なんか細かい戦闘描写入らなくなっちゃった。
それよりも前話最後でイサネさんが先生に向けて撃った狙撃、アロナバリアで完全に無力化されるから意味無くね的な意見はごもっともなので何も言えないのですが、展開的なあれなのでユルシテ...ユルシテ...
またはそれしか思いつかなかった作者の発想力の無さが...ウッウッ...
「やはり、私達が作ったスピーカーは響きが良いな!」
「そういう意味のスピーカーだったの!?」
アバンギャルド君と言う名前とそのださすぎる外見とは裏腹に冗談みたいな正面火力とこちらの射撃を弾く装甲に生半可な攻撃を全て遮断する防御アルゴリズムという攻守共に高いその性能を前に、危うく敗北を喫しかけた先生一行。
「まぁまぁ細かい事は置いておきましょう!とにかく、これで・・・!」
だが、ヴェリタスの部長代理こと各務チヒロと、リオのマークに無かったトレーニング部の部長乙花スミレの思いもよらぬ救援により、アバンギャルド君の弱体化に成功。更にはスピーカーとと言う音響装置の名を被ったエンジニア部の切り札により、アバンギャルド君の撃破に成功した。
「うん、やっと倒せたね。」
「やったぁ!倒したよ!」
「いやぁ・・・強敵だったね、アバンギャルド君。やっぱり手数が多いっていうのはそれだけでアドバンテージだね、本当に。」
思いもよらぬ強敵の撃破と絶体絶命のピンチを切り抜けた事による喜びを分かち合うゲーム開発部とエンジニア部。それは勿論先生も同じだ。まだアリス奪還作戦の途中なのでここで終わりではないのだが、少しくらい喜んでも良いだろう。
「・・・皆の力を合わせたおかげで、た、倒す事が出来ました。」
「そうだね、何と言うか・・・」
「レイドボスの討伐に成功した時、みたいな!」
モモイの表現もあながち間違いではない。少なくともゲーム開発部、エンジニア部、ヴェリタス。そして救援に現れたチヒロとスミレ。そのどれか一つ欠けただけでもアバンギャルド君に勝つ事は叶わなかっただろう。
『皆お疲れ様。でも、本番はこれからだよ。』
だからこそなのだろう。強敵の撃破に少し心が大きく――言ってしまえば油断していたのかもしれない。障壁を一つ突破したと、囚われの勇者に一歩近づいたと。
『まだ鏡でネットワークを維持出来る内に移動しないと。取り敢えず――』
――その可能性と脅威に気付けなかったのは。
『先生!飛翔体1!先生に向かって真っ直ぐ――銃弾!?』
手に持った
「え――」
先生にしか聞こえない声に従い振り向く。が、並の人間程度の反射神経しか持たない先生がそれに気付いた時にはもう遅い。
『退避間に合いません!防護フィールドを展開します!!』
口径14.5mm、長さ114mmと言う明らかに人に向けて良い物ではないサイズの銃弾が、先生の左胸、皮膚の内側にある心臓に向けて空間を引き裂きながら飛翔し――
―――不可視の空間の歪みによってその軌道が捻じ曲げられる。
アロナが展開したシッテムの箱の機能の一つ。持ち主の周囲に不可視の空間の歪みを生み出し、持ち主に迫るありとあらゆる脅威をあらゆる物理法則を捻じ曲げて防ぐ超常の防壁。
「ッ!!?」
「先生ぇッ!!」
いきなり自身を狙った銃撃に声も出せない先生に、モモイの絶叫が重なる。が、幸いシッテムの箱、ひいてはアロナが持つ防壁によって銃弾の軌道は衝撃波ごと捻じ曲げられ、先生より1m後方へ着弾。金属床やコンクリートを破砕し、5cm程のクレーターを生み出す。
「先生っ!大丈夫っ!!?」
「う、うん。私は大丈夫だよ。でも、どこから・・・?」
「恐らく狙撃の類だろう。先生、とにかく遮蔽の多い所へ避難しよう。このままだと狙い撃ちにされる。先生の事だから銃弾に対する対策の一つでも持っているのだろうが・・・何度も同じ手を使い続けるのは得策とは言えない。」
ウタハの言葉もあり、一行は大通りから遮蔽の確保できる脇道へと退避する。
「先生、傷は無い?」
「ヒビキ、あれは恐らく対物ライフルに使われている大口径のライフル弾だ。先生がそれを受けようものなら上半身が吹き飛んでいただろう。」
「で、でも一体どこから・・・?」
銃撃を受けた先生の容体を確認するヒビキとウタハに、どこから撃たれたのか、遮蔽となる脇道の中から辺りを見回すコトリ。
『・・・不味い事になったね。』
『今ネットワークからエリドゥの監視カメラをハッキングして近場の銃撃地点を洗ってるけど、どこにも狙撃手の姿はありません。恐らく、長距離の狙撃かと思われます。』
先生が突如として攻撃された事にヴェリタスも黙っていない。鏡によるハッキングを利用して近場の狙撃ポイントを片っ端から洗うが、そのどこにもそれらしき人影はない。
「しかし、先生を直接狙ってくるとは・・・一体誰が・・・?」
そして何より一同を混乱に陥れたのはその狙撃が明確に先生を狙っていたという事。ヘイローを持たない体である先生がキヴォトスに来てからというもの、生徒を始めとしたキヴォトスの住人の間で銃撃戦において先生を狙わない事は半ば暗黙の了解としてほぼ全域に認知されており、戦闘指揮を執っている時でも先生を直接狙う者は居ないと言って良い。
――極々一部の、非常に稀有な例外を除いて。
『近場に居ないなら、タワーから・・・?でもタワーからここを狙うとなるとかなりの腕が要求される筈だし、何よりそんな事が出来るのはミレニアムでもC&Cのカリンくらいしか・・・』
チヒロの言う通り、ミレニアムで狙撃手として真っ先に名が上がるのはC&Cのエージェントことコールサイン02こと角楯カリンくらいだが、彼女は先生側としてリオの腹心であるトキの陽動に従事している為、まず違うと言って良いだろう。何より、カリンは先生を直接狙ったりはしない。
「一体誰が・・・それに、どう切り抜けるか・・・」
『それに、エンジニア部の皆ももう駄目そうだしね・・・』
「え?」
先生が必死に考える中、マキの指摘により既に体力を使い果たしているかの様に地面にへたり込むエンジニア部の三人の姿が視界に映る。
「え、ちょっと、大丈夫!?」
「・・・あの瞬間、スピーカーを設置するまでは良かったんだが・・・」
「い、インドア派には余りにも無茶な動きをしてしまい・・・」
「・・・もう指一本動かせない。」
どうやら先程のアバンギャルド君との戦闘で体力が限界を迎えた様で、誰がどう見ても足手纏いと化しているエンジニア部。
「申し訳ないが見ての通りだ。最後まで同行できないのは面目ないが、私達はここでお別れだ。」
「ううん、大丈夫!助けてくれてありがとう!さっきのスピーカー、とっても格好良かった!」
だが、そんなエンジニア部に掛けられたモモイの言葉は、この場に居る一同の総意だ。ミレニアムプライスの時から二度も手を貸してくれ、今こうしてアバンギャルド君を見事に撃破してのけたのもまたエンジニア部だ。
「・・・だが、狙撃される先生達を前にこのまま脱落と言うのは少しばかり助っ人としての矜持に触れる。あともう少しだけやらせて欲しい。・・・ヒビキ、コトリ、やれるかい?」
「・・・部長の言いたい事は分かった。やろう。」
「既に走れるかどうかというラインですが・・・Noと言う選択肢はありませんね!」
最後のスタミナを振り絞る様に立ち上がったエンジニア部。
「い、いや大丈夫。皆はもう十分やってくれたと思うよ。だから今は・・・」
「今は?相手の狙撃手に補足されている状況で、目の前に居る先生達をただ座って見送る事は出来ないね。・・・狙撃は私達が囮になる。その隙を突いて抜けてくれ。」
「それは・・・」
「お願いだ先生。最後くらいは私達だけの見せ場も作らせてくれ。これではマイスターの名が泣いてしまう。」
生徒を陽動ではなく一方的に撃たれる的にする事に良い顔をしない先生だが、ウタハを始めとしたエンジニア部の決意は固い。それを見て先生も覚悟を決める。
「いくら貴方達が銃弾を受けても問題無いとはいえ、絶対に無理をしない事。それが守れるなら良いよ。」
「勿論だ先生。囮とは言え敵の攻撃に無理に当たりに行く必要は無いのだからね。」
「い、今の私達に攻撃の回避が出来るかは分かりませんが・・・!」
先生の囮の許可を貰ったウタハ達は、モモイに何かを託すとなけなしの体力をかき集め、三手に分かれて路地裏から大通りとは反対側へ飛び出す。
「こっちだ!撃って来ると良いっ!!君達のアバンギャルド君を倒したのは私達だ――ぐぅッ!!?」
「部長ぉッ!?ちょっ、ちょっと、余りにも狙いが正確過ぎませんか――ひぃぃっ!?」
「・・・先生、早く行った方が良いかも。狙撃の狙いが正確だし速い。」
「・・・うん、皆の犠牲、絶対に無駄にはしないよ。」
ウタハが遮蔽から飛び出したその数秒後、彼女の左肩に一筋の火線が直撃。その身体を大きくノックバックさせる。遅れて飛び出したコトリとヒビキにもウタハと同様に無慈悲な火線が1発、2発を撃ち込まれ、限界まで疲労した体を更に打ち据える。
「ウタハ先輩っ!」
「お姉ちゃん!走るよ!」
「無事で居てね、エンジニア部の皆・・・!」
体力切れの上に対物ライフルという凡そ人に向けて良い物じゃない代物での狙撃を一方的にその身に浴びるエンジニア部の面々という惨い絵面に背を向け、ゲーム開発部と先生はエンジニア部とは反対、大通りへと駆け出す。
「狙撃がウタハ先輩達の方に集中してる・・・」
大通りへ出ても狙撃が飛んでこない辺りウタハ発案の囮作戦は成功したらしい。後は対物ライフルの銃口に狙われたエンジニア部に大事が無い事を祈りながら進むだけ。
『うわぁ・・・凄い撃たれ方してる・・・』
「マキ!今はそんな事言わないで!」
『エンジニア部の皆さんには囮の成功を伝えてはいるんですが・・・凄い根性ですね。』
ヴェリタス曰く囮の役目は最後まで完遂するつもりらしいエンジニア部。道を作ってくれる事は確かに嬉しいしそれしか現状手立てが思い浮かばない以上その役割を買ってくれるエンジニア部には感謝しかないのだが、やはり己の信条のせいか生徒の命を危険に晒す様な事をさせるのは本当に良い気分じゃない。
――イサネさん!?大丈夫ですか!?せ、先生、イサネさんの動きが・・・!
――なんだって?イサネ!聞こえる!?今すぐそこから離脱するんだ!
――イサネさん!お願いします、動いて下さいっ!そこに居たら、捕まってしまいます!!
――イサネ!イサネ!!くっ、作戦に無茶が生じてでも囮の提案を退けるべきだったかっ・・・!
アビドスの砂漠に立つ要塞を前に、陽動の為に孤立無援の敵中に一人飛び出したイサネを見守る事しか出来なかったあの時の様に。
「イサネ・・・?」
同時に思い返すのは無線越しに聞こえた彼女の嗤い声。必死に無線に呼び掛ける先生とオペレーター役の生徒の声を嘲笑うかの様に聞こえ続けた、心の奥底の何かを揺らすタガの外れた笑い声。その声の主。貨物列車に乗り込むぎりぎりまで通話を掛け、結局その1回とて通話に出る事の無かった彼女。
「まさか――」
先生とて信じる信じるとだけ口にして負の可能性を頭ごなしに否定し、一切考慮に入れない馬鹿ではない。戦場においては自分達が負ける可能性と戦闘の半ばで自分が銃撃される可能性だって十分覚悟しているし考慮もしている。
『先生!再び狙撃です!』
「分かってる!皆、物陰に隠れて――!」
故に、二度目のアロナの警告と同時にこうして退避行動に移る事が出来たのは決して運が良かったとか、第六感だとかの数値化出来ないものが働いた訳では無かった。今の状況と過去の類似した状況が重なり、結果としてこれまでのピースが綺麗に組み上がった故の反応だ。
――そう、医務室に居る筈のイサネが電話に出ないのも、狙撃の銃弾が先生を直接狙ったのも。
幸い銃弾は誰の事も狙いに入っていないかの様にモモイの足元に着弾したが、エンジニア部の体を張った囮の効力は思ったよりも早く消えてしまった。
『狙撃手にエンジニア部が囮である事を察知された様です。ですが、こちらも相手の狙撃位置の特定に成功しました。』
「本当に!?流石ヴェリタス!」
辛うじて遮蔽となるビルの物陰に転がり込んだゲーム開発部と先生。
『囮となったエンジニア部にあれだけ撃ち込んだんです。それだけの射線があれば特定なんてそう難しくはありません。狙撃位置は中央のタワーの中層階に居る筈です。誰かの特定はまだ出来ていませんが――』
狙撃位置の特定を終わらせたコタマは、一同に狙撃手が居る場所を告げ――
『特定お疲れ様ぁ~!いやぁ、ミレニアムの誇る精鋭ハッカー様の情報戦能力は素晴らしいね!』
リオが通信に割り込んだ時とは異なる、都市の至る所に隠れるように設置されている音響設備からの声が先生の居る周囲に反響する。妙に元気な、既に聞き慣れた声。恐らくこの場に居る誰もがその声を聞いた事で狙撃手の正体が誰なのかに気付いただろう。
「・・・イサネ。」
『おっ、先生ー!一昨日ぶりだねぇ、元気にしてた?』
声の主――標根イサネは、普段よりも数段明るい声で、軽く笑った。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
『イサネ。先生とのお喋りは構わないのだけれど、先生の足止めはそれくらいにしてトキの方の離脱支援に回って頂戴。』
「え、もしかしてやられた?」
タワーの中層。リオの指示によりアバンギャルド君の撃破を成し遂げた先生達の進行阻害の為、
『やられた訳ではないけれど、ネルと一対一の状況で押され始めたわ。それにどういうからくりなのかは知らないけど、都市の構造を変えて閉じ込めたC&Cの他メンバーも合流してしまったわ。』
「やはり一度見せてしまうと予測演算も害の無い程度の身体強化も通じなくなるか。了解、出来るだけやってみようか。」
『申し訳ありませんイサネ様。』
「格上相手によくやったとは思うよ。そもそもあれに生半可な状態で勝つのは不可能だ。」
別に謝る必要も無いのにわざわざ自分にも己が失態の謝罪をするトキを受け流しながら、イサネはquid est paxの銃口の先をネルの頭部に合わせ、即座に引き金を引く。
『イサネ・・・いくら電話を掛けても出なかったのと、医務室に居なかったのは既に貴方がリオの方に着いていたからなんだね。』
「それは単純にスマホをあの医務室に置いてきちゃったからだね。一昨日の夜の時点でもう医務室に居なかったし。・・・ちょっと悪いことしちゃったね。」
勿論先生との問答も忘れない。コッキングを行う傍ら、リオから借りたエリドゥの音響設備の一部を使ったマイクをONにし、口を開く。
『おいッ!逃げんじゃ――』
『リーダー!上!』
『うぉあっ!?なんだ!?』
『狙撃手だ。狙撃手が居る。それもかなり腕の良い。』
コッキングを終え、即座に引き金を引く。スコープ先に居るネルはほぼ反射神経のみで銃弾を回避しているが、トキの追撃は諦めざるを得ない状況には出来ている。
『イサネさん!なんで会長の味方をするの!?イサネさんも、アリスは魔王だって言いたいの!?』
「いや別に?そもそも魔王とか勇者っていうの、人が決めた善悪の境界の一つでしょ?私そういうのあんまりよく知らないし。」
狙撃の精密さよりも数を意識してトキの離脱支援を続けつつ、ゲーム開発部と先生との問答も繰り広げる。
『ならどうして――』
「ミレニアムの生徒会長調月リオに、天童アリス抹殺までの護衛、ひいてはここエリドゥの防衛を依頼されたから。別にアリスの命がどうなろうと知ったこっちゃないね。」
『アリスちゃんの事を何だと思って・・・!』
「再現度の異常に高いAIか、ゲーム開発部の部員。・・・あのね、私は傭兵バイトだよ?仕事を依頼されて、それを受諾したからここに居るの。だから依頼主であるリオの思惑なんて知る訳無いでしょ。そのリオがアリスの事を何て言ったのかも。」
引き金を引く。今度の狙いはネルではなくコールサイン01こと一之瀬アスナ。異常とも言うべき第六感と幸運を持つ彼女に牽制目的で撃った狙撃など当たる筈も無いが、気にする必要性はない。
「まぁそこでうだうだ言ってないでさ、タワー最上階で直接決めようよ。それに皆も、その為にここに来たんでしょう?」
マガジンを外して残弾を確認する。普段は近接戦闘というマガジンの詳細な残弾数など確認している暇など無い状態での戦闘ばかりだが、高所に陣取って狙撃に集中している今は別だ。
(まだ2発残ってるが・・・さっさと撃ち切る。まだコジマ粒子は込めない。あれは当てる事前提で撃たないと体力がもたない。)
キヴォトスに流れ着き、ヘイローを有する体になってから何故かネクストの様に無限に生成され、自在な操作が出来るようになったコジマ粒子だが、ネクストとは違う点として自身の素の体力とは別に一度に放出出来る量に限りが存在し、特にコジマキャノンモドキとも言える威力になる量を銃弾に纏わせる撃ち方は全力疾走をした時の様な疲労感をイサネに与える。故に連続での使用は出来ない。弾倉内に残った二発をC&Cの方向に撃ったイサネはすぐさまマガジンの交換を行いながら、リオに指示を乞う。
「C&Cの牽制は十分じゃない?」
『そうね、どちらにせよ先生達の目的はタワーだから、そこであれを装備したトキに出て貰うわ。』
どうやらトキには更なる武装があるらしい。イサネは頷きながら空のマガジンを自分の後ろに投げ、ライフルの引き金から指を離す。
「じゃあ狙撃も中断で良いね?どっちの進行も止めるのはあともう一人居ないといけないから。」
『そうね。・・・解除コードの入力完了。【アビ・エシュフ】の起動準備完了。』
『一行のタワー到達まであと30秒。アビ・エシュフの起動コード、受領しました。・・・リオ様、本当に使うのですね。』
「え?ちょっと待って早いって。休憩の一つもさせてくれないのかよ。」
思ったよりも早い先生一行の進軍速度に本来なら絶対に吐かない愚痴を零しながら、イサネは再びライフルを持ち直して姿勢を低く固定する。
『ターゲット、タワー正面に到達。アビ・エシュフ、装備開始。』
「だから早いって。」
『愚痴を言ってる暇があるなら手を動かして欲しいのだけど。』
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「都市構造の変化・・・なるほど、さっきの地震はそういう事だったんだね。」
イサネの狙撃が別――恐らくC&Cの居る方向へ集中し始めたタイミングで脇道から飛び出した先生とゲーム開発部は、チヒロの案内によりアリスの囚われているとされるタワーの目前にまで辿り着き、後退したトキを追うC&Cとも合流を果たした。
「えぇ、そのせいで陽動自体の意味が無くなってしまった訳です。」
「地形そのものを変えるなんて、普通は想像も出来ない事だから仕方ない事だとは思うよ。」
「先生の方も、何か起きていた様にも思えるが・・・エンジニア部の姿も無いし。」
「あー、うん、あれはね・・・」
カリンに自分達の問われ、苦笑を零しながらも先生はアバンギャルド君とリオのハッキングによる危機、チヒロとスミレの助勢、そして行方の掴めなかったイサネの居場所についてなど、C&Cがトキと交戦している間に何が起きたかを簡潔に説明する。
「アバンギャルド君ですか。何と言いますか・・・凄い独特な名前ですね。それが先生方を苦戦させるなんてとても想像出来ません。」
「・・・それよりも、イサネが会長の方に着いたという方が問題だ。トキと同等、もしくはそれ以上の戦力が敵になっている。」
C&Cの陽動の裏でそれなりの出来事が発生していたが、やはり話題に上がったのはアバンギャルド君という奇怪が話全体の2割で、作戦会議の段階で連絡が付かず、医務室にも居ないという事で行方不明という扱いになっていたイサネの消息が6割だ。
「ちっ、さっきの狙撃はあいつのだったのかよ。通りでカリン並みに狙いが正確だった訳だ。しかも狙撃中にも外部スピーカーで語りかけてきたなんて、一体何のつもりだあの狂人。」
『分かりません・・・それに遮蔽から飛び出したエンジニア部が囮である事にも気付いていた様ですし、彼女の意図が不透明です。』
「って事はあいつが本当にその気だったら先生がタワーに辿り着く前に黙らせる事が出来たって事か?・・・くそ、気に食わねぇな。」
「ネル、それについて考えても多分きりが無いと思うんだ。私達の目的はアリスを取り戻す事でしょ?」
エンジニア部の囮を知っていたならわざわざエンジニア部に向けて狙撃を行う必要は無い。だが、イサネはエンジニア部を狙った。本当に囮に引っ掛かった可能性も無くは無いが、それを考えるのは時間の無駄でしかない。先生は苦い顔で吐き捨てたネルに先へ急ぐべきだと促す。
「チヒロ、このタワーに、アリスが居るの?」
『その・・・会長が言ってたんだよね?アリスのヘイローを破壊するって。だとするなら、それ相応の設備が必要なんじゃないかな。』
先生の呼び掛けを受け、チヒロは「
『ここエリドゥは、全ての電力がタワーに集中する構造になっている。これほどの規模の施設が、会長の手によって作られた理由・・・会長の動機・・・答えは明白だろうね。』
「本当に、ここにアリスが・・・」
遠目から見ただけではその高さがいまいち認識出来なかったが、こうしてタワーの足元まで来ると改めてその高さが理解出来る。普通に見上げようとするなら確実に首が痛くなる事に加え、見上げても最上階を視界に認識する事はかなり目が良くないと出来なさそうだ。
「つまり、後はこの馬鹿でかいタワーを登りゃあ良いんだろ?」
「そうだね、後は登るだけ・・・」
この高さだ。タワー内にもエレベーターやエスカレーターは幾つも存在しているだろうが、それでもアリスの居る最上階に辿り着くにはかなりの労力が要求されそうだ。これから立ちはだかるであろうトキとイサネという二つの巨大な壁とタワーの登るという如何にも足にきそうな高さという二つの苦難に、静かに息を吐く。
『そうだね、後は登るだけ・・・ただ――』
一同がタワーの出入り口から現れた一人の人影を見つける。どこの学園の制服でもないワイシャツ姿ではなく、メイド服の方。
『あの会長が、門番を用意していない筈が無いよね。』
こちらに近づくにつれ、その姿が明確になる。
「お待ちしておりました。先輩方、先生。」
相手を予測するまでも無い。リオ専属の護衛にして5人目。飛鳥馬トキだ。
「やっぱり、トキが門番なんだね。」
「あっ!また会えたね~、トキちゃんやほ!」
「あぁん?んだよさっきは尻尾巻いて逃げ出したくせによ・・・一体どの面下げてあたし達の前に現れてんだ?」
常時天真爛漫なでフリーダムなアスナと戦闘中故に喧嘩腰なネル。それに対しトキはこれと言って反応を示さない。
『作戦を変更したのが、貴方達だけだと思って?』
そして無線に同然の様に現れるリオ。
「・・・リオ。」
『貴方達が来る事を見越して、幾つもの計画を準備してきたけど・・・まさか、防衛システムを全部壊して、ここまで来るなんて。・・・変数として機能し、私の計算を狂わせたのも・・・』
あくまで無感情に、リオは先生に向けて言う。
『シャーレの先生。貴方が関わったからかしら?』
「・・・リオ。」
リオの言葉に対し、何か言い掛ける先生だったが、リオは無視して言葉を続ける。
『それならそれで構わないのよ。貴方が規格外の力を発揮するなら、こちらも相応の切り札を用意するまで。トキ、現時刻を以て、【アビ・エシュフ】の使用を許可するわ。』
「リオ様。本当に・・・」
『本来は名も無き神々との戦闘用だけれど、ここで負けてしまえばそれも全てが無に帰すわ。』
「・・・
アビ・エシュフなる兵装の使用許可に一瞬言葉詰まるトキだったが、次いだリオの言葉に静かに頷くと、ノースリーブにショートスカートという軽装なメイド服を一瞬で脱ぎ捨て、レオタード状のインナーらしき姿になる。勿論手に持っていた愛銃シークレットタイムも床に捨てて。
『っ!上!』
そしてそれと同時に、それの存在に気付いたチヒロが鋭く警告の声を上げるが、遅い。
「起動コード入力成功、呼出信号確認。」
タワーの最上階付近から突如として飛来したそれは、トキと一同の間の数mに落下。金属製と思われるエリドゥの地面を破砕し、小さいクレーターを形成しながら何かのコンテナの様なその姿を一同の前に現す。
それに対し、トキは何か反応を示す訳でもなくそれに歩み寄り、割れる様に開いたコンテナに足を掛け、中にあった剥き出しのコックピットシートらしきものに腰を掛ける。
「パワードスーツシステム、アビ・エシュフ。・・・起動。」
そして足を白い巨大な機械足の中に固定し、両手を手を覆う形状の操縦桿にそれぞれ固定。頭部にはバイザーが装着される。
「戦闘・・・開始します。アビ・エシュフ、殲滅モード。」
トキの宣言と共にバイザーが彼女の両目の位置まで下がる。同時にコンテナを押し退け、トキの腰回りほどはある周囲長の機械腕。どちらにも大口径のガトリング砲が装備されており、威力など試すまでも無い。そして両肩部から伸びる白い二つの砲口は明らかにレーザー砲に分類されるものであり、武装面だけでもかなりの戦闘能力を有している事が容易に見て取れる。
「はんッ!上等ぉッ!!」
しかし、ネルを筆頭にC&Cはそんなアビ・エシュフに搭乗したトキに一切の怯みを見せる事無く突っ込んでいく。彼我の距離は変わらず数m先頭を走るネルはそのそう長くない距離を瞬く間に駆け抜け――
『殲滅モード、ね・・・随分と強く出たな。パワードスーツ風情で。』
――翠緑。ついで凄まじい破砕音。
止まる。否、止まらざるを得ない。
「っく!?」
「ネル!?」
先生の目には駆け出したとネルの前に翠緑の巨大な光が降ってきたようにしか見えなかった。そして直後に先程のコンテナの数倍はなろうかという程の土埃と金属片。腕を上げ、C&Cの少し後ろに控える自分達にまで届くダートスモークと地面の金属材から顔を守っていると、これまで会話に参加する気配すら無かったイサネの声がスピーカーから聞こえる。
『たかがパワードスーツが殲滅なんて、随分と驕ってるね。まぁ良いや、トキ。貴方のHUDにこちらの狙撃支援可能な範囲を表示した。狙撃が欲しいならその範囲内で戦え。』
「了解しました。」
土埃が晴れると同時にC&Cの姿も露わになる。土煙でそのメイド服こそ若干汚れているものの、流石C&Cと言うべきか、負傷した者は居ない様だ。
『私の存在も忘れて貰っちゃ困るねぇ。ははははっ。』
「イサネぇッ!!」
『ネル、私と
荒ぶる闘争心のままに叫ぶネルに対し、イサネは高らかに笑いながら言葉を返すだけ。一方の先生はイサネの言ったやり合いというのが明らかにキヴォトスでの撃ち合いとはかけ離れた言葉である事を理解する。
(・・・やっぱり、イサネの言うやり合うは本当の殺し合いを意味してる。どうにか出来ないか。)
かつて夜間の子ウサギ公園で明かされたイサネ自身の出生の秘密の一部。自ら口にしたキヴォトスの生まれではない事、そして人の死が当たり前だった世界からここに流れついた事。
(最悪の可能性も、考慮しないとか。)
咆哮を上げてトキに突撃していくネルを見て、改めて先生は決意を覚悟を固める。
(他人にも不殺を強要する・・・出来るかな、今の私に。)
己が信条を最後の最期まで貫くその覚悟を。
じ、次回は必ずちゃんと戦わせます!だから許して下さい!(土下座)
え?C&Cとアビエシュフ装備前の時の戦闘シーン書けばいいだろって?
書こうと思ったさ!でも!何も思いつかなかったんやぁッ!!(←無能)
あとacfa×艦これとかacfa×ウマ娘とかのネタ思い付いちゃって、書きたいんだけどウマ娘も艦これもやった事無いから苦しいって言うw