透き通る世界で二度目の答えは出せるのか   作:回り針

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かなり深刻な構成難に陥っております...誰か、助けてくれ。(悲痛)

このままだとイサネさんの出番がほぼモブと同じになってまう...!



不運な迷子

 

 

 

 

ここは裏が横行するブラックマーケット。その一角にて。

 

 

 

「ち、畜生、あいつら、天敵を雇いやがったのか・・・!」

 

 

「くそっ・・・おかげでうちらの構成員は完全に壊滅状態だ・・・苔岩組め、勝ちさえすれば抗争のルールなんてどうでもいいのか・・・っ!」

 

 

瓦礫の中倒れ伏す無数のロボット兵達。周囲に立っている者は一人だけ。

 

 

「カイテンジャーは既に廃棄用の燃料タンクに沈めた・・・で、依頼も問題なく遂行出来た。よし、後は報酬貰って帰るだけ!ウタハから借りたこれらも意外と使い勝手だけは悪くない。」

 

 

その一人――標根イサネは、依頼の完了を確認し、武器を納めてスマホを取り出す。画面を操作し、スマホを耳に持っていく。

 

「もしもーし、私標根イサネ。えーっと、苔岩組さんで合ってる?」

 

『・・・そうだが、どうした。依頼で何か問題が?』

 

「依頼目標のナントカ組の壊滅、完了した。写真にあった幹部クラスは全員潰したし、トップは適当にボコって縛っておいた。後処理は任せる。」

 

電話の相手は今回の依頼主である苔岩組。イサネは淡々と依頼完了の報告を送る。

 

『想定よりも随分と早い仕事だな・・・』

 

「だとしても次回以降の仕事にはそんなに期待しないで。後カイテンジャーの連中は全員もれなく廃棄用燃料タンクの中だ。取られた金はまだ現金のままだったし、あいつらの口座から引き出せるだけ金も引き出した。」

 

『確かに取られた金を取り返してくれとは言ったが、まさかそこまでやるとは・・・』

 

カイテンジャーに対するイサネの残酷な仕打ちに依頼時に「慈悲をくれてやるな」と言った苔岩組の依頼主も若干引いている。イサネはその様子の依頼主に向かって言葉を重ねる。

 

「いい?正義なんてものは人が殺人を正当化するための免罪符、もとい言葉の麻薬に過ぎない。確かに正義と悪なんて言う概念の染みついた現代では正義という言葉は非常に良く心に染み渡る。」

 

『え?あの、いきなり何の話を・・・?』

 

「けど、けれどね?そもそも生き物に正義も悪も存在しない。人は人のエゴによって人を殺し、野生の獣は生きる為の本能のままに命を喰らう。そこに何の違いもない。どちらも自分の為に何かを奪う、天地創造から続く不変の定理だ。」

 

『あの?』

 

いきなり始まった哲学の話に困惑する依頼主を置いてイサネは話続ける。

 

「だから私は別に裏切りだろうが契約違反だろうがそれを全て悪と断じるつもりは無い。裏切り者には裏切り者の事情があるだろうし、契約違反だって何かしらの思惑があっての事は容易に察せられる。例えばの話、例え貴方達がこの依頼の報酬の支払いを渋ろうと誤魔化そうと私はそれを容認する。ただ・・・」

 

『ただ・・・?』

 

ここで一拍置き、一呼吸。声色を変えて話し出す。

 

「それと私がその行為を許すかどうかは話が別。」

 

『えーっと?』

 

いきなり雰囲気の変わったイサネにまたも困惑する依頼主。イサネは更にそこに追い打ちを掛ける様にとってもとってもドスの利いた低い声(イサネの師であるセレンの声真似)で話す。

 

 

「依頼の報酬、満額ちゃんと払ってくれるな?私の潰した有象無象と違って、なぁ?」

 

 

『わ、分かっているとも!これまで君に報酬を支払わない連中がどういう目にあったかなんてブラックマーケットでは有名な話だ!何なら上乗せして支払おう!いや、支払わせてください!』

 

 

人類種の天敵(セレンの愛弟子)にのみ許された天敵の威圧(セレン流交渉術)によって元々報酬を支払う気でいた依頼人を無駄に不必要に震え上がらせたイサネは「後処理要員早く連れてきなー?後、報酬よろしく。」とだけ伝えると、電話を切って辺りを見回す。

 

 

「あー、そこ、そろそろヤクザさんが来るから離れた方が良いんじゃなーい?喧嘩売るならバイオ燃料にでもなってもらうけど。」

 

 

「ひぇっ!?」

 

 

イサネは視界に入った近くで潜んでいたと思われる不良生徒らを一瞥しながらイサネは早歩きで依頼主の元へ向かう。

 

(・・・昼、苔岩組にお世話になるか・・・?どうせ闇金で金持ってるでしょ、一人分くらいなら問題ないよね・・・?)

 

なんて浅ましい事を頭の中で考えていると、ポケットにあるイサネのスマホが音を立てて電話が掛かって来ていることを知らせる。イサネは少し怪訝に思いながらもスマホを取りだし、画面を確認する。

 

「うん?連邦生徒会?本当に何の用・・・?」

 

シラトリ区の奪還作戦以降一切の関りが無かった連邦生徒会からの電話を不審に思いつつも通話に出る。

 

「はい、標根イサネ。天下の連邦生徒会様が一介の傭兵バイトにわざわざ何用?」

 

『あ、もしもし、先生だけど・・・ず、随分と機嫌斜めだね・・・?』

 

「えぇ?先生?なんでわざわざ連邦生徒会の電話番号で掛けてくるのさ。紛らわしい。」

 

通話の相手はシャーレの先生だった様で、警戒心満々だったイサネの態度も若干軟化する。紛らわしいというイサネの苦情に先生は『ははは、ごめんね。』と謝罪を入れ、本題に入る。

 

「依頼?」

 

『依頼って程でもないんだけど・・・いや、依頼なのかな?』

 

「あー、秘密裏に誰か処分して欲しいって事?いいよ、殺しなんて飽きる程――」

 

『違うから!全然そんな事ないから!って言うかちょっと待って?イサネ今なんて・・・?』

 

「・・・き、気のせいじゃない?」

 

連邦生徒会からの依頼と聞き、つい自身の真っ黒な過去を口走りかけたイサネは何とか誤魔化しながら話を進める。

 

「それで、頼みたい事って?」

 

『えっとね、この後?っていうか、今立て込んでいる仕事が終わったらちょっと廃墟を探索しに行くんだけど、着いて来てもらう事って出来るかなって思って。』

 

どうやら廃墟探索の為の護衛依頼の様だ。イサネは思わず渋い顔をせざるを得ない。

 

(護衛なんて専門外とまではいかないけど、出来るかな?戦闘の中でも一番に苦手な分野なんだけど。そもそもリンクスの依頼でも数回しか・・・っていうか護衛対象をAFと人で比べてる時点で・・・)

 

言わずもがなイサネもといイレーネは戦闘の中でも壊す方、攻める方に圧倒的な適性を有している一方、逆に護衛などと言った敵の攻撃から何かを守るといった戦闘は少々見劣りするものがあり、本人も防衛依頼はともかく護衛依頼は特に嫌う傾向にある。

 

「護衛依頼かぁ・・・先生と他に誰がいる?」

 

『えっと、4人かな。』

 

非常に嫌いな類の依頼ではあるが、幸い護衛対象である先生には指揮した生徒の戦闘能力を普段よりもかなり向上させるという意味不明な力と元々の指揮能力の高さがある。自身の危険を余りにも顧みなさすぎるという点を除けば恐らくどんな護衛対象よりも優れた存在だといえるだろう。

 

「了解した。依頼を受ける。何処に集合すればいい?」

 

『えっと、今の予定は――』

 

イサネは先生の依頼を受ける事を伝え、その場で詳細の擦り合わせを始める。先生の話曰くそこまで大規模な探索ではないようで、すり合わせはものの数分で完了。先生に準備してくると伝えて通話を切る。

 

「少し残弾が心許無いね・・・よし。」

 

イサネの当初予定していた苔岩組での昼食を諦め、その時間で不足分の弾薬を補充するべくイサネはその歩みを早める。

 

 

「あっ!先生と報酬の話してないじゃん!」

 

 

・・・傭兵にあるまじき失態を思い出しながら。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「先生!伏せてっ!」

 

 

モモイの言葉に咄嗟に身を屈めて遮蔽に隠れる。

 

 

――爆発音。

 

 

ロボット兵士の放った攻撃によって近場の一帯が爆炎に覆われる。

 

「うぅ・・・皆、大丈夫?」

 

「私は平気だけど、思ったより敵の火力が・・・!先生!大丈夫ですか!?」

 

先生を気遣うミドリの声。

 

「大丈夫だよ。」

 

「来た、ロボット達・・・!」

 

何とか返事を返すが、それに合わさる様にユズ――ゲーム開発部部長である花岡ユズの怯えた声が更なる増援を知らせていた。

 

「大丈夫、まだ引き付けられる・・・!」

 

幾ら攻撃が激しいとはいえこちらもまだ根を上げた訳じゃない。モモイが出来る限り敵が一点に集まるよう誘導する。

 

「よし、アリスちゃん!やっちゃって!」

 

ミドリの合図。後方で目立たない様に待機していたアリスはそれにこくりと頷き、レールガンを構えてチャージを始める。

 

 

「今日の私の役割は、光属性広域アタッカー・・・」

 

 

「目の前のモンスター達を殲滅します。」

 

 

アリスの構える【光の剣:スーパーノヴァ】の砲口に光が充填される。

 

 

「光よっ!」

 

 

その掛け声と共にレールガンの引き金を引く。

 

 

すると次の瞬間、凄まじい轟音と共に一点に集められたロボット兵達が一筋の光に飲み込まれ、粉々に破砕されていく。

 

「よし、成功!」

 

「アリスちゃん、凄い!」

 

完全に殲滅されたロボット兵を見てモモイとミドリが喜びと称賛の声を上げるが、敵はまだ戦力が残っている様だ。

 

「ま、まだ!敵の第二陣が接近中!」

 

敵の増援に気付いたユズがすかさず増援接近の報告を出す。

 

「ここで立て続けはちょっと・・・流石に不利だよ、撤退しよう!先生もいるんだし、安全第一で作戦を立て直したほうが・・・!」

 

ミドリが撤退の声を上げる。実際に圧倒的な数的不利に置かれているのは事実だ。先生の指揮とアリスの殲滅力を生かして何とか立ち回ってきたが、不利を押し付けられている状態では如何ともし難い。

 

「・・・ううん。」

 

しかし、

 

「ここで引く訳にはいかない。突破しよう。」

 

モモイは撤退の案を退ける。この状況でなお攻勢に出ようとする姉の提案にミドリも「えぇ!?」と驚きを露わにするが、モモイは意志の籠った目で続ける。

 

「ここで引いても、状況は悪くなる一方。ロボットは今の戦闘音を聞いて、どんどん集まり続けるはず。全部でどれだけの数が居るか分からないけど、多分今が一番手薄・・・G.Bibleの座標が示してるあの工場に入るには今が最大のチャンスだと思う。」

 

G.Bible。現在先生とゲーム開発部の5人はそれを求めてミレニアム近郊にある廃墟に来ていた。生徒会長が封鎖を指示した謎の領域であり、ミレニアムの精鋭ハッカー集団ヴェリタスの部長曰く「キヴォトスから忘れ去られたものが集まる時代の下水道」のような場所で、実際にキヴォトスのロボット型の人と違って自我があるか分からない、言語も通じないロボット兵があちこちに跋扈している。

 

そして今、先生含めたゲーム開発部は、そのロボット兵達に不利対面を押し付けられている状態にある。

 

「で、でも・・・」

 

ミドリの意見だって当然だろう。単純な兵力で圧倒的な差が付けられているこの状況でずっと戦い続けるのははっきり言って悪手であり、こういう場合は不要な被害を避けるために撤退するのが常識だろう。

 

「大丈夫です。」

 

ミドリの声に言葉を発したのはモモイではなくアリスだった。

 

「アリスちゃん・・・?」

 

「私達はこれまで一緒に、27回のダンジョン探索と、139回のレイドバトルを成功させてきました。今回もきっと、このパーティなら勝利できるはずです。」

 

「で、でも、それはゲームの話でしょ!?」

 

アリスの励ましの言葉はまさかのゲームでの話。ミドリも流石にゲームと現実は違うと反論する。

 

「どう転んでも、危険はある・・・私も、頑張るから。」

 

「でも、先生は?私達と違って攻撃を受けたら――」

 

そう、先生は頭上に円環(ヘイロー)を頂く生徒とは違い、銃弾の一発でも重症になり、当たり所次第で最悪即死してしまう。運よく銃弾の命中で死ななかったとしても、鉛中毒という二次被害で死ぬことだって考えられる。ミドリの心配は尤もだ。

 

「安心してください。」

 

それでもアリス声は揺らがない。

 

「どれだけ危険な状況でも、先生はアリスが守ります。」

 

アリスは改めて先生に向き直り、話し出す。

 

「先生・・・アリスを信じて、私達と一緒に来てくれますか?」

 

「勿論だよ。そして私も、仲間として出来る事をするね。」

 

即答。生徒達がここまで体を張っているのだ。自分も先生として出来る事をしなければならない。先生の答えに、アリスの表情がぱっと明るくなる。

 

「パンパカパーン!先生が改めて仲間になりました!」

 

RPGゲームのナレーションの様な口調で先生の答えを迎えるアリス。その様子にミドリも決心したように口を開く。

 

「ふぅ、分かった。私も覚悟を決める!」

 

これでこの場にいる全員の意志が固まった。

 

「ゲーム開発部、敵を突破するよ!先生、指揮をお願いします!」

 

「うん。任せて!」

 

ミドリの音頭にゲーム開発部の皆が続く。先生はすぐさま周囲を見渡し、敵の位置や数を把握して最適な動きと突破口を導き出す。

 

(見えた。敵陣の穴はあそこだ。よしなら――)

 

「聞いてここから工場に最短ルートで突っ切るよ。敵陣の穴はあそこ。まずは――」

 

こうして先生の指揮の元、無数のロボット兵群がる敵陣を切り崩すべく交戦が始まる。

 

(しかし、参ったなぁ・・・イサネの合流を待たずに来ちゃったのは失敗だったなぁ。モモイがだいぶ急かしてたから押し切られちゃったけど、数的不利が策で覆せるレベルじゃない。)

 

そう、先生はゲーム開発部が再び廃墟に行くという事で予めイサネに同行依頼を出し、それを承諾して貰ったのだ。しかし、そんなことを知らないモモイが「早く行こう!」と言い出してしまい、それに流される形でイサネの合流前に廃墟へと出発してしまったのだ。

 

 

(元より合流予定時間前に出発してしまった以上イサネは完全に被害者だし、私もモモイ達に助っ人がいるなんて伝えて無かったし・・・いや、今は出来る事をしよう。)

 

 

こうしてゲーム開発部+先生は敵陣を突き破って工場へと向けて戦場を駆けていく。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「・・・何このロボットの数。ただでさえ先生と合流しないといけないのに、こんな数で来られると普通に闘争心がくすぐられるからやめて欲しいんだけど・・・」

 

 

同じく廃墟の入り口にて、イサネは無数のロボット兵の群れを一直線に突っ切りながら先生たちを探していた。

 

(うーん、あまり先生が約束を破る人には見えないんだよねー。だというのに何故集合時間過ぎても姿を現さないのか。まぁ、どうせ何かあって先に廃墟に向かわざる得なかったって所かな?)

 

目の前に立ちふさがるロボット兵を適当に薙ぎ払いつつ、先生を探す。そうしてしばらく似たような景色の廃墟を駆けていくと、イサネの目が何かを捉える。

 

「うん?明らかについさっき付けられた破壊痕。それもロケットランチャーの比じゃない・・・そしてキヴォトスに大型のミサイルは存在しない。だとすれば戦車砲か特殊兵器か。」

 

イサネが見つけたのは明らかに通常の携行火器では有り得ない程の破壊痕。何か強大な力によって横に倒した円柱状の様に削り取られた廃墟の建物。イサネの思考が更に加速する。

 

(戦車砲は無いと見て良い。戦車の音ならまずうるさい周囲以外からキャタピラの駆動音が聞こえてきても良い筈・・・だとするなら残るは特殊兵器になるけど、私が見た範囲で居たかな?そんな大火力を持つ人。ノノミだって殲滅力はあるけど、数で押し潰すタイプだし。)

 

しかし、ここで一人、イサネの脳裏によぎる人物がいた。

 

(・・・アリス。天童アリスのレールガン。破壊痕のサイズ的にも恐らくあのサイズの砲から射出される弾の衝撃波のサイズと合致してもおかしくない。仮説が事実なら今回はゲーム開発部の子守りをしている訳だ。)

 

子守りと言ってもミレニアムに所属している以上ゲーム開発部の皆はれっきとした高校生だ。恐らく部活名の通りゲーム制作における何かを探しに行ったのだろう。ゲームという言葉を知ったのはリンクスになってからの話で、実際にゲーム実物には触れた事も無いイサネだが、ゲーム制作は何やらアイデアが重要である事くらいは知っているつもりだ。

 

 

(インスピレーションって言うのはこういう戦場や廃墟で芽生えるものなのかな?だとするならひたすら廃墟と戦いを繰り広げてきた私とかもしかしてとっても適性ある・・・?)

 

 

完全に間違えた知識を記憶に蓄積させながらイサネはロボットひしめく廃墟を先生を見つける為にただひたすらに駆けていく。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

《あなたはAL-1Sですか?》

 

 

 

それは唐突だった。

 

 

無数に群がるロボットの群れを切り抜け、工場の中に入る事が出来た。そしてアリスの「記憶にはありませんがアリスの中にセーブデータが残っているようです。」の言葉と共に導かれる様に進んでいくアリスの後を追った先にあった一台のコンピュータ。

 

起動したと思ったら文字を入力し終える前に画面に表示された文字。AL-1Sとは恐らくアリスの事で、この機械【Divi:sion system】は恐らく目の前に居る者がアリスかどうなのかを聞いているのだろう。

 

「?アリスはアリスで・・・」

 

「待って。・・・何かがおかしい。アリスちゃん、今は何も入力しない方が・・・」

 

ミドリが制止の声を掛けるも、どうやらこのコンピュータには音声認識も付いているらしかった。アリスの声に反応したかのように画面が更新され、新たな文字が表示される。

 

《音声を認識、資格が確認できました。おかえりなさいませ、AL-1S。》

 

「音声認識機能付き!?」

 

「えっと、AL-1Sっていうのはアリスちゃんの事なの?」

 

「あ、ごめん。ユズちゃんには言ってなかったかも。」

 

ミドリがアリスの事情を知らないユズに改めて事の経緯を語る。一方でコンピュータで名前を呼ばれたアリスは一歩機械に近づくと、

 

 

「アリスの、本当の名前・・・本当の、私・・・」

 

 

と呟き、続けて、

 

 

「あなたはAL-1Sについて知っているのですか?」

 

 

と機械に問う。が、反応が無い。

 

「反応が遅い?」

 

「何か画面もぼんやりしてきたけど、処理に詰まってるのかな?」

 

モモイとミドリの声。その直後、何とか文字の出力が始まったかと思いきや、読み取れる文字は「そうで」の三文字だけであり後の文字は文字化けしてしまい言葉の意味が分からない。

 

「え、え?何これ、どういう意味!?」

 

突如発生した異常に動揺する間もなく画面の文字は次の言葉を紡いでいく。

 

《緊急事態発生、電力限界です。電源の停止と共に消失します。残り51秒。》

 

「えぇっ!?だ、ダメ!せめてG.Bibleの事教えてからにして!」

 

電力限界。恐らくこのコンピュータのバッテリーにはもう電力が残っていなかったのだろう。モモイが焦っている間にも残り時間はどんどん0へと近づいていく。

 

《貴方が探しているのはG.Bibleですか? YES/NO》

 

「!?」

 

「YES!」

 

それでもなお自らの役目を果たそうとそのコンピュータは稼働を続ける。画面に表示された文字に素早く反応しYESの選択肢を取るミドリ。

 

《G.Bible・・・確認完了。コード:遊戯・・・人間、理解。リファレンス、ライブラリ登録No.193、廃棄データ第1号。残り時間35秒。》

 

「廃棄!?どうして!それはゲーム開発者たちの、いやこの世界の宝なのに!!」

 

モモイの言葉は尤もだろう。G.Bibleとはかつてミレニアムにいた伝説的なゲームクリエイターが遺した至高のゲームの作り方の全てが記録されている代物であり、もしその話が事実ならばゲーム制作における伝説的なお宝になる筈だ。というか実際G.Bibleが喉から手が出る程欲しがっている物は多いだろう。・・・ゲーム開発部を筆頭に。

 

 

《G.Bibleが欲しいのであれば、提案します。データを転送するための保存媒体を接続してください。》

 

 

電力限界で瀕死のコンピュータからの提案。

 

 

「えっ、G.Bibleの在り処を知っているの?」

 

 

―――迷っている時間は残されていない。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「・・・工場、何処なの。」

 

 

既に廃墟内に突入して1時間か2時間は経過している。数えきれないほどのロボット兵やオートマタを倒し、恐らくゲーム開発部の戦闘痕跡だって幾度か発見した。

 

 

「ちっ、ジャムった・・・!」

 

 

だというのに未だ目的地であるその工場とやらに着く気配も無ければゲーム開発部一行を視界に捉える事も出来ない。

 

一時間ほぼ休みなく撃ち続けたせいで弾詰まりの発生したサブマシンガンをホルスターに突っ込み、左手に持ったショットガンをリロード。弾倉にショットセルを次々と詰めていく。

 

(ジャムを解消したいのは山々なんだけど、こうも数が多いとなぁ!サブマシンガンだってまだ残弾自体は結構残ってるわけだし。)

 

残弾はどちらもまだ余裕がある。体力だってまだまだ余裕がある。戦闘中に幾ばくか的の銃弾を喰らう事もあったが、ただでさえ強化された肉体にヘイローのおかげかキヴォトスに来たおかげかキヴォトスの住人特有の銃弾に対する耐性が加わったおかげで何の問題もない。

 

(このまま一日中戦い続けろとかなら恐らくいくらでも戦えるけど、目的はそうじゃない。早い所先生と合流しないといけないが・・・ぐぐぐ、闘争本能を抑えろ私!)

 

肉体的には問題ないが、精神的には若干の問題があった。これだけの数の敵、例え相手の実力が大したことなくともこの数だ、かつて体の限界を押して尚戦い続ける程の戦闘狂である首輪付きもといイサネの闘争心が燃えない筈がない。

 

イサネは自らの救いようのない闘争本能をこの時ばかりは恨めしく思いながら先生一行を見つけるべく体を動かし、なるべく辺りを見回せる高所に位置取りながらロボット兵と交戦を続ける。

 

「・・・うん?あそこ、さっきまで開いてなかったような・・・?」

 

高所に陣取ったおかげで開けたイサネの視界に明らかに開いた建物の入り口が見えた。高所に登ってくるロボット兵を捌きながらその扉をよく注視する。するとその扉の奥に数時間前に見た事のある猫耳型のヘッドセットカチューシャが見えた。色合い的に恐らく姉の方で、外の様子を探っている様にその頭は動いている。

 

「メインウェポンが一つ使えないままなのも中々にストレスだし、さっさと合流しますかね。」

 

ロボット兵の軍団と戦い続ける事数時間、漸くゲーム開発部+先生を見つけたイサネは先生という指揮官の手札を増やすべく高台から跳躍、着地後先生の居ると思われる扉目掛けて走り出す。

 

 

「っ・・・!邪魔しないでよねっ・・・!」

 

 

高所から降りたイサネにロボット兵が群がり始めるが、それを吹き飛ばし、最低限の銃撃を以て強引な突破を図る。

 

 

 

「らぁぁっ!世界の全勢力があらん限りの戦力で潰しに来た時に比べればマシだろっ・・・!」

 

 

 

比較対象としては明らかにおかしいあの時の光景を思い出しながらイサネは敵陣を駆け抜ける。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「モモイ、外にロボット兵達はどれくらいいる?」

 

 

「うーん、ぱっと見ただけでもそこそこいたけど・・・っていうかなんか別の何かに気を取られてるみたい。」

 

 

コンピュータの電力限界により目的であるG.Bibleを目の前にみすみす失ってしまう所だったが、たまたま持っていた保存媒体――モモイのゲームのセーブデータの入ったメモリーカードにG.Bibleのデータだけでも転送することが出来た。・・・空き容量確保のためにモモイが心血注いで作り上げたらしいゲームのセーブデータがその代償になってしまったが。

 

現在はモモイが工場の出口の壁に張り付き、外のいるロボット兵士の様子を確認している。

 

(結局イサネとは合流できず・・・ここは電波の通りも良くないし、オートマタの数も多い。イサネ、大丈夫かな・・・?)

 

先生はイサネの身の心配をしながらも、自分たちが無事部室に帰るために如何に動くかを頭の中で何度もシュミレーションし、考えを巡らせる。その時アリスが何かに気付いたように声を上げる。

 

「・・・!モンスター達の様子が変です!」

 

「ほんとだ。明らかに何かを取り囲もうとしてる。けど、」

 

アリスの気付きにつられる様に外を見たミドリも、外のロボット兵達の異変に気付く。明らかに何者かと交戦している動きで、銃声のおかげで少し大きな声を出しても全く気付かれない。そして徐々にその混戦の塊はこちらに近づいてきている。

 

「イサネ・・・!」

 

「あいよぉッ!!・・・ふぃー、ストレ――違った。標根イサネ、現着した。」

 

ゲーム開発部の皆はその何者かの存在に緊張が走るが、先生には心当たりがあった。なんせ自分んが呼びつけたのだから。先生の声に呼応するようにロボット兵の群れから一人の人影――イサネがロボット兵の体を手に持ったショットガンで吹き飛ばしながら先生とゲーム開発部に合流する。

 

「・・・ごめんね?その、これには色々――」

 

「・・・事情は後。こいつの弾詰まりが解消出来たらすぐに動き出そう。単純に数が多すぎる。ただでさえ護衛任務は苦手分野なのに。」

 

合流するや否や己の失態を謝罪する先生だったが、イサネはそれを無視し、ホルスターから取り出したサブマシンガンのマガジンを引き抜き、詰まった銃弾を取り出す。ゲーム開発部の皆の準備が出来ていることを確認すると、「さっきぶりね、ゲーム開発部の皆さん。挨拶は省略させてね。」と4人に言い、改めてロボット兵へと向き直る。

 

 

「私、戦闘の中でも護衛は最も苦手な分野だから。先生、効率よく私を動かして。」

 

 

「勿論。皆も、準備は良い?」

 

 

イサネの言葉に頷き、先生もゲーム開発部に声を掛ける。

 

 

 

「それじゃ、ここを突破して部室に帰るよ!」

 

 

 

「「「「「はい!(うん!)」」」」」

 

 

 

こうしてイサネも加えた6人で敵陣に飛び込む。

 

 

 

「・・・先生。報酬、上乗せしてね。」

 

 

 

「・・・え?」

 

 

 

 

 





苔岩組は完全にオリジナルで作りました。どうせやられ役というかモブなので

あとアリスの言葉遣いが難しい...もしかすると後々修正が入るかもしれないです。
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