超人ダンジョン徒然草   作:ややや

7 / 9
原作をキン肉マンに変えたので濃度を濃くしました。


技巧の求道者!の巻

 デジマアラタメに作られた闘技場は最先端技術をふんだんに盛り込んだ採算度外視のものである。国策として寄付された血税ではない血を余す事なく使い切るためと言い換えても良い。闘技場内にある無数のカメラは観客席にいる誰もが最前線でかぶりつきになってみても叶わない接近した構図を約束し、そこで行われる試合を尚更に安全な場所へと仕立て上げていた。

 

 獣人と超人の希望により建てられたリングは工人のリングとは異なりかなり巨大であった。二十メートル四方のリングにロープが三本張られ、床のバネは厚さ数センチはある極太の鋼で構成されている。特にコーナーなどは、魔人界謹製の普遍銀(通称クエン棒)が鈍く輝いている。どちらの世界でも見たことのない高級リングは、その費用を稼ぐべく血と汗が注がれていた。

 

「そこだぁ!」

「がぎゃっ…!」

 

 真っ黒なフルフェイスの()()をした超人が繰り出した鳩尾への地獄突きに真紅の獣人がふらつき、膝を崩す。即座に放たれたヘッドバットに、獣人の口吻が数センチへこんだ。潰された鼻の血溜まりを無理矢理吐き出すように獣人は鋭い息を吐くが、遅い。()()()()を狙いに定めた超人の回し蹴りに獣人の爪が突き刺さる。大腿骨すら貫いた爪を見て、獣人は己の失策に気が付いた。

 

 ─体重が軽い…!!

 

 血を媒介にした重量操作に獣人の木の根に等しい土台が崩れた。その隙をついた超人は無事な片脚をマットに叩きつける。重力を失った獣人は超人の頭近くまでふわりと浮き上がった。超人種の勝利パターンに陥った獣人は舌打ちをして頭部を抱える形で全ての獣気を其処に込めた。

 

零の鎮魂歌(ゼロ・レクイエム)!!

 

 しかし、超人が全パワーを発揮した必殺技には及ばない。数メートルの落下で獣人の頭部は一キロ以上の高さからのダメージに等しく、超人が固めた手脚は支えているだけにも関わらず全身がプレスされたように固まっていた。獣人は白目を向いて気絶し、超人はゆっくりと獣人の爪を太腿から抜き取った。

 

 超人は他世界で()()()と呼ばれるほど体格の操作に長けた存在である。初期の彼らは巨人化するにも時間がかかり、一部の精鋭が皆からの支援を受けることで巨大化を成立させていた。長年の進化の末、超人の本能はその仕組みを肉体に括りつけた。観客を入れたスポーツは超人の本能を満たす最高の娯楽だった。

 

「我が旗はここに立った!フハハハ!!」

「コードマンさんがあそこまで興奮するの初めてみたな…」

 

 勝利の宣誓を控え室で聞いた超人が立ち上がった。その超人は白黒の縞模様が特徴的な試合用のコスチュームを来た女性だった。彼女の名は麗羅。リングネーム『ゼブラ』として次の試合に出る超人である。彼女は今し方自らの物となった札束を前にため息を吐いた。

 

 工人のスポンサーによる要望でテクニカルな鉄球使いの超人サンソーマンパワフルな超能力を操る鸚鵡獣人シャーハラの試合が取りやめとなった結果、急遽取り入れられた女子格闘技戦(キャットファイト)。まさかのおこぼれにゼブラは年甲斐も無く緊張していた。

 

「なんで一人なんだよぉ…」

 

 数の多い工人は()()()()()()を尊重するらしく控室には誰もいない。超人には理解し難い行為である。彼らは寂しさで死なないのだろうか。

 

『派手で工人には理不尽でわかりやすい。エキシビジョンなんだ。気楽に負ければ良い。笑ってやる』

 

 脳内友人がいつもの嫌味たらしい口調で元気付ける。お前が最近年下の少年に指導()をしてるのは分かってるんだぞ。歳上の次は未成年とか極端しかないのかお前は。

 

『仕事が無ければ顔出しくらいはしたが、金銭が絡む以上あのハゲメガネには従わなければならん。麗羅、お前も仕事を─』

 

 そろそろドツボにハマりそうなので友人のエミュレートを止める。結局は全力で戦い、健闘すれば良いだけの話だ。緊張を隠すために意識してマスクをつける。

 

 工人命名、キン肉マンゼブラ。

 

 女性につける名前ではない。工人界の命名センスは割と悲惨なのかもしれないとゼブラは思った。

 

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

 

 対戦相手は馬獣人だった。

 

 歳の頃はゼブラより若い三十前後の少女。見る限りの体格は百七十程度の細身、サラ族だろうか。褐色の肌に薄らと浮かぶ幾何学的な紋様は馬獣人(かれら)が一人前を保証する()()()を極めた証だ。灰色の髪をポニーテールに纏めた彼女は、マットに見た目にそぐわぬ重量感を持ってリングに上がった。

 

『青コーナー、魅惑のホースガール!サラブ!!』

 

 やはりセンスが違うとゼブラは確信した。馬獣人にとって速度を絡めない褒め言葉は罵倒である。『見た目だけ良い置物女』と言い換えても良い。工人の司会は本心から褒めているのがわかるだけに、サラブも複雑な顔で無言を貫いていた。

 

『赤コーナー、影暗纏いし技巧の女!ゼブラ!!』

 

 サラブの目線が同情的になった。初対面初戦闘(ニューフェイスマッチ)で己の長所(ストロングポイント)を晒されたゼブラは渋面を露わにした。事前の打ち合わせ無しの一本勝負の欠点がモロに出たのを理解して、彼女達はなんとなしに目を合わせた。

 

 後で飲み会行かないかとサラブは目線で語った。

 勝った方の奢りなとゼブラは同様に返答した。

 

『試合開始ィ!!』

 

 初手はサラブの飛び膝蹴りから始まった。距離を詰めての跳躍と合わせた蹴りはゼブラに容易く防がれたが、掴むことは叶わない。つま先立ちを維持したままハイキック・ミドルキック・フェイントを挟んで唸りを上げるローは冷静にゼブラがカットする。明らかにハイペースな仕掛けだが、サラブの息は荒くなることはなかった。

 

 馬獣人はスピードとスタミナに優れた種族である。自身の数十倍の荷物を一夜で千里先に往復できるほど脚力に優れた一族だ。年若いというのもあるのだろう、サラブもその特徴をそのままに鍛えた優等生に見えた。

 

 生来の気質が真面目なのだろう。彼女の戦法は基礎かつ王道だった。上半身を防御と目眩しに専念し、蹴り技でこちらの機動力を入念に削り取る。興行として地味に成りかねない手法を気負いなく繰り出すあたり、ゼブラと同様に彼女も急遽(ヘルプ)らしい。それでも派手に繰り広げる休み無しの連打は工人達が歓声を上げるのに充分だった。

 

「─シッ」

「くっ」

 

 ハイキックを肘でカチ上げてゼブラはリバーブローを放ったが、十字受けにより防がれる。馬獣人は下半身が四つ足の身体を気で二本足にした変身型の一族である。気は体重は操作できるが重心自体を操作できる訳ではない。ダルマのように上半身が弾かれたサラブは倒れ込みを嫌って一歩だけ下がった。

 

 ゼブラの技は立ち拳闘が基本だ。直突きを顔面に当てた彼女は垂れる鼻血が落ちるよりも早く左脇下、肝臓へとフックを当てた。鉄を砕くゼブラの拳を受けてサラブは仰け反りながら内股へローキックを当てた。爪先立ちの膝下からの振りにも関わらず、ゼブラのふくらはぎの皮膚が破けて軽く出血する。互いにそれを隙と看做した両者が放った一撃はクロスカウンターとして唇を切らせた。

 

 互いに過集中していた意識が低下する。周りの解説で魔人がのんびりと技を批評していた。受けた痛みを誤魔化すために首を回したゼブラは時間稼ぎとしてサラブに疑問を投げた。

 

「四本脚にならなくて良いのか?」

 

 気で肉体を変化しているが、二腕四脚が馬獣人の本来の姿である。社会的には二足歩行の身体が非常に便利らしく、ゼブラの顔見知りも戦闘時以外は人間体を維持していた。

 

 ハンデのつもりなのかと口に出した疑問は、サラブの赤い顔で否定された。

 

「こ、こんな衆人環視の中()()()()()()()()()()()!!恋人もいないのに!」

「馬獣人の恥ずかしさがわからない…」

 

 その理屈だとゼブラの知る馬獣人は頻繁に下半身を露出する変態である。そう思って彼女は友人の姿を思い出すが、よく見れば下半身は変形型の特殊なスカートで隠されていた。頑なにスカートを辞めない彼女の服事情が分かったゼブラはこれ以上の追求を止めた。そもそも戦闘で考えることでもない。

 

「ウマニティを読み直せぇ!」

 

 ゼブラは大振りの膝蹴りを屈んで躱し、太腿にヘッドバットの要領で膝下を持ち上げた。サラブの体勢が崩れたところを彼女は見過ごさない。軸足にふくらはぎ、脛裏へ素早く二発の拳を打ち当て、サラブの苦悶の呻き声が口から漏れた。

 

サンダーボルトクラッシュ!

 

 続け様にゼブラはサラブの脇下を挟んで側転させるように宙へ投げた。勢いに任せて相手の腰に両足を挟み、そのまま前転しながら両手で相手の足を掴む。相手の頭部を打ちつける変形のパイルドライバー。サラブの頭に集中した血が額を切って噴き出た。

 

「ぬ、ぬあああ!!」

 

 一般の超人でも気絶しかねる一撃は、しかし気絶しなかった純血の獣人には通用しない。膝下の二本脚を部分顕現したサラブはゼブラの固めを振り切ってその腹筋に蹄の跡を残し、身体をひっくり返した。

 

「まだまだぁ!」

 

 浮遊に加えて呼吸を乱されたゼブラの技巧は効力を発揮しきれない。回転する身体を回るように打ち付けられた蹄の嵐は急所を含めて幾つかの爪痕を彼女に刻んだ。

 

鞍傷馬桜!

 

 蹴り飛ばしたゼブラが床に倒れ込む前に、その頭へサラブの踵落としが振り下ろされる。気を込めた踵─否、蹄は暴れ馬の踏みつけに等しい。脳天を打たれたゼブラの意識はその瞬間ににわかに吹き飛んだ。

 

 ダウンし、うつ伏せに転がるゼブラにサラブは膝立ちで息を整えることを優先した。一つが血で埋まった折れた鼻を整形して勢いよく詰まった穴にある血を吹き出す。ガンガンと痛む頭に気を回して回復に専念するが、サラブは回復が得意な獣人ではない。

 

『『『ゼブラ!ゼブラ!ゼ・ブ・ラ!!』』』

 

 サラブは観客達の声援の振動からゼブラに新たな(エネルギー)が湧いたのを確認した。獣人がタフネスと回復という内部のエネルギーを効率化したのに対して、超人は理不尽こそを自らのエネルギーとする。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ふらつきながら立ち上がったゼブラにサラブは顎下を蹴り上げるつま先蹴り(サッカーボールキック)を叩き込んだ。手を差し込まれたのか、骨を砕いた感触はない。追撃の百八十度を優に超えた脚をバネに放ったかかと落としはゼブラの頭にいなされ、右肩に叩きつけるだけとなった。

 

「くっ…!」

 

 接触した左脚から超人パワーが流れ込む。一流の超人種の探索者(ホルダー)であれば体長数キロの魔物さえ縮小させる縮尺操作術(スケールコントロール)。傍目には自ら技を受け入れているようにしか見えない技巧は、技術に定評のあるゼブラすら慣れ親しんだ必殺技(フェイバリット)にしか適用出来ない職人技であった。

 

アノマリーロックヘルズクラッチ!

 

 ゼブラが繰り出した技は固め技だった。変形的なキャメルクラッチと称すべきか。両手でサラブの両足首をホールドし、海老反り固めで曲がる脚を締め技として首へと巻き付ける。フリーとなっている両手は逸らされた背の可動域で在らぬ空気を掴んでいる。

 

「か…はっ…!」

 

 本能的に身を捩るほど自らの首を締め上げる技にサラブの意識が離れかける。すんでのところで意識を保てたのは、観客の声がサラブを応援していたからだ。獣人で歓声で強化される能力などサラブの人生には(多分あるとは思うが)寡聞にして知らない。

 

「バルラァ!!」

 

 だが、隙を見せた相手に奮起しない者など獣人は軟弱ではなかった。

 

『『『サラブ!サラブ!サ・ラ・ブ!!』』』

 

 はしたない田舎言葉を叫んでサラブはゼブラの拘束から脱した。青紫色に内出血した体は彼女の受けたダメージの深刻さを現していた。脳に過ぎ去る解説は伝説の生き字引老人達(魔人と超人の神)が無我夢中で破った技を適切に説明していた。

 

 揉み合いとなった空中戦はサラブが放ったヘッドバットが決め手となった。制御を失ったゼブラをリングに叩きつけ、その腹部に飛び蹴りを叩き込む。続け様の連脚は防がれたが、サラブの攻撃は終わらない。馬獣人にとってのマウントポジションは()()()()()()()()()()姿()()()()()()()

 

八脚神馬の凱旋(スレイプニル・スタンプ)!!

 

『サ、サラブ選手の身体が地面につかない!ゼブラ選手を踏み台に空中でスタンプを継続する!まさに凱旋!神馬が嗎の音を鳴らして敵を踏みつけて立ち誇る〜!!』

 

 重力とは物体にとってなくてはならない足枷であり武器である。

 

 巨体を支える筋肉は必ず厚く強靭となり、空を飛ぶ生物は体重を代価として身を削る。サラブの技はシンプルであり単純。馬獣人として日夜鍛え上げた体幹コントロールと脚技によって只管に踏みつけ続ける。それだけの力技だ。

 

 十で潰れないなら百を。百で不可壊なら万すら重ねて。

 

 『走るだけなら永遠』と称された馬獣人の誇りを軸とした得意技(フェイバリット)がゼブラの全身へ浴びせられた。

 

「ハハハハハ!!」

 

 一秒間に五十はくだらない連撃にゼブラは全身を亀として丸まった。如何なる技巧か、本来なら背骨を軸に横に倒れる筈の彼女の身体は鉄の様に芯を持って手足を上に向けていた。試合を投げ捨てる技ではないその体勢に、サラブは一瞬だけ判断を迷ったが、アドバンテージを崩すことはないと進撃を続けた。

 

 高笑いが響く。十秒、三十秒、一分、五分。ゼブラの両腕が青白く内出血と蹄鉄跡の鎖帷子模様となった。サラブは長い息を口から吐き。

 

「…ッ」

「流石は…、無尽…の、馬獣人。本当にギリギリの()()だった」

 

 ()()()()()()()()()()()()()

 

「…吸収技ッ…!」

「マッスルガム族に伝わる『肉のカーテン』改め『戦女神の面紗(アテナ・ヴェール)』。ただのガードだと油断したな」

 

 ゼブラは内心の弱みを顔に出さずに不敵に笑った。年若い彼女の技はまだまだ未熟であり、理論上の無限の防御など体現出来る力量はない。出来たのは相手もまた未熟であり、スタミナの継続管理に失敗したのが大きい。事実、ゼブラが脱出してその片足を掴んだ頃には、サラブの息切れは当然のように回復していた。

 

 しかし、それはあまりにも遅い。ゼブラは倒立の姿勢でサラブを蹴り上げた。超人パワーを付与された彼女の肉体が宙に固定されるが、彼女もまた強者。気を全身から吐き出すことで無防備な姿から脱却する。

 

 辺りには、リング上で複数人に分裂したゼブラが全方位から突撃していた。

 

「バルラァ!!」

 

 サラブがその気を発して三割を消し飛ばす。その脚をもって五割を蹴り砕く。だが、彼女の直感は当たりを出していなかった。背中に当たる足裏の感触で、サラブは全身の重力が操作されたことを理解した。

 

 サラブはこの技が何かを知っていた。今まさに目の先で解説している『超神』ネプチューンキングの幾つもある奥義だ。頭部を潰すのに効率化されたその名を彼女は口にした。

 

マッスル・インフェルノ…!

「…決め切るッ!」

 

 亜音速で体が振り切れそうになるのをサラブは耐えた。年若い彼女も往年のネプチューンキングの素晴らしさは把握している。─彼が解説した技の弱点もだ。

 

 姿勢を強制させる上に加速させる奥義は敵が何も出来ないのを前提としている。一部でも動かせれば何もかもが破綻する諸刃の剣の技がインフェルノだ。馬獣人の最も強靭な腰を震わせ、サラブは腰をくの字にへし曲げた。

 

「──ハッ!その弱点は改善済みよ!」

「鞍落──何ぃ!」

『あーっと!ゼブラ選手絶妙な体捌きで膝を曲げてサブラ選手を背中から逃がさなーい!』

 

 ()()()()()()()()()()()()。ゼブラはサラブの跳ね上げに合わせて膝を曲げ、コントロールされた速度はサラブの腹部をコーナーポストに轢き当てて天井へ向かった。弓と矢のように、引き絞られたゼブラの脚がみきみきと太くなった。

 

「貴様は確かにサラブレッドだ──だが!暴れ馬には少々お行儀が良過ぎた!!」

『そのままロープへと蹴り飛ばした!勢いよくサラブ選手がロープにぶつかり千切れ─飛ばない!飛ばない!?反動でゼブラ選手へ飛び帰った!!』

 

 いつ見ても面白い力だ、と解説席にいる魔神『クリシュネクロ』は塩酸を飲んだ。見た目だけは二十代前半の工人にしか見えない彼女は、その実魔界で最も長生きであるご意見番であった。彼女が寿命を超越し、魔神と呼ばれるまでに幾つもの小競り合いがあったが、超人の面白おかしさは群を抜く。

 

「超人パワーは所謂物理法則を改変する力」

「…あの頃のこやつはそれはもう良い男だったのじゃが」

 

 かれこれ八千年の付き合いとなる友人の醜態にクリシュネクロはため息をついた。幻滅はしない。彼がその程度で堕落できるはずもないと長年の経験則から理解しているからだ。

 

「空を飛ぶ。密度の低い肉体で金属を貫く。果ては死者の蘇生まで。ありとあらゆる()()()のリソースとなるのがこの力になる」

「百キロのバーベルを工人はゼロパワーで多人数で上げる。超人どもは上がらない重さを超人パワーで補正する。理不尽であればあるほどその必要量は増す。超人強度はあくまでも器。何度も耳にしとるわ」

 

マッスル・インフェルノ・行先決定(ゴートゥヘル)!!

 

 ゼブラの蹴りがサラブの腹部を蹴り飛ばす。リングのロープは空中に浮かぶゼブラに向かってありえない軌道を描いてサラブを弾き返す。サラブも抵抗はしていたが、数回目には既に力尽きているように見えた。

 

「終わりだ」

「まだ耐えると思うが?武道」

「それは妻が付けた名だ。私はネプチューンキングであり、神に平伏すものだ」

 

 決まった試合の後は興味はないと立ち上がる男に、クリシュネクロは不愉快に机をこづいた。彼女の終生の友であった存在の癖に、背を向けたネプチューンキングは振り返った。

 

「ならば。()()()()()()()武道と呼ぶべきであろう?」

「…好きにするが良い」

 

 残酷なほどに、こやつは世界の為に真摯で献身的な神のような愚か者(いい男)なのだ。

 

「工人に代表者候補を集めさせる。勉強会だ。()()が来ると確信した以上、指導すべきは我らではなく工人達だ」

 

「【魔神(クリシュネクロ)】、【魚神(ナイール)】、【獣神(キューブリック)】、【森神(ハイペリオン)】。出来れば全員来て欲しいが】

「【超神(ネプチューンキング)】主催の会議なら来るじゃろ。奴等とて、

「そうか…ならば」

 

「老人会を行うとしよう」

 

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