モチベが上がらないなぁという気持ちと、早く物語進めないとなぁと焦る気持ちの二つに板挟みになりながら全く関係のないオリ生徒の設定を書いている今日この頃です。本当に何やってるんでしょうねこの作者は(ブーメラン)
さて、今回はネルさんがイサネさんの「光よ!」を受けた所からですね。あれだけ持ち上げたイサネさんもパヴァーヌ編においてはラスボス前の強ボスかラスダン前のやたらと強い門番的な立ち位置なので良い感じにラスボス枠であるkeyさんに繋げていきたいですね。出来るかどうかについては分かんねぇ!って所ですけど。
小柄な体躯が、暴力の域を超えた衝撃波によって砲弾の様にすっ飛んでいく。
「が―――」
苦痛の声すらも暴力的すらも生温い程の空気の揺らぎによって無慈悲なまでに消し飛ばされる。彼女の愛銃である底尾部が鎖で繋がれたサブマシンガン二丁がその両手から離れ、鎖を引き千切られ、刃となった空気の流れに敢え無く弾き飛ばされていく。
「ネル―――」
奥に見える連邦生徒会のコートを外に着、内にスーツを着た平均から見て少しばかり小柄な女性がこちらに向けて――正確にはこちらの目の前で未だ宙を舞う彼女を追う。他にも複数のタイプのメイド服を着た生徒達や色味と性格以外はとても良く似た双子とその二人を束ねる引っ込み思案な生徒も同様に、その女性に続く。
「ははっ・・・」
だが、今の私にとってはその全てがどうでも良い。器を満たして尚有り余る薄昏い昂揚のままに、両手に持った携行武器と言うには余りにも重く大き過ぎる砲の取っ手から手を離す。
100kg以上の砲が金属製の床に落下し、凄まじい音を立てると同時に私は床に転がるアサルトライフルを拾い上げる。
(次・・・はッ!お、まえ・・・だぁ・・・ッ!)
極限まで高まった昂揚により碌に思考すら出来なくなった思考で狙いを決め、アサルトライフルを持った左腕を上げる。
――外見の色味以外よく似た双子の姉、才羽モモイ。
恐らく先生を始めとした一同の心を動かし、ネルや先生と並んで皆の精神的支柱を担う一人。戦闘面においては無力化も容易で考慮に値しない程度でしかないが、彼女の持つ底抜けの明るさとやんちゃさから来るちょっとやそっとの惨事では一切ぶれる事の無いその芯の強さには目を見張るものがある。
故に、つい今ほどの砲撃により力尽きた彼女――ミレニアム最強、
(ターゲット・・・ひひっ、はははッ・・・はっはははははッ!!)
闘争心に全てが埋め尽くされ、思考が一点に圧縮される。私の視界に
――己が在るがままに、只引き金を引け。敵を殺せ。
視界こそネクストを操縦している時のそれを幻視しているものの、あくまでも体は体。AMSから指示を出しても私の指は引き金を引いてくれない。まぁ実際に引き金を引くのも、AMSに腕部に装備したライフルに射撃指示を出すのも、どちらも引き金を自らの指で引くだけとやる事は大して変わらないのだが。
「ひゃーっはっはっはっはっはッ!!」
「お姉ちゃん危ないッ!!」
銃声と双子の妹、才羽ミドリの声が重なる。銃口から撃ち出された7.62mm弾が狙い先であったモモイの頭部があった場所の空気を切る。ミドリが私の射撃の狙いをいち早く把握し、咄嗟にモモイを押し倒した事で被弾を回避したらしい。私も3発目の銃弾が銃口から吐き出されたと同時に引き金から指を離し、立ち上がる。そして左手に持っていたライフルを右手に持ち替え、巨大な砲――レールガンを壁際へと蹴り退ける。
「モモイ、大丈夫?」
「う、うん!ミドリのお陰で何とか・・・それよりも、ネル先輩が・・・!」
「分かってる。ネルは私がどうにかするから、今はイサネの動きに注意を払って。それにしても、まさかスーパーノヴァを使うなんて・・・」
そう、私――標根イサネが反撃の機会が幾らでもあったのにも関わらず、ひたすらに後退を続けていたのはアリスの愛銃である【光の剣:スーパーノヴァ】によって追撃してきたネルを零距離で吹き飛ばす為だった。
何せ靭帯が切れても尚平然と戦うネルだ。最近愛銃となった対物ライフル【quid est pax】で撃ち抜きさえすれば倒せない事も無いだろうが、当たるかどうかはまた別の話だ。何せ威力はあれど対物ライフルの銃身は長大だ。ネルも警戒している以上撃った所でまぁまず当たらない。だからこそイサネは弾体だけでなくそれに伴う
そして目的を悟られない様に後退を続け、上手い具合に最上階の部屋の端の方に居る機械仕掛けの少女こと天童アリスが繋がれた機械だらけの玉座に立て掛けられているレールガンに辿り着いた。辿り着いてからはアサルトライフル二丁による掃射によってネルを更に引き付け、回避不能な超至近距離まで誘導。弾幕を掻い潜って来た所に砲撃を見舞った。
「く、そ・・・あの、ちび、の・・・レールガン・・・あいつ、も、使って・・・くる、のか・・・」
「ネル!無理に喋っては駄目だよ!ただでさえ重い怪我を負っているのに・・・」
「ん、んな事、分かってらぁ・・・それよりも・・・先生。後は、頼んだ・・・あいつ・・・馬鹿みてぇに笑ってんのに、あそこまで考えてたって・・・まじでイカれてやがる・・・」
ただでさえ全身に重い傷を複数負っていたネルだったが、レールガンの直撃によってより深い傷を幾つも刻み、動くどころか口すらも碌に回らなくなってしまっている。指揮を続けながらも介抱を行う先生に、途切れ途切れながらも辛うじて言葉を紡ぐネル。
「・・・あれだけの怪我の上でレールガンを受けてたってのに、まだ喋れんのかよ。確かにミレニアムの勝利の象徴なんて呼ばれるだけはあるな。ははっ、本当に面白いじゃん。」
「うるせぇ・・・次は、ぜってぇぶっ飛ばす・・・首洗って、待ってやがれ・・・」
だが、それでも尚意識を保ち続けるネルに思わず称賛の声を上げるが、ネルはいまいち良い反応をしない。
「ま、あれだけ負傷した状態で始めて、戦場での勝敗はともかく実力で私の方が上だなんて言うつもりは無いよ私も。・・・はっはは、次は最期まで戦ろうか。」
「てめぇの最後は・・・どっちかのヘイローがぶっ壊れるまでだろうがよ・・・イカれたてめぇの趣味に・・・そこまで付き合ってられっか・・・死ぬなら勝手に死にやがれ・・・」
ネルをやった借りは返すとばかりに燃えるC&C3人と銃口を向け合いながら、イサネはネルと軽く言葉を交わす。そして先生に促され、「悪ぃ、少し休む。」とネルが意識を手放すと同時にコジマ粒子を右手に握ったアサルトライフルにチャージ。砲身の破裂と引き換えに一撃の威力を先程のレールガンに匹敵する程に高める。
「イサネ・・・まだやる気なんだね・・・?」
「ひゃっはははッ!?逆にここまでやっておいてどこで止めるんだよ!お前も私も、とっくに妥協は終わっただろうが!はははッ!なら、後はどっちかが全滅するまで撃ち合う以外に何がある!?対話を通り過ぎた対立の先に、争い以外の何が残る!?あーっはっはっはっはっは!!」
最早自分でも何の話をしているのか分からなくなる程、内から枯れる事無く湧き上がる闘争心によってイサネの思考は塗り潰される。戦うという単一化された思考が更に先鋭化し、情緒も破壊され、目に映る全てにターゲットマーカーが付与される。
「先生、いつでも行けます!攻撃の指示を!」
――そいつがターゲットだ。猛る心に身を任せてみろ、すぐに道は開ける。
アカネの声に混じり、恩人の声が都合の良い幻聴となって響く。
「わ、私達も行けます・・・あのバリアも、弱体化くらいなら、簡単にできる筈・・・!」
――ここからはお前の領分だ。心に従え、お前のやりたい様にやってみろ。
ユズの声に混じり、居もしない恩人は更に囁く。本人なら絶対言わないであろう、イサネだけに都合の良い言葉を。
「あっははははははッ!!来いよ!それとも私から行けば良いか!?ふっははッ!はははっ!ひははははははッ!!」
在りもしない幻覚に本能的に覚える嫌悪と、際限無き闘争心に条件反射で沸き立つ昂揚に挟まれながら、イサネは右手に握るアサルトライフルに更にコジマ粒子を充填させつつPAに回したコジマ粒子もチャージを始める。
AMS接続時のUIがはっきりと幻視され、視界が完全にクリアになる。視界に映る全てが一つの取りこぼしも無く情報として一瞬で処理され、相手の体の僅かな動きすらも見逃さない。同時にその数cmの動きから一人一人がどう動くのか、何が狙いの動きなのかが詳細に推測出来る。
「なら今度は――」
そして今一歩、足を踏み出し――
―――意識の端にちらつく
一点の乱れの無い意識の中に、明確に割り込んだ不明瞭な何か。
(敵・・・)
ネクストと神経を繋いだ時の様な意識に、自分が敵の攻撃の対象になっている事を知らせる警報が鳴る。自分を狙う敵意が突如として増大し、殺意が明確に自分の世界に存在感を示す。
「対象確認・・・標根イサネ。例外的要素あり。」
一歩踏み出した姿勢のまま、イサネは殺意の方向を確認する事無く後ろに飛ぶ。
「排除開始。」
直後、イサネの立っていた位置を横から瞬いた光芒が飲み込む。既視感のある
「な―――」
「アリスのレールガン!?」
先生達は突如としてイサネを飲み込んだように見えた光の奔流にぎょっと目を剥く。
「ひははっ!」
だが、当のイサネはごりごりと削られるPAを気にも留めず、右手に持ったコジマ粒子が充填されたアサルトライフルを殺意の方向へ向け、迷う事無く引き金を引く。
――かちり。
引き金が引き切られると同時にAK-47の銃身の隙間から翠緑の光が漏れ光り、一瞬遅れて銃口から凄まじい量のエネルギーが濁流となって解き放たれる。銃口は勿論、左手を添える部分であるバレル部もそのエネルギーが発する威力に耐え切れず、銃口から裂ける様にして破裂する。
「回避不可、防御を――」
スーパーノヴァを両手に持った第三者――天童アリスの姿をした
「くっ!?防御、失敗・・・!?」
盾として構えたレールガンの砲身ごと体が押し流され、そして重量100kg超のレールガンの砲身が冗談の様に弾き飛ばされる。防御手段を失ったアリスらしき誰かに核となる銃弾すらも食い潰した
「ひゃはは・・・ッ!」
イサネはほぼ無意識的にアサルトライフルのグリップから手を離し、右腰のホルスターからハンドガンを引き抜く。寸分の狂いも無く狙いを機械仕掛けの少女の頭部に定め、引き金に指を掛ける。感覚的にハンドガン数発の射撃だけではこの機械仕掛けの少女に効果的な損害を与えられないという事は理解出来たが、それでも引き金を躊躇いなく引こうとする。
「それだけは・・・ッ!」
とそこで、ここでモモイが動く。手に持った銃を投げ捨て、ハンドガンをアリスであってアリスではない誰かに向けるイサネに向かって一直線に走り出す。
「それだけはほんとぉーにちょっと待ってぇッ!!」
そして数mの距離を必死に駆け抜け、機械仕掛けの玉座に
「おっと?ゲーム開発部?」
「お姉ちゃん!?」
モモイが走り始めた位置と彼女の身体能力的に3発の発射こそ許してしまったものの、それでも抱き着いた事によりイサネの体勢が僅かに崩れ、4発目を明後日の方向に飛ばす事に成功する。
――だが、
「っく・・・って、えぇっ!?びくともしないんだけど!?」
渾身のダイブと走力の合わさったモモイの組み付きは、イサネの持つハンドガンの銃口を極僅かに逸らす事こそ出来たものの、それが限界だった。女性特有の柔らかさとは別に、重厚な壁にぶつかったかの様な感覚。走力を乗せ、軽いながらにも全体重を乗せた一撃だったにも関わらず彼女の体はびくともしない。
「モモイ!今すぐ離れてッ!」
凡そ痩せ気味、スレンダーと見て取れる体格のイサネからは想像も付かない程の体幹に強さに動揺するモモイ。その様を見て即座に下がるよう指示を出す先生。
「やっぱり、お前の精神的な思考回路の強さはこの中で頭一つ抜きん出てるな。はははっ。・・・でも、こうして私に向かって来たってんだから――」
――容赦は、要らないな?
全てが遅い。イサネは視線をアリスらしき少女の方向に向けたまま、組み付いてきたモモイの首を掴むべく空いた左手を動かし――
「うん?あの目は確か・・・」
止まる。
「っ・・・!・・・?え?何が・・・?」
イサネの異次元の体幹によって叩き付けられた驚愕が消えるよりも前に、更なる困惑がモモイに襲い掛かる。自らの首すれすれで止まったイサネの左手に恐怖しながらも、モモイはイサネが向いた方向を見る。
「あ、アリス・・・?」
「先生!アリスちゃんの様子が・・・!」
「あれは・・・っ!」
そして遅れて先生達もそれに気付く。イサネのコジマキャノンもどきによる煙が晴れた部屋の端、機械だらけの玉座に力無く座る天童アリスと同じ外見をした誰かに。いや、体こそ天童アリスではあるものの明らかにその身体を操る人格が違う天童アリスに。
『ぇ・・・!?・・・っと!?急に・・・にが・・・!・・・んな!応答・・・』
「チヒロ!?無線の様子が・・・!」
先生達がそれを認識した瞬間、部屋のどこから見ても分かる程大きなモニターが全て明るい紫色に染まり、でかでかと白色文字で《Divi:sion》と表示される。同時にチヒロやヴェリタスとの通信回線が何の前触れもなく不安定になり、チヒロの途切れ途切れの一言二言を最後に無線は完全に沈黙する。
「アリス・・・?ケーブルはまだ繋がってるみたいだけど・・・は、早く抜いた方が――」
イサネから離れたモモイはすぐさまアリスらしき生徒に声を掛けつつ、運が良いのか悪いのか
「非推奨。その行為の実行について強く反対します。」
当の本人にそれを強く否定される。否、その身体に宿ったもう一つの人格に。
「っ、アリス。」
「喋った?」
アリスらしき少女はモモイの問い掛けに答えると、単語のみを淡々と発し続けた数日前の暴走と比べ流暢な敬語で話し始める。
「現在、王女の表層人格は内部データベースの深層部に隔離されています。ですので現在接続されているケーブルを引き抜く等の強制的な接続解除を行うと致命的な損傷が発生するでしょう。」
「アリス・・・!?一体何を・・・?」
「お姉ちゃん、これアリスじゃないよ・・・」
明らかに普段の天童アリスとは異なる話し方や口調、そして数日前に彼女が暴走した時にゲーム開発部や先生が見たあの赤目に、ミドリがあの時のショックや恐怖を思い出したのかふとアリスに歩み寄り始めたモモイを呼び止める。
「あー、まぁ攻撃してきた時点で察しは付いていたけど、やっぱりそっちで目覚めたか。とすれば人格プログラムの主従でも入れ替わったかぁ?」
一方のイサネは口調こそそのままではあるもののつい先ほどまで爛々と浮かべていた異常なまでの狂笑は嘘の様に消え失せ、普段通りの能天気と無遠慮極まった様子でアリスの様子を口に出す。
「にーしても、いきなりケーブルが外れた程度で人格に影響が出るなんて随分と杜撰な構造してんなぁ。そんなんじゃ無人ネク――じゃなくて戦闘用の人形である意味が無いぜ?」
「・・・標根イサネ。人格プログラムの主従が入れ替わったという発言を撤回してください。あくまでも王女が主です。仮にも私がその主導を握るなどという事は有り得ません。」
ハンドガンの弾倉を入れ替え、それを右腰のホルスターに仕舞ったイサネの遠慮無い呟きに赤い目のアリスは語気を強めてイサネを睨む。
「はっはははっ!何故訂正する必要がある?現にお前がこうして身体を乗っ取ってる時点でお前とあいつの主従はもう入れ替わっているって十分言えるのに、どうやって否定すれば良い?」
だが、やはりと言うべきかイサネはその言葉に動じない。所かむしろ煽る様な口調でそれに言い返し、瞳の赤いアリスの凍て刺す様な目線を軽く笑い飛ばす。
「まぁ別にお前の人格の表裏どうのなんてのはどうでも良い。・・・どうでも良いんだが、お前のせいで私の楽しみが半ば消えた事については流石にスルー出来る問題じゃない。」
そんな事を言いながら、イサネは先生の傍で横たわる黒スーツを着た生徒――調月リオに近づいていく。
「起きろ企業女。アリスが目覚めたぞ。多分だがお前が最も憂う方でな。」
そしてカリンによって仰向けで寝かされていたリオの脇腹に蹴りを叩き込み、手荒く叩き起こす。
「うぅ・・・ぐっ、一体何が・・・私は何を・・・」
「早く起きろ。ゲーム開発部の部室の中でお前が言ったキヴォトスに終焉を齎す災禍とやらが表層化したぞ。」
脇腹に強く鋭い衝撃を受けたリオは、呻きながら意識を取り戻し、赤い手形が残る程絞められたと思われる首を抑えながらゆっくりと上半身を起こす。
「リオ。ネルが最上階に来た時にはもう倒れていたみたいだけど、大丈夫?」
「倒れていた・・・?っく、そう言えば、確か首を掴まれて・・・」
「私が絞め落としたんだよ。分かったらさっさと起きろ。多分だけど今この状況に一番詳しいのはお前だけなんだから。」
先生の気遣いとイサネの凡そ雇われたとは思えない言葉を受けながらリオは立ち上がる。
「・・・トキ。アビ・エシュフもなんて損害を・・・それに、アリスのあの様子は・・・!」
アビ・エシュフの残骸と共に未だ目覚める事無い己が腹心である飛鳥馬トキの無残な姿にショックを受けると同時に、明らかに普段とは異なる人格で目覚めたアリスに更なる驚愕を見せる。
「アリス・・・それは貴方達が私達の王女を呼ぶ際の名称。王女に名前は不要、名前の存在は物事の本質と目的を乱します。」
「何を言ってるの!?ねぇ、あなたは誰!アリスちゃんを返して!」
一方でアリスの方にはモモイとミドリが殺到しており、訳の分からない事を言い始めたアリスに困惑と焦り、そして怒りを露わにしている。そして赤い瞳のアリスはそれらに対し機械的に自己紹介を始める。
「私の個体名はkey。王女を助ける無名の司祭が残した修行者であり、彼女が戴冠する王女の座を継ぐ鍵です。」
「・・・どういう事?」
「彼女が王女であり私が鍵。それが私の存在であり目的。そして今、私達を妨害していた攻撃が止まった事を確認しました。」
意味不明な自己紹介に疑問符を浮かべた先生に端的に己の事を要約すると、アリス出会ってアリスではない機械人形―――keyは淡々と話を続ける。
「ただ今よりエラーを修正し、本来あるべき玉座に王女を導かせて頂きます。」
あくまでもイサネやリオ、先生達一同を下に見下した様な宣言と共に淡々と言葉を紡ぐ。
「AL-1Sに接続された利用可能なリソースを確保する為、全体検索を実行。リソース領域を拡大。リソース名、要塞都市エリドゥの全体リソース・・・1万ebのデータを確認。」
「エクサバイト?え、エクサって確かテラとかよりも上の単位だよな?って事は・・・あぁ、道理でアビ・エシュフが未来予測級の演算を展開できる訳だ。ったく変な物作りやがって企業女が。」
「待って頂戴。確かにこれらの施設を用意したのは私だけれど、そもそもの話として貴方の離反行為が無ければこのような事にはならなかった筈よ。」
「どっちにしろ計画遂行の際に人間の機微とか感情とかの考慮をしなかったお前の失態だろうが。なに私の許可無しに私の本名を暴くんだよ。よりにもよってそれを交渉材料に使いやがって。首をへし折られなかっただけ感謝しろ企業風情が。」
「私は企業属ではないわ。」
エクサバイトという常軌を逸した量のデータ容量を前に唐突に揉め始めるイサネとリオだが、keyはそれを気にも留めずに淡々と宣言する。
「現時刻を以て、プロトコル【ATRAHASIS】稼働。コード名、アトラ・ハシースの箱舟起動プロセスを開始します。」
keyの宣言に、イサネと下らない揉め合いをしていたリオが敏感に反応する。
「アトラ・ハシース・・・!?」
「プロセスサポートの為追従者を呼び出します。」
更に次いだkeyの宣言によりエリドゥ全域にミレニアム郊外でも発見された不可思議な機械群が無数に出現。その様子が超高層ビルの高さに位置するタワー最上階からでも見る事が出来た。
「エリドゥ各地で、追従者の出現・・・?」
「おい見ろ。生の肉眼でも見えるけどここら一帯全てあれに制圧されてない?」
「秘匿された地下通路にまで・・・!?」
リオが手に持ったタブレットを確認し、イサネが窓越しからの目視でエリドゥ全域に出現した不可解な機械群――追従者ことdivi:sionの存在を認める。
「リオ、一体何が起きているの?アリスは・・・」
「いえ、確かに標根イサネという規格外の乱数を考慮に入れたとしてもそんな事が・・・でも、計算上では・・・」
いよいよ理解不能な都市の変貌に先生だけでなく未だ意識を取り戻さないトキとネル以外の全員がその異変をはっきりと認識し、驚愕と警戒の姿勢を取る。一方、リオは何か独り言をぶつぶつと呟いていたが、イサネがこれ以上交戦する気配を見せない事を察するとすぐさま先生に向き直る。
「・・・私はキヴォトスに終焉が訪れる事を懸念して、この要塞都市エリドゥを建設した。この都市の建設にあたり私が動員できるミレニアムの全ての技術とエネルギー、そして資源を集めたと言うのに・・・」
それは独白。
「けれど、むしろそれのせいで・・・この都市が、終焉の発端に・・・?」
それは結果の明示。
「私は・・・間違っていた?」
それは結論。
「箱舟製作に必要なリソース確保、22%・・・34%・・・47%・・・」
その間にも、keyは周りの目を一切に気に留める事なく淡々と何かを進めている。それを見たリオは、最早自分だけでは打つ手無しと言わんばかりに先生に声を掛ける。
「先生!このままエリドゥのリソースを全て奪われてしまったら、本当にキヴォトスが終わってしまう。それこそ、このエリドゥの力によって。・・・だから、決断を下さなければ。」
「・・・決断?」
凡そリオが何を言いたいのかを理解した先生は敢えてリオに問い掛ける。決断が意味する行動を。
「・・・王女は鍵を手に入れ、箱舟は用意された。無名の司祭の要請により、この地に新しいサンクトゥムをけんせ―――」
「先生!・・・決断ってのはこういう事なんだろう。合ってるか?リオ。」
イサネは無防備に玉座に座る機械仕掛けの少女の口にククリナイフを突き込む事で言葉を遮り、先生とリオに声を掛ける。
「そうね、それで合っているわ。ただ、アリスの体を支配する人格が敵性存在である以上装置を用いての殺害は不可能、つまりは物理的手段で活動を完全停止させる必要がある。骨が折れる所の話ではないでしょうけど。」
「はははッ!なら私に任せろ。ここにいる・・・いや、キヴォトスに居る誰よりも殺しには慣れている。故にこの人形の処分は私が受け持つ。リオ、この人形の核はどこにある?」
「核・・・の位置までは特定していないけれど、恐らくナノマシンの再生よりも早く身体に致命傷となる損傷を与えれば一時的に活動を停止する筈。その隙に解体を始めれば特定は出来るかもしれないわ。・・・先生。皆を連れて逃げて頂戴。」
機械だらけの玉座に立ち、自らの体を抑え付ける存在をどかさんと抵抗の為に動かそうとしたkeyの右腕にコンバットナイフを迷いなく叩き込み、イサネは昏い昏い愉悦に笑う。対するリオはAMAS即座に呼び出せるだけ展開させ、戦闘指示を下す。
「逃げてって・・・まさかとは思うけど・・・それにイサネも・・・」
「今からこの都市全体が変貌し、箱舟という新たな概念に歪曲される。そうすれば、キヴォトスは・・・確実に・・・」
そのまさかを察した先生にリオは少しばかりしどろもどろに告げる。
「ここに辿り着くまでの過程はどうあれ、こうなった以上全ては私のせいよ。私がこの都市を作らなければ、こんな事にはならなかったのに・・・そう、全ては私のミス・・・だから、私が止めないと。」
「私が離反しなきゃまだどうにかなったんだろうけど・・・ま、これについては人の感情を考慮しなかったリオの失態だし、事の成否なんてのはどうでも良い。けど、離反したとは言え一応まだ依頼にあった事は終わっていない。それに何であれ深く詮索せず、仕事は最後までこなすのが模範的傭兵の姿だしな。・・・傭兵以前に私は人間の風上にも置けない屑外道か悪鬼羅刹だけど。」
そして軽いうわ言の様に自らの決意を告げるリオと、あくまで普段通りの様子で捨てた筈の依頼を下らない言い訳で遂行しようとするイサネ。
「どういう・・・意味ですか?」
「リオ、イサネ。まさか本当に・・・?」
事の真意を理解しかねて問うユズと、真意を理解・確信して問う先生。
「私がシステムを止めてみせるわ。いえ、正しくはそこに居る標根イサネと共に。」
「リオ、それは。」
その言葉の意味の全てを問う必要すら無い。特に先生にはリオの言った事の全ての意味が容易に理解出来た。
「・・・この場を切り抜ける為に、君自身が犠牲になるつもりかな?」
「そう、私の命一つで、世界の終焉を防ぐ事が出来るなら・・・そうする――いえ、そうしなければならない。本当はイサネも先生と一緒に逃げて欲しいのだけれど、彼女の力は私だけでは制御出来ないから・・・」
リオは問われた真意を答え、イサネとkeyが居る機械だらけの玉座に向き直る。イサネは相も変わらず隙を見ては抵抗しようとするkeyを殴打し、抑え込み続けている。
「リオ、準備は出来てる。それとそこのAMASが装備してる銃火器と予備マガジンを寄越せ。合図があり次第こいつの機能を停止させる。」
「分かったわ。・・・先生、そういう事だから早く皆を連れて行きなさい。これよりも合理的な選択肢はもう望めないわ。」
時間が無いのはkey以外の、この場に居る誰もが理解している。そして同時にその時間の猶予すらも乗算的に減少している事も。
「エラー発生。標根イサネの存在が機体に負荷を掛けている事を確認。排除行動を開始しま――」
「粗製AI風情が一丁前に口を開くな。」
一方のイサネは本格的に抵抗を始めようとしたkeyを苛立ちを乗せた声色で貶し、その頭部を踏みつける事で玉座の背に叩き付ける。
「さて、核はどこにあるかなーっと・・・ふむ。」
keyの人格を侮蔑するかの様に冷たく笑うと、イサネは左手でkeyを玉座に抑え込みながらも首を締め上げ、右手にコジマ粒子を充填させて圧縮する。腕に纏わせる形で圧縮したコジマ粒子を拳打によって指向性を持たせて解放する一撃、コジマブレードもどきだ。
「さて、それじゃあそろそろ核を拝ませて貰おうか?」
イサネは自身の右腕に少しでも衝撃が加わればすぐにでも破裂してしまいそうな程のコジマ粒子を漲らせ、その狙いをkey――天童アリスの頭部に据える。そして勝負を妨害された恨みを言葉に乗せてゆっくりと右腕を引き絞る。
「この脅威を終わらせる為には、皆を守る為には、もうアリスのヘイローを破壊する以外に方法は無い・・・でも幸いな事に、今は貴方がまだ動いてくれた。・・・イサネ。」
「ふん、言われずとも。」
そして万力の如き力で首を締め上げられ抵抗もままならないkeyに対し、リオの合図を受けたイサネが後ろに引き絞ったコジマ粒子漲る右腕を叩き込もうとしたその時、
「イサネ!それはちょっと待ってっ!!」
先生の声が割って入る。解き放たれかけた拳が止まる。
「先生!?一体何を・・・!?」
「・・・リオ。確かに君の言ったトロッコ問題というのは5人か1人か、どちらを選んでも必ず犠牲が出てしまう。そういう問題だったよね?」
突如として場を切り裂いた先生の声に困惑を隠せないリオに、ゆっくりと自分の答えを告げる。
「選択の結果、必ず誰かが犠牲になるしかないのなら・・・」
一呼吸。
「その問題自体が間違っていると、私は答えるかな。」
なんかいつも以上に変な感じになっちゃった。なんかこう致命的な解釈違いを起こしている感じがする。低確率で大幅修正をするかもしれない。
って言うかC&Cにゲーム開発部と+4人っていくら広いとはいえ一室に登場人物詰め込み過ぎだろッ!そんな大人数の会話なんて素人に出来る訳ねぇだろうがぁッ!!(←自業自得の馬鹿野郎)
次回か次々回あたりで時計仕掛けの花のパヴァーヌ2章のエリドゥ周りの騒動については終わらせる予定ではあります。ちゃんと終わらせられるかはちょっと怪しいですが。その後はパヴァーヌ編エピローグという事で少しばかり日常回を挟み、ビナーかエデン条約に進もうかと考えています。