透き通る世界で二度目の答えは出せるのか   作:回り針

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ついにシャーレの先生とご対面です。

これの為だけにわざわざアヤネ=サンにはお手紙出すの遅らせてもらってます。
だ、だって、別にシャーレ赴任してすぐお手紙来る訳無いじゃないですかーやだなー(棒読み)

でもアカツキノ=ホルスサンがいるからダイジョブダイジョブ(汗)




大人とは

「本日は連邦生徒会にお越し頂き、誠に感謝申し上げます。標根イサネさん。」

 

 

「まぁ、呼ばれたからね。で、わざわざ直接会ってまで依頼したい事って?七神生徒会長代理。」

 

 

 

ここは連邦生徒会本部、サンクトゥムタワーと呼ばれるキヴォトスの行政の中枢。その建物の中、応接室にて、脚を組み、腕を組み、白の上品なソファにまるで我こそがここの主だと言わんばかりの風格を漂わせて背凭れに背を預け、肩まである灰銀色のストレートヘア―を流し、ライムグリーンの瞳を物理的にも目つき的にも僅かにギラつかせる少女――標根イサネは自分の目の前机を挟んだ向かいのソファに座る、ほぼ黒に近い青と裏には鮮やかな青の二色を有する足まではあろう長髪に青の瞳を持ち、キリっとした美貌を持つまさにthe・堅物の様なこれまた少女と言い難い雰囲気を感じさせる少女――七神リンを良く言えば見据える、悪く言えば睨みつける様にして目線を向けている。

 

そのイサネの纏う空気は、まさにネクストのいる戦場そのもの。応接室内にあらゆる種の殺意が蔓延し、中が分からない筈の部屋の外から見てもそこだけ異様な圧力を醸し出しており、連邦生徒会の役員達もその部屋の前を通る時だけ、駆け足で部屋からなるべく遠い通路の端を通るという明らかに異常な状況となっている。

 

部屋内に居るリン以外の連邦生徒会の役員達はもっと悲惨だった。その異常とも過剰ともとれる殺意を一切の隔たり無しに浴び続けている為、その顔が青くない者はおらず、既に体調不良で倒れて運び出される者も居た。そしてそんな戦場もかくやと言う中、リンは切り出す。

 

「今回の依頼は連邦生徒会より、D.U.シラトリ区の校則違反者もといその地区で暴動を起こしている者達を連邦捜査部シャーレ顧問の先生主導の元、ヴァルキューレ警察学校の生徒達で掃討する作戦に随行し、先生の指揮下で作戦遂行の援護をお願いします。」

 

D.U.。キヴォトスと言う学園都市の首都にあたるエリアだ。連邦生徒会もその下部組織のシャーレも全てD.U.に位置している。

 

「ふぅん・・・ヴァルキューレ、ねぇ・・・」

 

イサネがそう呟く、その様子は明らかに実行部隊であるヴァルキューレに対して良い印象を持っていないというのが透けて見えた。

 

ヴァルキューレ警察学校。キヴォトスで特定の自治区を持たず、キヴォトス全域の治安維持を負ういわゆる警察組織だ。特定の自治区を持たない代わりにキヴォトス各地に校舎が存在するという警察機関らしい仕組みなのだが、イサネが想像する通り全体の練度が低いというキヴォトスという銃社会の治安維持組織として致命的な問題を抱えている。

 

勿論、優れている者が居ない訳では無い。例を挙げるなら狂犬の異名をとる公安局の局長、尾形カンナ。これまで数々の修羅場を潜り抜けてきた叩き上げの軍人・・・ではなく警官だ。と、このように突出した者が居ない訳では無いが、全体の平均的な練度とその者達の実力に開きがあり過ぎる上、今回の作戦はその尾形カンナを筆頭とした実力者が諸事情によって作戦に参加出来ないという状態で行われる作戦となる。そう、端的に言って無謀な作戦になる。

 

「質問しても?」

 

「構いません。」

 

イサネはリンに質問の許可を貰い、発言をする。二人の前の机には今回作戦が行われるシラトリ区の地図と、作戦開始位置に青のマーカー、敵勢勢力の存在が確認されている所は赤のエリアとして色が付いている。

 

「まず疑問が幾つか。この作戦においてヴァルキューレの実力者は諸事情によって参加できないと聞いている。私個人の意見ではあるけど、ヴァルキューレ全体の練度を考えた時に実力者無しにこの作戦の遂行は殆ど無謀に近いと言えるが、本当にこの時じゃないといけないの?作戦の実行日をずらすなり方法は取れるはず。」

 

ヴァルキューレの平均練度の低さから来る作戦の失敗を指摘するイサネにリンは、

 

「この作戦の実行日時はこれでもう変わりありません。防衛室からこの日時での実行を強く望む声が多かったので。」

 

「・・・今すぐ防衛室の室長をここへ呼んで来い。私自ら叩き殺してやる。」

 

更に部屋の空気が重くなる。

 

「・・・連邦生徒会の本部での暴力行為は控えてください。それに、防衛室も彼女らなりの考えがあっての事だと思われますので。」

 

イサネの殺人発言にリンは溜息をつきながらそれを咎めつつ、反論を述べる。しかし、イサネはその反論をバッサリと切り捨てる。

 

「無い。いくら敵の都合が云々で決めた日時だろうがこちらにまともに戦える人材がいない時に実行日を指定するのは戦略的に馬鹿のすることだ。どうやら連邦生徒会の防衛室には碌に戦術を理解している奴が居ないみたいだな。挙句に戦力不足を金でしか動かない傭兵で賄おうなど、これまで連邦生徒会長の居ない中で各学園の問題に一切の介入をしなかった連邦生徒会のとる行動とは思えないな。」

 

それについてはリンとて何も言い返せない。事実そうだったから。サンクトゥムタワーの行政権が実行不可になったという事情があったがそれは言い訳でしかない。

 

「はぁ、まぁ、良いや。その金で動く傭兵は私の事でもあるし。次の疑問。そのシャーレの先生?っていう人物の作戦指揮は信頼できるものなの?聞いた話だと銃弾の一発が重症になるって聞いているけど。」

 

かつて自分もそれに近い身であったことを思い出しつつ、疑問を話す。それに対しリンは、あくまで淡々と、

 

「はい。そこにつきましては問題ありません。先生の指揮能力は確かなものです。実際に先生の指揮下で戦った生徒曰く、いつもより戦い易かった、いつも以上に力が出た。との証言があります。」

 

「えぇ?なにそれ、薬でも吸わせてんの?怖いんだけど。」

 

その評価に思わず引いてしまうイサネ。指揮によって戦闘がやりやすくなる事についてはそもそも誰かの指揮下で戦ったことが無いから分からないが、いつも以上に力が出るの最早指揮でどうこうなる問題ではない。

 

「それは流石に無いです。この目で確認しましたので。」

 

「えぇ・・・じゃあ、超常的な何かって事?怖すぎる・・・」

 

「超常的かどうかは不明ですが、先生にある種の特異性があるのは事実と言っても差し支えないでしょう。会長の失踪後、我々では起動すら出来なかったオーパーツ、シッテムの箱を起動させたのですから。」

 

「特異性、かぁ・・・」

 

自分が人類における特異性の塊(最悪のイレギュラー)として人類の殺戮に勤しんでいた事を思い出す。

 

(その先生っていうのが、イレギュラーにあたるなら、見てみる価値はありそうか?あるか分からない対立の可能性の為にも。)

 

少しの逡巡の後、イサネは決断する。

 

「分かった。その依頼、受けよう。圧倒的に戦力が不足しているが、まぁ、やれるだけやってみよう。」

 

「ありがとうございます。では、報酬についてですが・・・」

 

「全額後払い。額はそっちでちゃんと働きに見合う額にさえなってればそれでいい。じゃ、私は準備があるからこれで。」

 

正直、報酬よりも先生という人物がどういう存在なのかに興味が湧いたイサネは報酬の件をリンに丸投げし、部屋を出る。腐っても連邦生徒会だ、報酬の未払いや働きに見合わない額は提示しないだろう。そういう信頼がリンから見て取れた。最も、そういった真似をしたとて、大した問題ではない。破った契約の代償を払ってもらうだけだ。

 

 

 

――――血と契約(裏切り)の代償を。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

2日後、D.U.シラトリ区

 

 

 

 

様々な建物から街の景観を壊さない様に上手く配置されている町並みで標根イサネはヴァルキューレ公安局と警備局の生徒に混じり、シラトリ区に巣食う不良を筆頭とした魑魅魍魎を相手に掃討戦のはずが、何故かこちらがシラトリ区から叩き出されない様に防衛戦を展開せざるを得ない状況で撃ち合っていた。

 

「うわっ!バリケードが吹っ飛ばされた!」

 

「こっちもう持たないって!救援はまだなのか!?」

 

そして、その防衛戦も、既に前衛の半分がやられ、最早援護所の話ではなくなっていた。

 

「おいっ、前衛の穴を埋めに来いッ!!ここから叩き出されるぞッ!!」

 

イサネは手にしたアサルトライフルで、正確に敵を撃ち抜きながら後ろの遮蔽から動く気配の無いヴァルキューレの生徒に向け怒声を放つ。

 

「イサネさん!そこまで向かう遮蔽がもう駄目です!」

 

「うわあぁっ!攻撃が激しすぎる!遮蔽から出れそうにない!」

 

「あぁもう・・・!」

 

戦線を押し込まれ、前衛の生徒達が一人、また一人と倒されていく。

 

そう、こんな数機のノーマルACで何十と言うノーマルACの相手をする様な戦いをしているのには、ひとえに先生の到着が遅れているという致命的な問題があった。どうやら先生が向かっている所にこの日に限って訳の分からない暴動が発生し、先にそっちの指揮を執っている為に到着が作戦開始に間に合わないという連絡が作戦開始ギリギリに伝えられた。その情報伝達の悪さに思わず点検中の予備マガジンを握り潰してしまった。

 

しかし、どうにかここから動かないとこのままじりじりと後退させられ、いずれはシラトリ区から撤退せざるを得なくなってしまう。イサネ単独なら好きに暴れれてしまえばそれで殲滅できるが、部隊が居るとなると迂闊なことは出来ない。しかし、イサネは依頼の失敗という結果よりも、このまま先生の顔を拝むことが出来ないまま帰ることの方が嫌だった。

 

(一応やる気はあるみたいだから、まだ留飲を下げられるけど、どうしようか、私がもっと前行って暴れるか?でもそれだと他の生徒達が・・・いや、信じよう。例え駄目でも信じてたのにって言えば許されるはず・・・よし。)

 

意を決し、これまで両手に1丁持っているだけだったアサルトライフルを右手に持ち、サスペンダーに装備したスモークグレネードを2つ外し、ピンを外さず足元に置く。そして背中に掛けたもう一丁のアサルトライフルをスモークグレネードのすぐ横に置き、スモークグレネードのピンを抜き、一つは自分の足元に、一つは敵の前面に投擲。

 

軽い破裂音の後に、吐き出される大量の煙。それがほぼひと固まりになっていた不良たちの視界を塞ぐ。

 

「うっ!」

 

「スモークグレネードだ。気を付けろ、あいつらやっぱいい装備持ってる!」

 

煙が吐き出されたのを確認し、イサネはアサルトライフルを両手に2丁持つ。そして体中にコジマ粒子を巡らせ、PAモドキを張る。足が地面から10cm程浮く。そして俗に言うホバー移動による高速機動で煙から飛び出し、正面に掛かり切りになった不良たちを片っ端から銃撃していく。

 

「うわぁ!なんか出てきた・・・ってはや!」

 

「ねえ、弾当たらないってこんなの!うげぇっ!?」

 

高速で地面を駆けながら二丁のアサルトライフルで銃撃する姿はまさにラインアークの白き閃光、ホワイトグリントの戦い方のそれだった。しかし、ホワイトグリントと違う点はホワイトグリントが守護神なら、今のイサネの戦い方は味方への流れ弾すら気にしない、破壊神の様な戦い方だった。不良たちは時速200km近くで機動しながら時に空を飛び、正確に頭に銃撃してくるイサネに反撃すら出来ず、一方的に倒されていく。

 

そしてイサネのアサルトライフルはドラムマガジンを使っていないのにも関わらず、その弾丸の雨は途切れる事がない。見ると、2丁拳銃ならぬ2丁自動小銃スタイルでありながらとても器用にリロードをこなしている。

 

「はははははっ!!これだよ!私の戦い方は!!・・・まぁ、この程度ならPAモドキを展開してこんなネクストみたいに戦う必要なんて無いんだけどさ!」

 

リンクスとしての戦いが出来る喜びと、それの為に、わざわざ必要以上の実力をお披露目している事に対する自嘲を叫びながら、まるでネクストがノーマルを落とすかのように一方的に殲滅していく。

 

そして、両手のアサルトライフルの弾を撃ち切ったことを確認するとアサルトライフルを投げ捨てる。と同時に超加速。不良達の密集陣形に飛び込む。

 

 

「あーっはっはっは!!吹き飛べぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

高笑いと共にコジマ粒子をチャージ。イサネのPAモドキの膜が緑に染まる。そして、

 

 

 

 

 

―――――解放、大爆発。

 

 

 

 

 

圧倒的な緑の光が場を支配する。それを受けて起きていられる者なぞ何処にも居ない。ただただ圧倒的な力の前に吹き飛ばされ、叩き伏せられ、薙ぎ払われる。

 

 

――アサルト・アーマー

 

 

こちらも、ネクスト規格では無いので正確にはAAモドキになるのだが、それでも、半径5m以上の緑の衝撃波もとい爆発は、そこに居た不良を吹き飛ばすのには十分すぎるものだった。・・・というかむしろちょっと過剰である。

 

 

緑の光が消え、残っていた粒子も消えた頃、イサネの周囲は破壊の一言で片付けられる様な惨状になっていた。まず舗装された地面はコンクリートが吹き飛ばされるか捲れあがり、イサネの周囲に居た不良は皆吹き飛ばされ、ヘイローが消失していた。

 

AAモドキの範囲の外に居たおかげで被害を受けなかった不良たちの内の誰かがポロリと零す。

 

「な、なぁ、あいつ、天敵じゃないか?」

 

「え?天敵ってあのブラックマーケットで・・・」

 

「だとしたら不味くない?殺されちゃうよ。なんでも躊躇なく人を殺して回るって聞いたことあるよ。」

 

「こんなのが居るなんて、聞いてないよぉ・・・」

 

誰かの呟きを皮切りに次々と不良たちから出てくるその荒唐無稽な話に、不良の士気も下がってい

く。

 

(また、無い事言われてる・・・もう、修正の効きようがない・・・)

 

一方で、また有る事無い事が本気で信じられているという事実にイサネの士気も一緒に下がっていく。

 

 

「あらあら、上手く扇動したつもりだったのですが・・・どうやら、お話が足りなかったようですわね?」

 

 

鈴の様に、しかしどこか恐怖を感じさせる声。イサネははっとして声の主を探す。そしてそれは案外すぐに見つかった。

 

 

――不良諸共イサネを襲った爆発によって。

 

 

幸い、イサネの反応が間に合い、爆発の外側ギリギリまで退避が間に合ったおかげで、強い風圧によって顔を背けるだけに済んだ。しかし、巻き込まれた不良達は完全に伸びてしまっている。

 

黒煙の中から出てきたのは、美しい黒髪に特徴的な狐耳、狐のお面を被っているおかげでその素顔を見る事が出来ない。そして所々に桜の紋様が描かれた黒を基調とした和服とセーラー服を合わせたような制服を着ている。そしてその相貌はイサネを見つけると、

 

「おや?その服装、ヴァルキューレの者ではありませんね。一体どちら様なのでしょうか?まぁ、私には関係の無い話ですわ。せいぜい踊ってくださいな、風に舞う桜の花の様に。」

 

言うや否や、手に持った古風な小銃を向けてイサネに一直線に突っ込んでくる。イサネは飛んでくる弾を避けるか気絶した不良を盾代わりにして凌ぐ。反撃に盾にした不良の持っているサブマシンを狐の少女へ向けて弾幕を張るように掃射。接近されない様に弾幕による壁を作る。

 

弾幕を避けるために足を止めた狐の少女に向けて盾として持っていた不良を全力で投擲。豪速で飛んでくる人間砲弾に、足を止めた直後の狐の少女も反応を遅らせながらも対応を間に合わせる。小銃の銃身で不良の体を受け、その衝撃を喰らいながらも銃身を横に薙ぐことで完全な直撃を避ける。

 

イサネはこれ好機と不良を投げた後に拾っていたアサルトライフルを右手に持ち、走り出す。引き金を引きながら狐の少女へ接近するも、狐の少女も建物の隙間を上手く使い、所々でイサネの足や腕などへ向けて小銃を撃ち、速度差で劣る分の距離を稼ぐ。

 

そしてイサネの持っているアサルトライフルの弾が出なくなる。弾切れだ。イサネは手に持ったアサルトライフルを狐の少女に向かって投げつける。その銃身は、走っている状態で投げられたにも拘らず、まるで小さな質量弾の様だ。狐の少女はそれに反応し、飛んでくる銃へ向けて発砲。数発の弾丸を受け、投擲されたアサルトライフルはあらぬ方向へ飛んでいくも、それこそがイサネの狙いだった。

 

「まずは、王手。」

 

「っ!?」

 

全く別の通路から、イサネが飛び出してくる。そう、苦し紛れのアサルトライフルの投擲は視界を塞ぐためのブラフ、もといフェイント。狐の少女がその迎撃に意識を向けていた数瞬で、彼女の目の前まで接近して見せた。

 

イサネが右腕を引き絞る。その細腕は緑に輝く粒子を纏っている。狐の少女はその右腕に本能的に危険を察知し、その後の事は考えずにイサネの飛び出してきた方向の反対、少女から見て左にダイブ。イサネの右拳は少女の居た場所を通り抜け、後ろの建物の壁を打ち抜く。その直後、

 

 

轟音。

 

 

イサネの右腕に纏われていた緑の粒子が炸裂し、緑の粒子による爆発を起こす。その衝撃で建物――ビルのの1階から2階までの一部が抉られたかように吹き飛び、ビルの中が露出してしまっている。その様を見て、狐の少女はその驚異の威力に驚く。こんなものを受けてしまえば、気絶はおろか、五体が満足でいられるかどうかも怪しい。

 

 

 

イサネはものの思い付きでやってみた事が思いのほか上手くいったことを喜んでいた。

 

(おぉー、コジマ粒子が扱えるならもしやと思ったけど、コジマブレードみたいに指向性を持たせての運用が出来るね。しかし、なんと言うか、こんなんでも仕組みの観点から見ればこれも立派なコジマブレードっていうのがなぁ・・・)

 

コジマブレード。ネクストの近接兵装の一つだが、ブレードとは名ばかりで、その実態は対象へ向けて指向性を持たせたコジマ粒子を炸裂させるだけという名前詐欺な兵装だ。威力はお墨付きだが、射程が短く、これも高速で動き回るネクストに当てるのは難しい。最も、ただネクストの腕に金属の塊を装着しただけという最早兵装と呼べるかも怪しい代物があったが、それに比べればこれはれっきとした近接兵装だと言えるだろう。

 

自分の拳を眺めながらそんなことを考えているイサネに、その一撃を辛うじて避けた狐の少女は、既に起こしていたその身をこちらへ向けると、

 

「その一撃には改めて警戒をする必要が出来てしまいました。それに、もう時間切れの様ですので、本日はここで失礼させて頂きますわ。」

 

と、言い、軽く一礼。その場から立ち去ろうとする。

 

「あ、ちょっと待ってよ。あの――」

 

「ふふ、相手に待てと言われて待つほど私もイノシシではありませんもの。では、またいずれ。」

 

「モモトーク交換しない?」と言う言葉がイサネの口から出る前に、その少女は何処かへと走り去っていく。その背を見ながら、イサネは心の中で確信していた。

 

(あの子、私と同類だ。周りの事など考慮しない、自分本位の破壊者。でも、あの目は、死体を知らない。自らの手で人を殺す感覚を知らない。まだ、まだ無垢でいられる存在。でも私は、血に塗れている。人の死が、人の血が、その気配がこの体にこびりついてもう落ちない。)

 

虐殺者以前にそもそもリンクスとして人を殺してきたイサネ、もといイレーネにとって、今更そんなことを思った所で何も感じないし、思わない。だが、つい、なんとなく考えてしまう時がある。今の様に人の本質を知った時だ。あの狐のお面の少女には、どこか自分と似ている部分がある事を感じた。

 

「あー、考えるの止め止め、さっさと残党狩りに戻らないと・・・」

 

思考を切り替え、後ろを向くと、後方に作戦開始時には止まってなかった装甲車がある。そして、その近くで通信機片手に何か喋っている人が居る。しかも、その頭上にヘイローが無い。間違いない、先生だ。どうやら間に合った様だ。先生と思わしき人物に接触するための名目を考えていると、向こうから接触してきた。

 

「君がリンちゃんの言っていた傭兵だね?えーっと、標根イサネで合ってるかな?」

 

優しく、暖かな声色でありながらも、そこに確かな芯を持った女性の声。ふと考え事で俯いていた顔を上げると、そこにはイサネよりも僅かに身長の低い女性が居た。先生だ。シャーレの白いワイシャツと黒のスーツズボンを着、他に一切の装飾品の無い至ってシンプルな社会人と言ういで立ちだ。

 

「うん、合ってるよ、改めて自己紹介を、私の名前は標根イサネ。生粋のアルバイターだ。」

 

「・・・生粋のアルバイター?」

 

「そう、金さえ払えば何でもお任せ!草むしりから襲撃依頼までなんでもどうぞ!そう、我こそは生粋のアルバイター、標根イサネ!」

 

先生含めたその場が静まり返る。

 

「あれ、私なんか変なこと言ったかな?」

 

「イサネ、一応戦闘中だから、そういうのは止めようね。」

 

優しく諫められる。どうやら面白い自己紹介による好印象の持たせ方は失敗した様だ。イサネは先生の言葉に返事をし、意識を切り替える。

 

「で、先生、私はどうすればいい?一応先生の指揮下で動けとは言われているけど。」

 

「そうだね、ぱっと見だけど君はかなり出来そうだし、基本は最前線で好きにやっていいよ。相手の出てきた位置とかはこっちでオペレートするから。」

 

交戦している所など一度も見ていないのにも関わらず、イサネの立ち振る舞いから実力者であることを見抜いたらしい先生はイサネに大まかな指示を出す。

 

(なるほど・・・まさか、一目見ただけでで人の戦闘能力を把握するなんて、流石に驚いた。とりあえず、先生の言うとおりにやってみよう。どうやらリンの言葉もあながち嘘ではないみたい。)

 

「了解した。ストレ・・・標根イサネ、行きます!」

 

キヴォトスに来てから一度もやってなかった掛け声。つい「ストレイド、出る!」と言いかけつつも、そのまま不良へ向かって突撃する。途中、再配置したのか、バリケードが再び設置され、前衛と後衛で上手く戦えている。そして時折聞こえてくる先生の指示によって、先程まで一方的に崩されるだけだったヴァルキューレの生徒達に趨勢が傾きつつある。

 

『イサネ、早速だけど、相手の右側から攻撃して。そしてそのまま敵陣に深く切り込んで。前衛の皆!、相手の動きが乱れたら前進して。後衛はそのフォロー!』

 

「了解。」

 

短く返事を返し、そのまま不良達の右側に居る生徒に向けて突撃。ショットガンを持った不良に狙いを定め、撃たれる前にショットガンの銃身を掴み、そのまま捻ることで無理矢理ショットガンをもぎ取る。空いた片手でその不良の首を掴み上げ、そのまま横を向いて投擲。いきなり仲間が飛ばされて来た事で動揺が広がった隙に敵陣深くまで切り込む。

 

「て、天敵だぁっ!」

 

「ひぃぃいぃぃぃ!?来ないでぇぇぇ!!」

 

「お前なんか、こ、こ、こ、怖くねぇぇぇ!」

 

悲鳴を無視してショットガンの引き金を絶えず引き続ける。そしてその間も、先生の的確なオペレートによっていつも以上に私の動きは効率化されていた。

 

(これが、先生っていう奴なのか・・・イレギュラーかどうかは分からなかったけど、ある種の特異性を備えているというのは、事実みたいね。)

 

弾倉内に弾の無くなったショットガンを鈍器代わりに振り回しつつ、イサネは先生と言う存在について考える。

 

(いつも以上に力が出るというのは理解出来ないけど、いつも以上に自分の動きを客観的に見ることが出来ている。次の敵の取捨選択がいつも以上に容易に出来る。摩訶不思議な力だ。)

 

一人の不良の足を払い、こけた所に振り上げたショットガンを思いっ切り振り降ろす。硬いものが皮膚越しに頭蓋を叩く鈍い音を鳴らし、その不良のヘイローが消える。と、同時にショットガンが真ん中からひん曲がり、使えなくなる。

 

(確か、リン曰く、先生は大人だと言うが、それと何か関係でもあるのだろうか。単純に年齢での話なら私だって19だ。多分もう大人だろう。だが、それ以外の意味とは?)

 

ひん曲がったショットガンを適当に投げつけ、今度はアサルトライフルを持っている不良の片腕を両手で掴む。そのまま背負い投げの要領で地面に叩きつける。そして近くでこちらに銃を構えている不良2,3人に向かってハンマー投げの様に遠心力も併用して投擲する。そして落ちていたアサルトライフルを拾い上げる。

 

(・・・私と先生で違うものとは?ヘイローの有無?)

 

アサルトライフルを掃射しつつ、次の標的へと走り出す。

 

(いや、分からないものを無理に考えても何もない。今は目の前のやるべきことをやればいい。)

 

標的をした5人で固まっていた不良を叩きのめし、今度は大きな集団へと身体を向け突撃。イサネの体に薄い緑の膜が展開される。それと同時に集団の先頭に走力を乗せたドロップキックを見舞う。先頭数人が吹き飛んだのを確認し、更に奥へ奥へと身体を割り込ませる。

 

(今の私は、独立傭兵の標根イサネ。報酬と引き換えにあらゆる依頼を遂行する者。)

 

イサネの体を覆っている薄い緑の膜がその輝きを増す。AAモドキだ。その輝きは瞬く間にイサネを覆い隠し、解放される。付近に居た不良達が成す術も無く吹き飛ばされる。そしてそのタイミングで、先生から通信が入る。

 

『イサネ、戻っておいで。君のおかげで相手は逃げ出し始めた。裏から制圧の部隊が挟み込む形になっているから、そこはヴァルキューレの皆に任せて、後退して。』

 

イサネの活躍を労う言葉。リンクスとしてネクストに乗っていた時から殆ど言われる事の無かった言葉。いや、セレンは時折言ってたな、調子に乗るなよという言葉と一緒に。

 

(先生は、セレンとは違うタイプのオペレーターもとい指揮官。っていうか、セレンは殆どこっち任せだったし、何ならあの人も前線で戦う人だったし、オペレーターではない・・・?)

 

今更になってセレン・ヘイズと言う人の本職がオペレーターではない事を思い出しつつ、先生の元へ向かう。

 

 

 

―――既に趨勢の決した戦場に背を向けて。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「イサネさん、今回の作戦での活躍、お見事でした。作戦立案を行った防衛室室長もその活躍に称賛の声を上げていました。」

 

「ふぅん・・・なら、その防衛室の室長、一発ぶん殴っても問題ないよね?先生の指揮と言う特異性に頼ることが前提の作戦を立てるというのは、少し調整すればどうとでもなる状況でするものじゃない。」

 

 

ここはサンクトゥムタワー、応接室・・・ではなく、生徒会会長の執務室。そこで、先生と生徒会会長代行の七神リン、そしてイサネの3人で今回の依頼についての話し合いをしていた。

 

「だから、連邦生徒会の本部での暴力行為は控えてください。」

 

「・・・もしかして、前もこんなこと言ってたの?イサネ。」

 

リンがイサネの暴力発言を咎める声に先生も反応する。

 

「・・・だって、ヴァルキューレのちゃんと動ける者が居ない状態での作戦強行はおかしいって。あまりヴァルキューレを悪く言うつもりは無いけど、あの数に対しての全体の練度が足りなさすぎるんだって。それなのにこの日時を指定だって?あれは戦いを理解してない。」

 

「イサネ、流石に暴力発言は良くないなぁ。」

 

イサネの口からすらすらと出る防衛室の戦術的批判という名の言い訳に騙されず、先生は優しく、それでもしっかりと伝わる声でイサネを叱る。

 

「はぁ~い。ごめんなさぁい。」

 

流石に分が悪いと感じたのか、若干投げやりに謝罪するイサネ。

 

「本当に理解した・・・?」

 

「はぁ、まぁいいです。ここでの暴力行為さえしなければ。」

 

ちゃんと反省しているのか怪しむ先生と、溜息交じりに話を変えるリン。

 

「それで、報酬の件ですが、一先ずこの額でどうでしょうか。こちら側としても初の試みになるので、参考になる資料が無かったというのは言い訳でしかありませんが。」

 

「・・・」

 

リンに提示された報酬の額を見て、考える。

 

(うん、0の数が一つ多いか?あー、でもあの数相手にしたプラス分という事ならこの基礎報酬分にはなりそう。それと、追加報酬の額の加算値が微妙過ぎる・・・)

 

そして考えを纏め、口を開く。

 

「基礎の成功報酬分だけ貰う。一応後学の為に教えておくけど、まず基礎報酬額は0の数が一つ多い。今回の作戦での私の追加報酬を加算してやっとその額になる。だから本来は今の作戦規模だとこれの4割が基礎報酬でいい。それと、追加報酬の加算値がちょっと低い。もう少し上げてもいいし、倒した相手個人の実力を示す情報を加味した個別の額もあったほうが明細が分かりやすい。」

 

「なるほど・・・参考にさせていただきます。」

 

イサネの報酬に関する知識にリンは驚嘆を示しながらも、正確にそれを記録していく。

 

「あと、連邦生徒会の公平性維持の為にも報酬の未払いとか、具体的な報酬の提示をしないというのは止めた方がいいよ。金で動く傭兵はその辺結構がめついというか、厳しいというか。」

 

「・・・よく知ってるね?そんなこと・・・」

 

「まぁ、生粋のアルバイターなので。」

 

先生の驚きの声にさらりとそう返すイサネ。どうやら生粋のアルバイターと言う言葉が気に入ったようだ。

 

「分かりました。では、イサネさんへの報酬は今回の基礎報酬分だけでよろしいですね?」

 

「同意。口座はこれだから、振り込んどいて。」

 

「はい、ではそのように。」

 

そこからは早かった。イサネへと報酬を渡したリンは先生と事故処理と復興のための話し合いを始める。一方のイサネはリンと先生のやり取りを何も考えずにぼーっと眺めている。

 

すると、先生と話していたリンがイサネに向け、

 

「そういえば、イサネさん。今作戦において、災厄の狐が現れたとの証言が上がっているのですが、どうでしょうか。」

 

「んえ?なんだって?もう一回。」

 

「・・・現場に、災厄の狐が出現したとのことですが。」

 

まるでボケた老人の様なイサネの返しにリンは深く溜息を吐き、話を伝える。しかし、イサネはそんな奴聞いたことないと言った様子で、答える。

 

「災厄の狐・・・?狐みたいな子はいたけど、逃げられちゃったなぁ。」

 

「詳しく教えてもらえますか。その狐みたいな生徒について。」

 

イサネはリンにその戦場で合った狐の仮面の少女の特徴を述べていく。

 

「ふむ、間違いないですね。災厄の狐です。彼女は、これまで様々な場所で破壊や襲撃行為を多数繰り返し、その被害から災厄の狐と呼ばれています。名前は狐坂ワカモ。百鬼夜行連合学院の生徒ですが、現在は停学中。矯正局に収容されていたのですが、数週間前の騒動の際に脱獄。現在指名手配となっています。」

 

「へぇ、まぁ、次敵として合ったら捕まえてみる。」

 

「よろしくお願いします。ですが、くれぐれも気を付けてください。異名を付けられるほどの存在です。実際に彼女は連邦生徒会の特殊部隊相手に一人で立ち回ったのですから。」

 

「あぁ、大丈夫。あの程度なら、策に完璧に嵌められない限りはどうにでもなるから。尤も、ただの包囲とか奇襲、トラップ程度を策とは言わないけど。」

 

「・・・貴方も十分恐ろしいです、ブラックマーケットで万物の天敵と呼ばれているだけはありますね。」

 

「・・・・」

 

リンの口から出た悪気の無い称賛の中で、万物の天敵と言う言葉に黙りこくるイサネ。こうして話し合いは進んでいく。そして大体30分後。

 

 

 

「ふぅ、お疲れ様。」

 

「・・・うん。」

 

サンクトゥムタワーの入口出てすぐの所で、先生とイサネは歩きながら話していた。

 

「それにしても凄かったね、イサネの戦い方。まだキヴォトス来て間もないけど、あんな動きする生徒見たことないよ。」

 

「・・・うん。」

 

先生の称賛の声に対しても反応の薄いイサネ。

 

「・・・もしかして、怒ってる?私なんか悪い事しちゃった?」

 

先生の謝罪しそうな勢いに流石にとイサネも返答をする。

 

「いやぁね?リンの言った万物の天敵ってあるでしょう?」

 

「あぁ、言っていたね。ブラックマーケットでの君の異名って所かな?あー、もしかして気に入らないとか、そんな感じ?」

 

イサネの反応的に事情を理解した先生はイサネの言いたいことを理解する。

 

「まぁ、端的に言ってそういうこと。だから先生、私の事は万物の天敵じゃなくて生粋のアルバイターという事でよろしく。」

 

「生粋のアルバイターね、分かったよ。喜んでそう呼ばせてもらうよ。」

 

あの時、殆ど思い付きで決めた名前だが、まぁ先生に天敵とか呼ばれる位ならこっちの方がいい。と言うかこの名前は結構気に入っている。

 

「ありがとう、っし、じゃあ、帰りに一杯やろぉっと!」

 

・・・だからこそ油断していた。その迂闊な発言を先生が拾わない筈が無い事に。

 

「ねぇ、一杯やるってどういうこと?」

 

「え?そんなの、酒に決まって―――あ。」

 

「・・・説教だよ、イサネ。未成年の飲酒は良くない。」

 

むんずと腕を掴まれ、そのまま引きずられていくイサネ。先生の放つ慈悲もありつつ有無を言わせない絶対のオーラ。

 

「あぁぁぁぁーっ!!はなしてぇー!私もう19ですぅー!」

 

「19はまだ未成年だよ!?」

 

 

 

―――このままみっちりと説教されたことは言うまでもない。

 

 

 

 

 




結構先生の描写に苦戦して長引いてしまった...

ちょっとイサネさんのキャラがおかしくなり始めた気がしないでもないと感じる今日この頃。

あと少し投げやりに書いた気がしないでもない...
次回の投稿は遅くなる可能性が非常に高いです。
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