透き通る世界で二度目の答えは出せるのか   作:回り針

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いやぁ~、投稿頻度戻そうと頑張ってるけど無理なもんは無理ですね。(敗北者)

自分の想像する展開を出す為にも早く伏線張らねば...!



白は黒には成り得るが、黒は白には成り得ない

 

 

 

 

「はぁ・・・さっさと署から出て正解だった。」

 

 

取り調べを終え、カンナに報告書を提出した後、イサネは先生と別れてヴァルキューレの署を出てきていた。

 

「くそ・・・嫌な予感がして先生と別れたのは良いけど、まさかよりにもよって防衛室の室長が来てたなんて・・・厄日だ・・・」

 

そう、イサネが感じた嫌な予感というのは、連邦生徒会の防衛室長である不知火カヤが取り調べの間に署に来ていた事だ。

 

(あー、でも、よく考えたら戻らないでいけ好かない面でも拝めばよかったか?衝動的に行動し過ぎた。セレンが居たら怒られそう。)

 

ふと、かつてリンクスの師匠でありながら義母のような人でもあった恩師を思い出し、イサネは首を振って戻らなければ良かったという後悔を振り払う。

 

「・・・シャーレに戻ろう。リンへの報告は先生がやってくれるかヴァルキューレから一報行くでしょ。さて・・・」

 

イサネは目的地をシャーレに定め、時折スマホを弄りながら歩き始める。

 

 

(なんかいい感じに戦えそうな依頼は無いかな?・・・お、これ良さそ――って、ここ詐欺で有名な企業じゃねぇか。最近の名指し依頼は面白そうなの少ないなぁ・・・うん?)

 

 

自分に名指しで出される依頼や、一般のばら撒きの依頼を漁りつつ横断歩道を渡り切った時の事だった。イサネはふと複数の視線を感じ、思考を切り上げてスマホから顔を上げる。

 

「・・・あれ、子ウサギ公園でも見たぞ、あの制服。ヴァルキューレでも、SRTでもない・・・」

 

距離にして大体200m前後だろうか。イサネの常人以上に視認距離の長い視覚が、非常に見覚えのあるデザインをした制服の集団を捉える。その集団は体の向き的にこちらに向かってる居てきている様で、足の振り方と見るに小走りかジョギングで移動している事が窺える。

 

イサネは、子ウサギ公園でカンナが鬱陶しそうに追い払っていた生徒と今こうして走ってきている生徒で制服のデザインが一致している事に勘付く。

 

 

「確かあの制服は――」

 

 

特段重要事項でもないのに、何故か思考が高速で回転。即座に答えを弾き出す。

 

 

―――クロノススクール。

 

 

前方にいる生徒の正体までイサネの思考が辿り着いた時、彼女の全身に言い様の無い圧倒的な不快感と確信にも等しい嫌な予感が駆け巡る。

 

 

「・・・逃げ――」

 

 

――それを認識した時には時既に遅し。

 

 

「あっ!居ました!万物の天敵としてブラックマーケットを中心に広く認知されている凄腕の傭兵、首輪付きさんもとい標根イサネさんです!あっ、カメラさん早く早く!」

 

 

何故こいつら相手に逃げられると思ってしまったのか、逃げられる筈が無かった。イサネがさっと後ろを向いて走り出そうとした所で、一体いつの間に駆け抜けてきたのか、さっきまでまだ距離があったはずの一団がイサネを至近距離で取り囲む。

 

「クロノススクールです!シャーレの先生と共に先程のSRT特殊学園の生徒達によるデモの鎮圧に一役買ったそうですが、ここ最近で噂されているあんな事やこんな事も含めて色々インタビューしていこうと思います!」

 

「え、あの、ちょ――」

 

「ブラックマーケットを中心にあらゆる依頼を成功させ、依頼の達成率は何とまさかの100%!そして敵対する者には一切の情け容赦もない攻撃で地面に沈め、ありとあらゆる組織をたった一人で潰して回ったと言われている正にブラックマーケットの生ける伝説と言った所ですが、そんな凄腕の傭兵には真偽不明の噂が幾つも付いて回ります。という事で今回私達クロノススクールは、その傭兵さんの闇に隠された真実を暴きに行きたいと思います!」

 

機関銃のように放たれる言葉の奔流にイサネも口を挟むことすら許されない。しかもインタビューに拒否権も無いと来た。数人程度だが、それでもがっちりと周囲を固められたイサネは逃走を諦めざるを得なかった。せめてもの抵抗としてインタビューを拒否すべく口を開くイサネだが――

 

「あ、あの、インタビュー受けるなんて一言も――むぐっ。」

 

慈悲なんてものは存在しなかった。褐色肌に金髪の生徒が手に持っていたマイクがイサネに押し付けられ、言葉を物理的に遮られる。

 

「それではまず初めに!えー、これまでブラックマーケットを中心にあらゆる依頼をこなしてきた、との事ですが、個人的に一番印象に残った依頼は誰からの何の依頼ですか?」

 

「いや依頼の情報漏らすのは信用に関わるから言える訳が――」

 

「そんなのこちらには関係ありません!さぁ、どうぞ!」

 

・・・どうやらクロノススクールはコンプラ意識と言うものが存在していない様だ。イサネはそのイカれた倫理観に自分の事を棚に上げながらドン引きする。しかし、いくらドン引きした所で向こうが止まる筈がない。なにせ彼女らはキヴォトスにおいてマスゴミなんて呼ばれる事すらあるある意味危険な集団なのだ。

 

何を言っても無駄な事を理解させられたイサネは、諦めて答えられる範囲で嘘を答える事にした。

 

「・・・依頼じゃないけど、どこかの企業を潰した時。それ以上は言えない。」

 

何処かの企業というのはイサネが天敵と呼ばれ始めた頃の事。そして、便利屋68という中々に面白い人達との知己を得るきっかけをくれた企業だ。だが、それはあくまで偶然の産物に過ぎず、実際の所は依頼によってちょっかいを掛けた時からずっと雇いの傭兵を差し向け続けてきた蠅の様に鬱陶しい企業で、度重なる刺客に堪忍袋の緒が切れたイサネによって跡形もなく潰されて消えた。

 

正直便利屋68との出会いが無ければ記憶からも忘れられる位には大した印象も無かった企業だが、その分嘘として使うには中々使える程記憶に残っていた。

 

「企業潰しですか!記録されている限り単独の傭兵が挙げた最も高い戦果でありながら、万物の天敵の代名詞ともいえる企業潰し!これまで数々の組織を消し去ってきたイサネさんの中で、記憶に刻み付ける程の相手とは・・・一体何者なんでしょうか・・・!?では、次の質問です!」

 

「いやもう帰りた――」

 

「次の質問は、正に今話題になっているシャーレの先生との関係についてです!」

 

される側の人の意志を一切尊重しないで行われるインタビューに、最早溜息も出ない。しかも話題がよりにもよって先生との関係性とは。ただでさえマスゴミ臭の凄い連中だというのに、一体どう答えるのが正解なのだろうか。イサネの思考をは別に質問内容が読み上げられていく。

 

「先程のデモの鎮圧の際にも先生と一緒に現場に来ていた様ですが、先生とは一体どういった関係で!?・・・まさか、もう()()()()仲に・・・?これはスクープです!!」

 

「・・・私が潰した連中がどういう経験をしたのかそんなに気になるならそう言えって。これまでと同じ手法でキヴォトスからクロノスの名前を消してやるよ。」

 

インタビューの筈が何故か勝手な妄想をでっち上げ始めたクロノス生徒達に、流石に我慢ならなかったイサネはトーンを下げた声で脅す。

 

「お、おっと、これは凄まじい殺気です!戦いについては余り詳しくないですが、それでも肌でびりびりと感じられる程の圧力です!これ以上の詮索はやめておいた方が良さそうですね!で、では、一体先生とはどのような関係で・・・?」

 

イサネの怒気に当てられながらもなおインタビューを止める気配の無いクロノスの生徒達に、取り敢えずあらぬ詮索を止めさせることが出来た、と判断して質問に答える。

 

「・・・今日先生と一緒に居たのは今日がシャーレの当番だったからってだけ。私はただの傭兵で、向こうは連邦生徒会の捜査部顧問。それ以外に何もない。余計な詮索は身を滅ぼすぞ。」

 

「成る程、つまり特にこれと言った関係では無いという事ですね。いやー、我ながら少し踏み込み過ぎてしまった様です。」

 

「捏造は踏み込んだとかの次元じゃないだろうに・・・」

 

「そんなこと、スクープの前では些細な問題です。では次の質問に参りましょう!」

 

その後もクロノスのあまりに強引過ぎるインタビューは続き、インタビューから解放された頃には既に空が暗くなっていた。

 

 

 

 

「もう時間も遅いし、イサネの当番の分の仕事も終わってるからそのまま帰っても大丈夫だよ・・・ねぇ。クロノスが居なけりゃこんな事には・・・ちっ、シャーレも中々に遠い。」

 

辛うじてまだ夕食時故に今だ騒がしい夜の街並みを眺めながら、イサネはスマホ片手に一人シャーレへと向かっていた。

 

(シャーレに置いてきたバッグ・・・中は大した物は入って無いし、取りに行くの明日でもいいか・・・ってしたいんだけどなぁ。こういう時に限ってウタハの試作品(学園の機密に近い物)が入ってるんだよなぁ。)

 

当番の役目を終えて尚、イサネがシャーレに向かう理由はシャーレに置いてきたバッグの事だ。あの中にはミレニアムのマイスター、白石ウタハの作った試作品の武器が入っている。生徒に信頼の厚い先生の事だから勝手に持ち出す事は有り得ないが、万が一の可能性があると考えると引き取りに行くのがベストだ。幸いなことにまだ遅すぎる時間じゃない。

 

「ウタハってば、時折まだ未発表の最新技術とかを載せた試作品を平気で渡してくるからなぁ。自他ともに認めるマイスターなのは良いけど、セキリュティ意識に少々難があるっていうか・・・」

 

モモトークを画面に映す自身のスマホを流し見ながら、イサネは溜息を吐く。イサネの呟きの通り、エンジニア部のセキリュティ意識が低いのはミレニアムの一部では当に知られている事だ。だが、扱い的には部外者であるイサネにとって、そのセキリュティ意識の低さは実に厄介な火種になっている。何せゲーム開発部を巡る問題で間接的にエンジニア部と対峙した際、ウタハがぽろりと情報を漏らしたせいでイサネは自身のスマホに保存されていた依頼に関するデータをヴェリタスに引っこ抜かれるというだいぶ重傷な被害を被った。

 

そして現在、ハッキングされたスマホの買い替えの目処も立たず、またいつヴェリタスの悪戯でデータを持ってかれるか気が気でない状態で日々を過ごしている。イサネは知る由も無いが、一応ヴェリタスにもストッパー役(各務チヒロ)が居るには居る。居るには居るのだが、彼女が外の組織からの依頼でヴェリタスに居る事がそう多くない以上その抑止性が維持され続けられるとは考え辛い。

 

「あぁくそ、試作品のテスターも楽じゃないわ。」

 

ぶつくさと己の不幸を虚空に愚痴りながら、夜の街並みを歩いて行く事十数分。イサネは漸く目的地であるシャーレに着く。

 

 

「こんばんはー、忘れ物取りに来ましたー。」

 

入り口前で先生にメッセージを送って入り口の自動ドアを開けてもらい、イサネは早足で先生の居る事務室に向かう。エレベーターに乗り、廊下を進み、朝と同じように事務室の入口のドアを開ける。今度はちゃんと声を掛ける。

 

「こんばんは。忘れ物・・・は、あのバッグの事かな?」

 

部屋に残って書類にペンを走らせていた先生は、イサネの言葉にゆるりと反応する。

 

「そうそう、ほんとは明日でも良かったんだけど、如何せんミレニアムの未公開技術が入ってるからね。さっさとミレニアムに返さないと。」

 

「ず、随分と凄い物を持っているね。」

 

「ウタハの試作武装のテスターもやっててね。ミレニアムのエンジニア部ってどうにもセキリュティ意識が足りていないみたいで・・・」

 

先生と言葉を交わしながら、イサネは机の上に置いてあったバッグを手に取って中身が何も変わっていない事を確認する。そして、バッグを肩に掛けながらふと今日の事を先生に聞いてみようと口を開く。

 

「そういえばさ、今日のSRTの生徒達の処遇とかはどうなったの?私先署を出ちゃったからさ。」

 

「あー、そうだね。鎮圧を手伝ってもらったしイサネには伝えておこうかな。ついでに今のSRT取り巻く実情も。」

 

そう言って先生はイサネが居なくなった後に何が決まってそもそも何があったのかを話し始める。

 

まず今回デモを起こした生徒――Rabbit小隊の処遇については、先生が一任することを防衛室から正式に許可されたそうだ。防衛室の室長である不知火カヤにはヴァルキューレに編入するよう説得して欲しいと言われたそうで、先生はそれを断った結果処遇を一任する形になったらしい。

 

「へぇ、本来下される筈の厳罰も無しねぇ・・・キナ臭い事この上ない。」

 

「う、うーん。カヤが何を思ってそう言っていたのかは分からないけど、少なくとも彼女はSRTの閉鎖には反対しているって明言していたし。そう言うことなんじゃないのかな。」

 

次に上がったのはSRTの封鎖についての事。元々この議題は連邦生徒会内でも非常に意見が割れていた問題だったそうだ。操縦者の居なくなった暴力装置は危険だから必要ないとする者といつか連邦生徒会長は戻ってくると信じている者。この二勢力がほぼ半々の割合で対立しているらしく、とある事件が無ければしばらくは平行線な議論続きだっただろうと推測された様だ。だが、話が平行線のまま議論が続くとなると必然的にその話は大きく膨れ上がる。

 

「とある事件?」

 

「そう、連邦生徒会内でここまで話が大きく燃え上がっちゃうと、問題元かつ連邦生徒会の下部組織であるSRTにも話が届くみたいで―――」

 

そして、肥大を続けて大きくなり過ぎた話の火は、ついに対処しなければならない火種にすら飛び火してしまった。

 

「はぁ?SRTの歴戦を張る精鋭が襲撃ぃ?」

 

「そうなんだ。狙いは賛成派の生徒会役員で、被害はサンクトゥムタワーの一部施設が全焼。封鎖に賛成派の役員も複数負傷、入院を余儀なくされちゃって・・・」

 

そう、飛び火した火種はついに着火。SRTの中でも3年生で構成される文字通り精鋭が連邦生徒会を襲撃するという事件が発生。歴戦の特殊部隊相手ではただの役員や警備員など物の数にもならず敗走。結果としてサンクトゥムタワーと賛成派の陣営に多大なるダメージを与える結果となった。

 

しかし、その行動は連邦生徒会内の封鎖反対派の寝返りを発生・加速させてしまう事となり、最終的な結果として賛成派多数によってSRTの閉鎖が決定となったそうだ。

 

「・・・所詮武器は武器。考える力など持たないか。これでは特殊部隊なんて言う看板も何処までが事実なのかは怪しくなってくる所ね。」

 

「あまり彼女たちの事を悪く言わないであげて。自分たちの居場所が無くなるとなったらそういう事も考えちゃうと思うんだ。イサネもそういう経験はあったり・・・流石にないかな?」

 

先生の言葉に「うーん。」と曖昧に返すイサネ。確かにイサネのこれまでの生は居場所も何もない完全に0からのスタートだったが、自分の立場が外的要因で失われた事はない。少なくともカラードランク1位という立場と権力は自らの意志で捨て去ったし、ORCAにおける自身の立場も自分から焼き払った。

 

「自分の意志で超が付く程の特権を捨てた事はあるけど、外的な要素で失った事はないかな。元が文字通り何もなかったっていうのはあるけど。」

 

「超が付く程って・・・それはそれで凄い事だと思うけどね。」

 

因みにカラードのリンクスに付く特権はまずネクストなどを安置、整備を受けられる全設備の貸与。これは企業属なら属している企業の最高の整備を受けられ、独立傭兵なら質は幾ばくか落ちる上にある程度の金も取られるが、整備などが受けられる企業に制限はない。そして次にカラード管轄の高級飲食店などの上流階級の人間が使える様なサービスのほぼ自由利用。これが挙げられる。

 

カラードの上位になると、クレイドルへの移住を希望した際に企業の余程のお偉いさんでも居ない限りは上流階級人間よりも優先して受諾されるという特権が主に挙げられる。尤もリンクスの仕事場の関係上この特権を使う者などリンクスの中でも極一部しかいなかったが。

 

そしてカラード最上位層ともなると企業の上層部並みの特権が貰える。まず独立傭兵だと金がとられるネクストの整備の際の料金が無くなり、更に企業属と同じレベルの整備が受けられる。それに加えて依頼の際の企業からのバックアップが非常に手厚くなり、弾薬費の負担比等も上位層と比べても大きく変わってくる。そして更に他にも様々なサービスを受けられる上、カラード内で大体何やっても許されるというトンデモ権力まで与えられる。

 

「とは言ってもすぐに捨てたけどね。ま、私の過去はいいの、あれは人に話していいものじゃない。特にここでは。・・・で、話を戻して他には?」

 

「うーん、これ以上は特にないかなぁ。連邦生徒会を襲撃した3年生たち、Fox小隊って言うんだけど、彼女たちの足取りも掴めてないから詳しい事の詳細も分かってないし、Rabbit小隊の処分が決まってからじゃないと進展は無さそう。」

 

「ふーん。」

 

イサネは少しばかり思考する。現状SRTが封鎖になっているのはその武力を卸し切れる人物が今キヴォトスに居ないからだ。つまり、これさえ解決してしまえばSRTは再び治安維持組織として復活することが出来るだろう。そして、イサネはSRTを卸し切れる人物をもう既に知っている。

 

「ならさ、SRTの指揮権限を先生の元に移せばいいんじゃない?」

 

「え?」

 

唐突にイサネの口から告げられた提案に先生は一瞬固まる。イサネは捲し立てる様に言葉を紡ぐ。

 

「SRTの閉鎖理由ってさ、唯一SRTを制御できる連邦生徒会長が居なくなって、その後継が誰も居ないからでしょう?でも、先生ならそれが出来る。ただでさえ各学園内の問題にすら問答無用で介入できる上にほぼあらゆる罰則を受け付けないという強権を卸し切れる貴方なら、SRTだって上手く手綱を握れる筈。それに、先生のその指揮能力を以ってすればより一層SRTが正しく活躍できると思うんだけど。」

 

一瞬の沈黙。その後、先生は一瞬の迷いもなく口を開く。

 

「私の能力がどう評価されているのかは知らないけど、確かに政治的に見るなら優れた指揮能力や権力の制御能力を持つ人材に強力な武力組織の手綱を握らせるのはいい案なのかもしれない。」

 

一度言葉を切り、軽く息を吐く。そして、今度は短い言葉で答えを返す。

 

「・・・けどね、それは出来ないし、するつもりも無い。」

 

「成程、理由を聞いても?」

 

先生の答えはNO。只の一般生徒ならともかくそもそもが誰かの命によって動く特殊部隊ならシャーレ直属になっても問題無いだろうと思っていたイサネは、先生の答えに即座に疑問を呈し、先生もその疑問に答える。

 

「まず第一に私は先生だ。先生と言うか大人と言う者は子供たちの為に自らが責任を負うべき者の事だ。相手が特殊部隊だからと言ってそのルールから外れることはあってはならない。だからこそSRTの指揮権を私に移した所でSRTは動けない。」

 

「生徒の自主性こそに意味があって、あくまで生徒の背中の後押しと行動の責任を負う事が先生のすべきこと。だから、それ以上の過干渉や強制は先生として行き過ぎていると?」

 

「そう。それに、SRTの子たちもいきなり今日からあなた達の指揮官はこの人ですって言って素性のよく分からない大人を紹介されても簡単に受け入れてくれるとは思えない。でも何よりはもう一度言うけど私が生徒に対して何か命令を下す事。これは私の先生としての矜持に反する。」

 

普段通りの穏やかな声色でありながらも、何処か絶対という非常に強い意志を感じさせる声で話す先生。それを聞いたイサネは「失踪した会長の事は知らないけどこれは確かな人選だ。」と内心で納得すると同時に確信する。

 

 

――この人(先生)(イレーネ)は致命的に反対を向き合う(相反する)存在同士という事に。

 

 

(生徒や弱者達の為にあらゆる自己犠牲を一切厭わない先生と、自らの答え、もしくは意志の為にありとあらゆる犠牲を他人に強いても心一つ痛む事の無い私。・・・今は必要性が無いから隠れているけど、私の本性を知ったらどんな反応をするのだろうか。)

 

 

だからこそ考えてしまう。先生が、キヴォトスにて交友を深めた者達が、イサネが今背中に背負う業の存在を知った時、一体どういう反応を示すのか。殺人が禁忌と言われる程重いこの世界で、20億という人間の命を自らの意志で奪ったその咎を。

 

「なるほどね・・・確かに先生らしい考え方ね。」

 

自身の血塗れの内面を悟らせない様、先生の言葉に反応を示す。それに対し先生はあくまでも謙遜を以て言葉を返す。

 

「とは言ってもまだまだ未熟な所は多いけどね。」

 

「書類業務が出来ない所とか?」

 

軽口によって、これ好機と察したイサネの口から出た指摘に先生が「そこ突かれるのは痛いなぁ。」と情けなく笑い、イサネもそれに乗っかる様に軽く笑う。何せブラック企業でない一般の企業勤めなら既に退勤している時間だというのに、先生の座る机の上にはまだ数十枚程の書類が残っている。因みにこれでも普段よりは少ない方だというのだから驚きだ。いくら生徒の為に身を捧げると誓ったとはいえその結果が大量の書類に埋もれて過労死なんてのは余りにも報われなさ過ぎる。

 

「あははは・・・ふぅ・・・じゃ、私は帰るけど・・・先生も程々に休みなよ?」

 

一通り笑い終えたイサネは、先生に別れの挨拶をしながら机の上にある書類を冷たい目で睨みながら言葉を続ける。

 

「今日は少ないらしいけど・・・こんな量、これからもずっと続けてたら本物の天才でもくたばるからね?」

 

「う・・・仰る通りです・・・」

 

それは明らかに一人に背負わせるにはおかしい量の仕事を、誰に頼るでもなく一人で片付けている先生に対する忠告だった。忠告を受けた先生は苦々しい表情で頷く事しか出来ない。イサネはどうせ言っても聞かないんだろうなと思いながら事務室の扉を開け、

 

「私にとって、最も意味の無い死は過労死だと思ってる。」

 

とだけ言うと、イサネは開けた扉から出ていく。

 

 

 

バタンと扉が閉まる音が部屋に響き、部屋の中には再び先生だけが取り残される。会話の無くなった静かな部屋の中で一人、先生は書類に走らせるペンを止める。

 

「・・・最も意味の無い死、か。」

 

ペンを置き、ぼそりと呟く。今先生の頭の中に渦巻いているのはイサネの言葉だ。

 

(今、イサネは最も意味の無い死と言った。まるで人の死にそれぞれ価値の違いがあるかのような、そんな言い方だった。・・・そんな訳ない。人の死に、意味も無意味もない筈。)

 

先生にはイサネの言った言葉の真意こそ理解すれど意味の無い死という言葉が彼女の口から出た事が驚きだった。

 

「まさか、人の死に優劣を付けるなんてね・・・でも。」

 

元々争いなどなかった場所から来た先生にとって、人に訪れる死に優劣など無いものだと思っていた。誰かが死ねば死因が何であれ仲の良かった者達はその死に悲しみ、そして追悼の意を示す。それが普通であり、常識だ。ましてやここはキヴォトスだ。寿命か病での人の死など、半ばオカルトじみている概念だと言っても過言ではない。そして病における死すら殆ど見掛ける事など無いのだから。

 

だからこそ、人の死に方に意味の優劣を付けるイサネのその言葉は、非常に重い棘となって先生に突き刺さったのだが――

 

 

「・・・言ってる事自体は正しいのがなぁ・・・」

 

 

――私にとって、最も意味の無い死は過労死だと思ってる。

 

 

あくまでこの言葉の真意は「働き過ぎ」であって人の価値観の話ではない。例え標根イサネという少女がどんな価値観を持っていたとしても、この言葉の意味は変わらない。

 

「そんなこと言ってもぉ・・・私これでも真面目にやってるんだけどなぁ・・・?」

 

真面目に業務に取り組んでいるつもりだったのだが、やはり過度な長時間労働は見本となるべき大人の姿ではない。その事実を自分以外の誰かに改めて突き付けられ、無性に悲しくなってくる。

 

 

「うぐぐ・・・くそがぁ!やってやるよ畜生!」

 

 

悲しさを紛らわせるように、やけくそにいきり立ちながら再びペンを書類に走らせる先生。

 

 

「私は先生なんだ!これ位の書類なんてへっちゃらだもんね!うわぁぁぁーーん!!」

 

 

静かな電子音だけが聞こえる部屋の中で、先生の情けない決意の声が響いた。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

モニターに表示されているデジタル時計は《11:54》と表示しており、右端に小さく表示された秒針の値は30を示し、そこから1秒ごとにその数を1づつ刻んでいく。

 

 

「OSの状態に異常なし、各種パラメータもバックアップ共々異常なし。うんうん、上手く行った・・・で、コピーしたこいつを、こっちで起動して・・・あ?エラー?・・・ここのプラグインかな・・・」

 

 

静かな駆動音の中、狭いコックピットの中で少女――標根イサネは、コックピットシートに座った膝の上にノートパソコンを広げ、コックピット内の備え付けの保存媒体にコードを繋ぎながらキーボードを叩いていた。

 

「あー、ネクスト規格のプログラムを移植となるとこのレベルのモデルのパソコンでも容量が食い尽くされるのか。となると後はハイエンドモデル位だが・・・というかこのプログラム自体動かすのには無駄なものが結構・・・」

 

ぶつぶつと呪文のように単語の羅列を呟きながら、ただひたすらにキーボードを打ち続ける。

 

「ここの値とここは要らないから削除して、これ・・・は既存値を使えば安定するはず・・・あっ、AMS前提かこれ。だとするなら固定された値を与えれば・・・おぉ、上手く動いた。はははは、これで・・・これで人のデータ盗っておいて謝罪の一つもないヴェリタス(馬鹿共)に制裁が出来る!」

 

狭いコックピットの中でイサネは器用にガッツポーズを取る。

 

「へっへっへ・・・ヴェリタス・・・ハッキングは、君らだけの専売特許じゃないのよ・・・?」

 

そう、シャーレからブラックマーケットの自宅ではなくアビドス砂漠にあるストレイド格納庫に帰って来ていたイサネは、完全スタンドアローンのノートパソコンにネクストに搭載されているハッキングプログラム(電子のゴミ)ファイアウォール(使える方の電子ゴミ)をコピー、移植していたのである。

 

理由は単純明快、少し前に自身のスマホをハッキングし、大事な依頼データを引っこ抜いていったヴェリタスに復讐もとい制裁を加える為だ。

 

「規律に真面目な部長さんには悪いけどねぇ・・・痛い目に遭ってもらわないとねぇ・・・あはははっ。」

 

信頼が重要となる傭兵業において、情報管理が出来ない者に名指しの高給な依頼は来ない。つまり、イサネは先のハッキングを少なからず根に持っているのだ。

 

そして、今イサネが弄っているハッキング用のプログラムは、ネクスト相手では何の意味の無いゴミでしかないが、どうやらキヴォトス基準だとかなり優秀な代物らしい。だとするなら、それを使わない手はない。

 

「まずは・・・カイザーのデータベースでも覗いてみるか。あそこなら何やっても許されるでしょ。多分。」

 

完成したプログラムにバックアップを施し、早速起動する。勿論狙うはカイザーの内部も内部の機密情報だ。イサネによって起動されたプログラムは、一切のエラーを吐くことなくキヴォトスのネットワークの海へと潜っていく。

 

「やはりミレニアムの様にネットワークからは独立してる。まぁあれでも大企業だし、それくらいの対策はするか・・・データベース位置周辺の機器は・・・お?対EMP設備?」

 

しかし、キヴォトストップレベルの大企業なだけはあるのかデータベースはネットワークから完全に独立しているようだった。だが、そんなことは想定するまでもない。イサネは素早くキーボードに指を走らせる。

 

「はははっ、駄目だよぉ~。こんな近くにこんな物なんて置いてちゃ~。しかもこれ、型落ちじゃーん。駄目だねぇ、カイザーも・・・という訳で、パルス逆流っと。」

 

近くに型落ちのハッキング対策の設備を見つけたイサネは、素早くそれを乗っ取り(ハッキング)、機器のプログラムまで侵入。その機器を逆に電子爆弾として利用する。

 

「はい、サーバの引き摺り出し成功~♪じゃ、データは貰っていきますね。」

 

即席の電子爆弾として作り変えられたその機器は、過剰な電流を流し込まれたことに加えて書き換えられた役割によって周囲に大放電。近くにあったデータサーバを焼き払う。そしてそれを受けたサーバコンピュータは、データ保持の為に自身コピーをネット上の指定のデータファイルにアップ。最悪の事態を逃れようとする。

 

だが、それこそが罠だった。イサネは予めデータのアップ場所を特定しており、サーバーがデータをネットの上げる時には既にそこに潜んでいた。そして、上がってきたデータを掻っ攫って退散。ついでにネット上にあるカイザーのデータ避難場所も潰しておく。これでほぼ完全犯罪となり、捜索は困難になる筈だ。そうして一通りのハッキングを終えたイサネは、自身がまだネクストとの接続を切る事も忘れて盗んだデータを読み漁る。

 

「さてさて、どんなあくどい事をやってたのかしら・・・っと、うーん?意外と子供騙しが多いっていうか・・・胸糞の悪さで言うなら企業連よりも温いな・・・?」

 

キヴォトスで悪名轟かせるカイザーだったが、蓋を開けてみれば利益主義のなんてことは無い様な事業ばかりで、イサネがこれまで見てきた世界を支配する企業のやり方に比べれば遥かに生温い。随分と温い手法だと感じつつ、イサネはその後もデータを読み進めていく。すると、取引履歴のデータの中に何故かヴァルキューレの文字と何かを示す隠語の様な単語が記録されている事を見つける。

 

「・・・ヴァルキューレの文字が何でここに。それにこれは明らかに防衛室を示す隠語。取引の内容は・・・銃火器。」

 

本来ならヴァルキューレは正式に連邦生徒会に認められた脛に傷の無い企業か連邦生徒会から直接卸されるはずの装備しか使わない筈だ。だというのに、そのヴァルキューレがカイザーから武器を買っている。しかもその数は調査の為ではなく、明らかにヴァルキューレの生徒に使わせることが目的の数と種類。イサネはここで、一つの裏の真実に辿り着く。

 

 

――ヴァルキューレとカイザーの癒着に、防衛室の汚職。

 

 

「はは・・・ははっ、はははははっ!」

 

笑いが抑えられない。初めから何処か怪しいと睨んでいた防衛室だったが、まさかここで尻尾を表すとは。それにヴァルキューレという盛大なお土産も一緒に引っ提げて。これは大収穫だ。何せこれをクロノスに流すだけでもうヴァルキューレの地獄が確定する。

 

 

「いやぁ・・・でもただ流すだけだと面白くないなぁ。何か、良い案は無いものか・・・」

 

 

だが、ただ流すだけでは面白くない。イサネの中の本性がそう叫んでいる。その声に釣られる様に、如何にしてこの情報を活用するか。イサネの思考が動く。情報とは言わば実体のない武器で、下手をすれば実体のある武器よりも強力な攻撃力を有する事もある代物だ。そして今回得られた情報はヴァルキューレと防衛室、ひいては連邦生徒会に大打撃を与える事が出来る非常に強力で有用な武器だ。だからこそ、使い所は見極めておきたい。

 

 

―――見極めておきたかったのだが。

 

 

ふとモニターに表示されているデジタル時計が視界に入る。キヴォトスの基準時間に調整をしたその時計は、通常モード時のモニターの左下端にamの文字と共に《4:16》と現在の時刻を表示している。イサネの思考が一瞬停止する。

 

「え、もう4時?ストレイド、貴方嘘ついてない?」

 

時刻を見たイサネは常人を遥かに超えた反射速度を以て時刻表示を更新させる。しかし、表示される時刻は同じ、《4:16》のまま。デジタル時計の読み方として《4:16》は4時16分、そしてその前にamが付いている。amとは午前中という意味であり、そこから分かる現在の時刻は午前の4時16分という事になる。

 

 

・・・最早朝と言っても過言ではない。そして、イサネの次の依頼は5時から開始である。

 

 

「かッ・・・!」

 

 

あって欲しくなかった事実をイサネの脳が完全に認識、声にならない悲鳴が口から迸る。そんなに作業が長引くことは無いだろうと踏んで始めたプログラム移植だったが、プログラミングの知識はあれどその専門家ではないイサネでは作業が長引くのは必然であった。何せ扱っているプログラムは本職が何十人も集まって作り上げた代物なのだから。

 

因みにだがイサネは徹夜が嫌いだ。いくら強化手術のおかげで疲労の蓄積度合いが常人よりも低いとはいえ、徹夜した後の一日が非常に辛い事に変わりはない。何せ食事とは言えない栄養補給すら吐きそうになるのだから。これはネクストに乗って戦場を駆けていたあの時から今まで変わる事の無い価値観で、過去に徹夜後の依頼や模擬戦では地獄を見ている。だが――

 

無情にも時既に遅し。何度時計を見ても現在時刻は朝の4時、次の依頼の開始時刻は同日朝の5時。

 

 

――徹夜が確定した瞬間である。

 

 

「・・・い・・・いやぁぁぁぁぁーーーッ!!!」

 

 

認めたくない事実に、受け入れがたい真実に、イサネは一体何処からそんな音が出るのかと言わんばかりの非常に甲高い悲鳴という名の咆哮を上げる。その高音はリンクス(強化人間)の声帯と肺活量によって圧倒的な音量を以て解放され、アビドス砂漠にぽつんと立つ建物の内部に留まらず、まだ早朝の眠りについていた砂漠に鶏の鳴き声の様に響き渡った。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「なんだなんだ朝から騒々しい。」

 

 

ここはかの悪名高きカイザーコーポレーション本社。出社時刻丁度に整った身なりで出社してきたカイザーコーポレーションの幹部――ジェネラルは、自らのオフィスに辿り着くまでの間で、やたらと騒がしい社員たちの様子を見て怪訝そうに苦情を呈する。

 

「全く、社会人としてもう少し落ち着きを持ってだな・・・」

 

「幹部!幹部!緊急事態です!」

 

まったく天下のカイザーらしくもない、等と思いながら廊下を歩いていると、普段ジェネラルの直近の部下として彼を支えている社員が血相を変えて彼に声を掛ける。声を掛けられたジェネラルも、「もう少し静かにせんか。」とその普段ならありえない喧しさを咎めながら話を聞く。

 

「も、申し訳ありません。」

 

「まぁいい。で、一体何の緊急事態だ?」

 

「は、はい!それが――」

 

未だ収まる事の無い喧しさの中、その部下は事態を説明する。

 

「・・・何を言っているんだお前は。カイザーのデータサーバが半焼?何かの冗談か?」

 

「冗談でしたら社全体で騒ぎなど起きません!」

 

「はぁ・・・直接見に行った方が早そうだ。取り敢えずお前は我が部署だけでもいいから静かにさせてくれ。うるさくて敵わん。」

 

訳の分からない報告を受けたジェネラルは部下に指示を出すと、単身でカイザーコーポレーションとその他系列企業のデータが保管されているサーバルームへと足を運ぶ。廊下を歩き、エレベーターを乗り継ぎ、幾重にも厳重なガードを施された扉を許可を貰って通り抜けてサーバルームへと辿り着く。

 

 

「ほらやはり何ともな――え?」

 

 

普段通りのデータ保管用のコンピュータが幾つも並んで稼働音を響かせる暗い殺風景な部屋を幻視下ジェネラルは、目の前の光景に完全に硬直する。

 

コンピュータが複数並んでいるのは変わらない。しかし、その内扉側から見て右半分のコンピュータ群は明らかに焦げ付いたような茶色に変色しており、部屋も焦げ臭い。そしてそこかしこから薄い白煙も見える。

 

「え?・・・いや・・・え?」

 

信じられない事実に脳の理解が追い付かないジェネラルは、そのままサーバルームに入り、茶色く焦げ付いたコンピュータに近づく。

 

「え、は?・・・え?」

 

近づくとより脳内にその事実が焼き付く。見れば見る程もうどうしようもないという結果だけが場に残る。事実をまだ受け入れ切れていないジェネラルは、近くにあったデータ管理用のパソコンの電源を付け、サーバ内のデータを捜査する。が、

 

「ぜ、全部消えている・・・だと・・・ッ!?」

 

何処のデータファイルを漁っても空か《このデータは破損している為表示できません》という文が表示されるだけで、生きているデータが何処にもない。

 

「そ、そうだ・・・バックアップは・・・!」

 

ジェネラルとて大企業カイザーの幹部にして、カイザーの兵力を賄うカイザーPMCの司令官だ。カイザーのデータに何かあった時、ネット上の秘匿エリアにバックアップを送信するという仕組み位は知っている。

 

 

「バックアップさえ生きていれば、何の問題も・・・!」

 

 

ない。無い。亡い。ネット上に確保した筈のカイザーの秘匿領域が見当たらない。ネット上での位置はあっている筈なのに。保存されているバックアップはおろかそもそもの保存領域すら見当たらない。

 

「ここにも・・・な、ない・・・!?」

 

普段から一転、一瞬で全てが吹き飛んだという事実に、油断も慢心もない盤石さを誇るジェネラルの思考が完全に停止する。

 

 

「う、うう、う、嘘だ・・・我らが天下のカイザーの・・・で、データが、焼失・・・?」

 

 

そして、漸く受け入れがたい無慈悲な事実を理解してしまったジェネラルは、震える声で零す。しかし、いくら待っても事実は覆らない。ジェネラルは、機械の体で壊れた機械の様にがくがくと震えながら膝をつき、天を仰いで一呼吸。そして――

 

 

 

「嘘だぁぁぁぁぁーーーッ!!!」

 

 

 

――哀れな社会人の咆哮。

 

 

 

今日もキヴォトスは騒がしくも平和である。

 

 

 





ちょっと今回盛ったというか着飾った文章多い割に内容が薄い上に話が飛び飛びになったかもですね。反省します。

カラードのリンクスに与えられる特権については完全に思い付きです。
作者のプログラミング知識は0に近いのでハッキングの描写は妄想です。ご注意を。
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