透き通る世界で二度目の答えは出せるのか   作:回り針

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投稿遅れましたッ!許して下さいッ!!(土下座)

前話に予告を乗せ忘れていたんですが、一応カルノバグの兎編1章開幕となります。まぁ多分rabbit小隊は殆ど出てこないと思うのでぶっちゃけ関係ないですね!(超人)

あと構想を練っている時に何故か全く先のエデン条約編とかあまねく奇跡の始発点とかにいきなり飛んでしまう事が多々あり実に苦しめられています。(凡人)


シャーレの当番

 

 

 

 

ここはD.U.区の外郭。

 

 

「・・・ここか。」

 

 

まだ空の青も白に霞んで見える早朝に、イサネはD.U.区内にあるとあるビルに来ていた。肩掛けのショルダーバッグの紐に左肩を通し、その手はバッグの紐に、右手にはスマホが握られている。

 

「ここが、連邦生徒会の下部組織、連邦捜査部S.C.H.A.L.E(シャーレ)・・・D.U.区の外郭に置かれているのはクーデター対策?・・・まぁそんな事より―――」

 

――眠い。

 

イサネは欠伸を噛み殺しながら自動ドアをくぐり、建物へと入ろうとして、立ち止まる。

 

「あえ?自動ドアじゃないの?」

 

そう、目の前のガラス張りのドアが開かない。明らかに自動ドアの外見をしている筈なのに、圧力板が敷かれていると思われる床を何度も踏みつけるも、ドアが反応する気配がない。一体どういうことだ?と周囲を見回すと、自動ドアの隅に何かの認証機器が視界に入る。

 

「何これ・・・え、が、学生証?」

 

機器の画面には《お持ちの学生証をかざして下さい》という一文が表示されており、ドアとの位置関係から察するに恐らくここに自分の学生証をかざして目の前のドアを開けるという仕組みなのだろう。だが、イサネはそもそも学生ではない為に学生証なんてものは持っていない。

 

「・・・確かに傭兵始める時に正規の口座開こうとしたら学籍が無いから開けないとか言われて口座開設を断られたっけ。」

 

まさかキヴォトスで学生証がここまで重要な物になるとは思ってもいなかった。口座についてはブラックマーケットにのみ存在する口座開設に身分証明の必要がない知る人ぞ知る闇銀行に口座を置いている。

 

因みに闇銀行がブラックマーケットの更に暗部というのもあって時折その口座からいくらかの預金が抜かれるという事が普段は横行しているのだが、イサネは自分の預金を抜く輩を誰彼構わず片っ端から潰すという対策を取った結果、イサネの預金に手を出す輩はいなくなった。

 

 

「それにしても、どうしよう・・・」

 

 

口座については確かにどうにでもなったが、シャーレに入る事についてはどうにもならない。半ば行き詰まりの中でイサネは考えを巡らせる。

 

 

(うーん、どうするかな・・・ドアぶち破るのは流石に良くないか・・・?っていうかその辺どうにかするって言ってなかったっけ?確か事の始まりは―――)

 

 

イサネは数日前の回想へ意識を向ける。そう、あれはミレニアムプライスより数日後、運搬のバイトでミレニアムに寄った時の事だ。

 

 

――これ、イサネは入ってみる気はない?

 

 

――これは?

 

 

――シャーレの入部届だよ。イサネも興味あったりしない?

 

 

――私、無所属なんだけど、大丈夫なの?

 

 

――大丈夫!そこは私が何とかしておくよ。だから、どう?

 

 

そうして先生に渡されたのはシャーレの入部届。貰った当初は無所属でかつ裏に顔が利き過ぎる者がシャーレの部員になるのは先生の立場的に危ないのではという理由で捨てようかと思っていた。だが、先生はそれを見通していた様で、お得意の口八丁で言いくるめられてしまいその場で入部届を書くことになった上、最初の当番の日まで決められてしまった。イサネがこうしてシャーレの建物前にいる理由は今日がその当番の日だからだ。

 

だというのに、肝心のシャーレの入り口の扉を開ける事が出来ない。

 

(・・・支配すら跳ね除けた人類種の天敵が、なんで律儀に規則に苦しめられないといけないんだ・・・)

 

考えれば考えるだけ馬鹿馬鹿しくなってくるこの事態にイサネはシャーレに入れれば何でもいいという思考に辿り着き、肩掛けのショルダーバッグを固定。近場の良い感じの高さにある縁目掛けて跳躍。縁を掴み、そのままクライミングの要領で登っていく。

 

目指すは2階か3階にあると思われる窓だ。シャーレの建物は非常に縁が小さいかほぼ無いと言える程滑らかな壁となっているが、それでも探せばある。イサネは上手い事縁に指を差し込んで更に登っていく。

 

「ここを・・・っ!」

 

そうして辿り着いた窓に上手い事張り付いたイサネは施錠された窓を力づくでこじ開ける。イサネの驚異の膂力によって施錠用の金属製のロックがメキメキと音を立てて歪んでいき、その力に耐えられなくなった金属部品はバキンと音を立てて千切れ飛び、余剰の力によって勢い良く窓が開く。

 

イサネはそこに滑らせるように体を入れ、窓を閉めながら床に降りる。これでシャーレに入ることは出来た。後は何処に先生が普段事務作業をしている事務室だか執務室があるかだ。イサネはとりあえず建物内部の地図を探して歩き始める。シャーレには元々の人員が少ない上に他学園の生徒が往来する事には慣れているのかイサネを見ても特に反応はない。

 

これ幸いと案内板を探して歩いていると、エレベーターのあるエントランスにお目当ての案内板がモニターという形で設置されているのを見つける。

 

「お、ラッキー。えーっと、事務室はっと・・・」

 

イサネは案内板を見てシャーレの内部構造を頭に叩き込む。

 

(カフェにコンビニ、射撃場や運動施設もあるのね。で、このゲームセンターって何?ゲームが沢山置いてある場所の事・・・?それ以外にもここだけで生活できるくらいには何でもある・・・)

 

一通り構造を把握した後、イサネは改めてシャーレの施設の多さに驚く。恐らくだが、リンクス戦争でBFFの本社であるクイーンズランスの施設も恐らくこれほどの独立性を持っていたのではないだろうかと推測できる。尤も、当時のイサネはまだ名を持たない孤児としてゴミ溜めで暮らしていた為、クイーンズランスやリンクス戦争についてはセレンから教えてもらった事であって全て知識上での空想でしかないが。

 

到着したエレベーターに乗り込み、事務室のある階のボタンと扉を閉じるボタンを押す。コンマ数秒の後、エレベーターの扉が閉じて上昇を始める。運の良い事に途中で誰かが乗ってくることも無く目的の階に着く。

 

イサネは開いたエレベーターの扉から廊下に出ると、記憶にある地図を思い出しながら事務室へと向かう。案内板の表示通り事務室はエレベーターから非常に近い位置にあった。イサネは扉の前に立つと、おもむろにノックをしようとして手を上げて、止める。

 

(驚かしたらどんな反応するかな?)

 

ふと悪戯心が芽生える。イサネはノックしようとした手をひたりとドアノブに持って行き、音の鳴らない様に静かに、そしてゆっくりと捻る。ドアノブは音を立てる事無く回転し、ドアのロックを静かに外す。

 

(お邪魔しまーす。)

 

心の中でそう言いながら音の鳴らない様に扉を小さく開く。僅かに見える隙間から中の様子を伺う。先生は既にデスクに座って業務を始めており、忙しそうにキーボードを叩いたり書類にペンを走らせている。イサネは気配を極限まで殺し、扉を自分の身体の通れるぎりぎりまで開けてそこに身体を静かに捻じ込む。

 

先生は部屋に入ったイサネに気付く気配すらなく事務作業をしている。イサネはゆらりと幽霊のように先生に近づく。音一つ立てないイサネの隠密術?は恐らく余程気配を探る事に長けている者であってもすぐに見つける事は難しいだろう。イサネは音もなく先生の後ろに辿り着くと、ゆっくりと両手を先生の細い首へと持って行く。そして――

 

 

 

―――先生の首を両手で握る。

 

 

 

「ひゃぁぁあああああっ!!?」

 

 

 

――悲鳴。

 

 

 

甲高い悲鳴を上げて先生は椅子に座ったままびくんと電気が流れたように身体を伸ばす。勢い良く伸ばされた足が床を蹴り、その力がデスクチェアのローラーに伝わって椅子が後退を始める。が、それは椅子の背凭れがイサネにぶつかることで停止する。イサネは先生の首を両手で優しく握ったまま腹部に訪れた鈍い痛みを無言で堪える。

 

 

「だっ、誰・・・!?」

 

 

一方の先生は自らの首を握る腕を掴みながら絞め落とされまいと必死に藻掻く。が、そもそもイサネは両手に一切の力を入れていない為にこれ以上は手の解きようがない。それに気づかずに身体を捩り続ける事数秒、漸く先生の首を握る手に力が入って無い事に気付くと先生は勢いよく後ろを向く。

 

 

「・・・」

 

 

「・・・」

 

 

後ろを向いた先にいた生徒(イサネ)と目が合い、微妙な沈黙が両者の間に流れる。

 

「・・・」

 

「・・・」

 

お互いが何も言葉を発する事の無い沈黙の時間。だが、余りに気まずい空気に耐え切れなくなったイサネはそっと先生から顔を逸らす。

 

「イサネ。」

 

「・・・はい。」

 

ぽつりと名前を呼ばれ、先生の首から手を外して返事を返す。ノアやユウカの場合は大体この後説教の流れだったと記憶している。恐る恐る視線を戻すと先生は若干涙目のままイサネに訴える。

 

 

「そんなことされたら私、本当に死んじゃうから・・・本当に止めてね?」

 

 

涙目に加え上目遣いでまるでくすぐり拷問でも受けたかのような弱々しい声でそう訴えかける普段見ることの出来ない先生の姿。普段から「くたびれたOL」という表現をされることのある先生だが、ひとえにそれは本人が自覚していないだけで先生自身もまたキヴォトスの生徒に負けないだけの美貌を有しているからだ。・・・普段の格好である白ワイシャツにタイトスカートが正にOLのなりに見えると言われてしまえばそこまでだが。

 

だが先生のその姿はイサネには効果があったようで、自身の体を何かゾクゾクとしたものが駆け巡る。そして改めてイサネは理解する、これが普段ユウカを揶揄うノアの気分なのか、と。数瞬の硬直の後、とりあえず返事をするべくイサネは口を開く。

 

「は、はい。」

 

「うん、分かればよろしい。じゃあ早速だけど、大丈夫?」

 

イサネが返事をするとすっかり元に戻った先生は早速シャーレの業務における当番の役割と業務の説明に入っていく。イサネも気持ちを切り替えて先生の話に耳を傾ける。

 

 

 

 

「――って言う所かな、何か質問は?」

 

 

「うーん、今の所はないかな。」

 

 

一通りの説明を受けたイサネは先生と共に業務に入る。イサネは先生の説明通りに自分の座るデスクの上に積んであるそこそこの量の書類の内一枚を手に取り、内容を把握するとすらすらとペンを走らせる。

 

早速一枚目の書類を仕上げ、次の書類を手に取る。ふむ、今度はデータ入力か。イサネはペンを置き、イサネの近くで電源の入っているノートパソコンを目の前まで引き寄せると、データ整理などで使われているアプリを起動。シャーレのデータベースから書類に合ったデータを接続、そこに書類にある表のデータを入力し、その傍らで3枚目の書類に目を通す。

 

「・・・ず、随分と器用な事をするね。」

 

対面で書類と格闘している先生がイサネの書類処理の速度に困惑半分称賛半分で言葉を掛ける。イサネはそれに対し作業を続けながら淡々と答える。

 

「戦闘以外のマルチタスクなら3つか4つまで出来るからそのせいじゃない?書類処理なんて殆どやった事ないし。それに私コンピュータにも良く触っているから。」

 

「3つか4つ?凄いね・・・うぅ、私も欲しいよぉ、その能力。」

 

余談だがイサネがマルチタスクと呼んでいる能力は一般的に言われているシングルタスクの高速切り替えで行われるマルチタスクのそれではない。いくつかの物事を完全に並行させながら同時に進めるというコンピュータが行う様なタスクの進め方のそれであり、歴戦のリンクスでもない限りは習得など到底不可能な技能だ。イサネは数秒の沈黙の後に先生に警告するような口ぶりで言う。

 

「人為的に人間辞めれば出来る様になるよ。あとマルチタスクは本当に要領が良くないとかえって効率下がるから無理そうならやらない事を薦める。」

 

「それ絶対碌でもないやつじゃん・・・はぁ、やっぱり地道に進めるしかないのかなぁ・・・」

 

イサネの言葉にがっくりと肩を落とす先生。イサネの警告が伝わったのかは非常に怪しい反応だが、先生の反応的に恐らく先生の居た世界には強化手術といった人体治療以外の用途でを弄り回す技術は存在しないのだろう。それが良い事なのか悪い事なのか分からないが、少なくとも被験者の無用な犠牲がまだ発生してない事は良い事なのかもしれない。

 

(先生は・・・まぁ、そういった危ないものに手は出さないと・・・思う。)

 

イサネは取り敢えず先生を信じる事にし、書類へと視線を戻して事務作業に没頭する。しばらくの間、時折書類やデータの確認の声を除いてシャーレの事務室にペンを走らせる音とキーボードを叩く音のみが響く。

 

そうして無心で作業を続ける事十分と数分半。並みの秀才以上のマルチタスク能力を持つイサネにとってシャーレの当番に課される書類などものの数では無く、驚異的な早さで目の前の書類を仕上げたイサネは自分の仕上げた書類に記入漏れが無い事を確認すると、暇そうに先生の業務の様子を眺め始める。

 

「え・・・?もう終わったの?分からなかった所とか、そういうのは無かった?」

 

イサネの様子に気付いた先生が驚きを露わにしながらイサネに問う。

 

「うん、問題無し。私の分は終わったよ。」

 

「凄いね、初回だから量を減らしたとはいえ普段から書類を捌いているって言ってた生徒達でもここまでは早くなかったよ。」

 

「そいつはどうも。」

 

イサネはそう言うと先生のデスクにある書類を数枚手に取り、その中身を眺める。数枚だけでも書類の内容は連邦生徒会に関する重要そうなものからほぼ生徒間の下らない問題の様なものまで様々だ。イサネは先生の業務量の多さに溜息をつきながら書類を元に戻すと、先生に声を掛ける。

 

「先生、その書類の内先生の権限が必要無い物は?」

 

「うーん、色々混ざってるからちょっとどれが何かは実際に見てみないと・・・」

 

成程、どうやら連邦生徒会はかなり雑に先生に仕事を投げている様だ。正確には連邦生徒会以外からも来る書類が大元の書類に混ざる形で届いているのだろう。イサネは苛立ちと呆れの感情を抱えながら先生の傍に積まれている書類の山から幾ばくかを自分の元へ持って行くと、先生の権限が必要なものを除いて処理を始める。

 

「い、イサネ?そっちはやって貰わなくても大丈夫だよ。それに、私の権限じゃないとどうにもできない案件も混ざってるから――」

 

「折角の善意なんだから素直に受け取っておきなって。それにこんな量の書類を毎日夜遅くまで捌いてたらいつか倒れちゃうよ?」

 

イサネの突然の行動に声を掛ける先生だったが、それを遮る形で放たれたイサネの言葉がその先の発言を許してくれなかった。思わず言葉を詰まらせる先生を見ながらイサネは続ける。

 

「少なくとも今は、先生がこんなことで倒れる事は許容できないかな。」

 

そう言いながらもイサネは先生の書類の山から紙束を取り、次々に捌いていく。それを見た先生も何処に対抗心を燃やしたのか負けじと書類を捌き始める。必死さが透けて見えるその顔つきは何処か愛らしさを感じさせるが、今のイサネにとっては人の話を聞かない事の方が問題だ。

 

(・・・ダメそう。これ、いつか倒れるやつだ。)

 

イサネは謎に張り合い始めた先生と書類を一瞥しながら自分の言葉が伝わって無い事を確信し、心の中で先生が過労死しない事を祈る。確かにイサネは自分の為に他人を平然と踏みにじる事が出来る人間であり、他人の大事など自分の目的(答え)の為なら知った事ではないと言い張れる人種だが、それでも人の心を完全に失った訳では無い。

 

(これ、私も何かしないと先生倒れちゃう感じなの?もしかして。)

 

そう、いくら世界に死を振り撒いてきた人類種の天敵も、他人の心配をできる程度にはまだ人間辞めてない。・・・他人の心配など面倒でしかないが。

 

 

「ん?どうしたのアロナ?」

 

 

イサネがそんなことを内心で思っていると、先生が何やら画面の映ってないタブレットに話し掛けている。先生に出会ってから何度か見た事のあるタブレットだが、これまでその真っ黒な画面に何かが映っていた事は一度もない。

 

(確か聞いた話だとシッテムの箱、と言ったか?その実態こそ殆ど不明のままだけど・・・先生にしか見えない何かが居るのだろうか。それか逆に生徒――神秘を有する存在が認知出来ないだけなのか。)

 

余り使用している場面を見る機会は多くなかった為に自分の勝手な憶測でしかないが、恐らくこれはキヴォトスに存在するオーパーツと呼ばれる代物かそれに近い物と見ても良いのかもしれない。

 

(オーパーツとは、当時の技術では作成不可能な人工物、もしくは考古学的に明らかに当時の時代背景にそぐわない出土品を指す単語だったはずだが・・・)

 

キヴォトスにおけるオーパーツという存在は、イサネが元々居た世界にあるオーパーツとは若干意味合いが違う様で、キヴォトスで出土するオーパーツは現代技術を超越した物らしく、裏の依頼の中にはそのオーパーツを探し出せとしか書いていないという余りにも滅茶苦茶な内容の依頼が張り出されているのを目にした事もある。

 

「いやぁ、そうなんだけどさ、生徒達には余りこういった仕事をさせたくないんだよね。今はのびのびと自分のやりたい事をやって欲しいっていうか。」

 

考え込むイサネをよそに先生はそのタブレットとの話に花を咲かせている。タブレットからどんな言葉が流れてきているのは不明だが、先生の言葉からして恐らくシッテムの箱のOS、もしくはソフトウェアにも普段の過労ぶりを心配されている様だ。

 

「え?そ・・・そ、それは、それは違うの。そのプラモデルは限定品だから・・・え?ゆ、ユウカが?・・・だ、大丈夫だよ。」

 

・・・本当に何の話をしているのだろうか。先生の口から聞こえたプラモデルという単語もいつだったかにセレンに教えてもらった。確かプラスチック製の組み立て模型で、一般的に玩具として扱われている事が多いのだったか。

 

イサネが先生とシッテムの箱との会話をBGMに書類を捌いていると、先生のデスクにある据え置き型の電話がけたたましい音を立てて電話が掛かってきたことを知らせる。

 

「っと、ごめんねアロナ。ちょっと電話に出てくる。」

 

先生はタブレットに向かってそう言うと、受話器を取って電話に出る。イサネは書類にペンを走らせながらうっかり盗み聞きにならない様に電話から聞こえてくる会話を意識から遮断する。先生は受話器越しに何事かをしばらく話していたが、唐突に受話器をイサネの方に寄こしてくる。

 

「イサネ、リンちゃんからだって。」

 

「リンちゃん?」

 

リンちゃんというのは恐らく連邦生徒会の会長代行である七神リンの事だろう。本人の性格的にリンちゃんなんて呼称は嫌う傾向にあると思っていたのだが、先生は別という事なのだろうか。イサネはそんなことを考えながら先生から受話器を受け取ると、それを左耳に当てて通話に出る。

 

「電話変わりました、標根イサネです。リンちゃんですか?」

 

『イサネさんですね――って、貴方までリンちゃんと呼ばないで下さい。』

 

「あぁ、やっぱり先生は特別なのね。」

 

『別にちゃん付けで呼ぶ事を許した人は誰も居ません。変な勘繰りは止めて下さい。』

 

通話越しのリンはちゃん付けで呼ぶ事を咎めるが、イサネは「どこまで進展したの?体の関係は?」と生々しい話ばかりでまともに取り合う気配がない。リンはやがて諦めた様に溜息をつき、本題に入る。

 

『イサネさん。貴方の傭兵バイト――いえ、傭兵としての活動について、少々話したいことがありますので先生と共にサンクトゥムタワーまでお越しください。』

 

「え?あ、はい。」

 

依頼かと思っていたが、どうやらそうではないらしい。傭兵としての活動についての話となるとやはり気付かぬうちに違法行為をしていたというのだろうか。イサネはここ最近で自分が受注、遂行した依頼を思い返しながらリンの言葉に頷く。

 

『別にイサネさんが何かしらの法に触れたとかそういう話ではありませんので、余り重く捉えないで頂けると助かります。』

 

「まぁ分かったよ。サンクトゥムタワーに行けばいいのね?」

 

『はい、よろしくお願いします。先生にも要件は伝え終わったので、これで失礼します。』

 

そう言って電話が切られる。僅かな沈黙の中、イサネは受話器を親機に戻す。イサネが電話を終えた事を認めると先生はイサネに話し掛ける。

 

「イサネも呼び出し?」

 

「うん、行こう。」

 

そう言ってイサネは椅子から立ち上がり、机に立てかけておいたアサルトライフルをハーネスベルトに掛ける。先生もイサネと同様にスマホと財布をポケットに入れ、シッテムの箱を手に持つ。

 

そうしてイサネと先生はシャーレの事務室を出て出口に向かう。目的地はD.U.区中央、連邦生徒会本部であるサンクトゥムタワーだ。

 

「あれ、そう言えばイサネ、学生証は持ってるの?」

 

「いや無いけど。」

 

廊下を歩きながら学園に所属していないイサネの為にシャーレの入り口を開けておくことを忘れるという己の失態を思い出した先生はイサネに質問を投げかけるが、イサネの返答はこれまでの事実から鑑みても不自然だった。

 

 

「確かシャーレって学生証が無いと入れない筈だったんだけど・・・」

 

 

「あー、確かに正面入り口は開かなかったね。」

 

 

「え・・・?じゃあどうやってシャーレに・・・?」

 

 

嫌な予感を感じた先生は恐る恐るイサネに問う。それに対しイサネはさらりと疑問に答える。

 

 

「壁登って2階か3階の窓を鍵ごとこじ開けて入った。」

 

 

「え?鍵ごと・・・?」

 

 

 

イサネの膂力に言葉も出ない先生であった。

 

 

 

 





日常描写と戦闘描写での書きやすさが違い過ぎる...!

先生の細い首って表現なんかイサネの首が太いみたいな感じになった気がしないでもないのなんか嫌だ。

先生の顔については、各々が想像する美人さんでお願いします。作者の文章力じゃ、上手く書けなかったよ...(敗北者)

後今回はチェックがだいぶ手抜きになってしまったので誤字脱字やおかしな展開等は許して下さい
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