今回はほぼハナコの独壇場です。本当は第二次特別学力試験まで行きたかったのですが、思ったより長くなってしまったので区切る事にしました。次回はイサネさんに頑張って貰えればと思っております。
こんな夜中に、こいつらは一体何をしているのだろうか。社会常識が一般人と比べて欠如しているという最低限度の自覚あるイサネも、自分の視界に映るヒフミとハナコが繰り広げる茶番の様な騒ぎを前には口を開かざるを得なかった。余りにも馬鹿な会話内容がうるさすぎる。
「・・・何してんのこんな夜中に。」
その一言を受けた先生の顔から絶望以外の感情が抜け落ちたのを他人事の様に眺めながら、一先ずはこの状況をどうにかしなければと部屋の中に入り扉を閉じる。
「・・・ハナコ。」
場の調停など面倒なのでやりたくないというのが本音。だが、やらねば巻き添えを喰らったと思わしき先生と軽い私事はおろか雑談の一つも出来ないので渋々ハナコに声を掛ける。
「その声はイサネさんですね―――ッ!?その恰好、まさか貴方も夜な夜な先生と・・・!!」
「五月蠅いぞ。」
「ぁんっ・・・!ふふ、少しおふざけが過ぎてしまったみたいですね♡」
この状態のハナコにまともな言葉が通じるとは思えないので、声を掛けて振り向いた所に問答無用で軽い手刀――チョップを叩き込む。相応の加減故に痛くも無い筈なのに何故かリアクションに喘ぎ声を上げたハナコに思う事がない訳でもないが、一応悪ノリを止めてくれたので一先ずは良しとする。
「本当にありがとうイサネ。本当に助かった、このまま収拾が付かなかったらどうしようかと思ったよ・・・」
「まぁ、この手の悪ノリは面倒だから今後は自分でどうにかして。それでヒフミ、用事は済んだの?私とハナコは退出した方が良い?」
「あ・・・そ、そうでした!退出はしなくても良いですけど、えっと・・・さ、先にハナコちゃんからお願いしても良いですか?その、私達が邪魔でしたら一度部屋を出ますので・・・」
「分かりました♪イサネさんもヒフミちゃんも、一緒に聞いてください。」
水着と同時に着替えも持っていたハナコが着替え終わると同時に、ハナコ同様イサネの手によってパニックから戻ったヒフミは話が纏まらないらしく、先手をハナコに譲る。
「それでアズサちゃんの事についてなのですが、実はアズサちゃん、毎晩の様にどこかへ出かけては夜明けまで戻ってこない事が続いていまして。」
(定期報告でもしてるのか。とすればトリニティ近くにもう一人アリウスの人間が居る事になる。)
ハナコの話は白洲アズサについてだった。ハナコ曰くここ数日の間、アズサが毎晩の様に深夜にどこかへ抜け出し、朝方まで戻ってこないとの事らしい。
「そう、だったんですか・・・」
「最初は慣れない場所で眠れないのかと思っていましたが、どうやらそうではない様です。詳しく言うなら、私はアズサちゃんが夜中にちゃんと眠っている所を殆ど見た事がありません。」
「確かに私も・・・アズサちゃんは誰よりも早く起きていますし、私よりも早く寝る事もなかった様な・・・」
一度疑ってしまえばあらゆる事象が怪しく思えてくる。ハナコの言葉にヒフミも記憶からアズサについて色々を思い起こす。
「アズサちゃんが何をしているのかは分かりません。ですがそろそろ、多少無理矢理にでも寝かせてあげないといけないのでは、と。なんだかアズサちゃん、凄く不安そうで・・・」
(そっち方面の心配かよ。まぁ大事っちゃ大事か。)
静観を決め込んだイサネはハナコがアズサについて何か勘付いているのではないかと思い話を聞いていたが、純粋にアズサの健康面を心配する彼女の声に肩透かしを喰らう。
「勿論先生とヒフミちゃんもですよ?しっかり寝ないと駄目です。ちゃんとした睡眠を取る事で初めて脳は学習した内容を記憶するんですから。いくら勉強しても、睡眠を取らなかったらそれは付け焼き刃と変わりません。」
どうにもアズサが不安を抱いているのならそれをどうにかしてあげたいというのが理由らしい。確かに言っている事は何も間違いではない。そしてその声は同時に先生やヒフミにも投じられる。
「確かに試験は大事ですが、ただ落第というだけです。体の健康に比べられるものでは無いと思いませんか?」
次いだハナコの言葉に、ヒフミがごくりと息を飲み込む。たかが成績を測る50分前後のテスト数回とこれから続く何十年にも渡る人生。純粋にどっちが重いかと言われれば人生なのだが、今回ばかりは訳が違う。
「そ、れは・・・そう、なんだけど。」
「普通だったら、そうかもしれません。」
尚も場を静観するイサネも知っている。これは落第ではなく退学を賭けた試験だ、落とせばトリニティ学園から問答無用で叩き出される、文字通り最後の裁定なのだ。同時に、トリニティのトップが本気で叩き出そうと網を張る処刑場でもあるのだ。事情を知っているなら死に物狂いにならない筈がない。
「ただ、ただ落第という訳ではないんです。あと2回、あと2回どちらの試験も不合格だったら・・・」
「ヒフミちゃん?」
たかが落第と言って尚顔色の優れないヒフミに訝しむハナコだったが、ヒフミは構わず口を開く。
「退学なんです!私達は、トリニティを去らないといけないんです・・・ッ!!」
ヒフミの様子からして、彼女にだけ補習授業部の本当の意味を知らされていて、その上で口止めされているのだろう。当然だ、ナギサにとって捉えた犯人に逃げられては安心してエデン条約に取り組む事が出来ないのだから。背後に怯えながら長い歴史に終止符を打つ事など出来はしない。
「退学・・・?それはどういう・・・?」
当然ヒフミの独白を受けたハナコは理解は及んでいない様子だ。何せトリニティでは生徒一人の退学だけでも膨大な数の手続きが必要になるのだから。まさか試験数回だけで退学など、ティーパーティーのホストであっても本来は出来よう筈もない。
「そ、そんな事、校則的に成り立ちません。退学には色々な手続きと理由が必要で、そう簡単には―――」
「多分だけど、シャーレの権力が組み込まれているんでしょう?あらゆる学園の校則の上から命令を下せる、その強権が。」
これまで静観を決め込んでいたが、ヒフミも先生も真実を切り出しにくそうにしていたので如何にも推理が繋がった体を装って助け舟を出す。
「何故学園内における落第程度の問題にシャーレの先生が関わっていると思う?落第者救済程度で組織された部に、何故連邦捜査部の人間が居ると思う?まぁ推察でしかないけど。」
「シャーレ・・・まさか?」
「そういう事なんだ、イサネの推理通りだよ。実は―――」
イサネに目配せで感謝を伝えながら、渋い表情をした先生は補習授業部設立の本当の理由をハナコに打ち明ける。補習授業部は落第者を救済する為の救済措置的な部などではなく、試験に落ちた者を問答無用でトリニティから退学させるごみ処理場一歩手前の監獄である事を。
「・・・」
「・・・」
一部イサネも知らない事もあったが、概ね潜入で得た内容と合致している。当然そんな話が飛び出た場は静まり返っている。
「・・・なるほど、そういう事だったのですね。全て不合格であれば、全員退学。この仕組み自体おかしなものでしたが、シャーレの超法規的権限が・・・」
やはり優れた頭脳を持っているハナコはシャーレの持つ理不尽なまでに強く、複雑極まりない権限を知っているらしく、すぐさま今の状況と照らし合わせ一人納得する。
「あ・・・!で、でも、ハナコちゃん、本当は成績良いんですよね!?1年生の時に、3年生の難しい試験まで全部満点で合格してましたよね・・・!?・・・あ、あの、ごめんなさい。その、模試の為に過去の試験を探している時に見つけてしまって・・・」
思考の末に沈黙してしまったハナコの様子に大慌てで言葉を投げ掛けるヒフミだったが、当人の秘密と思しき事をうっかり口に出してしまった事に気付き、次第に尻すぼみに謝罪へと移行する。
「どうして、あんな点数を・・・?わざと、ですよね・・・?」
「・・・ごめんなさい。知らなかったんです、試験を全て落としたら全員が退学なんて。・・・いえ、知らなかったで許されるものではありませんでしたね。先生にもヒフミちゃんも、コハルちゃんやアズサちゃんにも、申し訳ない事をしました。」
その後も恐る恐る問い掛けるヒフミに対し、ハナコは試験模擬テストで叩き出したあの壊滅的な点数が全て自作自演であった事を明かして先生とヒフミに頭を下げる。イサネからすれば雰囲気や言動からして明らかに模擬テストの悲惨な点数は意図的に取っているものだと察していたので今更といった感じではあるのだが、どこまで行っても部外者なので口を挟まない。
「ヒフミちゃんの言った通り、あの点数は全てわざとです。」
「や、やっぱり・・・!でも、どうしてそんな事を・・・!?」
「ごめんなさい、それは言えません。」
ハナコの自白を追い掛ける様にヒフミが問い詰めるが、今はまだ理由までを話す気はないらしい。だが、皆を巻き込んでまで笑劇を演じるつもりはないらしく、次回以降の試験は真面目にやるとの事だ。
「最低限皆さんが退学にならない様今後の試験は頑張りますので、そこは安心してください。本当に、個人的な理由ですので・・・」
「・・・事情がある事が分かっただけでも十分だよ。ありがとう、ハナコ。」
「い、いえ・・・先生にそこまで感謝して頂く様な事では・・・むしろ、私が謝罪するべき事です。裸で手を突くだけで足りますでしょうか?」
「台無しだよ。」
一先ずヒフミの問題が解決出来た・・・と思いきやすぐにふざけ出すハナコ。これには沈黙を貫いていたイサネも口を開かずにはいられない。ヒフミもあわあわとした様子で脱衣を制止するが、場の空気は軽くなった。そうしてヒフミが落ち着いた数秒後、ハナコがふと問いを口にする。
「所で、この事を知っているのは先生とヒフミちゃん、後は私と一緒に聞いていたイサネさんだけですか?」
解決した問題はあくまでもハナコが意図的に落第点を取り続けるというハナコ本人の問題だけ。彼女の質問にヒフミが肯定をすると同時に、ハナコは考える素振りを見せつつも推理を口に出す。
「なるほど。となるアズサちゃんの不安は試験に起因するものでは無く、私達の知らない別の問題があると。・・・何か知ってそうな様子ですが、敢えて聞かない方が良いでしょうか?」
と同時に静観に徹していたイサネに視線を投げ掛ける。どうやらハナコはイサネがトリニティに居る理由が事故ではない事を察している様子だ。イサネはやられたと言わんばかりの苦笑と共にこくりと首を縦に振る。
「私が根拠不明の情報を言わずともいずれすぐに分かる事だからね。余計な口は閉ざしておく。それに、いずれ推理していけばすぐに繋がる事でもある。」
「ふふ、分かりました。とすればアズサちゃんの件は一旦後回しにして、補習授業部そのものの存在についてですね。この様なトリニティの校則を無視した様な部を一体誰が作ったのか。ミカさん・・・は無理でしょうし、こんな事を企むのはナギサさん辺りでしょうか。ですがエデン条約直前に何故・・・」
イサネの返答は無事受け入れられた様で、ハナコはアズサの問題を区切ると、今度は補習授業部についての推理を続ける。
「むしろ目の前だからこそ・・・?・・・あぁなるほど、そういう事ですね。補習授業部は、エデン条約を邪魔しようとする疑いのある者達の集まりといった所でしょうか。ナギサさんらしいと言いますか、相も変わらず狡猾な猫ちゃんですねぇ。」
「そこまで・・・!?」
数秒の思考の後、ハナコが弾き出した推理の余りの正確さに思わず目を剥く先生。彼女が意図的に実力を隠している事は薄々察してはいたが、その実力がここまでのものだとは思いもしなかった。
「どうせなら纏めて処理してしまった方が効率的、といったロジックでしょうか。なんだか私達が洗濯物みたいな扱いですね。先生はナギサさんから事情の概ねを聞いての事でしょうから、依頼を引き受けたというよりは嵌められたといった形が正しいでしょうか?」
逆に何を知り得ないのか。そう問い掛けたくなる程に真実を言い当ててのけたハナコは、やや悲しそうに目を伏せる。
「わざわざ先生に依頼を出したのもシャーレの超法規的権限を利用するのが目的なのでしょう。ただ監視するだけの檻を作るなら、外部の人間を連れて来る必要などない・・・逆に言えば、先生は純粋に私達のために頑張ってくださっていたのですね。」
「・・・びっくりするくらい強い権力を持つ大人ながら情けない話だけど、ナギサ本人に言われるまでそれに気付けなかったよ。弁解の余地もない。」
「やはり、先生は良い人ですね。ふふふっ。」
軽く腕を組みながら、ハナコの話に耳を傾けるイサネは彼女の言葉から自分の居た世界に似た匂いを感じ取る。浦和ハナコ。彼女もまた、トリニティに入学してからの1年間を重圧と策謀の中で生きてきた人間なのだと。
「トリニティの裏切り者。ナギサ様はそれを私に探して欲しいと仰っていました。」
「なるほど、トリニティの裏切り者・・・ナギサさんらしい表現ですね。ティーパーティーのホストである彼女の計画を妨害した者全てが該当する、とも考えられるロジックですし。」
補習授業部の真相を理解したハナコは、すぐさま部員一人一人が何故こんな場所に放り込まれたのかを考え始める。
「アズサちゃん、は書類の時点で不明な点が多かったので、疑われるのも無理もないですね。コハルちゃんはどうして・・・正義実現委員会への人質と考えれば、まぁ納得は行きますが。」
アズサは書類の時点でまず怪しい。ハナコは最近の言動が不審者のそれだから当然。コハルは正義実現委員会の人質。この3人は成績が悪いという事も共通している上に裏の理由も取れている為候補に上がるのも納得出来ている様だ。だが、
「とするなら、ヒフミちゃんは何故容疑者になっているのでしょうか。ナギサさんと親しかった筈では?テストの成績も、特段問題があったとは思えないのですが。」
「えっ!?私も、やっぱり容疑者なんですか!?」
ヒフミが何故容疑者扱いを受けているのか、ハナコはこれが分からないらしい。うんうんと頭を捻るハナコに、こんな事でリソースを回させるのは馬鹿らしいとして、冷や汗をかいて沈黙する先生を無視してイサネは溜息と共に口を開く。
「・・・少し前、ヒフミはペロログッズの為にブラックマーケットに立ち入ってたんだよ。なんならそこで銀行強盗までやってる。銀行って言ってもブラックマーケットにある闇銀で、金の周りを記録した資料しか盗ってないから多分罪には問われないけど、疑心暗鬼の人間に疑われるには十分過ぎる証拠だ。・・・ねぇ?先生。覆面水着団、万物の天敵に並ぶ程のアウトローだってさ。」
「うぐっ・・・!否定したいけど否定できない・・・ッ!」
「あっ・・・それは、その・・・あぅぅ・・・」
「あらあら♡真面目な子だと思っていたのですが、ヒフミちゃんも随分と大胆ですねぇ♡それに水着で強盗だなんて、なんと自由なのでしょう。正にアウトロー・・・♡」
あっさりと黒歴史をばらされ、挙動不審になる先生とヒフミを余所に「一応話を聞いた感じアビドス高校を助ける為っぽいから」と捕捉を付け加える。それを聞いたハナコもまた、面白い事を聞いたといった風ににこにこと笑顔を浮かべる。
「まぁそういう事。で、更に推測するなら、アビドスが当時抱えていた問題を解決する際、ヒフミはナギサに協力を求めた。ナギサはそれを了承し、その結果としてヒフミはティパーティーお抱えの榴弾砲部隊を指揮した・・・今回はその借りを返すという意味での部長でしょうね。纏めて放り出す前に犯人を知れればそれで良いとでも考えているんじゃないの?もしくはただのでっち上げた甘言か。」
「う・・・そ、その通りです。ナギサ様に呼び出された時に、そう言われました。」
「なるほど・・・これで3人ですね。アズサちゃんについては・・・後でもう少しお話しをしてみた方が良いかもしれません。その他にも幾つか、私の方でも確認しておきます。」
その後軽く今後分かった事があったら3人ないしは4人で共有するとし、ハナコのやれ夜の密会だのなんだのと言った危ない発言を咎める。
「では、明日もありますので本日はここまでという事で。」
「はい、それではおやすみなさい。」
そう言って軽く頭を下げた後に部屋を退出したヒフミとハナコを見送ったイサネは、軽く身体を伸ばして先生に向き直る。
「本当、よくもまぁあそこまで推理できるものね。天才という言葉がこれほど似合う奴はそういないだろうなぁ。ヒマリとも話が通じそう。・・・だからこそ、奇人変人を演じている。」
「ハナコがわざと手を抜いている理由?」
「あれ程の才、勢力争いしか頭にないトリニティの派閥連中はさぞ欲しがるだろうねぇ。それこそ、本人の意思を無視してでも。」
外でなにやらぎゃあぎゃあと聞こえる騒ぎを扉越しに聞きながら、イサネはふと零す。
「何か心当たりが?」
「あんな逸材、組織の頭に据えれば当分は安泰繁栄は確実でしょ。下に付けば甘い汁でも吸えるだろうし。逆に手駒として用いるなら、あれ程有用な駒はないでしょうねぇ。何でもできるんだから。行政も政治も、誰かを陥れる事も。」
「ハナコは、政治に巻き込まれることを嫌って・・・?」
「さぞ失望しただろうね、トリニティ上層部の陰険具合には。それこそ一年生の時はそんな事想定すら出来ないだろうから、素のままの実力を示して・・・多分それに目を付けた上層部の連中にえらい悪質に絡まれたんだろうな。うちの所に来てくれないかって。」
情報を規制された檻の中にも関わらず、ほぼ推理のみで真実に辿り着くという才を披露したハナコ。派閥間の政治闘争が最も激しいと思われるトリニティにおいてこの様な才を示そうものなら、すぐさま注目の的になる事は間違いない。恐らくハナコもまた、あらゆる組織から激しい勧誘を受け続けた結果、全てに嫌気が差したのだろう。
「それで嫌気が差して・・・」と納得した様に自分の言葉を飲み込んだ先生に「本人にはまだ言うなよ?」と釘を刺したイサネは、気持ちを切り替え、先生の座る机の上に置いてあったサイコロ二つを手に取る。
「そんな事より、だ。先生、サイコロで勝負しろ!一昨日の敗北、今この場で捲らせて貰うッ!私が勝ったらホテルに帰らせろ!」
「・・・それがイサネの用?」
闘争心を身体から立ち昇らせ、戦意の極まった表情で椅子に座す先生に迫るイサネ。バスタオル一枚巻いただけとかいう格好でさえなければ、最強の傭兵に見合った様になったのだろうが。
「ゲーム開発部と双六ゲームをした時も、一昨日のサイコロ勝負の時も、運の勝負で勝てた試しが一度たりとてない。そのふざけたジンクスを、今ここで殺し切るッ!!」
「そんな事ある?」
「断トツで最下位だったとも!一つ上の奴と10倍近い差だった事もはっきりと覚えている!出目が1か2しか出ないなんてどうかしてるだろうっ!」
凄まじい気迫だが、言っている事が余りにも馬鹿過ぎる。これでは睥睨するだけで相手を黙らせるイサネの狂気じみた殺意もまるで効果がない。
「・・・分かったよ、じゃあ私から振るね?」
イサネが勝ったとしても要求は特に自分達に難が降りかかる様なものでもない。数瞬の後、先生は勝負に載る事を決め、イサネの手からサイコロ二つを取ると、手のひらで軽く転がして振るう。
「えいっ・・・ん、2と3か。合計5、ちょっと微妙かな?」
結果は2と3で合計は5。前回よりも低い数値で、勝機は十二分以上だ。
「私はカラードランクNo.1なんだ。ステイシスなんぞ目じゃないんだ。
サイコロ二つを拾い上げ、プラスチック素材のそれを破壊しないぎりぎりの握力で握る。
「私だって、私だってなぁッ!並くらいの幸運を享受する事くらい良いだろうが――――!!」
高々とサイコロ二つを握った右手を掲げ、机に向け勢いよく振り下ろす。しかし机すれすれで停止させ、かつ握られた二つの正六面体が綺麗に転がるよう完璧の調整された、強化人間だからこそ為せる業。
―――1と1、合計2。
「・・・」
「・・・」
圧倒的な沈黙が、完全停止した二人の間を包む。十数秒の間、サイコロを眺める先生も投擲後の残心姿のイサネも動かない。そして、結果もまた変わらない。
どう足掻いても結果はイサネの負け。どれだけ凝視してもサイコロは動かない。二人にとって何十分にも取れる十数秒が悠々と過ぎて行き―――
「
深夜の静まり返った合宿所と周囲の森が、一匹の獣の咆哮によってびりびりと震えた。
ハナコのずのーが天才過ぎてイサネを挟む隙間がねぇ・・・
次回、第二次特別学力試験まで
ベアトリーチェの死に様はどうなってくれると嬉しい?
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普通にイサネさんがボコって終わり
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誰も見てない所で誰も知らない内にグサリ
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先生やアリスクの目の前でぶっころ