前回文字数が普段よりも少なかったのにも関わらず投稿遅れて申し訳ございませぬ。
今ちょっとリアルが大変なので...(涙目)
あとちょっと今回駄文気味かもしれないっす。ご注意を。
え?普段からそうだろって?……聞こえないねぇ(屑)
(武器を持ってくれば良かった・・・)
初めて見た時とは打って変わり、全てにおいて生気を感じない少女に対し不敵な笑みを浮かべて対峙するイサネ。
「有機反応増加、攻撃失敗。」
「ははっ、ようやっと本性を現したか。自我の無い粗製AI風情が。」
淡々と事実を口に出す機械仕掛けの少女――天童アリスを口汚く罵りながら、周囲を見回して現在の状況を精査する。
(ふむ、負傷者は2名。赤髪の小柄な生徒と・・・確かゲーム開発部の、才羽モモイ・・・だったか?一応両者には付き添いが居るから気に掛ける事も無し。後動けるのは先生含めて3人。)
ぱっと見た感じ負傷者の二人はどちらもヘイローが消失している事から意識を手放している事は共通している。だが、負傷度合いを見ればそうはいかない。
(モモイ。かなり手酷くやられたね。恐らく、レールガンの直撃を受けたのかな?ったく、衝撃波がかすっただけでも痛いのに・・・)
対峙するアリスに気取られない様、イサネは意識を己が右脇腹に向ける。
「予想通りと言えば聞こえは良いけど、痛いものは痛い・・・し、単純に不快だ。」
「イサネ!その傷・・・!」
ぼそりと零したとほぼ同時に、自らが後ろに庇う先生がイサネの容態を見て声を上げる。イサネの右脇腹はその陶磁器の如き珠肌を隠していた白のワイシャツがそこを中心に破れ飛んでおり、そこから露出する肌は傷口から流れる朱によって気味悪く彩られている。
(OBとPAは反比例の関係・・・OBを使えばPAは減衰し、PAを維持しようとすればOBは使えない。だからこそこうしてレールガンの一撃を貰ってしまった訳だけど・・・)
場に乱入し、レールガンの砲撃から先生を庇った時、イサネはキヴォトスに流れ着いてから原理不明で使えるようになったネクストの機能の一つであるPAことプライマルアーマーを展開しなかった。PAを張った状態でレールガンの砲撃を受ければかなりの威力減衰が見込めたのだが、そうしなかった理由には主にプライマルアーマーとイサネが地上から高さ数m以上もあるミレニアムタワーの一角の部屋に辿り着く為に用いた移動手段との関係性にあった。
オーバードブースト。普段は略称でOBと呼ばれるネクストに備わった基礎機能であり、一瞬で急激な起動を可能にする
イサネはこのOBを地上から高さ数m以上あるこの部屋への直接移動に使ってしまった為、発射されたレールガンの砲撃をPA越しではなくそのまま受けてしまったのだ。
(そういえば先生にはあのよく分からないバリアみたいなのがあるから庇う必要は無かったか?)
ミレニアムプライスの数日前の旧校舎にて先生が見せた不可解なバリアの様なものを思い返しながら、ちらりと目の前の少女を見やる。
「損傷を確認。攻撃続行、リロード開始。」
イサネが視線を向けた先に居た少女はあくまでも淡々として言葉を放ち、攻撃準備を始めている。それがただの現状確認なのは理解しているが、理解と苛立ちはまた別の話だ。
「・・・まずはその音声機能からだな。殺戮兵器には不要でしょう?」
そして苛立ちと同時に闘争心にも火が付く。適当な戯言を言うが早いが、イサネは瓦礫塗れの床を蹴り、アリスへと突撃する。半ばで引き絞った右腕が狙うはその頭だ。
「妨害を確認。対処を――」
一方のアリスもレールガンのリロードを中断し、イサネを迎撃すべく手に持った長大な砲身をその突進に合わせて振るった。
――振るったのだが、
「力任せで技量も無いのか。」
アリスとて先程の攻防でリロードの隙を狙った攻撃の対処プロセスは完成していたつもりだった。長大で重厚なレールガンの砲身は超重量級の鈍器にもなり、砲撃の射程の内側に入ってくる敵への対処手段として非常に有用だと。だからこそイサネの突撃に合わせてリロードを中断したレールガンの砲身を横薙ぎに振るったのだが、そこで彼女にとって不可解な出来事が起きた。
「所詮は
アリスから見て右側に構えたレールガンを右から左へスイングしたのだが、どういう訳かスイングの初めの段階で既にスイングルートはおろかアリスの視界にすらイサネの姿は無く、直後にその視界が大きくぶれる。
「機体損傷を確認。損傷部位、頭部。」
そして明確に機械仕掛けの体に損傷が発生する。と同時に身体が何かに強打される。手に握っていた筈のレールガンの取っ手の感覚は既に無い。
「そろそろ黙れ。自立型ネクストは喋らなかったぞ。」
聞こえた声の方向を見れば、そこにはイサネが倒れる形で立っていた――否、自分が倒れている。床に足を着き、立っているのはイサネの方だ。
「たい――」
「喋んなって。」
状況を認識し、体を起こそうとしたアリスだったが、それよりも早くイサネの足がアリスの頭に叩き込まれる。言わば踏みつけだ。
「その口は要らないだろう?不要な機能は全て外してから焼却炉か破砕機に連れてってあげる。感謝して・・・あぁ、口が無くなるから意思の疎通も出来ないんだったな。」
現状認識の為の言葉を紡ぐ事すら出来ない。豪雨の様にアリスの頭部に降り注ぐイサネの踏み付けががんがんと音を立て、部屋に反響する。そして次に頭部に落ちていたイサネの足が胴や足、腕にも打ち込まれ始め、僅かな抵抗すらも許されない。
「い、イサネ!アリスは――」
知り合い程度の関係性とは言え・・・と言う言い訳すらも意味を成さない余りにも一方的で、そして容赦も情けも無いイサネの攻撃に、先生は思わず声を上げる。
「先生。今のこいつはアリスじゃない、予測演算も碌に出来ない粗製AIだ。・・・そんな事よりも何か銃器は無い?」
「や、やめて・・・」
「い、イサネさん・・・アリスは・・・っ!」
が、やはりと言うべきかイサネにはその思いの欠片も届かない。それは意識の無いモモイを抱えるミドリやユズ、
「なんてことを・・・」
「いくら暴走しているとは言え、ここまでするなんて。」
ひいてはヴェリタスの二人も同じことだった。
「ぱ・・・パターン、か・・・いせ、き・・・かん・・・りょう。」
――だが、
自我の無い機械人形は止まらなかった。キヴォトスの人間ですら既に後遺症が残るレベルの打撃を頭部を中心とした全身に受け続けても尚、そのパターンを解析し、反応する。上手い事腕への打撃を避け、踏み付けを迎撃するべく腕を構える
「ちっ、流石に壊し切るには威力が足りないか・・・」
しかし、まだイサネの方が一枚上手だった。落とされる足を掴もうと動くアリスの両手を避け、顔ではなく腹――それも人で言う所の鳩尾に当たる箇所に右足を打ち込み、そのまま右足を力点に後方へと跳躍する。
「機体損傷率・・・16%。ナノマシンによる修復で対処可能と判断。」
「さて・・・どうするか。」
ゆらりと起き上がるアリスを見ながら、イサネは次の展開を構築していく。どう仕掛けるか、それともどう迎え撃つか、相手はどう動くのか、自分の居る立ち位置など、あらゆる情報を整理し、どうすればこの壊れた機械を止められるかを模索する。
(何はともあれ、負傷者の存在は邪魔ね。まぁ仕方の無い事では無いんだけど。)
一通り思考を纏め、イサネは指示を出すべく視線はアリスに向けたままに口を開く。
「・・・先生、取り敢えず負傷者をこの場から運び出して。巻き込みかねない。あと何でもいいから銃火器は無い?流石にレールガン相手に素手はちょっと。」
「わ、分かった。武器だね、何とかしてみる・・・けど、今君が対峙する子は何処まで行ってもアリスなの。だから・・・」
ゆらりゆらりと再びアリスとの距離を縮めていく傍ら、先生と言葉を交わすイサネ。先生の言葉に善処の意を返す。が、
「先生の言いたい事くらい理解してる。ただ、あの頑強さから見るにかなり攻撃を加えないと止められそうに・・・って、そうだよなぁッ!!」
「リロード完了を確認。充填開始。」
そのタイミングでアリスが動き出した。床に横たわるレールガンへと駆け寄り、再びそれを手に持ったアリスはレールガンの電力を溜め始める。それを見たイサネも言葉を切り、アリスへ向かって駆け出す。
「妨害要素の排除を開始。」
イサネの接近により再び振るわれた砲身。だが、今度はそれを避けず、咄嗟に上げた左腕で超重量の戦槌の如き衝撃を受ける。
「しぃッ!!・・・いっつぅ・・・」
いくらイサネがリンクスとしても過剰なくらいの身体強化を施された強化人間とは言え、重量にして140kgにも及ぶ巨大な鉄塊による打撃を左腕のみで受け切るのは中々に無理があった。結果として吹き飛ばされこそしなかったものの凄まじい激痛と共に左腕に感覚が麻痺、更に体勢も崩されかける。が、それはイサネの思惑通り。
「でもこれで直接砲撃は出来ないよねぇ?・・・先生!皆!早くしろッ!次がいつ来るかなんて分からないぞッ!」
自分が無理矢理レールガンの砲撃を塞ぎ、生徒達と先生が退避するまでの時間を稼ぐ事こそが防御の択を取ったイサネの狙い。感覚が消えた左腕とそれを支える右腕でアリスの理外の膂力に逆らいながら、イサネは叫ぶ。
「イサネ、ありがとう!すぐに戻ってくるから!」
「ならそのまま増援呼んで来い!このままだと私こいつの事殺すぞ!」
負傷者を抱え、そそくさと退散していく一同を余所に、イサネは徐々に押されつつある自身の左腕に苦難の表情を浮かべる。
(本当に身体能力だけなら常識の外だな・・・身体能力だけならっ!)
そのまま弾き飛ばされそうな左腕に無理矢理力を掛け続け、レールガンの銃口を逸らし続ける。そうして耐える事数秒、先生を始めとした負傷者二人が付き添いも合わせて退避した事を気配で察すると、イサネは即座に左腕に自らの重心を掛けてレールガンの砲身を押し返す。
「っ!?」
無感情ながらも僅かに動揺を露わにした少女を模した機械人形の顔を余所に、イサネは砲身を弾いた事で左に捻られた上半身に合わせる様に回し蹴りを放つ。両腕をレールガンの保持に集中し、そのレールガンを大きく逸らされたアリスに回し蹴りを防ぐ手段は無い。
見事なフォームで放たれた回し蹴りは寸分違わずアリスの左側頭部に直撃、再びアリスの視界を大きく揺らす。そしてイサネは回し蹴りに使った右足をそのまま横に振り抜くのではなく、斜め下に振り下ろす。
「倒れろっ。」
イサネの言葉と共に再び床に叩きつけられる機械の体躯。だがまだその左手にはレールガンが握られたままだ。
「発射――」
「させねぇッ!」
倒れても尚レールガンの取っ手を握る細い手を体重を掛けて踏みつけ、無理矢理に引き剥がす。
(よし、引き剥がせた。後はこいつのどこかにある機関部を――)
いくら頑丈とは言え核を破壊されてしまえば機能を停止するというのはどの機械、ひいては生物も同じ事だ。
なのでイサネはアリスを動かす核を探す時間を稼ぐ為、一時的にノックダウン――機械で言う所の機能不全状態を引き起こすべく未だ自由の利く右腕を振り上げた。
――正にその時だった。
「排除プロトコル・・・実行。」
(なんだと?)
小さな、しかしはっきりと聞こえた実行の声。振り上げた右腕が一瞬止まり、視線が逸れる。そしてそれがこの場におけるイサネの最大の失態となった。
(レールガン!?引き金を引き切っていたのか!?)
床に落ちたレールガンの砲口には既に底は白い光が充填され、臨界を超えて解き放たれようとしている。そしてなんと不運な事か、発射直前のレールガンの砲口はアリスとイサネの二人を捉えており、更に超至近距離。弾そのものはとにかくとしてそれに伴う衝撃波は最早避け様が無い。
(何処でそんな隙を晒した!?一体いつ・・・!)
己が失態に自責する暇もない。大量に放出されるアドレナリンによって極限まで遅くなった時間の中、イサネは半ば反射で射線上から退避せんと床を蹴ろうとするが、手遅れ。
「くそったれが――」
――閃光。
真なる使い手を失った【光の剣:スーパーノヴァ】から放たれた光が、イサネとアリス、二人の視界を白く染め上げる。
「がッ――!」
そして同時に身体が引き裂かれんばかりの衝撃。上げた呻き声すらも音を超えた速度で射出された弾体が巻き起こした
衝撃波に飲み込まれた体が風に吹かれたちり紙の様に吹き飛び、派手にバウンド。重度の前後不覚に陥り碌に視界も見えないまま、体のあちこちを打ち付けながら壁に激突。幸いミレニアムタワーの構造材が頑丈だったのと、イサネが叩きつけられた場所が構造の支柱となる柱で特別頑強だった故に崩壊が起きずには済んだ。
「う・・・ぐ・・・っ。」
だが、レールガンはレールガン。それをもろに喰らっている以上崩落云々などという二次被害など最早は些細な事だ。イサネは叩きつけられた姿勢のまま、全身を襲う激痛に耐える事数秒。
(い、いや、引き金が引かれていたなら、私があれを床に倒す前に撃たれていた筈。という事は、引き金を引かせたのは私か?)
一瞬で消し炭にされた体力を回復させつつ、イサネはつい今さっきの己が失態を思い返す。
(恐らくレールガンから手を引き剥がす時に踏ん付けた時かな。確かにやろうと思えば引き金は引けたから・・・まぁ、そういう事だろうな。)
「・・・つく、づく、思うけど・・・鈍った・・・なぁ。」
まだ息も絶え絶えの状態だが、これ以上敵に隙は晒せない。痛む体に鞭を入れ、イサネは煙の中起き上がる。
「機体損傷率、59%、四肢の欠損は無し。戦闘続行可能。排除対象・・・反応あり。」
若干ふらつく足でアリスの姿を探すイサネだが、案外早く見つかった。
「・・・排除開始。」
瓦礫の上に立つイサネの正面。体の至る所に擦過傷を負った小柄な少女が、いつの間にか拾ったレールガンを手に、こちらに近づいてくる。
「・・・」
イサネ自身、レールガンの砲撃により体に負った被害はキヴォトスに来てから最も大きい。もし自身にヘイローが無ければ確実に体が消し飛んでいただろう。が、アリスもアリスで無事では無かった。身長152cmの小柄な体に纏ったミレニアムの制服は所々が破れており、そこから見える肌の一部には穴が空き、中から明らかに機械の物と思われる色が見え隠れしている。
(死に掛けはお互い様か。向こうはレールガンに対しこっちは護身用で買ったキャンプ用のナイフ一本。けど―――)
状況は互角――否、武器が無い分イサネの方が武器差で幾分か不利。何なら相手には痛覚機能すら切断出来る機能も想定出来る為更に不利状況。だが、
―――こちらとて、既に火は灯っている。
「あっははは・・・っ!」
全てを押し退ける様に、かつては人類種の天敵――今や万物の天敵と称された少女は笑う。
(ははっ!あは、はははははっ!?久しぶりだこの昂揚!丁度セミナーからの依頼で保管庫を防衛した時以来だッ!はははははッ!)
イサネの中で眠っていた闘争本能が完全に目を醒ます。丸めていた体躯を即座に起こし、爛々と輝く瞳に殺意を宿す。口を開き、哀れな被害者の血で鍛えられた凶刃の如き牙を見せる。数日前にヴァルキューレの汚職を暴いた時とは訳が違う、文字通り完全な覚醒だ。
「ひゃはッ!?ははっ!あひゃひゃひゃひゃッ!!?」
形勢不利も、体の負傷度合いも、体力の消耗具合も、その全てが最早どうでも良い。ただただ目の前の全てを殺す。極限まで単一化された思考の中で、イサネは目の前に対峙する機械人形を破壊すべく、考えるよりも早く動き出す。
「対象の――」
「あっはははははッ!?死ねよぉッ!!」
イサネはアリスとの僅か数mの距離を1秒以下の時間で喰い潰し、その顔に槍の如き跳び蹴りを見舞う。ぱぁん!と肌を叩く音が甲高く木霊し、アリスの小柄な体躯が手に持ったレールガン諸共真横に吹き飛ぶ。
(ははッ!今回はコジマ粒子無しだ!コジマ粒子無しで終わらせる!)
周囲の電子機器を薙ぎ倒しつつ、まだ生きていた壁に叩き付けられるアリス。その後体勢を大きく崩しながら床に着地するが、既にイサネは開いた距離を詰めており、追撃の右膝がアリスの鳩尾に深々と突き刺さる。
「まぁハンデなんて、ガラじゃないけどねぇッ!あーっはっはっはっはっはぁーッ!!」
人としての最低限の理性すら消え失せた狂笑を顔に張り付け、雄叫びの如き笑い声を上げながら、イサネは右手でアリスの首を掴み上げ、全身の力を使って床に叩きつける。小柄な体躯が子供の癇癪に巻き込まれた玩具の如く床に叩きこまれ、凄まじい轟音と共に周囲を地震と錯覚させんばかりに揺らす。
「うわっ!地震!?こんな時に!」
「いえ、この揺れは地震ではありません。恐らく彼女が。」
形骸化した部屋の外から先生の声と複数の足音が聞こえてくる。どうやら増援を連れて来てくれた様だが、最早イサネにとってそんな事はもうどうだっていい事だ。イサネは床にうつ伏せで動かなくなったアリスの背に左膝を乗せてしゃがみ込み、彼女の首筋を覆う黒の長髪を払う。
今自分の目の前で遂に動きを止めたこの機械人形に止めを刺す事であり、何を差し置いてでも為すべき事だ。ついさっき先生に何か言われた気がしたが、記憶に無いなら考える必要もない。イサネは張り付けた様な歪の笑みを浮かべたままスカートの内側に手を突っ込み、布生地の裏側に仕込んでいたナイフを引き抜く。
「いれ――イサネ、何を取り出して・・・?」
「はは・・・っ。」
詰めていた息を吐き出し、逆手に持った刃渡り15cmのキャンプ用のナイフを振り上げる。ナイフの狙いを漸く意識が消えたと思われるアリスの首に定め、グリップを緩く握り直し、ナイフを持った腕に力を込める。
「あれは・・・不味い!急いでイサネの事を止めないと!あのままだと・・・!」
「くそっ!ここからじゃ間に合わねぇッ!!」
「一か八かの賭けに近いが、ここから狙ってみる。」
先生達の声が近づいてくる。だがもう遅い。イサネはその声の一切を無視し、振り上げたナイフをその細首目掛けて一息に振り下ろし――
――ガァン!
重厚な銃声が辺りに反響し、振り下ろそうとしたナイフを握る手に衝撃が走る。グリップを緩く握っていた為にイサネはその衝撃を抑え込む事が出来ず、ナイフが手から弾き飛ばされる。だがイサネの体の何処にも、それどころかアリスの体にすらも銃弾が着弾した様子はない。
(ナイフだけを狙った・・・?)
手から離れたナイフが金属音を立てながら床に落ちるのを目にもくれず、イサネは銃声と気配の方向に殺意の籠った視線を向ける。
「最短経路を辿って何とか間に合ったか・・・!」
「イサネ!」
銃撃の犯人など推測する必要すら無い。半ば確信の中振り向いたイサネの視界に映ったのは先生と先頭にC&Cのエージェント4人、それといつの間に来ていたのか移動可能なセントリーガンを連れたウタハの計6人だ。
「ひははっ、邪魔が入っ・・・うん?」
完全に
(つい久しぶりの昂揚に身を任せてしまったけど・・・やらかしたか?これは。)
復活した理性で改めて周囲の悲惨な有様と悲惨な損傷を負い床に倒れるアリスの姿を確認し、もしや殺してしまったかと思考する。
「・・・い、生きてるよね?あ、アリスは機械だから生きているじゃなくて稼働しているかか?」
「そういう問題じゃないと思うが。」
周りの状況を理解したイサネは己が失態を誤魔化すべく取り敢えず口を開くが、イサネがアリスの止めを刺そうとしてしっかりと阻止された様を見ていたウタハにすっぱりと切り捨てられる。
「殺すなって先生に言われてたのをすっかり忘れてた・・・さっきの銃撃が無かったら普通に止めを刺してたよ。」
「ならカリンに感謝すると良い。君の凶行を止めたのは彼女の射撃だからね。」
「凶行って・・・くそ、何も否定出来ない。」
既に何十億と殺しておいて今更一人の殺傷程度で凶行など・・・という本当に今更な事は脇に置いておく事にし、イサネは一先ず現状の把握に努めるべく意識を向ける。
「言われた通り連れてきたが・・・あんまり意味は無かったか?」
「いえ、そうでもないでしょう。確かにイサネさん一人でどうにか出来たようですが、彼女自身かなり酷い傷を負っています。犯人は・・・言うまでも無さそうですね。」
「まぁ良い。先生、詳しい事情を教えてくれ。ここで一体、何があったんだ?」
ネルに説明を要求された先生は、内部部品が見える程損傷したアリスの介抱を行いつつ事情説明を始める。
「何処から話そうかな・・・うーん。今日はゲーム開発部に呼ばれてミレニアムに足を運んだの。
それで――」
簡易的に、しかし分かり易く丁寧に事の経緯を放す先生。勘でここまですっ飛んできたイサネも先生の話に耳を傾ける。
――が、
「あ、アドレナリンが切れたっぽい・・・ぐぅっ。」
「イサネ、その傷は・・・!」
「大丈夫・・・ではなさそうだね。まぁ本来は砲台用に設計したレールガンの砲撃を受け止めて尚立って居られる事自体普通におかしいんだけどね。」
痛みに思わず呻き声を上げた事により一同もイサネの酷い惨状を目にしてしまう。
「先生庇った時とさっきしくじった時の二回よ。あれを受けたのは。」
「・・・本当に冗談みたいに頑丈だね、君は。先生、取り敢えず事情説明は後にしよう。今はアリスとイサネの介護が優先だ。・・・肩を貸そう。支えは一人で十分か?」
「そうだね、アリスもまだ息があるみたいだし。そっちを先に終わらせようか。」
ふらついた体をウタハの肩を借りる事で安定させ、イサネは最寄りの医務室へと連れられて行く。
「いくら体を使った戦闘自体経験が少ないとはいえ・・・はぁ、本当に鈍った。」
「君の実力は模擬戦で見たが・・・あれでも鈍ったと言うのか。」
「鈍ったに決まってるでしょ・・・あの時の感覚のままなら、もっと早く終わってた筈だから・・・あぁもうっ!」
――突き付けられた己の腕の錆び付きに、苛立ちを感じながら。
そう言えばこれ書いてる時にふと思いついた事があるんですよ。
ガンギマリーならぬガンギマリンクス、……殺意がガンギマリンクス
‥…ごめんなさいやっぱり何でも無いです。