ウマ娘二次が書きたいという気持ちが抑えられそうにない作者です。でも主人公が設定もりもり過ぎてちょっとやばいw
推定ナギサの手引きを受けた温泉開発部による
それを近くで見ている事しか出来なかったイサネは一足先にゲヘナを出、合宿所ではなく一度ホテルに戻って黒服との情報共有と弾薬装備の補填を行っていた。
『それはそれは、なんとも災難でしたね。まぁ依頼に関係はないと言ってしまえばそこまでですが。クックック・・・』
「カタコンベの入り口がある聖堂付近一帯が警備で埋まってさえいなければ、こんな悠長に待たずに済んだのにさぁ。笑ってないで作戦プランくらい先に組んでおいてよ黒服。」
『組めなかったから貴方に依頼を出したのですよ。破綻ぎりぎりのルートを通り抜けられる傭兵は貴方しか居ないとして。あ、ブーツ底の鉄板はそちらに届いていますか?』
「届いてる。コンバットブーツには装着したよ。やっぱり普段使いのスニーカーで地面を削るのは良くなかったね。靴底がぺらぺらだ。あとそれと――」
愚痴を零しつつも一通りの報告と補填を終えてたイサネは直ぐにホテルを出、合宿所に向かう。
「さてさて、あいつらのメンタルが崩壊していないと良いんだけど。」
深層にある負の感情が表層化してしまった人間はびっくりするくらい制御が効かない。今回の第二次特別学力試験で様々な負の側面と混乱に触れてしまった結果、補習授業部の部員達が第三次試験どころの話ではなくなっている可能性も在り得る。何せアズサを除いて皆一般のトリニティ生である事には変わりないのだから。
そんな危惧を抱えながら翌日、一度
皆の精神状態は大丈夫なのだろうかと心配を胸に玄関をくぐったイサネだったが、壁越しの寝室から聞こえる声は意外にもまだ理性を保てているようにも思えた。
「もし本当に退学になんてなったら、正義実現委員会には・・・もう・・・」
「コハルちゃん・・・」
だが、次いだコハルの言葉が理性こそ保てど心は大分疲弊ないしはダメージを受けている事をイサネに知らせる。崩壊こそしていないが、猶予は最低限しか残されていない。そんな印象だ。
(ナギサにアズサを差し出せば解決する話ではある・・・いや、そもそも先生はアズサがアリウスの人間だとまず知らないんだった。先生の方針云々を抜きにしても、今から犯人捜しは皆の心が壊れかねないな。)
脱却だけを考えるならそう難しくはない。真犯人が誰であれ顧問たる先生が
「私がナギサにあぁ言ったから・・・本当にごめんね。」
「いえ、そのお話を聞いた限りですと先生は私達の事を思って言ってくださったという事ですよね?謝罪なんてとんでもない、むしろ私達が感謝すべき事です。」
(あの時のナギサを反論だけで黙らせるには何もかもが不足し過ぎている。そして何より不足を埋める時間なんて先生には無かった。・・・そうするとこの結果は割と必然ではある、か。取り敢えず、私も合流しよっと。)
天童アリスを取り巻く一件でエデン条約など構っている暇すらなかった先生にとって、突如声を掛けてきた当時のナギサの策略を上回るだけの何かを用意する事など不可能に近かった。所詮他人事だとそんな事を考えつつ、イサネは寝室の扉を開ける。
「もし私がその場に居たら、あの猫ちゃんにもっと酷い事をしていたかもしれません。」
「なら消してこようか?桐藤ナギサを。然るべき報酬を支払うなら暗殺だってやるよ?」
ハーネスを装備し左腰のライフル用ホルスターにアサルトライフル。右腰にはハンドガン。更には愛銃【quid est pax】を肩に担ぐという一般的に見て完全武装状態での登場に一同は目を丸くしてイサネを見る。
「私もすっかり忘れていたよ。権力者信条第12条、臭いものには蓋してポイして炭にするをね。」
「その恰好・・・本当にやる気なの?」
「君らが私にそうしてくれと依頼するならやろうかな。ただ個人的にあれを殺す理由はないし・・・恨みはあるけど。今完全武装している様に見えるのは装備を持って来ただけだね。」
「恨みはあるんだ・・・」
ぎょっとした先生の問い掛けを受け流し、イサネはハーネスを外して自分に割り当てられたベッドに座る。
「流石にそれは出来ないですけど・・・とにかく、次の試験まで一週間。この一週間で90点以上を取れるようにならないといけない・・・」
「そうですね。その上、これ以上ナギサさんが良くない事をしない様見張る必要もありますし。」
現状トリニティで最も強い権力を持つナギサの監視など、当のナギサに既に監視されている者達がいくら集まった所で出来る筈がない。仮に目を付けられていないとしても4人では余りにも人手が足りなさ過ぎる。
「ぐすっ・・・無理。絶対無理よ。ここまですっごい頑張ったのに、これ以上なんて・・・頑張ったもん。でも、これ以上なんて・・・馬鹿な私には無理・・・無理だって・・・うぅっ。」
「コハル・・・」
完全にとばっちりを受けたコハルの心は既に限界だ。少なくともこのままでは足掻く気力すらも失われてしまうだろう。コハルの泣き言を聞いたイサネは一先ず一同に発破を掛けるべく、武装を外して懐に手を伸ばす。
「私の援護も意味無かった訳だが・・・まだだ。まだ3回目がある。まだ足掻くチャンスは残っている。」
「でも、幾らなんでも90点は無理よ・・・っ!それに試験範囲だって3倍だし・・・!もう私の習ってない範囲だって――」
「泣くのも喚くのも、全てが終わってからで良いと思わない?私はそう思うけど。」
コハルの反論を遮り、イサネは懐から分厚く折りたたまれた紙数枚を取り出し、先生に投げ渡す。
「これは・・・なっ!!?い、イサネっ!?これをどこで・・・!!」
取りこぼしそうになりながらも紙束を受け取った先生は首を傾げながら折りたたまれたプリントを広げるが、中に記載されている内容を見た瞬間、目を剥いてイサネの方を向く。
「これっ・・・第二次試験の問題冊子と同じ内容が・・・!?」
「イサネさん、こんな物を・・・一体どこで・・・?」
先生の反応を受け、ヒフミとハナコもまたプリントを覗き込み、同様の反応を返す。無理もない、何せ二次試験での問題用紙と答案用紙は温泉開発部が起こした爆発によって全て紛失してしまったのだから。そんな物とうり二つの代物をイサネが持っていたとあらば驚かない筈がない。
「試験間際での会場変更に温泉開発部への偽情報のリーク。俗に言う汚い手って奴をナギサは使ってきた訳だ。ならその報いってのを受けてたとしても、何らおかしくないんじゃない?」
「まさか・・・」
敢えて答えをぼかして回答すると、先生の顔に一滴の冷や汗が流れる。イサネはそれを気にせず、にぃっと笑う。
「ここに来る前にフィリウスの建物から取ってきた。正しくはコピーだけど☆」
イサネが寄ったある場所というのはトリニティ本校にあるフィリウス分派、それも首長が業務などで日常的に滞在する校舎。ティーパーティーの生徒に扮したイサネは業務を執り行う振りをして校舎に潜入、誰の目にも怪しまれずに問題冊子をコピーして持ち出したのだ。
ばれるかもしれないという可能性はあったが、イサネの目立つライムグリーンの瞳はカラーコンタクトで、整い過ぎて万人の目を引く顔立ちは下を向く事で強引に隠し、ティーパーティーの制服を着て堂々として居れば疑われる事さえなかった。キヴォトスにおいて銀色系の頭髪が珍しくないというのもまたイサネの変装の精度を後押しする要因となっていた。
「だ、誰かに疑われたりとかは無かったんですか・・・?」
「思い付きの偽名使って、帽子を強めに被って前髪を深く垂らしただけで欠片も疑われなかったよ。声色もちょっと高くしただけで疑いもしなかったしな。馬鹿の集まりだよあそこは。」
「・・・何ともまぁ大胆と言いますか、恐れ知らずと言いますか。流石はイサネさんといった所でしょうか♡」
「撃ち合い上等だったんだけどねー。まさか最後まで誰にも気付かれずに学校を出る事になるとは思わなかったよ。ま、実物は盗んでないんだ、何にも違反してないでしょ?」
しれっとそんな事を宣うイサネにはもう呆れる事しか出来ないといった苦笑いを示す先生。イサネはあくどい笑みをそのままに、更に続ける。
「何はともあれ、まだあと一回チャンスが残されているんだ。幾らナギサと言えど自分がシャーレを陥れてまで決めた大前提のルールを破る事は出来ないから、ここが勝負所だ。」
「勝負所と言いましても・・・流石に範囲3倍と合格点90点は簡単には――」
「でも無理とは言わないんでしょ?諦めるつもりはないんでしょう?じゃあ最後の最後まで足掻いてみせてよ。可能性を見せてよ。」
続けられた言葉は極一般的に一部の成功した秀才が毎度の如く言っているありきたりな言葉。一般の生徒からすればそんな不屈の精神なんて持ってたらそもそもこうはならないとすぐに反論できる薄っぺらい言葉。当然ヒフミは難しい反応を示さざるを得ないが、イサネからすればそもそも知った事ではない。
セレンから知識を体系で学んだイサネに学校の学習手順やテスト90点の難易度など分からない。ただ、どん底にしろそうでないにしろ本気で足掻くのなら出来る出来ないなどという話など最早論議にすら上げる必要もないという事だけはここに居る誰よりも理解している。
「本気で退学したくないならさ、出来る出来ない以前にやるしかないと思うんだよね。それしか方法が残されていないんだから。どん底から足掻こうってのに出来る出来ないを論じる奴は一生どん底だと思うよ、私は。」
「それは・・・まぁそうですけど。」
「別に慌てるなとも言わないし落ち着けとも言わない。焦らない方が人間として正しいと思うし。でも這い上がりたいなら、出来る出来ないで躊躇ってる余裕はないと思うんだよね。」
イサネが生まれた世界でイサネが居た場所は、仮にどん底でなくとも生き残るために常に必死になる必要があった。言葉で表現できない感覚的な操作を全く参考にならない言葉から読み取り、運次第で全てが無駄になる様な戦場の知識を頭に叩き込む。そうして初めてリンクスとして四分の一人前になる。戦場に出て帰還して半人前。僚機ありでAFを落として初めて一人前と呼ばれるが、それまでに大勢が脱落して死ぬ。そんな狂った世界。
「本当にその気ならその一回に全霊を賭けろ。でなければあれこれ言う資格は無い。」
一介の傭兵バイトを名乗るにしてはやや覚悟が決まり過ぎている気がしなくもない発言だが、言っている事は概ね事実。
「ナギサさんの動向の監視と言っても、先に動向を把握されている私達が出来る事ではありませんからね。」
「何はともあれ次の試験で全てが終わるんだ。泣くのも叫ぶのも終わってからで良いと思う。そうでしょうアズサ?例え全てが虚しいものだとしても、それは今日最善を尽くさない理由にはならない・・・だっけ。」
「!!・・・そう、だな。落ち込むには、まだ何もかもが早過ぎる。」
ふとアズサに言葉を投げ掛けてみる。その言葉を受けた彼女ははっとした様に顔を上げ、決意に頷く。が、やはりその表情――特に目から別の感情が見え隠れする。
(アズサのあの揺らぎ、どこで表に出て来る事やら。)
失敗した所で死ぬ訳じゃない。その時点でイサネからすれば補習授業部の進退などどうだって良い。仮に退学となったとしても二度と会えなくなる訳ではないのだから。発破を掛ける事などとうに忘れたイサネは、ハナコの音頭に合わせる様にしてベッドに横になる。
(アズサが決壊した時、聖園ミカはどこで動いてくるんだろうか。利害の一致で繋がってるだろうから、臭いものに蓋をしに来るのは確定なんだが・・・)
今のイサネにとって茶番じみた政治はストレスの要因でしかない。故に願う事はただ一つ。
(戦いたいなぁ。理性が介在しなくなるレベルまで、闘争に浸りたい。)
闘争。それ以外に現状イサネが望む事は特にない。
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翌日から、気を一新し勉強に打ち込む補習授業部一同。
「・・・凄いな。試験範囲3倍ってなると、一年間で習うカリキュラムほぼ全てが範囲になるのか。コハルが習ってないって言った所とかでも容赦なく問題に入ってる。」
「凡ミスの一つでもかなり合否に響くラインだよ。90点は。そういう見落とし易い所のケアもちゃんとしないと本当に厳しいと思う。」
「何という面倒臭さ・・・これ普通に諦めた方が―――」
「ちょっとぉ!?昨日あんだけ格好付けてたあんたが何言ってんのよ!!」
「これ全部教えなきゃいけないの・・・?
「馬ッ鹿じゃないの!?この馬鹿っ!傭兵!」
昨日発破を掛けたと人とは思えない程綺麗な手の平返しを見せたイサネにコハルの鋭い叱責が走ったり、
「凄いな、アドバイス通りにやったら理解出来た。」
「計算問題は基礎の法則をちゃんと覚えておくと楽ってのはあるかな。後は躓いた所に次から意識を向けるとか?」
「なるほど、理解した。じゃあこっちなんだが――」
「・・・そこは国家解体戦争で勝利した企業陣営が国家に変わり世界の運営を行うようになった際に成立したパックス・エコノミカっていう体制が正解ね。これによって企業達は莫大なリソースの独占と開発の為の社会秩序の構成に成功するけど、一般市民はくそ狭い居住区画に押し込められて食料生産に従事させられる事になったね。まぁ
「いや、そんな企業がどうのとか問題文にも載っていないんだが・・・」
「・・・先生ぇー!教科書ー!」
「歴史になった瞬間即匙を投げたね・・・はい教科書。」
訳も分からず流れ着いたキヴォトスの歴史の事など教えられる筈もなく、しれっと自分の世界の歴史を教えようとしたり、
「・・・初歩的なミスが多い。状況が状況だから焦るのはごく自然な事。この際だ、いっその事見直しの際は疑心暗鬼になった方が見落としが減るかもね。」
「いやぁ、難しい問題とか解けるとつい油断しちゃって・・・」
「あ?油断だと?死にたいのかお前。」
「えぇっ!?どうしてそうなるんですかぁっ!?」
「当たり前だ腑抜けが。戦場で油断とか相手の銃口に頭を差し出す様なものだぞお前。腑抜けるのも大概にしろ。」
「なんか話がおかしくないですか!?」
フラストレーションからか勉強中にいきなり訳の分からない事を言い始めたりと、イサネも先生と共に教師役を演じながら最後のチャンス――第三次特別学力試験までの時間を過ごす。
「90点ってこんなに難しいのか。この難度でも私は100点取れたから簡単でしょとか思ってたけど・・・」
「うーん、イサネは大分特殊な事例だね。あとイサネの模擬テストに歴史は入れてないからね?」
「・・・無理だよ知らん土地の歴史なんぞ。」
90点というボーダーラインの高さを改めて思い知らされつつも、徐々に徐々に上がっていく点数に最後の望みを託す。
「どうしても消し切れないヒューマンエラーとの戦いだな・・・既に範囲全ての学習は終わったし、もう時間でどうにか出来る問題じゃない。」
「あぅ・・・ご、ごめんなさい。」
「ヒフミが謝罪しないといけないのは点数じゃなくてこれまでのテストすっぽかしてペロロ探しに行ってた事だと思うんだけど。」
「あぅぅ・・・」
合格ラインを越えても次には普通に割っているという事もありつつ、いよいよ試験前日まで時は進んで行く。部員誰かしらの精神の破綻などもなく、全体の進捗で見ればかなり良いと評価出来る一週間。恐らくだが、既に今学年の学習が必要ないくらいはやったのではないだろうか。
「ついに明日・・・ですね。」
第三次特別学力試験が翌日に迫った日の夜。何とも言えぬ緊張感に包まれる室内で、一同は顔を突き合わせていた。
「ま、まさかまた、急に色々変わったりはしないよね?」
「はい、今の所は・・・」
コハルの不安げな問いに答えるはヒフミ。日中から常にスマホにトリニティ学園のHP掲示板を表示させ、急な変更でも対応出来るよう逐次情報の確認を行っていた。どうやら、まだ変更はないらしい。
「確か二次試験の時からナギサとミカに連絡が取れなくなったって言ってたよね?多分だけど、どこかに避難でもしてるんじゃない?一応貴方達ってナギサに容疑者として思われている訳だし。」
「まぁ有り得そうではありますね。あと気になる事といえば、昨日ちょっと本校の方に戻る用事があったのですが、どうにも不自然なくらいに静かだった事は記憶していますね。」
「同伴した私もそれは思ったよ。最低限の職員を除いて、誰も見かけなかったね。教室も全部からだったし。」
現状昨日から静か過ぎる本校以外に異変はないとの事だが、如何せん静か過ぎる本校という時点で既に嫌な予感しかしない。そんな予感に思考を巡らせたイサネは、装備を手に口を開く。
「今から試験会場に潜入して、何か不審なものがないか確認してくる。絶対何かある。」
「それは・・・大丈夫なんでしょうか?警備の人に見られたりとかは・・・」
「多分警備は居ない。恐らくだけど、明日貴方達が試験を受けている最中に何かしてくる可能性の方が高い。それこそ2回目の時みたいに。遅くなるから、先寝てていいよ。」
言うや否やハーネスを装備したイサネはベッドから立ち上がり、寝室を出る。途中先生やコハルが何か言っていた様な気もするが、振り返る事はなかった。
(ナギサが何を企んでいるのかも気にはなるけど・・・アズサの方が先なんだよな。)
現在時刻は午後11時02分。そろそろ消灯となる時間であり、同時にその一時間後くらいにアズサが夜な夜な一人で抜け出す時間でもある。毎度毎度皆が寝静まった中の動く音に反応して起きてしまうので、平時における睡眠妨害にも終止符を打ちたい所だ。
玄関で靴――新調した鉄板仕込みのコンバットブーツを履き、外に出る。そして合宿所の正門から出ていく振りをして森に入る。時間を見つけては行った散歩兼外部調査により近くに丁度使われておらず、密会に適してそうな建物は全て把握済みだ。
(何の任務があってトリニティに来て、百合園セイアと何の密約を交わしたのかは知らないが、隠すならもっと徹底するべきだったね。ハナコには最初の方から勘付かれていたぞ?)
常人なら昼間の段階で辛うじて合宿所を認識できる程度の位置まで森を進み、大きめの木の陰に潜む。普通なら発見が困難であり、夜間ならまず不可能な位置。それでもイサネは強化手術によって夜闇の中でも通じる視界を以て、監視を始める。
気配を殺し、時間が過ぎるのを待つ。ここから本校となるとそこそこの距離があるが、イサネにはコジマ粒子による自動車を優に越す飛行がある。本校に行って、会場を確認して、戻ってくるくらいすぐに出来る。
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待つ事一時間と数十分後。
(見つけたぁ。)
想定通り、アズサが合宿所の正門から外に出る姿をイサネの目は捉える。迷う事もない、森に潜み、アズサの探知範囲から外れた距離で尾行を始める。
(正門から出て・・・やっぱりそう進むよねぇ。で、ハナコも追い掛けてると。最終日だからって事だろうけど・・・見つかったら大分厄介だぞ。)
アズサの追跡は全く以て順調。その数十m後ろにハナコも付いて来ているのが確認できるが、これも想定の内。イサネは建物の屋根伝いに移動する事で確実に意識の外に出た状態で二人を付ける。
(やはりこの建物だったか。流石に分かり易すぎじゃないの?・・・あーあれか、アリウスには飲食店を利用する金もない感じか。ふっ、潰れる為に生まれた様な軍隊学園だねぇ。)
目的地はイサネの予想ど真ん中。合宿所から降りてすぐの街の外れにある廃ビル。そこにアズサが入り、遅れてハナコが数瞬の躊躇いの内に入ったのを確認したイサネは尾行を切って少し離れた適当な一軒家の屋根に上り、アサルトライフルにマウントされた可変スコープで廃墟の中を覗く。
(居た。あれが連絡役、アリウスの校章は流石に横だけじゃ見えないか。)
倍率を弄り、軽く各階層を探ればすぐに見つかった。身長は恐らくイサネと同じくらいの長身、青みの掛かった黒の長髪に引き締まってはいるがやや痩せ気味な体躯に腹出しのノースリーブインナーを着、上から白のコートを着崩す様に羽織っている。顔は硬質素材のマスクをしている様で詳しくは見れないが確実に兵士の目付きをしている事だけは確認できた。
(・・・あの顔が、あいつの同胞を痛めつけた時にどれくらい歪むかでどれ程の兵士か評価するとしようか。お、アズサ来た。ハナコは2階で盗み聞きか。)
イサネが3階フロアに居る人物の概要を把握したと同時、階段からアズサが姿を現すのをスコープに収める。スコープを少し下げてやれば2階の階段で聞き耳を立てるピンク髪の少女――ハナコの姿が確認できる。
(あー何か喋ってるな。ま、アズサとアリウスの人間が繋がってるのを見れればよかったし後は内容なんてどうでも良い。)
会話の内容などどうでも良い。仮に自らの存在がアリウスに割れたとしても、その対策の上からベアトリーチェを殺せば良いだけ。何も気にする必要はない。そう考えつつ銃を下げて本校の方に向かおうとしたイサネ。
(さて、本校の方に行きま――)
「くそ、こんな夜中に人の家の屋根に悪戯なんかして・・・」
「!?」
完全に思いもよらぬ所から聞こえた声に心臓が跳ね上がる。間違いない、イサネが今屋根を無断で借りている家の家主だ。音の響き的に確実に外に出てきたと思われる。
(ちょ・・・!?ぐ、偶然にしては質が悪すぎるだろうがッ!!)
悪態と共にイサネは玄関と反対側の屋根にこっそりと移動し、そのまま家主の反応を窺いつつ地面に降りる。ここはキヴォトス、盗人が見つかれば通報よりも先に銃撃戦になるのは確実だ。
「・・・気のせいかぁ?でも強い風なんて吹いてないしなぁ。」
(あっぶねぇ・・・ッ!こんなので驚かされるのは勘弁願いたいんだが!)
だが、幸いな事に家主はイサネの存在に気付く事なく家の中に戻って行った。イサネは慌てる気持ちを何とか静め、急ぎ足でその場を去る。
思いもよらぬトラブルこそあったが、一先ずやるべき事は達成できたし誰にも見つかっていない。イサネは気持ちを切り替え、コジマ粒子を操作して再び夜のトリニティの空を舞う。
問題冊子窃盗の下りが大分強引過ぎるかなって思ったw
次回、エデン条約編のラストバトルが始まりもす。
ベアトリーチェの死に様はどうなってくれると嬉しい?
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普通にイサネさんがボコって終わり
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誰も見てない所で誰も知らない内にグサリ
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先生やアリスクの目の前でぶっころ