装者の男女恋愛が見たいッ!戦姫絶唱シンフォギア SLS 作:ふみー999
正直、最近時間取れなかったり、取れても布団から出られないことが多くて困る。
冬だからなのかなぁ・・・
課題に一区切りをつけた響たちは特機部二地下基地の指令室に定例ミーティングを行うべく来ていた。
「すみません、遅くなりましたか?」
「いや、時間通りだ。」
指令室にはすでに弦十郎含めた二課の職員、そして翼も集まっていた。
流生は定位置だと言わんばかりに翼が座る椅子の後ろに進み控える。
深と響は弦十郎たちが座るソファの隣に立った。
「……」
ちらりと響が翼の方を見るが翼はその視線に何もリアクションを取らず淡々と手にしたお茶を飲んでいた。
全員が一通り落ち着いたことを確認すると弦十郎は了子を見る。
「では、全員そろったところで仲良しミーティングを始めましょ」
了子はそう言うと端末を操作した。するとディスプレイにリディアンを中心にしたマップが表示された。そしてその上に赤い点が複数表示されている。
「どう思う?」
「うん、いっぱいですね」
「ふっはは。まったくその通りだ」
その表示に対して弦十郎が尋ねると、響は見たままの感想をそのまま伝えた。素直すぎる感想に思わずと言った様子で弦十郎は笑った。
「これはここ一か月に渡るノイズの発生地点だ。ノイズについて響君が知っていることは?」
「えっと、まず無感情で機械的に人間だけを襲うこと。そして、襲われた人間が炭化してしまうこと。時と場所を選ばずに突然現れて周囲に被害を及ぼす特異災害として認定されていること」
「意外と詳しいな」
予想外に詳しい説明が響の口から出て弦十郎は素直に感心する。
「今まとめているレポートの題材なんです。ちょうどさっき深君と流生さんに教えてもらって」
ちらりと響が深の方を見ると、よくできましたと言うように深は笑顔で頷く。すると了子が補足するように解説を始めた。
「そうね、ノイズの発生が国連で議題に上がったのは13年前だけど。観測そのものはもっと昔からあったわ。それこそ太古の昔から。」
「世界の各地に残る神話や伝承に登場する数々の偉業は、ノイズ由来のものが多いだろうな」
「ノイズの発生率は決して高くないの。この発生件数は誰の目から見ても明らかに異常事態。だとするとそこに何らかの作意が働いていると考えるべきでしょうね」
作意、という言葉に響は驚いた。ノイズは先ほど説明した通り、特異災害。誰かの手によるという発想がなかったのだ。
「作意?ということは誰かの手によるものだということですか」
すると今まで静観していた翼と流生が話に入ってきた。
「中心点はここ、私立リディアン音楽院高等科、我々の真上です。」
「まあ、サクリストD、デュランダルを狙っているって考えるのが妥当でしょうね。」
「あの、デュランダルって一体?」
聞き慣れない単語を聞いた響が質問すると友里と藤尭の二人が説明を始めた。
「ここよりもさらに下層、アビスと呼ばれる最深部に保管され、日本政府の管理下にて我々が研究しているほぼ完全状態の聖遺物、それがデュランダルよ」
「翼さんの天羽々切や響ちゃんの胸のガングニールのような欠片は装者が歌ってシンフォギアとして再構築させないとその力を発揮できないけれど、完全状態の聖遺物は一度起動した後は100%の力を常時発揮し、さらには装者以外の人間も使用できるだろうと研究の結果が出ているんだ」
「……」
藤尭の装者以外という言葉を聞いた流生は短く息を吸う。翼はコップを口につけて動かなくなるがすぐに飲み直す。流生の動きには気が付かないふりをした。
「……こほん。それが、私の提唱した櫻井理論♪だけど完全聖遺物の起動には相応のフォニックゲイン値が必要なのよね」
「ちなみに、デュランダルというのはフランスの叙事詩『ローランの歌』の主人公ローランが持っていたとされた剣なんだ。あまりの切れ味にローランが剣を折ろうと岩にたたきつけると岩の方が真っ二つになったなんて伝説もある。」
流生から気をそらすように了子達、師弟は響に向かって補足説明を続ける。響は分かっているのか分かっていないのか微妙な顔をしていた。
「あれから二年、今の翼の歌であればあるいは……」
弦十郎は静かに立ち上がる。翼はその言葉に表情を険しくする。
少し離れた席に座っていた友里と藤尭は翼の様子には気がつかずに話を続ける。
「そもそも起動実験に必要な日本政府からの許可って降りるんですか?」
「いや、それ以前の話だよ。安保を盾にアメリカが再三のデュランダル引き渡しを要求してきているらしいじゃないか。起動実験どころか扱いに関しては慎重にならざるを得ない。下手打てば国際問題だ。」
「まさかこの件、米国政府が糸を引いているなんてことは」
「調査部からの報告によると、ここ数か月の間に数万回に及ぶ本部コンピュータへのハッキングを試みた痕跡が認められているそうだ。さすがにアクセスの出どころは不明。それらを短絡的に米国政府の仕業とは断定できないな。」
友里の懸念に弦十郎はお手上げだとでもいうように手を広げる。深はその後に続いて口を開いた。
「痕跡は調査部や僕の方でも追っています。ただ、相当用意周到な相手なようで複数の海外サーバーを経由しているのはもちろん。こちら側のファイヤーウォールや暗号化キーの逆利用なんかも併用していて相当達が悪い相手ですよ。下手すれば、先生レベルの天才かもです。」
ため息をついてうなだれる深を見て流生は口元に手を当てて考え込む。
流生から見て深の解析能力は相当高いものだと認識している。それがこうも手を焼くということは相手もそうとうな情報処理能力を持っているようだ。
「本来2課はそういうところが本領なんだけどな……厄介な相手みたいだな」
「あら~それは怖いわね。もっとも私の方が一枚上手だろうけどね~」
同レベルかもしれないと言われた了子本人はというとあまり気にした様子もなく飄々とした態度を崩さなかった。流石の自信だなと深は感心し、流生は少し呆れた様子を見せる。すると今まで静観していた緒川が壁際から動き出した。
「風鳴指令、流生君」
「おっ、そうかそろそろか。」
「あ~、そうでしたね。」
弦十郎と流生がそれぞれ緒川からの呼びかけに反応していると響は何のことやらと首をかしげる。
「ほへ?」
そんな様子に緒川は懐から出した眼鏡をかけながら微笑みかけた。
「表の顔ではアーティスト風鳴翼のマネージャーをやっています。」
差し出された名刺を受け取りながら響はやや興奮した様子でその名刺を見た。
「おお、名刺をもらうなんて初めてです。これまた結構なものをどうも。」
響がぺこりとお辞儀をした後、翼を筆頭に緒川、流生は司令室を後にした。
「私たちを取り囲む脅威はノイズばかりではないんですね。」
響の言葉に弦十郎たちは静かに頷く。深は不安そうにしている響に近づいた。
「……そうだね。聖遺物をはじめ、異端技術は利用価値があるから。悪だくみする人はきっと多いんだろうね。」
「どこかの誰かがここを狙っているなんてあんまり考えたくないね。」
「うん、でも大丈夫。ここはそう簡単に突破されるような設計にはなっていないから。ね、先生?」
心配している響を励ますように軽い口調で深は了子へと言葉を投げかける。了子もそれに軽く答えた。
「う~んそうよ、なんていったってここはテレビや雑誌で有名な天才考古学者櫻井了子が設計した人類守護の砦よ。先端にして異端のテクノロジーが悪いやつらなんて寄せ付けないんだから♪」
「だ、そうだよ。まあ大船に乗った気持ちでいていいからね」
「深君、ありがとう。了子さん、みなさんもよろしくお願いします。」
響は再度二課の面々に対して頭を下げるのだった。
「う~んでも、響ちゃん的には深から“君は僕が守るから~”的なことを言われた方が安心なんじゃないかしら♪」
「うぇ!?ちょ、りょ了子さん!」
突然の不意打ちに勢いよく頭を上げた響はゆでだこのような顔で了子の口を抑えるようとする。そんなへたすれば恋心を知られてしまうようなことを安易に言ってしまっては大変だ。響にだって心の準備というものもある。バレるにしたってもう少しロマンチックな場面でバレたいものだ。
「響ちゃんストップ!先生すごい顔になっているから!!」
「へ?」
深から声をかけられて了子を見ると響の手によって口と鼻を抑えられ息が出来ずに蒼くなっていた。
「あ!ごごごめんなさい!」
「がはっ!い、いいのよ。思った以上に情熱的だったから驚いちゃっただけで」
乱れた息を整えながら了子は謝罪する響にフォローを入れる。
そんな様子を見ていた深はあきれたようにため息をついた。
「まったく、変なことを言うからですよ先生。響ちゃんだって年頃の女の子なんですから。第一、気のない相手からそんなこと言われたって気持ち悪いだけでしょうに」
「……」
「……」
どうやら深は気づいていない様子だった。よかったやら悪いやら。すっごい複雑な気持ちになる響だった。
了子と響は顔を見合わせる。お互いため息をついた。響に関しては大きく肩を落としている。
「貴方も苦労するわね。がんばりなさいな。」
「……はい、ありがとうございます。」
了子に低くなった頭を撫でられながら響は何度も頷くのだった。
「……え?何この空気?え?」
一人取り残された深は困惑しながら周りを見渡した。弦十郎をはじめ誰も目を合わせる人はいなかった。
指令室を出た翼たち三人は廊下を早足で歩いていた。翼が先頭を歩き、その後ろにスケジュール帳を確認する緒川と両手を後頭部に組んでいる流生が並んで続いている。
「次に、月末に予定しているライブですが。あまり時間がありません。後でリハーサルの日程表に目を通しておいてください。それから例の、イギリスのレコード会社からのお話ですが」
レコード会社からの件について触れられると今まで歩みを止めなかった翼は険しい顔で振り返り緒川を見る。
「その話は、断っておくように伝えたはずです。」
「いいんじゃないですか、誘いを受けても。向こうでも歌を歌えるチャンスなんてなかなかないでしょうよ」
流生は夕飯の献立でも決めるかのような軽さで話に割って入った。翼はそんな流生をにらむ。
「流生、勝手なことを言わないで。私は剣。戦うために歌を歌っているに過ぎないわ。」
流生は頭に置いていた腕を下ろし翼の目を見る。そしてさきほどよりも声音を落として話し始めた。
「だとしても、多くの人に歌を届けるのには意味があると思いますけどね。そんなかっかと怒らずとも、もう少し冷静に考えたって遅くはないんじゃないんですかい?」
流生の発言を聞いた翼はむっとした顔をすると向かう先へと振りむく。
「怒ってなどいない。剣にそんな感情など備わっていないわ。」
そうとだけ言い残すと緒川と流生を置いて先に一人で歩き始めた。
歩きゆく後ろ姿を見つめて流生は眉を八の字に曲げる。そして翼に聞こえないように小さくため息をついた。
「はぁ~感情がなかったら」
「歌なんて歌えないですよね」
そんな流生のつぶやきに答えるように緒川が笑顔で流生の言いたかったことを続ける。
流生はその通りと大きくうなずいた。そして先に行く翼に追いつくために緒川共々駆け出すのだった。
ミーティングを終えた響たちはドリンクを片手にソファを囲んで休息していた。
浮かない顔をしながらソファに座っている響はじっと自分のカップを覗き込んでいる。
「どうして私たちは、ノイズだけでなく人間同士でも争っちゃうんだろう?どうして世界から争いが無くならないんでしょうね」
「それは……」
そんな響の様子に隣に座る深は声をかけようとした。しかし、深本人も答えを見つけられず言葉が続かなかった。そんな深を横目に了子が響の耳元で囁いた。
「それはきっと人類が呪われてるからじゃないかしら」
そっと了子は響の耳を甘噛みする。突然の刺激に響は驚き悲鳴を上げて立ち上がってしまう。
「いやぁ!?」
「あら、おぼこいわね。誰かさんのものになる前に私のものにしちゃいたいかも♪」
「だから先生、あんまり響ちゃんをからかってあげないでくださいよ。」
顔を真っ赤にして驚いている響の姿が面白かったのか、了子は満足げに目を細め、ねっとりと響を見据えた。
誰かさんと呼ばれたことにも気が付かない深はそんな師匠の様子を見て苦笑いする。だが、深は了子の言葉にひっかかりを覚えた。
「でも、呪いですか。先生が言うとなんか本当にそれがあるように聞こえますね。」
深の目線は自分が持つ紅茶のカップへと移る。そしてその水面に映る自分の姿を見ながらつぶやいた。
「そんなものが無くなれば世界は平和に、誰も苦しまなくていい世界になるんでしょうか……」
「……そうかもしれないわね。」
了子は自分のコーヒーを仰ぎ飲んだ後、深のつぶやきに答える。その瞳は曇った眼鏡に遮られていた。響は二人の瞳に何が映っているのかうかがい知ることが出来なかった。
二課での会議から翌日。放課後に未来は課題を遅れて提出している響に付き添って職員室の前に訪れていた。響が職員室に入ってからすでに10分が経っている。職員室からの声は特に聞こえてこず、未来はなんとなしに窓から見える夕日を眺めていた。
「提出時間は過ぎてないから大丈夫だと思うけど……」
ぼんやりと独り言をつぶやいていると、職員室の扉が開かれ中からぐったりとした様子の響が現れた。
「どうだった?」
「そーぜつに字が汚いって。まるでヒエロなんとかみたいだって言ってた」
「受け取ってはもらえたの?」
「うん、内容に関してはしっかりしているって驚かれちゃった!」
イエーイと嬉しそうに響は未来とハイタッチをする。職員室から窘める担任の声がして慌てて二人は声を抑えた。
「深さんに後でお礼言っておきなよ。レポートの内容、かなりまとめてもらっていたでしょ」
「う、そうだね。きちんと伝えておくよ。それはそうと!これで流れ星見られるね!」
痛いところを突かれた響は早急に話を変える。とはいえ流れ星を見に行きたいというのは本心であった。未来もその気持ちは同じらしく深くは追及せずにいた。
「まあ、助力があったとはいえ、頑張ったのは事実だから。ご褒美に教室からカバン取ってきてあげる」
嬉しそうに未来は教室に向けて走りだす。
「やっぱり未来は足早いな~さすが、元陸上部」
未来が駆け出していくその後ろ姿を見ながら響は感心していた。流れ星はどんな風に見ることが出来るのだろうかと期待に胸が躍る。しかし、そんな期待に水を差すかのように響の端末の呼び出し音が鳴り響いた。
「……はい」
嫌な予感を感じながら、響はその着信をとる。
「……響ちゃん」
電話からは重く固い声音をした深の声が聞こえてきたのだった。
未来は無人の自室へと帰ってきていた。荷物を取りに行き職員室前に戻った時にはすでに響の姿はそこになかったのである。もしかしたら先に部屋に戻っているのかもと考えてここまで来たが当てが外れた。
すると未来の携帯に響からの着信があった。すぐに未来は携帯をとり電話に出る。
「響、貴方——」
問いただそうと未来は強い口調で話し始めるが、弱弱しい、罪悪感が聞き取れる声音をした響の聞いて押し黙ってしまう。
「ごめん、急な用事が入っちゃった。今晩の流れ星一緒に見られないかも……」
「……深さんが関わっていること?」
「……うん」
突然に響が自分との約束を反故にしていることへの動揺、何があったのか分からない困惑。それらから一瞬押し黙った後、未来はその原因となっているだろう少年の名前を問う。響は少しためらってからその質問に肯定で答えた。
「大事な、ことなんだね」
「うん」
深呼吸を一回。冷静さを失わないように未来は努めて穏やかに質問を続ける。今度は迷いなく響は答えてきた。
「……わかった、なら仕方ないよ。部屋のカギ開けておくから。あまり遅くならないで」
「ありがとう……ごめんね」
響は通話を切ると自分の後ろを振り返る。その視線の先には地下鉄の駅へと繋がる階段があった。そしてその階段を埋め尽くすようなノイズの群れを響はにらみつける。
意を込め、響は聖詠を口ずさむ。すると響を黄色い閃光が包み、展開されたフォニックゲインが収束する。そして全身へと物質化した装備が展開しガングニールのシンフォギアが顕現した。
胸に湧き上がる歌を口ずさみ、響はノイズを殲滅するために地下鉄内へと突貫する。
拳をノイズに突き出し、蹴りを入れる。拙いながらもノイズ相手に優勢に響は立ち回る。通信がヘッドギアに入り、深と弦十郎の声が聞こえてきた。
『響ちゃん聞こえる?現在地下通路にノイズの反応を複数検知している。その中でも特に大きな反応があるんだ。翼さんも後数分したら現着するからそれまで持ちこたえて』
『くれぐれも無茶をするなよ』
「……分かってます。私は私にできることをするだけです。」
ノイズの攻撃に備えて構えを解かずに響は二人に答える。それと、と深は申し訳なさそうに話を続けた。
『今日は、未来ちゃんとの約束の日、だったんだよね』
気にしていることを見透かされ、響は少し動揺する。ノイズはその隙を逃さず襲い掛かってきたが、響はタイミングを合わせて拳を突き出しそのノイズをかき消した。
「……仕方ないよ、ノイズが出たなら。放っておいたら大変なことになるから」
自分に言い聞かせるように響は深に答える。正直に言うのならば、流れ星を未来と一緒に見たかった。約束を破るつもりなどなかったというのに。嘘のない言葉を、争いのない世界を、なんでもない日常を剝奪してくるノイズに対する怒りに響は握る拳に力が入るのを感じる。怒りのままに響は迫りくるノイズにその拳を振るった。殴り、千切り、八つ裂きにした。胸の内から溢れる破壊衝動に身を委ねていると心なしか気持ちも晴れるような気がしたのだ。
『でも、正直言うとそっち優先したかったってところじゃないか?』
「流生さん?」
突然、深との通信に割り込む形で流生の声が聞こえてきた。そういえば指令室にはいなかったと響は考えていると流生は棒読みで通信を続けた。
『えーこちら流生。要救助者がいるとの報告を受けたが見つけられず。深、そちらの反応はどうなっている?』
流生は響が戦っているところから数キロ離れた地点でバイクに跨りながら通信をしていた。その表情は要救助者がいると言われていたにしてはのんびりとしたものだった。
『解析したがどうやらこちらの見間違いだったようです。指令、探索任務終了してもらって構いませんか?』
深が弦十郎に確認を取ると弦十郎は二人の茶番に口角を少し上げ頷く形で許可を出す。
『了解。本日の業務時間は終了しているからこのまま直帰させてもらうぜ。せっかくの夜だ。その辺の山にでもツーリングでもしていこうかね。』
「えっと、つまり?」
流生と深の会話の意図が掴めず響は困惑気味に問う。
『流れ星見に行く約束しているんだろ?終わったら送ってやる』
ぶっきらぼうに流生が言うと響はようやく何を話しているのかを理解した。要するにノイズ殲滅後、未来のいる場所まで送迎してくれると言っているのだった。
「流生さん!あ、ありがとうございます!」
予想していなかった申し出と、未来と流れ星が見られるかもしれないという希望に響は少し上ずった声で流生に礼を言った。
流生は、少し笑ったのだろうか小さく息を吐く音を鳴らした後静かに答える。
『俺じゃなくて、礼なら深に言ってあげな。俺に頼んできたのは深だからな』
「深君が?」
響が問うと、深は少し押し黙った後、観念したように通話に応じた。心なしか照れているように感じられる。
『まぁ、戦闘じゃあんまり役に立ててないし、プライベートのフォローぐらいはしてあげたかったから』
「ありがとう、深君」
先ほどまでの破壊衝動は鳴りを潜め、響は自分の心に温かいものが満ちていくのを感じていた。未来と流れ星を見られることももちろんだが、自分を気遣ってくれる深の気持ちが何よりも嬉しかった。
『うん、どういたしまして。流れ星の件は大丈夫だから落ち着いて冷静に対処して』
「分かった」
落ち着きを取り戻した響は冷静に再びノイズと交戦を繰り返す。すると、ブドウのような房のついたノイズが一匹、小型のノイズを生成しながら線路方面へと逃げていくのを見つける。
「待ちなさい!」
逃がすまいと響が追いかけようとすると、ブドウ型ノイズは自身の体の一部を切り離し、響と真上の天井に向けて投げつける。着弾するとそれらは爆発を起こす。響がひるんだ隙にノイズは爆発によって空いた穴から地上へと這い上がっていった。
「一体、地上に逃げた!」
『いや、問題ない。剣が、舞い降りたからな』
急いで、追いかけようとすると流生の冷静な声がヘッドギアから再び響いた。それは自慢げで、ノイズが逃げたというのに余裕すら感じる声だった。
「え?」
流生の声に立ち止まり、上を見るとそこには青く光り輝く何かが流れ星のように地上に向かって落ちてきた。
逃げたノイズは歌に気づき振り返る。刹那、飛んできた斬撃に体を真っ二つに切り裂かれる。一刀のもとにノイズを屠った翼はスラスターを噴射し静かに着地した。
鎧袖一触、無表情のままに振り返る翼。響は自分等必要ないと言外に言われているように感じ、思わず呼びかける。
「私だって、守りたいものがあるんです!だから…!」
しかし、翼はそんな響の叫びも聞こえていないかのように振舞う。そして無表情のまま剣を構え直した。また、先日のような戦いになるのではないかと響が身構えると闇の中から知らない女の声が聞こえてきた。
「だから?んでどうすんだよ?」
声のする方を翼と響が向く。雲に隠れていた月が顔を覗き、月光がその声の主を照らした。
「……!?」
その姿に翼は思わず息を飲み目を見開く。
「ネフェシュタンの鎧っ!?」
少女が纏っていたのは2年前、奏が死んだあの日に失われた完全聖遺物。ネフェシュタンの鎧だった。
最後までお付き合いいただきありがとうございました!
ようやく、ようやくクリスを出せたっ!!本当の戦いはここからだぜぇ!!