どうも、文章が思い付かず必死こいて過去の話を振り返ってる一般お馬鹿です。
前章のカルバノグが会話多めだったので、今回のパヴァーヌ2章では戦闘多めで行きたいなーと考えております。上手いく行くといいなぁ(遠い目)
二人きりの部屋で
「ん?イサネ、どうかしたかい?」
「あぁいや、何でもない。」
隣に居た
「名は体を表す。・・・よく言ったものね、所詮ただの皮肉でしかないというのに。」
「そう卑下する事も無いだろう。力は使い様によって平和の象徴にも、破壊の象徴にも、いくらでもなり得るんだから。力はあくまでも大きさに過ぎない。力を何色に染めるかはそれを持った者が決める事だ。」
自らの発言に反応して哲学の様な事を滔々と語るウタハを余所に、分解されたライフルの銃身を撫でながらイサネは不意に生まれた不安に押される様に心の中で問いを投げ掛ける。
(今は動かす事の叶わないストレイドこともう一つの私の体。・・・私の半身の代わりを、半身をもがれた私の空虚を、お前は埋めてくれる?それとも、更に私の心を蝕む?)
返ってくる筈も無い相手に問いを投げかけた瞬間、心が歪に捻じれ始め、内から黒いものが溢れてくる。自分が自分で無くなっていく。
(どうなの・・・?お前は、私を生かすの?それとも、殺すの?)
ストレイド。イサネ、ひいてはイレーネの前世からの付き合いであり、共に死地を駆け抜けた相棒にして最早自分の半身とも言える存在。迷う者、もしくは迷った者と言う名を冠し、戦場にあっては常にイレーネの傍に控え、主が選んだ人類の駆逐と言う修羅道にすらも迷いなく着いて行った人類種の天敵の力にして首輪を喰い千切った首輪付きに付き従う迷わぬ従者。
傍から見れば呪いにも見えるその繋がりはイサネがキヴォトスに流れ着いて尚彼女の心の奥深くに杭を打ち込み、そして離れ離れの戦場に、闘争に、本能的な空虚を齎していた。だがイサネ自身、依存にも等しいストレイドとの繋がりを、自らの心に刺さった杭を否定したくなかった。自ら刺したとも取れるその杭を。
・・・例えそれがいつか無くなる物だと分かっていても、いつか別れを告げる時が来るとしても。
(お前にストレイドの代わりを求める事は無い。ただ、私の物として名前を付けた以上私はお前をもう一つの自分として見る。よって私が少しでも使えないと見たらすぐにその名を剥ぎ取る。その体躯を鉄屑に変える。)
まるで赤子を撫でるかの如き手付きの裏で、今度は目の前のライフルに歪んだ心で脅迫にも等しい言葉を吐いていた。
(私が持つ名前は、どちらも大切な人から貰った大事なもの。quit est pax・・・これもキヴォトスに来てから出来た友人に貰った名前だけど、重みが違う。だから、セレンからの大切な贈り物を、私とセレンを繋ぐ僅かな糸を、穢す事はしないでね。)
イサネは自らの育て親兼恩師であるセレン・ヘイズの事を心の底から敬愛しており、彼女から貰った名前にすら同じ様な敬愛と尊敬の念を持っている。だが、いくら敬愛と言えど限度というものは存在し、過度な敬愛は執着とも取れてしまう。
そして今のイサネの心の言動は正に過度な敬愛のそれであり、仮付けの名前にすらあるかも分からない呪詛を吐くその様は執着と言う言葉が何よりも相応しく、そして醜悪だった。
――だが、
「・・・何をやっているんだ、私は。」
同時にイサネは天才だった。如何な状況であれ自分の状態を冷静に分析出来た、自覚する事が出来た。自らがセレンに対し異常なまでの親愛を持っている事も、つい今仮の名前を付けた物言わぬライフルにすら呪詛を吐き散らす事の醜さも、全て自覚し、理解する事が出来た。
「・・・慕っている恩人一人居ないだけでここまで狂えるのね、私。本当にどうかしてる。言っちゃ悪いけど、たかが銃器に訳の分からない脅迫をするなんて・・・はぁ。」
理解出来るからこそ、余計に要らぬ心労が募る。醜い自分の本音に殺意が湧く。心が憂鬱一色に染まる。自然と漏れる溜息が止まらない。
「イサネ、さっきから大丈夫か?何やら強く思い詰めている様だが・・・もし体調不良だとか、それ以外にも精神的な異常があるならこの後のテストは中止するから、無理だけはしないでくれ。」
横で哲学紛いの何かを語り続けていたウタハもイサネの様子に気付いたのか心配の声を掛けてくれる。どうやらイサネの心境の不安定は心の外に居る筈のウタハにすら分かる程のものだったらしい。その事実にイサネの自己嫌悪をより加速させる。
イサネは己が最悪の失態を知られる訳にはいかないと、咄嗟に口を開く。
「い、いや、大丈夫。つい昨日見た悪い夢を思い出しちゃって。」
「悪い夢、か。夢と言うのは人の睡眠中において脳が記憶の整理などで活動している際に表層意識に現れるもの。悪い夢、ひいて悪夢というものは心的障害、疲労、精神的不安やストレスによるものが原因だとされている。・・・この際余り深くは聞かないが、何か嫌な事でもあったのか?」
そう言いながら自分の瞳を覗き込んでくるウタハ。自らのキルレンジの更に内に警戒も無く入ってくるのは勘弁してほしいが、それでも彼女の温かい心遣いは荒んだ心に何とも良く染み渡る。
「いや特には。強いて挙げるならさっき不用意に口にした液体が劇毒だったこと位かな。」
(・・・まぁこいつが使えるかどうかは論点じゃない。私が使いこなせるかどうか、私がこいつを振り回せるかどうかが重要だ。それにしても、
ウタハの問いに戯言を返す傍らで結論付け、心に蔓延していた何かを刺さった杭と心の隙間に捻じ込む事で落ち着きを取り戻す。
「・・・それについては申し訳なかったと思っている。次からはちゃんと水にするさ。・・・後タバスコは毒じゃない、れっきとした調味料だ。」
「そういう問題?それ。」
意識して軽口を叩きながら、イサネはスコープを撫でていた手を握り込む。まだ依頼、そして模擬戦は終わっていないと再び精神を集中させる。
「さて、次の――」
「試作品はどれかな?」と再び燃焼を始めた闘志のままに、ウタハに声を掛けようとしたイサネだったが、ウタハが怪訝そうに窓から外の様子を窺っている事に気付く。
「ウタハぁ?何を見て――」
再び声を掛けたイサネだったが、ウタハそれよりも先に口を開く。
「あれは一体?普段の爆発事故にしては随分と規模が大きい様な・・・?」
ウタハの指す指の方向に振り向くと、試験室の小さな窓からでも明確に分かる程の爆発と僅かに見えた一筋の光が、ミレニアムの中央に位置するミレニアムタワーの一角より視認できる。
「あれは・・・」
千年問題と呼ばれる7つの問題の解明を筆頭に、ありとあらゆる技術や科学の研究が行われているミレニアムサイエンススクールにおいて、爆発事故というのは案外日常茶飯事だ。技術や科学の発展には犠牲が付き物との言葉がある通り技術発展には失敗が付き物であり、それが集まるミレニアムは正に事故の温床とも言え、混沌の象徴であるゲヘナ学園程では無いものの爆発・火災などは割と頻繁に発生している。
そして今回起きたであろう爆発事故もミレニアムの日常の一つなのだろうという事は傍から見れば考えるまでも無かった。ただちょっと規模が大きかった、セミナーからまた苦情が入る、と言う程度の。
――だが、
(・・・私の勘が、急げと言っている。急いであそこまで向かえって、叫んでる。本能が、警鐘を鳴らしてる。これは違うって。これはいつもじゃないって。)
己が本能が警鐘を鳴らしている。第六感とも言える自身の直感が異変を叫んでいる。
――急げ、と。
数秒の逡巡。イサネとて伊達に生死の狭間が日常の世界で生きてきた訳じゃない。爆発程度でどうこうする精神など当に死んでいるし、いきなり目の前で銃撃戦が始まったとしても通行の邪魔としか思わないくらいには荒事に対して耐性は持っている。
だが、今回のは明らかに毛色が違う。嫌な予感がイサネの意識をひたすらに叩き続ける。
(私以外の何かが?手榴弾程度の爆発程度じゃ骨も折れないキヴォトスの人間が?顔も知らない様なミレニアム生が?あ、いや・・・まさか。)
余程の規模でない限り一回の爆発程度でキヴォトスの人間が重傷を受ける事は無いと言って良い。そしてイサネ自身、知りもしない誰かの生死など興味もない。だと言うのに、一体何がそこまで自分をここまで警戒させるのか。
高速で回転する思考を更に加速させ、イサネは一つの仮説に辿り着く。と同時に確信を得る。
――先生が敵意に晒されている。
確固たる証拠や根拠はない。だが、一度確信を得た瞬間、全身を駆け巡っていた嫌な予感がリアルな質感を伴ってイサネの心に襲い掛かる。確信が僅かな逡巡を吹き飛ばし、自身の次の行動を確定させる。
「ウタハ、私行ってくる。」
確信してしまった以上最早言葉すらも惜しい。イサネは体中を駆け巡った不吉な予感のまま、外へ向かって駆け出す。
「い、イサネ!?どうし――」
「ごめん話は後ッ!!」
イサネの唐突な様子の急変に思わず引きとめようとしてしまうウタハだが、イサネはそれを意にも介さず扉を蹴破り、外へ飛び出す。
「ネル、何処だぁッ!」
「ぅおわぁぁぁーーッ!!?」
外に出るや否やネルの名を叫ぶ。一方まだぎりぎり休憩時間という事で、ベンチに背を預けて心地良い風に任せて舟を漕ぎ出していたネルは突如至近距離で響いた殺人的声量によりベンチから情けなく転げ落ちる。
「て、てめぇっ、いきなり何を――」
すぐさま起き上がり、殺人的大音響を響かせた犯人――イサネに泡食った心境のまま声を荒げるが、それも彼女の纏う雰囲気を感じ取るや否やすぐさま口を閉じる。
「ネルっ、今すぐC&C全員集めてあの爆発場所に向かって!何か不味い事が・・・!」
「あっ、おい!何を言って――!」
ネルが口を閉じたのを境に一方的に捲し立てるイサネ。いきなりC&Cを全員集めて爆発箇所に向かえなど、言葉の意味を測りかねるネル。しかしイサネはそんな彼女の疑問に答える事無く、ミレニアムタワーへと走って行く。
「くそ・・・行っちまいやがった。しっかし、何があいつをそこまで――」
イサネが何か焦っているという事以外何も理解出来なかったネルはその場でイサネの発言に首を傾げる。と、そこに動揺を露わにしたウタハが駆け付ける。
「ネル。イサネは見なかったかい?」
「何だ何だお前もそんなに焦って。イサネの奴ならタワーの方に行っちまったぜ。あんなに焦った様子のイサネは何だかんだ初めて――」
ウタハまで訳の分からない事を言っていると感じたネルだったが、ウタハはそれを気にも留めず続ける。
「ネル。君も急いだ方が良いかもしれない。それにあの光、思い返す限りだと非常に既視感があるんだ。何処かで、と言うか非常に身近な人が持っているあれに。」
「あれって・・・?」
「アリスのレールガン。」
ますます疑問が膨らむ。何故ここでレールガンなのか。何故ここでアリスなのか。
「はぁ?本当に何を言って・・・はぁ、分かったよ。行きゃあ良いんだろ行きゃあ。」
しかし、イサネがタワーの方へ向かってしまった以上ネルもこの後の模擬戦が丸潰れになる事は確定している。不完全燃焼を吐き出しながら、渋々ウタハの言う通りタワーに向かう事にする。
「そういえばあいつら今どこで何してんだ・・・?」
愛銃のツインドラゴンを肩に引っ掛け、歩き出す。同時に懐からスマホ取り出し、自分を除くC&Cのエージェント達に通話を掛ける。
「あーあー、聞こえてるか。そうだ、あたしだ。今どこにいる?・・・ふぅん、成程な。用件・・・まぁ指令って訳じゃないが、活動要請が出た。場所は・・・ウタハ、あそこはどの辺だ?ふんふん、OK。ミレニアムタワーの――」
未だ疑惑が取れない中、嵐の如く去って行ったイサネを追う様にネルも続いてタワーへと向かっていく。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「有機体の生存反応を確認。」
無機質な声が、瓦礫と化した部屋に響き渡る。
「排除失敗を確認しました。」
「あ、アリス・・・ッ!」
小柄な少女が巨大なレールガンを手にぶつぶつと呟く。その顔に感情を言えるものは存在せず、普段はキヴォトスの空の様に透き通った青の瞳も今に限ってはまるで警戒色の如く赤い。
「あ、アリスちゃん!?」
「プロトコルの再実行を行います。武装のリロードを開始。」
少女――天童アリスと言う名を持つ機械仕掛けの少女は、対峙する先生やユズの呼びかけに何の反応も示さず感情を持たないロボットの様に淡々と手に持った巨大な砲身ことレールガン――【光の剣:スーパーノヴァ】のリロードを行う。
「また、レールガンの充電を始めました!撃ってきます!」
「くっ、何としても止めないと・・・!」
レールガン。一撃こそありとあらゆる障害を何の抵抗も許さずに貫通し、並み以上の生徒ですら直撃すればただでは済まない攻撃力だが、その分銃弾――導電性を持った金属体の装填に時間が掛かる上、連射など以ての外と言う携行武器としては一撃に全てを掛けた代物。
一対多で扱うには余りにも不向きな武器と言えるレールガンだが、発射された弾が纏う
「皆、アリスをお願い・・・っ!」
こういう時、自分も体を張って立ち向かう事が出来たならと情けない幻想を思い浮かべながらも、先生は突如訪れた異常事態をどうにかして切り抜けるべく頭を回す。
(アリスがおかしくなったのは、あのロボットに触ってから・・・)
加速する思考で思い返すはアリスの異変。昨日一緒にミレニアムを一緒に冒険した時も、そしてついさっきヴェリタスに新たな発見があったと研究室に呼び出され、入り口前でばったり出くわした時も、アリスは普段通り――自らを勇者と自称し、少し無知ながら何事もゲームに例えるミレニアムの皆に愛される正に電子の勇者だった。
だが、廃墟と呼ばれるミレニアム郊外にある封鎖区域。ゲーム開発部とアリスの出会いの地で発見された気味の悪い機械を見た時、アリスはその機械の対し「この機械を見た事がある」と言った。
――アリス・・・見たことあります。
ふらふらと引き寄せられる様にその機械に近づいていき、機械に手を触れる。すると何という事か、これまでヴェリタスが何をやっても反応一つ返さなかった機械に光が灯ったのだ。そして同時にモモイが所持していた携帯ゲーム機にも何故か電源が入る。
――待って。・・・アリスちゃんの様子が、おかしい。
モモイが突如起動したゲーム機に困惑している様を横目に、ユズの指摘の通りアリスを見る。するとそこにはつい今までの明るさから一転、目を閉じ電源が切れた機械の如く直立のまま動かなくなったアリスの姿。
――アリス?
一同が呼び掛けるが、アリスはそれに反応を示さない。そして数秒後、呼びかけにも応じないアリスに困惑する自分達を前に再起動を果たしたと思われたアリスだったが――
――コードネーム【AL-1S】、起動完了。
―――プロトコル【ATRAHASIS】を実行します。
目覚めたものは、皆のよく知る勇者アリスでは無かった。
「アリスちゃん、ごめんっ!」
思考が現実へと帰還する。目の前ではアリスの持つレールガンのリロードを阻止すべくヴェリタス所属の一年生、小塗マキが発射姿勢以外ほぼ棒立ちのアリスにタックルを仕掛けている。
かつて廃墟で発見された後に発覚した事だが、アリスは極めて高い身体能力を有している。本来は砲台として運用される予定で製作された本体重量140kgのレールガンを軽々と持ち上げるというキヴォトスですら類を見ない膂力。そして至近距離で発射されたレールガンの衝撃波を無防御で受けて尚意識を保つその頑強さに、そんな傷ですら数日経たない内に完全に塞がる驚異の自己再生能力を有したナノマシン。
その様を見たエンジニア部部長こと白石ウタハがアリスの正体を「極地での活動を前提に設計された戦闘用アンドロイド」と評価した。シャーレの先生として掲げた信念からして余り生徒に対して抱くべき考えでは無いのだが、それを知った時は流石にウタハの評価に納得してしまった。納得させるだけの判断材料を、天童アリスと言う名前を貰った機械仕掛けの少女は示してしまった。
だが、やはりと言うべきか起動したときに一切の記憶が無かった事と言い、拾われた先が戦闘行為が得意ではないゲーム開発部と言いアリスには戦闘における技術が殆ど存在しないと言っても良い。エンジニア部から譲り受けた携行武器としては余りにも巨大なレールガンの圧倒的攻撃力に全てを任せた戦闘スタイル。ヘルメット団やカイザーPMCのロボット兵士くらいならそれだけで容易に片付けられるが、学園内で上位に位置する実力者相手となればそれも話が変わってくる。
実例として挙げるならミレニアムプライスへ出品を終えたすぐ後、C&C部長の美甘ネルに吹っ掛けられた喧嘩と言う名の戦い。この戦闘においてミレニアム最強と名高いネルの機動力を重視した近接戦闘に対し手も足も出ないまま防戦一方を強いられてしまい、結局出せた策は自爆紛いの零距離砲撃だった。
「妨害を確認、充電失敗。」
だからこそ、圧倒的身体能力差のある筈のマキのタックルが通じるのは必然と言えば必然だった。タックルにより体勢を崩したアリスは構えていたレールガンを体ごと大きく逸らされ、リロード操作を中断させられる。
「よし、止まった!」
必殺の一撃を封じることに成功した事に声を上げるマキだったが、そこで終わるなら何の苦労も無かった。
「妨害要素を排除します。」
「えっ――」
それに気付いた時には既に遅かった。マキのタックルにより体勢を崩したと思われたアリスだったが、即座に体を立て直し、両手に握ったレールガンをその重量からは有り得ない程の速度で横薙ぎに振るう。スイングルートが狙うはレールガンのリロードを妨害したマキ。
「がっ!?」
全身を使って妨害を仕掛けたマキに圧倒的膂力を以て振るわれた鉄塊など反応出来る訳もなく、レールガンの砲身が彼女の全身を叩き、149cmと言う小柄なマキの体躯を吹き飛ばす。
最低限の防御も出来ずに吹き飛ばされたマキは一度も床にバウンドすることなく崩壊した壁の一部に叩きつけられて停止。同時に彼女の頭上に浮いていたヘイローが消失する。
「マキっ!!」
「妨害要素の排除を確認。プロトコル再実行、リロードを再開します。」
意識を手放したマキに駆け寄る同じくヴェリタス所属の3年生音瀬コタマを目にもくれず、アリスは再びレールガンのリロードを再開する。今度は妨害できる者も居ない。
「あ、あぁ・・・」
「せ、先生・・・!お姉ちゃんが、お姉ちゃんがっ!!」
ユズは絶望に染まった表情でアリスを見つめる事しか出来ない。その一方でミドリもユズ同じくらい悲痛に染まった表情で先生を呼ぶ。
「ミドリ、どうし――!?・・・も、モモイ・・・?」
ミドリの呼ぶ声にはっとして振り向くと、壁に叩きつけられ意識を失ったマキ以上に傷を負った双子の姉を抱えて座り込むミドリの姿があった。恐らく初撃のレールガンをもろに受けたのだろう。五体満足ではあるのは救いにもならない救いだが、明らかに不味い箇所から血を流している。
「リロード完了。」
だが、振り向いてしまった事が最大のミスだった。無感情の声が部屋に響く。
「アリス・・・っ!」
名前を呼べど全てがもう手遅れ。瞳に赤い光を宿したアリスは、充電と弾体の装填が終わったレールガンの照準を先生とミドリ、そしてモモイに定める。
「排除開始。」
無慈悲にも引き金が引かれ、真っ白な閃光が一同の視界を二度染め上げ――
「どけぇぇッ!!」
不意に自分の身体がどん!と強く突き飛ばされる感覚がした。いや、実際に突き飛ばされている。
(何が――)
だが、思考を挟む暇すらなかった。突き飛ばされたと思った直後に背後を通過する白き光芒。それと共に部屋の空気を打ち揺らす爆音。先生はよろけた姿勢で衝撃波の残滓を受け、床を転がっていく。
「ぐっ・・・PA張り損なった・・・ッ!」
最早廃墟と化した部屋に響く、マキでも、コタマでもハレでもなく、モモイでもミドリでも、ユズにアリスでもない第三者の声。痛みと体の乱回転で乱れる視界の中、先生だけではなくこの場に居た全員がはっきりとその声を認識する。
「だけど、間に合った。予感は当たっていた。・・・嫌な方にね。」
咄嗟に上げた視界に映るは背中まで伸びた灰銀色の長髪。辺りに漂う翠緑に輝く粒子。そして先生やミドリを庇う様に立ち、全身から凄まじい圧を放つ仁王立ち。
「どうして此処に・・・?」
思わず疑問が口から零れてしまう。目の前に立つ長身の少女は、先生の呟きに強く息を吐き、応える。
「C&Cの一之瀬アスナ程じゃないけど、私の勘も結構当たるのよね。・・・こんな風に。」
「い、イサネ・・・!」
標根イサネ。ブラックマーケットの頂点捕食者にして生きながら伝説と化した傭兵。万物の天敵とさえ呼ばれる少女が、自我無く暴れるアリスに対峙しながら、機械の如く無機質に整った顔立ちを不敵に歪めた。
いつもよりちょいとばかし短くなってしまって申し訳ない!
でも展開的にはここが丁度きりが良かったから渋々短くしてしまった。