装者の男女恋愛が見たいッ!戦姫絶唱シンフォギア SLS   作:ふみー999

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どうもふみー999です。
15日まで遅くなると言っておきながら結局18日になってしまいました。
申し訳ありません!!これからもがんばります!


第10話 Funebre:出来ること

 買い出しから戻ってきた深と流生を前にして響は机に突っ伏していた。

あの後、未来に救助されひとまずの落ち着きを得たのだが、醜態を晒したことには変わりなく、顔から火が出るのを隠すためにこの状態から動けなくなっていた。

「オハズカシイトコロヲオミセシマシタ」

「まあ、無事だったんだから気にしなくていいんじゃないかな?ねえ流生さん」

「まあ、そうだな」

凹んでいる響を深が苦笑しながらなだめる。流生も険しい顔ではあるもののとやかく言うことはなかった。

「……」

「えっと、そういえば二人はどうして今日家に?」

流生は目を閉じてじっとしている。話題を提供しようと未来が質問を投げた。

「あぁ、響ちゃんがレポートが終わらなくて大変だって聞いたから手伝おうと思って。一応ノイズに関しては研究しているし」

「そうだったんだ。それはそれは響がご心配をおかけしました。」

「ううん、勝手にお節介をかけているだけだから。響ちゃんも迷惑じゃなかったかな?」

「お節介なんてそんな。むしろ助かるよ~」

勢いよく顔を上げると響は早口で答える。眠気がすごく終わる気がしなかったからと素直に言うと、それならよかった、と深は朗らかに笑った。その笑顔に思わず響も口角が上がる。深に見とれていると深の隣から咳ばらいが聞こえてきた。沈黙を貫いていた流生だった。はっと気を引き締めた響は背筋を伸ばして流生の方を見る。正直刃を向けられてから流生のことが少しだけ怖いと感じていた。

「えっと、流生さんも…?」

助けに来てくれたのかと言外で問いかけるが返事はない。何というか何か言おうとしているが言い出せないでいると言った様子だった。するとその様子に気が付いたのか深がぱんっと手拍子を打った。

「そうだ、せっかく紅茶とケーキを買ってきたんだから食べながら作業しようか。未来ちゃん、悪いんだけど、勝手が分からないから一緒に台所で準備手伝ってもらってもいい?」

「え?あ、はい。分かりました。」

そういうと深は未来と一緒にキッチンの方へと向かっていった。響は待ってと手を伸ばしかけるが深は両手を合わせて謝るそぶりを見せ、そのままリビングの扉を閉めてしまった。残された響と流生の間に無言が流れる。響は居心地の悪さを感じながら視線を泳がせた。やたらと時計の秒針の音がはっきりと聞こえてくる気がした。

何を言われるのだろう。正直、また薙刀を構えられてお命頂戴、切り捨て御免とかされるのではないかと響は気が気ではなかった。

「えっと…あの…」

恐る恐る響が口を開くと流生は閉じていた目を開いた。そして正座のまま、頭を下げた。

「……主共々、先日は無礼を働いた。これはせめてもの詫びの品だ。受けとってほしい。」

そういうと、流生は懐から一枚のCDを取り出し机の上に置いた。

「これって翼さんのCD?」

それは響が初めてシンフォギアを纏った日に買いに行こうとして結局買えずにいたCDだった。ご丁寧に初回限定盤でしかもサイン入りだった。一度サインを書いてからまた梱包し直した形跡も見られた。

「未使用品でお嬢直筆の品だ。深から買えなかったと聞いていたからな。」

「あ、ありがとうございます。」

響はそのCDを手に取る。普段ならこんな超貴重品をもらったのならば小躍りして喜びそうなところだったがもらう相手が相手なだけに喜びよりも、困惑の方が大きかった。

「気に召さなかっただろうか?」

「そんな!ものすごい貴重品ですよね?むしろ申し訳ないくらいで。」

「そう言ってもらえるのなら欣幸(きんこう)だ。今回の新曲は今までのお嬢の曲とは少し曲調が変化していてな。夢に向かって羽ばたいていく羽交いをイメージした歌詞なんだ。お嬢も想うところがあったんだろうな。歌声に力が籠っているが固くなく気持ちがダイレクトに心に響いてくる。聞いていて気力が湧いてくると言えばいいのか。それと、作曲も力を入れてもらって特にイントロの…」

そこまで話をしていると聞いている響が口を開けて唖然としている様子に流生は気づき恥ずかしそうに咳ばらいをした。

「…失礼」

そんな様子に響は流生に対して親近感を覚えた。トップアーティストとしての風鳴翼を追ってきたと身として少し敬意すら覚えそうになるくらいの熱量を感じたのだ。

「流生さんも翼さんの歌が好きなんですね。」

そう言われると流生は少し目を見開き、やがて観念したように息を吐くと表情を柔らかくした。

「まあな。俺とお嬢は幼馴染ってやつでな。ガキの頃からお嬢の歌は聞いてきた。あの歌に救われたこともあった。」

昔を懐かしむように流生は目を細める。その表情から大切な思い出なのだとうかがい知ることが響にもできた。

「私も2年前のライブで初めて聞いた時、すっごい感動してそこから追いかけるようになったんです。苦しい時とかもたくさん勇気をもらいました。」

「ああ、お嬢の歌には人を幸せにする力があるんだ。立花さんはどの曲が好きなんだ?」

「私ですか?やっぱり———」

先ほどまでの沈黙はどこへやら二人は翼の話で盛り上がり始めた。お互いに好きなものが同じだからだろう。しばらく話をしているうちに最初にあった警戒心はもう無くなった。

「あんたもだいぶ、お嬢に詳しいな」

「流生さんほどではないですよ。新曲聞いたら感想聞いてください。」

「もちろんだ。楽しみにしておこう。」

満足げに流生は腕を組み笑顔で答える。しかし、その後少し置いて申し訳なさそうな顔になった。

「正直、受け取ってもらえるか悩んだんだが杞憂でよかった。お嬢の姿を見て嫌になられているのではないかと思ってな。」

「あ……」

響はその言葉に息を飲む。流生が言わんとすることも理解できた。刃を向けられ、敵意をむき出しに接せられればいくらファンとはいえいい気がしないと考えるのは普通のことだ。だからこそ、流生は今日謝罪に来たのだろう。風鳴翼を嫌いにならないでほしいと願って。彼女をかばうために。

「今のお嬢は正直余裕がない。姐さんのギアを受け継いだあんたにやり場のない感情を抱いているんだと思う。そのどうしようもない気持ちがあんたへの態度に出てしまっている。でも、本当のお嬢は、泣き虫で、負けず嫌いで、だらしなくて、誰よりも真面目で、面倒見がよくて、優しい人なんだ。歌を歌っている時の姿が本当の姿なんだ。」

だから、と流生は崩していた姿勢を整え言葉を続ける。

「どうか、お嬢を頼む。……一緒に戦えるのはあんたしかいない。」

再び頭を下げて流生は響に懇願した。その手は固く握られ震えていた。悔しさを耐えているように響には映った。だからか響も自分の思っていることをすんなりと口にすることが出来た。

「……あの時の翼さん、泣いていました。私が、しっかりしていないから、奏さんの代わりに成れていないから」

だから翼に無理をさせてしまっている、そういった意図を伝えると流生は静かに頭を上げた。そして静かに首を横に振る。

「一つだけ言わせてくれ。あんたは…いや、誰も姐さんの代わりには成れねえよ。」

「それは……」

今度は響が俯く番だった。受け継いだガングニールを使いこなすためにも奏のようにならなければいけない。そう成れないというのなら私はどうすればいいのだろう。

自然と視線が深たちが出ていった扉の方に向かった。けれども、扉は開かれないままだった。

 

 

 

 

開かれない扉の向こう側から聞き耳を立てていた深と未来は部屋の中から不穏な気配が無くなったのを感じるとアイコンタクトをし、そそくさとキッチンに音をたてないように移動する。

「ふぅ、一時はどうなるかと思ったけど何ともないようでよかった。」

「流生さん、ああいうところは不器用だからな…あぁよかった。」

ふぅと二人同時に大きなため息をついた。そのまま深は未来の方を見ると両手を合わせて頭を下げる。

「未来ちゃんごめんね。変なことにつき合わせて」

「本当ですよ!1年前も勝手にいなくなるし、この間だって響を遅くまでつき合わせるし、今日も突然来たと思ったら一触即発になりそうな二人を二人っきりにするし!大体いつも深さんは勝手が過ぎます!」

「うっ!申し開きのしようもございません」

未来から怒涛のお叱りを受け深はたじろぐ。だが実際問題すべて事実なため深は何も言い返せずただただ謝るしかなかった。

「……それで、いったい何がどうなっているんですか?ちゃんと説明してください。」

「はい、実は……」

お茶の準備をしつつ、深は未来の勢いに負け、伝えられる範囲の出来事を話し始める。とは言っても了子からも釘を刺されていたためシンフォギアや二課に関わることは極力省き、響が風鳴翼の仕事の手伝いをしていると説明するのだった。

「それで、響ちゃんが翼さんと流生さんの地雷を踏みぬいてしまって…今現在ぎくしゃくしている状況になってしまっているんだ。」

「……なるほど。それで最近響の様子が変だったんだ。」

「納得してもらえたかな。」

未来は深の話を遮らず頷きながら納得した様子を見せる。その様子に深は安堵し、お湯が沸いたためコンロの火を止めた。そのままポッドにお湯を注ごうとして背中に未来の言葉を受けた。

「でも、正直それが全てじゃないですよね?」

深の動きが少し止まる。深はすぐに自分の動揺が悟られないようにお茶を入れる動作を続けた。

「……どうしてそう思うんだい?」

「響だったら、ただ翼さんの活動を手伝っているのならすぐに私に自慢してきますよ。」

「社外秘のことも多いから口止めしていたとしたら?」

「だとしても少しははしゃいだ様子を見せるはずです。あんなに疲れた様子で帰ってきたりはしません。」

それに、と未来は続ける。深が振り返ると未来の訝しみの浮かんだ目が交差する。

「1年前から貴方は隠し事が多いから。私だけでなく、響に対しても。」

図星を突かれ深は未来から目をそらす。深の脳裏にかつて始めて未来と会った時のことが浮かんだ。それから観念するかのように深呼吸を一つする。それからもう一度深は未来を見据えた。

「未来ちゃんの言う通り今、僕と響ちゃんは君に隠し事をしている。」

「それを教えてはくれないんですか?」

「うん、むやみに人に言えないことだ。言ったら未来ちゃんにも、響ちゃんにも迷惑がかかるからね。」

深は未来の質問に首を横に振って答える。納得のいかない未来はさらに質問を投げかけた。

「……響はそれに納得しているんですか?」

「いや、言えるなら伝えたいと話していたよ。話せないのはこちらの都合だ。だから、どうか響ちゃんのことは責めないであげてほしい。」

深は申し訳なさげな表情でそう伝える。未来は言いたいことを二度三度飲み込むように口を開いては閉じを繰り返した。

「教えてください。響は危ないことに巻き込まれているんですか?」

そうして未来がためらいながら発した質問に深は再度目をそらす。けれどももう一度未来の目をまっすぐに見据えた。

「……僕の我儘にすぎないけれど、彼女には関わってほしくなかった。」

言えるのはそれだけと力なく言った。しかし、響が危険なことに巻き込まれている。それを知るには十分な答えだった。そして、それを受容している深の姿に未来は怒りを感じた。

「貴方は響がそんなことに関わっていて平気なんですか?」

目を閉じる深。平気でないことなど聞くまでもなく深の様子から分かっていた。しかし、それでも未来は聞かずにはいられなかった。深もそんな未来の気持ちを理解しているのか一拍置いてもう一度未来を見据え答える。

「彼女にしかできないことなんだ。だからせめて、彼女が一人で背負わなくていいように力になりたい。できることは少ないけれど……」

正直、頼りない言葉を言っていると未来は感じた。でも、自分と同じくらいに響のことを案じていることだけは伝わった。

「……何か、私にも手伝えることはありますか。」

「ありがとう。どうか、響ちゃんの帰れる場所でいてあげて。きっと響ちゃんにとってそれが一番大切なことだと思うから。」

「……分かりました。」

二人は紅茶と皿に分けたケーキを持ってリビングへと戻ることにした。入れた紅茶は少しぬるくなっていた。

 

 

 

 

深たちが響たちの部屋で話をしているのと同じ頃、風鳴翼は一人リディアンに併設されている日本家屋の一室に座して目を閉じ精神統一をしていた。

部屋を照らすのは幾本のろうそくのみ。暗い闇の中、翼とその前に置かれた真剣だけがうら悲しく照らし出されていた。微動だにしない翼、しかしその心の中は決して落ち付いてはいなかった。翼はあの日のことを思い出していた。天羽奏の最期を。

思い出されるのは、絶唱の余波で消し飛ぶノイズの群れ、そして夕焼けに照らされた血を流しながら倒れた奏の姿。

「奏!」

「どこだ翼……真っ暗でお前の顔も見えやしない。」

翼はそんな奏を抱き起こし声をかけたのだ。指すらまともに動かせない。目もまともに見えない。目の前にいる翼に目を合わせることもできずただただ虚空を奏は見つめていた。

「奏」

「翼、流生は……逃げられたか?」

そんな状態だと言うのに奏は流生の心配をする。翼は抱きしめる力を強めた。

「うん、流生は……ここにいないよ」

「そうか……やっぱりあいつに任せてよかった……私の言ったことで…傷ついてなきゃいいけど……」

流生の無事に安心し少しだけ口角が上がる。しかしすぐにその微かな笑顔も消え翼を案ずるように言葉を紡いだ。

「翼も悪いな…もう一緒に歌えないみたいだ。」

視界が涙で滲む。奏は言った言葉は翼の心を抉る。どこまでも一緒だと思っていた。二人でならどこまでも行けると信じていた。それだというのに。

「どうして、どうしてそんなことを言うの……奏は意地悪だ。」

「だったら翼は……泣き虫で…弱虫だ…」

大切な妹分を見つめる優しいまなざしを見えていないのに翼に向けて、奏は泣きじゃくる翼にそう言い返した。

「それでもかまわない!だからずっと一緒に歌ってほしい」

悲痛な叫び声で翼は懇願する。どうか死なないで、と。傍にいてくれ、と。

奏は目を閉じる。もう自分に残された命の火が尽きることが理解しているかのようだった。

「知ってるか翼……思いっきり歌うとな。すっげぇ…腹減るみたいだ」

静かに奏は涙を流す。そしてその体は灰となっていった。

「奏ぇ!!」

翼は崩れ落ちる奏の体を抱きしめ叫ぶ。けれども、力を入れれば入れるほどその灰は翼の手から零れ落ち空へと飛び消えていった。

その後どれくらいその場にいたのだろうか。流す涙も枯れ果てて、奏の姿はどこにもなく、奏が死んだという事実がまるで受け入れられなかった。けれども、手に残った奏だった灰がその事実を現実だと残酷に告げてきた。

「お嬢……」

呼ばれて声の方を向いた。そこにはこちらを心配するように、でも翼と同じように奏が死んだという事実を受け入れきれずにいる流生がいた。

「どうして、止めてくれなかったの…」

その顔を見たとき翼は自分ではどうしようもない衝動に襲われた。

「ねぇ、どうして?傍にいたのに!あなたなら止めることが出来たのに!!どうしてよ流生…」

奏が絶唱を歌う直前、流生は奏と一緒にいたのだ。止めることだってできたはず。流生の襟首をつかんで叫んだ。

そして、そのことをすぐに後悔した。掴みかかってから流生の顔をようやくまともに見ることが出来た。奏が死んだこと、何もできなかったこと、翼を悲しませていること、それらに対する、自責、怒り、嘆き、悲しみ、動揺、憔悴。そんなあらゆる感情が翼を見る黎明の瞳に映っていた。

それに気づいて翼は襟首をつかんでいた手から、いや全身から力が抜けその場に崩れ落ちてしまう。

翼がしたことは、自分の悲しみを流生にぶつけることだった。そして彼を傷つけるだけのことだった。

 

 

 

 

意識を過去から今に引き戻す。翼は目の前のろうそくに向け抜刀する。剣は焔に当たる直前で止まる。剣の風圧が小さくその火を揺らした。

「……すべては私の弱さが引き起こしたことだ。」

奏の死も。流生が自責の念に囚われるようになったのも。

自分を叱るようにそうつぶやくとその部屋を後にするのだった。

 




お付き合いいただきありがとうございます。
感想お待ちしております!
反応欲しいので特に感想ないって方でもファイットォ!!と書いていただけると助かります。
そしたら俺がイッパァッツと返信しますからぁ~
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