会話描写が上手く表現できねぇ...
今回は先生視点多めかもです。
小柄な体躯が強烈な衝撃に耐えきれず吹き飛ばされる。
「うっ!?や、やられてしまいました・・・ふ、復活の呪文を・・・!」
そう言って少女――天童アリスがどさりとオペレーションルームの床に倒れ伏せる。
「信じられない・・・どんな方法で来るのかと思ったら、よりにもよって強行突破なんて。」
ユウカが呆れた様に意識の無いアリスを見つめる。
「この子がアリスちゃんですね。」
そのユウカの隣に立つガウンを羽織ったメイド――アカネが興味深そうにアリスに近づく。
「とっても可愛いですね、6番目のエージェントメイドとして育てたくなってしまいます。・・・連れて帰っても良いですか?」
「それはダメ。今は
アカネの若干危ない発言を即座に否定し、エレベーター周囲の悲惨な状況を見て溜息を吐く。
「それにしても・・・まさかエレベーターの指紋認証システムを突破するためとはいえ無理矢理扉を打ち破るなんて・・・」
オペレーションルームのエレベーターは無数の弾痕が刻まれており、そのダメージによってエレベーターは緊急停止せざるを得ない状況になってしまった。
「・・・システムが突破できないなら物理的に突破する・・・戦闘においては扉一つを悠長にハッキングなんてしてられないからね。」
「イレ・・・イサネ。その、大丈夫なの?アリスの攻撃をもろに受けたみたいだけど。」
ユウカとアカネの後ろから聞こえる声。二人が振り向くと、そこには服についた埃を払いながらこちらに歩いてくる一人の少女――標根イサネの姿があった。彼女は敵襲の警告をした後、エレベーターの正面に陣取り、アリスの
イサネはユウカの心配そうな声に大丈夫だと言わんばかりに手を挙げて応じる。
「レールガンを一発凌ぐくらいならいくらでもやりようはある・・・と思う。・・・ま、まぁ?結果ほぼ無傷だったから問題ない問題ない。」
「凄いですね、あれほどの攻撃を受けても平気なその身体。まるでリーダーみたいですね。流石、リーダーと互角に戦った実績は伊達では無いですね。」
「あー、うん。運がよかっただけだと思うけど。」
アカネの称賛に曖昧な返事を返しながら身だしなみを整えるイサネ。まさか言えるはずも無い。エレベーターの中に居るのがアリスだと分かった瞬間にPAを展開したお陰で無傷だったなんて。イサネが黒服の言う神秘とやらのいたずらか、何かしらの因果かでコジマ粒子を扱えるようになったことはミレニアムではエンジニア部しか知らない情報の筈だ。ましてやここ最近ではコジマ粒子の操作も出来るだけ人の目につかない様に注意を払っている以上セミナーやC&Cが知る余地は・・・
(そういえばネルと殴り合った時がっつりコジマ粒子見られててもおかしくないんだよなぁ。エンジニア部とは不用意に関わろうとしないでと約束できたけど・・・)
かつてこの地に迷い込んだ時、コジマ粒子の解放をウタハとネルにがっつり見られていた事を思い出し、イサネは心の中で盛大に溜息を吐く。が、もう遅い。イサネはC&Cが口の堅い組織である事を信じ、オペレーターに被害状況を問う。
「確認しました。エレベーターのセキュリティロックをすぐに修復するのは難しそうです。対処としましては丸ごと取り換えるしか・・・」
今しがたの襲撃の被害をオペレーターが報告する。どうやら最上階を守るセキュリティは使い物にならなくなってしまった様だ。
「そう。じゃあ新しいのに交換・・・ううん、ちょっと待って。」
報告を受けたユウカは直ぐに交換の指示を出そうとして、一瞬考える。まず天童アリスという生徒は最近転入してきた生徒で、所有する武器だって分かっていない。そして今回の襲撃で持ち出したあの巨大な武器。ミレニアムの中でもここまで巨大な武器を作れる部活といたらそれはあそこ以外思いつかない。
「多分だけど、あのアリスちゃんの意味わからないくらい巨大な武器・・・エンジニア部で作られたものに違いないわ。こういう時、いつもエンジニア部に依頼してたけど・・・そこに罠がある可能性も捨てきれない。」
ここで新たに生まれたこの襲撃にエンジニア部も絡んでいるという可能性。ユウカの思考がその可能性を加味した対策を即座に弾き出す。
「一番強力そうなセキュリティを購入して、急いで取り換えて。ただし、エンジニア部製じゃないもので。」
ユウカの指示にオペレーターが頷き、すぐに復旧作業に取り掛かる。手の空いている者は倒れたアリスを反省室へと運んでいく。イサネはその様子を見ながらショットガンをハーネスベルトに掛け直す。
「ふぅ、これで第一波は凌いだと見ても良いのではないでしょうか?」
「・・・どうだろうね。いくらアリスの戦闘能力が優れているといっても単騎に全て任せる様な舐めた作戦は取らないと思うけど。」
「ふふっ、言ってみただけです。」
「・・・」
アカネと言葉を交わしながら騒がしくなったオペレーションルームの様子を眺めるイサネ。
(いくら外部サーバと切り離されているとはいえ、
ユウカの指示を待ちつつも、イサネは敵の初撃の甘さに何か裏の気配を感じ取っていた。
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「ううっ!アリスが連れて行かれちゃった!」
「落ち着いてモモイ、計画通りだよ。」
――アリスがやられた。
その知らせに少しの動揺を見せつつも身を張って正面攻撃という無謀な役目を果たしたアリスの頑張りに報いるべく先生含めたゲーム開発部は動き出す。
「・・・とりあえず、一つ目の仕掛けは上手く行った感じかな。そうだよね?先生。」
「そうだね。エンジニア部の方はどう?」
「ちょうど連絡が来てたよ。『こちらエンジニア部、トロイの木馬を侵入させることに成功した。』ってね。」
ハレ、先生、マキの会話。まず第一の作戦としてアリスがオペレーションルームに陽動目的の正面攻撃を掛ける。可能なら出来る限りの損害を・・・といった所なのだが、それはいくら何でも無茶だ。アリス一人でセキュリティシステムを破壊しただけでも成果は十分だ。セキュリティが破壊されたセミナーはエンジニア部の作ったセキュリティに偽装させたマルウェアを導入。元々外部のネットワークから遮断されていて手の出しようがないセキュリティに手を出せるようになった。
「じゃあ、次のステップに移ろうか。」
そして作戦第二段階。いよいよ最上階へ突入となる。
「さぁ、始めようか。・・・はぁ、緊張する。こんな気持ち、古代史研究会の建物を襲撃した時以来。」
ミドリの一声でゲーム開発部+先生も動き始める。モモイがこちらのオペレーターとなるヴェリタスのハレを通じて改めてエンジニア部やヴェリタスの内の実働部隊に準備が出来ているかを問う。その間にも先生は頭の中で作戦の概要をもう一度おさらいし、更に不測の事態を予測する。
(一番に有り得る事は作戦中にネルが戻ってくること。勿論その前に鏡を取って帰るのが一番なんだけど、そうもいかない時だってある。そして次に・・・イサネの存在。)
そう、昨日別れてから一切の音沙汰もない。そしてこちらの陣営にイサネの姿が無いという事はセミナー側に雇われているという可能性は捨て切れない。無関係かセミナー側かどちらの可能性も考えられる以上最悪のケースは想定しておくべきだ。
「それでは・・・先生!」
実働部隊と足並みを揃え終わったミドリが先生に掛けた声ではっと意識が現実に引き戻される。
「うん、じゃあ・・・作戦開始!」
先生の言葉に一斉に動き出す実働チーム。
『コトリとマキが最上階に侵入したよ。』
待っていた報告。先生チームは互いに頷き合い、エレベーターへ向けて動き出す。作戦の決行時間的にも現在は夜間でミレニアムタワーにいる生徒の数は昼間よりもかなり少ない。お陰で誰にも見られることなくエレベーター前に辿り着く。
「それじゃあ、本当に入るとしよっか!」
「ちょっと待って、先生。周囲も暗いですし、私達の手をしっかり握っていて下さい。」
「うん、さ、行こうか。」
4人は暗闇の中エレベーターに乗り込む。最上階を示すボタンを押し、扉を閉めるボタンも一緒に押す。
こうして警報の鳴り響く中、先生チームはエレベーターで最上階を目指す。恐らく今頃最上階は陽動に引っ掛かった防衛隊が出張ってきているだろう。後はシャッター閉鎖よりも早く最上階に辿り着くだけだ。・・・割とエレベーター次第ではあるのだが。
とはいえ、相手はミレニアム最強のエージェントC&C。例えリーダーが不在だったとしても軽んじていい存在ではない。あの中の誰か一人を取ったとしてもこの場にいる3人が束になっても叶わない程の強敵だ。彼女らの目からは何としても隠れおおせる事がこの作戦における絶対だ。
最上階に到着するや否やエレベーターを飛び出し、窓際の廊下を駆け抜ける。幾重にも陽動や策を弄しても、相手はミレニアムのトップとその直属の戦闘集団だ。ちんたらしていると折角稼いだ時間も全て無駄になってしまう。
「先生、お姉ちゃん、ハレ先輩から連絡!アカネ先輩の閉じ込めに成功したって!」
「よし、指紋認証システムが正常に作動したね!生徒会の役員も隔離できたはずだし、これで今タワーの中を自由に動けるのは私達だけ!」
どうやらシャッターは無事生徒会の面々を隔離出来た様だ。指紋認証システムも使えない今、先生チームは完全にフリーとなっている。
「本来のエンジニア部製より少しだけ弱そうに見える、最新型セキュリティ・・・上手く行ったみたいだね。」
「名前を隠してたし、多分あれもエンジニア部製だとは思わなかっただろうね。その辺の塩梅も、流石はエンジニア部。それじゃ、堂々と行くとしようか。」
ここまではヴェリタスとゲーム開発部、エンジニア部が優勢だ。戦力の差を策を以てひっくり返し、セミナー側はその対処に手をこまねいており、半ばワンサイドゲームと化している。
扉の前に着き、指紋認証システムに指をかざすと、既に改変の済んでいるシステムは先生とモモイ、ミドリをこの階の主と認定し、扉を開く。
「なんかデジャヴみたいな感じするね・・・?」
「あ、廃墟のあれじゃない?懐かしい、なんかもうずいぶんと昔の事みたいな感じがする。」
「うーん、まだ数日前の事だよ。」
確かにこの数日間でかなりの冒険をしてきたが、それでもアリスを廃墟で見つけてからまだ4日か5日位だ。下らない会話をしながらも、モモイもミドリも警戒を緩めない。
「取り敢えずアカネ先輩を封じられたのは良かった。どうせなら、アスナ先輩も一緒に閉じ込めたかった所だけど、まだ居場所分かってないんだよね?」
「ハレ先輩がミレニアム全域を調べてくれたけど、見つからなかったみたい。ミレニアムの外にいるんじゃないかな?」
「いっつも神出鬼没の先輩だし、そんな簡単にはいかないよね。なんかミッション中に急にパフェ食べに行ったりする人みたいだし・・・ま、今のところ順調なんだから気にしない気にしない!」
コールサイン・01、一之瀬アスナ。C&Cのエージェントで、ネルに次ぐ実力を持つ。そして何より特筆すべきはその異能とも言うべき第六感。いかなる状況でも勘で当たりをつけて彼女が動くと、大体状況が彼女の方に傾くという意味不明な能力だ。
一方でその性格は完全に能天気そのもの。モモイの逸話のようにいきなり突飛な行動をとることが多くその予測は同じC&Cのメンバーですら不可能であり、アスナの驚異の第六感を知らないミレニアム生からすればただの神出鬼没ととられてもおかしくない。
その為にかなりお気楽な態度を取ってしまうモモイだったが、それがまだ辛うじて動けるセミナー側の役員に感づかれた様で、「誰!?」という声と共に遠くの方から役員数名が走ってこちらに近づいている。
「ひゃあっ!って、生徒会じゃん!まだいたなんて!」
「どうしよう先生!?」
「ここで引いている時間は無い。悪いけど、突破させてもらおう!」
先生はここで突破を選ぶ。隠密性を取るなら引いても良かったのだが、正直言って時間が惜しい。先生の声にゲーム開発部の3人は銃を構える。
「接敵まで後5秒・・・じゃあ、行くよ!」
先生の掛け声で3人が走り出す。先生も置いて行かれない様にかつ銃撃戦に巻き込まれない様に適度な距離を保ちながら生徒会役員数名に向かって突っ込む。
「うわっ!突っ込んできた!」
「ぼさっとしてないで撃ち返し――うぐっ!!」
「ミドリ!モモイのカバー!ユズ、フリーの生徒を狙って!遮蔽が無いから速攻で決めるよ!」
先生の指揮の下で戦う3人に、一介の生徒会役員でしかない5人は瞬く間に打ち倒され、床に倒れ込む。それを確認した先生はそのまま「このまま進もう。」と指示を出し、先へと進んでいく。
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「・・・隔壁は解除不可。何故かショットガンに仕込んであったエンジニア部お手製小型爆弾もチタン防壁の前には無力。ただ武装を一つ失っただけか、はぁ、面倒な・・・」
ここは最上階のとあるセクションの一角。イサネはそのセクション内に降りたシャッターによって完全に閉じ込められていた。
「スマホもここに来てまたハッキングか何かの影響のせいで使い物にならないし、ヴェリタス・・・電子戦ではどうにもならないものね。」
手元にあるスマホは恐らくヴェリタスのハッキングのせいでさっきからアカネが閉じ込められたセクションの監視カメラの映像を映し出す以外に操作を受け付け無くなっている。唯一使えるのはアリスを制圧した後オペレーションルームを出る時にユウカに貸して貰った小型無線機だが、さっきから問いかけに応じる気配が無い。
「ショットガン・・・本当に勿体ない。かなり頑丈だったのに、なんで銃身内部にみっちりと爆薬が仕込んであるの・・・?あぁ、あの訳の分からない機器が起爆装置ということか。」
イサネの前にはバラバラに吹き飛んだショットガンの残骸が転がっている。これはチタン防壁が下りた時のことだ。壁の強度検証でショットガンを撃つべくその引き金を引こうとした時、うっかり付属の機材に触れてしまったのだ。その直後『あと3秒で起爆します。』という機械音声が流れ、思わずそれをシャッターに投げつけた瞬間文字通りショットガンが爆発したのだ。
「これ
死を振り撒く首輪付きにしては珍しく周囲の被害を考えて迂闊な破壊行動を踏み止まっていた時の事だ。これまで無言を貫いていた無線機が音を発する。
『聞こえてる?こちらコールサイン02、目標を捉えた。』
間違いない。この声はC&Cのコールサイン・02、C&Cの狙撃手、角楯カリンの声だ。イサネは既に帰りたいで埋め尽くされた感情を押し殺し、無線に応じる。
「了解したけど、私も同じくセクションの中よ?援護は出来なさそうだけど。」
『大丈夫、アカネは爆薬を用いて突破するつもりらしい。だからイサネも早く出てきて。』
どうやら同じく閉じ込められた
「ミレニアムタワーの最上層を滅茶苦茶にしていいならやるけど・・・多分ミレニアムタワーの高層部分が脱落する可能性が・・・」
『・・・そんなに?』
こればかりは悪いが事実だ。過去に一度災厄の狐と交戦した時、イサネの放ったコジマパンチによって災厄の狐の後ろにあったビルが3階部分まで抉れてしまった事がある。いくらチタン合金のシャッターが頑丈と言っても、それを破壊するためにミレニアムタワーの一角を吹き飛ばすのは少々割に合わない。
「まぁ、大丈夫よ。援護には間に合わないけど、少し時間を掛ければ出られるから。そんな事より、私とのおしゃべりに夢中になってないで、狙撃外さないでね?」
カリンにそう伝え、通話を終了する。無線機を固定し、一息つくと共にシャッターの一角に歩み寄る。シャッターから数歩離れた所に立ち、腰を落として足幅を広くとり、右手を腰だめに構える。左手は真っ直ぐ目の前にシャッターに向け、それを狙いすますための照準器と見做す。正拳突きの構えだ。
数度の呼吸の後、肺の空気を吐き出す。完全に吐き出し終えると、数秒呼吸を止め、右腕に意識を集中させる。短く息を吸い、そして、
「・・・はッ!!!」
短い声と共に右手を前方へ体の捻りも利用して思いっ切り突き出す。突き出された拳はチタン防壁と衝突。がごぉんっ!という凄まじい音がイサネの居るセクション内に響き渡る。パワーローダーの装甲をぶち破っても傷一つないイサネの拳は、チタン合金の隔壁を確かに拉げさせていた。
「はは、これなら後2,3発で底を持ち上げられそう。」
この時ばかりは過剰な強化手術を決行したセレンに感謝しつつ、隔壁を殴る事数回。頑丈と名高いチタンのシャッターは殴られた場所を中心に完全に拉げており、サッカーボールくらいなら通れそうな隙間が出来ていた。
「そして、これをっ・・・こうッ!!」
イサネは出来た隙間に手を通し、シャッターの端をがっしりと掴む。そして重い物を持ち上げる要領で下から上へと思いっ切り力を加える。更にコジマ粒子を操作、身体能力を引き上げて更に力を加え続ける。シャッターがメキメキと音を上げて曲がっていき、ついに人がしゃがんで通れそうな隙間が出来上がる。
「ははっ・・・!はぁ、しんど・・・」
合金製のシャッターをぶん殴る事で折り目を付け、出来た隙間に手を入れてシャッターの端を掴み、折り紙の要領で捻じ曲げるという明らかに人が出来ていい所業では無い事を平然とこなしたイサネは、少し乱れた呼吸を整え、開いた隙間から足を延ばし、一枚目のシャッターを投げやりにぶち破って外に出る。
「これもう帰っていいよね?もう疲れた・・・」
珍しく弱音を吐きながら。
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ある程度長い廊下を進んでいくとそこは既にシャッターが下りており、目の前に指紋認証システム
の端末が設置されている。モモイがそれに近づき、指をあてると、ロックが解除されてシャッターが開く。
「最後のシャッターを解除!ふふっ、今やこの生徒会専用フロアは私の思うがまま~。さて、もう少しで鏡がある差押品保管室に――」
お気楽に進んでいく一行だったが、そんな中いきなりハレからの通信が入る。
『モモイ、伏せて!』
「えっ?」
突然の警告にモモイが足を止めたその時だった。
轟音と共にモモイの頭上を銃弾が通過し、壁に大きな銃痕を刻む。
「うわああぁぁっ!」
モモイは大慌てでその場から離れる。
「い、今頭の上をなんか凄まじい威力の弾丸が!?壁に穴開いてるんだけど!?」
「対物狙撃用の13.97mm弾!?良かった、お姉ちゃんの身長があと5cm高かったらおでこにクリーンヒットだったよ・・・」
「ひゅー、確かに。小さくてよかっ・・・じゃない!」
今の銃弾がもし自分目掛けて飛んできていたら・・・と思うとぞっとする。ヘイローの無い先生は対物用の銃弾を喰らっただけで即死だろう。運が良くても四肢が吹き飛ぶくらいの怪我はするだろうし、頭に貰った時の事なんて想像もしたくない。シッテムの箱がある以上アロナのバリアによって何とかなるだろうが、それでも怖い物は怖い。
「この辺りはもう、狙撃ポイントに入ってるって事だね。」
ミドリがガラス張りになっている外の景色を睨みながら言う。
「ミドリ!伏せて!また――」
今度の狙いはミドリの様だ。モモイの警告を最後まで聞くことなくミドリはその場に伏せる。その直後、再び爆音と共にガラスを突き破って銃弾が壁に穴を空ける。
(くぅっ!狙撃に警戒しながらだと、先に進めない!だけど恐らく今ので位置は露呈した。なら後は狙撃が止むまで耐えるしかない・・・!後は、エンジニア部がやってくれる。)
狙撃に警戒しながら速度を落として進む。恐らくそろそろの筈だ、それまで狙撃を貰わなければ問題ない。そう確信したその時、ガラスの外に立ち並ぶビル群の内の一つが突如爆炎に包まれる。非常に遠くにある為、爆炎も小さく、音も聞こえない。しかし、それでもこの爆発は先生チームにある確信を持たせるのに十分だった。
「・・・狙撃が止まった。」
「ウタハ先輩とヒビキちゃんだ!カリン先輩の相手をしてくれている間に急ごう!」
「今のうちに狙撃が届かない場所まで移動しよう!じゃないと追い付かれる!」
そう言って再び速度を取り戻して廊下を進む。この時ばかりはこのクソ長い廊下を恨めしく思う。すると遠くの方で低く響く爆発音が聞こえてくる。
「これは・・・!」
「ええぇっ!?なに?地震?」
「爆発みたいだけど・・・まさか!?」
どうやらミドリも先生と同じく爆発の正体に勘付いた様だ。そしてそろそろ足止めが壊されつつある事にも。一行は更に速度を上げて廊下を駆け抜ける。
途中施設全体の明りが消え、暗闇の中を進んでいきながらなんとか狙撃の届くデッドゾーンから抜け出し、差押品保管室前の広間に出る。
「さっきの停電、ウタハ先輩とヒビキ先輩の策が成功したって事だよね?」
「恐らくはね。相変わらず施設全体の通電には時間が掛かると思うけど、多分オペレーションルームの電力はもう戻ってると思っていいかも。」
「うん。だからあまり悠長にしている時間は無いかも・・・あ、先生、足元暗いので、気をつけてくださいね。」
既に差押品保管室は目と鼻の先だ。一行はそのまま目的地へ向けて足を速める。
「ここさえ抜ければ・・・!」
「うん、もう生徒会の差押品保管室の筈、漸くこれで―――」
油断はあったのかもしれない。多少邪魔が入ったとはいえ、こちらの作戦通りに相手も動いてくれたし、移動時間のロスだって想定よりも少ない。何もかもが上手く行っている状況で油断しない方がおかしいのかもしれないが。
「お、やっと来たね!」
場の空気が凍り付く。
「遅かったね~、だいぶ待ってたよ~。」
存在をすっかり失念していた。それは柱の陰からひょいっと姿を現す。
「ようこそ、ゲーム開発部!それにえっと、先生、だっけ?」
いつもより短めになりました。
普通にただゲーム開発部視点とイサネ視点の二つで進めようと思ったのですが、原作の描写外の展開を書き入れるのと先生の台詞を挟む場所が無さ過ぎる...(泣)