を止め、銃口を降ろす。そして外部から操作するために付けられたであろう操作盤を弄り、リロードの指示を出す。

 

「ほら、撃てるでしょう?ちゃんと弾倉交換だってしてくれる。壊れている割には結構素直な子ね。反動もそこまで強くない。流石は最新型って所?」

 

リロードしているガトリング砲を見ながらそう嘯くイサネ。そしてその双眸でカイザー理事を見据える。

 

「で!払うの!?それともここで死ぬの!?どっちなの!!?」

 

「は、は、はらッ・・・・!」

 

再び突き付けられる銃口と選択。しかし、いくらカイザーPMC代表取締役と言えど100億という金は自身の総資産を以てしても届かない。そしてNOと言えば死。どちらを選んでも破滅という結果にカイザー理事も答えることが出来ない。

 

だが、イサネはそれすらも予測済みだった様で、

 

 

「まぁ、今の君にこの代償を暴力以外で支払う術は無いんだけどね。」

 

 

直後に振るわれる巨大な銃身。強風に吹かれた襤褸切れの様に吹き飛んでいく恰幅の良い機械の体。吹き飛ばされたそれは地面に落ちることなく飛んで行き、自らが破壊した建物の瓦礫の山に叩きつけられる事で停止する。

 

「うぐぉぉぉっ・・・・」

 

瓦礫に全身を強く強打し、うつ伏せに倒れたまま呻き声を上げることしか出来ないカイザー理事だったが、唯一動く首を動かして周囲を見ようと首を上げると、そこには巨大な銃身を背負った少女の姿が見える。

 

「くそがッ!ふざけやがって、どうせアビドス高校の差し金だろうっ!あんな貧乏な連中なんぞに、何を誑かされた!?あの連中など、取るに足らない―――ぐぶぅっ!?」

 

イサネの姿を認めるや何とか身を起こそうとしながらイサネに向けて怒鳴り散らすが、それを言い切る前に脇腹に強烈な蹴りを受けその場に蹲る。

 

「ほーら、早く動かないと蜂の巣にされちゃうぞー。」

 

カイザー理事という玩具でどう遊ぶかを考え始めていたイサネはカイザー理事が何事かの喚きを言い切る前に脇腹に蹴りを一発。そして蹲るカイザー理事にガトリング砲の銃口を向け6つの銃口を回転させながらそう脅す。

 

「おのれ、このまま終われるかぁッ!!?」

 

激痛を堪えて何とか銃口の先から逃げ出すカイザー理事。しかし、そこに待っていたのは回転した銃身による一撃だった。悲鳴を上げる事すら許されず、再び地面に叩き伏せられる。

 

「もっと頑張んないと分解されちゃうぞー。」

 

「畜生がぁッ!!」

 

再びカイザー理事に向けられる起動状態のガトリング砲。最早殴られた痛みに呻いている場合ではない。半ばやけくそになりながら体を起こして走り出す。今度は銃身による打撃は無かったので、そのまま走り去ろうとする。しかし、

 

「あ、そこ危ないよ。」

 

「お前が撃つからだろうがぁぁぁああ熱い熱い熱いぃぃぃッ!!」

 

走り出した先には火気厳禁のマークのついたドラム缶。これだけなら何も問題ないのだが、イサネは腰のベルトに挿してあるハンドガンを引き抜きドラム缶へ向けて撃つ。銃弾によって薄い金属に穴が空き、そのまま火気を纏った銃弾が中にある燃料に着火。穴から入り込んできた空気を餌にして猛烈な勢いで燃え盛り、爆発。当然その近くを通っていたカイザー理事はそれに巻き込まれ、燃料と一緒に燃え上がる。

 

「天下のカイザーがっ、こんなふざけた奴に、こんな奴にぃッ!!」

 

話にまともに取り合ってすら貰えず、一方的に痛めつけられるカイザー理事はイサネに対して怒りを吼える。が――

 

 

「輩はお前だぁっ!どっせーい!!」

 

 

「ぶべぇっ!?ふ、ふざけん――ぐぼぉっ!!?」

 

 

勿論まともにそれを聞いてくれるはずも無く、炎上した体のまま殴り飛ばされる。

 

 

 

「死ねぇぇいっ!!」

 

 

「こんちくしょうがぁぁぁぁぁぁッ!!!」

 

 

 

・・・どうやらカイザー理事では、躾けのなっていない獣(首輪付き)を満足させることは出来なさそうだ。

 

 

 

 

 




普通に展開に悩んでしまったせいで投稿遅れた...(涙)

悩みに悩んだ半限界状態で書き上げたので誤字脱字が多いかもしれません。
後イサネさんの発狂した時の台詞は私独自で考えたものなので結構違和感というか変だと思う人もいるかもしれないので予め謝罪しておきます。

分かりにくい台詞ですみませんでしたぁッ!!

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