◇フリーダムサバイバー号
翌日、下忍からかすみとあやね失踪の報告を聞きハヤテは親友の超忍リュウ・ハヤブサと共にDOATEC現総帥であるエレナ・ダグラスの元を訪れていた。
「かすみとあやねが失踪ですって?」
「そうだ、下忍によると二人は突然現れた空間の歪みに吸い込まれたらしい、何か心当たりは?」
「いえ何も。実は私の異母妹の一人のこころも行方不明なの、母の美夜子によると突然川に現れた歪みに吸い込まれたと言っていたわ。もしかしたら同じ物かもしれないわ」
「同じ歪み…」
「こちらからも龍の巫女紅葉が消えた。紅葉がいなくなると里で何か問題が起きた時対処出来なくなり大変なことになる、一刻も早く見つけなければ」
エレナの異母妹も行方不明と聞きハヤテは腕を組んで顔を顰めた。
「とにかく、私の知る限りではDOATECからは何も報告は受けてないわ」
「またM.I.S.T独自の研究という可能性もあるのではないか?」
同じく腕を組んで考えていたリュウも意見を出した。
「えぇ、私もそう考えていたわ。そこで今リサに調べてもらってるわ、リサ?どうかしら?」
「今やってるわ!」
窓際にあるデスクで舌打ちしながらキーボードを叩いている褐色肌の美女リサ・ハミルトンに聞いたがかなり苛立っていた。
「ッ‼︎もう!これもダメ⁉︎私のアクセスをここまで拒むなんて、あのNiCOって子中々やるわね!ふふふ…面白いわ!この私に挑もうというのね?元DOATEC主任研究員リサ様を舐めんじゃないわよ!…あ、任せて、絶対アクセスしてみせるから待ってて」
「えぇ…お願いね」
ついテンションが上がり自分の世界に入ったリサはエレナ達の方を向くと我に帰りパスワード等が沢山書かれた手帳を出しアクセス作業に戻った。エレナ達も話に戻った。
「しかし…エレナが知らないとなると他に何が?天狗…まさか万骨坊⁉︎」
「それは有り得ぬわ」
他の可能性を考え以前倒した邪悪な天狗万骨坊が復活したと予想した瞬間、室内に声が聞こえると風と共に黒い羽が舞い、黒い着物を着崩し背中に黒い翼を生やした妖艶な美女が現れた!前の大会時から人間界に君臨していた女天狗である。
「うふっ♪」
「お前は…!あの時の!」
以前対峙したことがあるリュウは愛刀龍剣に手をかけたが、先に部屋のドアの前に立っていたエレナのサーバントの少女、マリー・ローズが出た。
「ちょっと貴女!誰ですか!何処から入ってきたんですか⁉︎勝手に入らないでくださいぃぃ!!…うっ…お、大きい」
女天狗を部屋から追い出そうとしていたが、そのこぼれ落ちそうな胸を見て悔しそうにしていた。女天狗もそんなマリーを不快そうに見ていた。
「おん?何じゃこの小娘は?託児所とやらは何処じゃ?」
「んな⁉︎小さいからって舐めないでよね!マリーはこれでも18歳です‼︎」
子供扱いされ怒りながらマリーは自身の年齢を教えたが、女天狗に見覚えのあるエレナは声をかけた。
「あら?貴女確か、前の大会のハーフタイムショーでザックと闘っていたわね?」
「おぉ、其方があの祭りの主催者か!あれは中々良き余興であったぞ、次は是非妾も『えんとりー』させてもらおうぞ」
「えぇ、楽しみにしているわ」
楽しそうに語るエレナと女天狗にリュウは話題を戻した。
「そんなことより、有り得ないとはどういうことだ?奴が復活してないと言い切れるのか?」
「それこそ愚問じゃ、そんなことは其方が一番よくわかっておるじゃろう?万骨坊を屠ったのは何を隠そう其方なのじゃから」
確かに万骨坊を倒したのはリュウだ。さらに女天狗曰く万骨坊は天狗界でもかなりの無法者で最大限に嫌悪されていたらしい、なので復活など有り得ないという。それを聞きやはりM.I.S.Tが怪しいと思っているとリサが歓喜の声を上げた。
「イェ〜イ☆ログイン成功〜っと♪うふふ、私にアクセス出来ないコンピューターなんてこの世界に無いのよ!お待たせエレナ、これでシステムに侵入できるわ」
「ご苦労様リサ、それじゃ早速M.I.S.Tのデータベースを調べてみてちょうだい?」
「わかったわ、ちょっと待ってて」
ログインに成功したリサはM.I.S.Tのデータベースにアクセスし新たな研究を始めていないか調べ始めた。調べて数分後…
「わかったわよエレナ。調べたところ案の定…というかやはりM.I.S.Tの仕業だったわ」
結果を聞きハヤテとリュウも表情を険しくした。リサは続ける。
「でも今回はドノヴァンは関わっていないみたいよ?あのNiCOって子が独自に始めた研究で、なんでも…亜空間ゲートを作ったみたいね」
「そう、NiCO…またあの子」
「NiCO…あの娘には前の雷道復活騒動で世話になったな」
「今回もあの娘が関連しているのならば黙っておけん」
犯人が分かり行動に移そうとしたが、リサは追加報告した。
「それから行方不明になってる人が他にいないか調べたけど他にもいるみたいよ?ドイツから空手家ヒトミ、中国から太極拳使いレイファン、アメリカから総合格闘家ミラの三人…全員ゲートの影響によって発生した空間の歪みに呑み込まれたらしいわ」
「何⁉︎ヒトミもだと!?」
かつて記憶を失って倒れていたところを助けられ一緒に修行したことがあるヒトミが同じく行方不明と聞きハヤテは動揺した。その様子にリュウはハヤテの肩に手を置き落ち着かせた。
「とにかくこれでかすみ達が失踪した元凶が判明した。俺とリュウはすぐにM.I.S.Tに潜入しNiCOを捕えて研究をやめさせる」
「そしてあの娘にかすみ達を元に戻させ、M.I.S.Tを壊滅させる」
目標が決まりエレナも了承し、ハヤテとリュウは出発しようとしたがリサが呼び止めた。
「待って貴方達、私も一緒に行くわ。アンタ達…力づくでセキュリティを突破できると思ってるの?私がサポートしてあげるから感謝しなさいよ?」
「わかった、頼りにしている」
「あら?やけに素直ね?」
リサも一緒に行くことになりノートパソコンを畳んだ。そのやり取りに女天狗は楽しそうに笑みを浮かべると静かに姿を消して去った。
「それじゃ気をつけて」
エレナに見送られ部屋を出ようとしたその時、ドアの前で頭を下げていたマリーが心配そうに尋ねてきた。
「あ、あの…ハヤテさん?その…ほのかちゃんは元気ですか?」
雷道騒動であやねの異母妹であったと判明した謎の少女ほのかだが、心配そうにしているマリーにハヤテは現状を教えた。
「あの娘は雷道の血を引く者…今は里で厳重に監視体勢を敷いているが、あれ以降眠り続けている」
「そんな…ほのかちゃん」
「心配しなくていい、身体の方は至って健康らしい、安心してくれ」
それを聞きマリーの表情はホッとした。
「よかったぁ、あのハヤテさん?今回の事件が解決したら里にお見舞いに行ってもよろしいでしょうか?」
「あぁ、行ってあげてくれ、きっと喜ぶだろう」
マリーは笑顔になると頭を下げて見送り、ハヤテもエレナに頷くとM.I.S.T研究所に出発した。
◯●◯
よお!俺の名前は兵藤一誠!通称イッセーだ!つい最近初めての彼女、天野夕麻ちゃん(正体は堕天使だった)に殺されて、憧れのお姉様リアス・グレモリー様に拾われて下僕になった新米悪魔だ!よろしくな!って!今は呑気に挨拶してる場合じゃないんだ!
俺は今初めての依頼をなんとか終えて部長の所へ帰るとこだったんだけど…変なおっさんに絡まれてる。
「これは数奇なものだ、我が主に傷を負わせた者を探していたのだが、貴様のような存在に出くわすとはな?」
スーツに帽子と見た目は紳士っぽいけど、ヤバさはビリビリ伝わってくる!言ってることも無茶苦茶だし。
「答えろ、貴様の主は誰だ?」
瞬間!俺は全力疾走で逃げ出した!こういう時は全力で逃げるに限るぜ!しばらく走って公園に着いた。
「ハァ!ハァ!こ、ここまで来れば…」
「逃がすと思うか?」
しかしすぐ後ろから声が聞こえ振り向くとさっきのおっさんが立っていた!いつの間に!
「もう一度聞く、お前の主の名を言え。それともお前は『はぐれ』か?」
質問と同時におっさんの背中から黒い翼が生える!こ、この羽は!夕麻ちゃんと同じだ!ってことは堕天使⁉︎
「ふむ、主の気配は無いか、やはりお前ははぐれか、ならば殺しても問題あるまい」
そう言いおっさんは手に光を宿す、お、おい!前にもこんな展開あったぞ!となるとこの後に…
ヴゥゥン!!
光の槍キターーー!!
「くそっ!また刺されてたまるかよ!」
再び逃げ出したが、おっさんが投げた槍に背中から貫かれた!抜こうとしたが槍を握った手が焼け焦げた。
「抜けないだろう?お前ら悪魔にとって光は猛毒だからな、抜いてやろうか?」
「ゔああああっ!!アアアアアァァァ!!!?」
「おっと、これは申し訳ない、どうやら急所を外したようだ。では次は確実に…殺してあげよう!!」
容赦無く槍を引き抜き、狂った様な笑みを浮かべ動けないイッセーに槍を振り上げた次の瞬間!
ドスッ……カッ!!!
光の槍に何かが刺さり爆発し砕け散った!堕天使の男…ドーナシークは寸前で手離したのでスーツの袖が破れただけで済んだ。
「ッ!誰だ!?」
警戒して周りを見渡すと二人の人影が現れた!よく見るともう一人はいつの間にか助けたイッセーを抱えていた。イッセーを助けたのは二人の少女だった。
「あやね!」
イッセーを助けた二人…かすみとあやねはイッセーを救出すると頷き合った。
「酷い怪我…!キミ!気をしっかり!」
イッセーの怪我の具合を見てかすみは応急処置を始め、イッセーは薄れかけている意識の中でかすみを見ていた。
(だ、誰か助けてくれた…?やわらかい感触と良い匂い…)
イッセーを治療しているとドーナシークは不快そうに槍を再形成した。
「誰だか知らないがソイツを渡してもらおうか小娘達?それから私の邪魔をしたのだ、その小僧を殺した後にキミ達も殺してやろう」
槍を向けるドーナシークに対しあやねはドーナシークの翼を見て目つきを鋭くさせた。
「ハァ?何よアンタ偉そうに、それにその翼…アンタもあの天狗女の仲間?」
「天狗だと?我々堕天使をあのような下等な種族と一緒にしないでいただきたい……ん?」
天狗呼ばわりされドーナシークは不快そうに訂正してきたが、あやねの装備を見て怪しく笑い出した。
「小太刀にそのクナイ…そうか、フフフ」
「何笑ってるのよアンタ?気持ち悪いわね」
「フフフ!いやぁ笑ってしまってすまない、レイナーレ様を傷つけた奴を探していたのだが、こうもあっさりと見つかるとはな!」
探していたターゲットを見つけ歓喜していたが、落ち着き再度あやねを見ると今度は嘲笑い出した…それが命取りになるとは知らずに。
「しかし…レイナーレ様を不意打ちで負傷させるほどの者だから一体どんな強者かと思えば…まさかこんな小娘とはな?拍子抜けもいいところだ」
完全にあやねを格下と判断しドーナシークは槍を消してさらに調子に乗り出した。
「人間でありながら我々堕天使に喧嘩を売るとはいい度胸だ、いや勇敢と賞賛するべきか?まぁどちらにしろキミ達はここで終わりだ、なぁに怯えることは無い、痛みも感じないくらい一瞬で…ザシュ!…えっ?」
偉そうにベラベラと目を閉じて語るドーナシークだったが音が聞こえ見ると自分の腕が…宙を舞っていた!
「ギャアアアアアッ!??!」
肘から下が無くなり遅れて血が噴き出した腕を押さえてあやねを見ると血が付いた小太刀を逆手に構えていた。
「ぐあぁぁぁぁっ!!ぐっ!き、貴様!よくも私の腕を!許さん!」
激昂したドーナシークは槍を形成して振り上げたが、あやねは振り向くとドーナシークに忠告した。
「忠告してあげるわ、種族だの何だの言って私達忍を前にして警戒を解いた時点でアンタの負けよ」
「な、何だと…?小娘がふざけるな!腕を失っただけで負けなどと…」
片腕を失っても向かってくるドーナシークにあやねは追加忠告した。
「それからもう一つ…」
「!?」
「気づいた時にはもう…アンタの命は終わってる」
その言葉の終わりと同時にドーナシークの首が舞った!首を失ったドーナシークの体はあやねの前で滑り込むように倒れ、首と共に塵となり消滅した。
「それが忍の相手をする基本よ、覚えときなさい」
小太刀に付いた血を払うと素早く腿の鞘に戻した。
ドーナシークを倒したあやねはイッセーに応急処置を施したかすみの所に来たが、かすみは気を失っているイッセーを心配そうに見ていた。
「どうかすみ?様子は?」
「一応応急処置はしたけど、この怪我だともう…」
今回は見捨てなかったがこのままだとイッセーが死ぬのは時間の問題であった、どうしようかと悩んでいるとかすみはイッセーの顔を見て気づいた。
「…あれ?ねぇあやね、この子前に公園で殺されたあの男の子じゃない?」
「ハァ?そんなわけないでしょ、あの子はあの時天狗女に殺されたじゃない?生きてるわけ……あっ、でも確かにこの顔」
「どういうことかしら?まさかこの子人間じゃ…ッ⁉︎」
パァァァ…
不思議に思っていたその時、二人の側に紅い魔法陣が現れた!それを見た二人はひとまずその場から姿を消した。魔法陣からリアスと朱乃が現れ倒れているイッセーを見つけると駆け寄った。
「イッセー!?大丈夫⁉︎しっかりなさい!ん?これは…包帯?」
イッセーを抱き起こしたリアスはイッセーの体に巻かれている包帯を見て治療されていることに気づいた。
「誰かがイッセーを助けてくれたってことかしら?」
誰がイッセーを助けたのか考えていると地面に残った血を調べていた朱乃が報告してきた。
「リアス、前と同じですわ。これは堕天使の血ですわ、おそらくイッセー君を助けた者の仕業かと」
「わかったわ、ひとまず後処理をして部室に戻りましょう。処置をされていてもこのままだとイッセーが危ないわ。朱乃、準備を」
「はい部長」
魔力の波を発生させ血を消すと魔法陣を展開しリアス達は転移して行った。
その様子を気配を消して隠れて見ていた堕天使の少女は唖然としていた。
「あわわわわわ!?ド、ドーナシークのおっさんがぁ…こ、これはヤバいっす!レイナーレ様!レイナーレ様ァァァァ!!」
急いでその場から飛び去っていった。
次回黒歌登場