装者の男女恋愛が見たいッ!戦姫絶唱シンフォギア SLS 作:ふみー999
年末原因不明の高熱が出て寝込んでおりました。
投稿遅れましてもうしわけないです。
シンフォギア1期再放送おめでとうございます!
いや~これで適合者が増えるといいですねぇ~
というわけで第13話どうぞ!
ネフェシュタンの鎧を身に纏う少女と生身の流生の戦いが始まってすでに数分が経過した。その間に少女の放つ攻撃が地面を抉り、木々をなぎ倒し辺りはボロボロになっていた。一撃でも攻撃が当たれば流生の体は吹き飛ぶ。鼠が猫に戦いを挑んできたようなものだ。少女は自分の勝利を疑っていなかった。
だが———
(なんなんだよこいつは!?)
そんな予想をしていた少女は今の状況に驚愕していた。目の前の鼠はこちらの猛攻を前にいまだに傷一つ負わずに立っている。
「チィ!こんのぉ!」
苛立ちを込めた拳で流生の頭を潰そうと繰り出す。しかし流生はその攻撃に静かに左手を差し出す。すると少女の拳はその左手をなぞるように流生の後方にそれてしまう。
(くそ、まただ!水でも殴ってるみたいに手ごたえがねぇ!?)
先ほどから少女の攻撃は流生に命中はしていた。しかし、そのすべてを腕や足、時には薙刀を使って攻撃の勢いが生きたまま流されてしまう。そして、攻撃を繰り出した隙をついて反撃を確実に入れてきていた。今回も首を狙った正確無比な突きが飛んでくる。体をひねって少女は何とかその一撃を躱す。避けきれず、少女の銀髪が数本切れて宙を舞った。
体勢を立て直すために一度少女は流生から距離を取った。
「なるほどな、あんたとはまともに戦うなって命令はこういうことかよ」
「へぇ?命令ってことはあんたを従えているやつがいるのか」
薙刀を再度構え直し、流生はわざと軽い口調で尋ねる。
「……」
少女は余計なことを口走ったと苦虫を潰したように顔をしかめた。その表情を見て流生は自分の仮説が合っていることを確信して続ける。
「しかも、俺のことを知っているってことはこちらの内情にも詳しいと来た。ますます、知っていることを洗いざらい吐いてもらう必要があるみたいだな」
「チィ!こんのぉ!!」
少女は先ほど翼を倒したエネルギー球を流生に向かって打ち出す。
大型トラックの衝突のように真っ正面から飛んでくる攻撃。それに流生はタイミングを合わせ後ろに飛ぶ。そして雑木林にまで近づくと後退を止め、そのエネルギー球を飛び越えるように前に跳躍した。
「疾ッ!」
「大道芸人かてめぇは!?」
そして、雑木林に当たったエネルギー球が爆発する風圧を背中に受けて加速すると一足で少女に肉薄する。少女は驚きながらも突撃に合わせて鞭を使い、突っ込んでくる薙刀にタイミングを合わせ攻撃する。鞭はちょうど薙刀を持つ流生の手元に当たる。そしてその衝撃で薙刀は流生の手を離れ空中に舞った。
「もらいだぁ!!」
得物を失った状態で突っ込んでくる流生に再び拳を繰り出す。確実に流生の鼻先を捉えた回避不能の一撃だった。
「だから、甘いんだよ」
しかし、流生は攻撃が当たる直前、地面を蹴り飛び上がる。そして繰り出される少女の手に両手をつくと逆立ちをして腕の上で一瞬静止する。そこから三日月蹴りを繰り出し、逆に少女の顎に一撃を入れた。
一撃を入れられた少女はよろめき、その隙に弾き飛ばされた薙刀を流生は回収。相手がひるんでいる間に再び突貫し、連続攻撃を仕掛ける。
少女は押されながらも確実にその攻撃を防御、反撃を繰り出し続けていた。
(くそ!一撃でも食らわせりゃいいってのに!!何とか隙を作らねぇと!)
流生の攻撃を避けながら少女は打開策を模索する。少女の視界の端にあるものが見えたのだった。少女は自分の脳内に浮かんだ策を一度は否定するため目をそらした。その隙を流生は見逃さない。薙刀による逆袈裟切りが少女の鎧を捉えた。
「グアッ!?くっそおおおおお!!」
追撃をするために流生は薙刀を振るう。少女は二撃目を食らわぬためにゼロ距離でエネルギー球を放った。たまらず流生はバックステップで距離を取り、少女の鞭の間合いのぎりぎり外で薙刀を構え直した。見ると切りつけた部分は肉体には少ししか届かず、鎧を砕くに留まったようだ。しかし、その鎧の損傷もすぐに再生を始めていた。
「ここでふんわり考え事とは、だったか?」
「チィ、てめぇ!」
足手まといと言われた仕返しと言わんばかりに流生は先ほど少女が翼に投げかけた言葉を返す。腹いせのためでもあったが、それだけではない。相手が感情的になればなるほど攻撃は単純化し読みやすくなる。その効果も狙った軽口だった。効果は覿面、少女は歯をむき出しにし怒りを隠さずに流生をにらみつけてきている。
にらみ合っていると遠くの方で轟音が響いた。どうやら響が囲っていた最後のノイズを殲滅し終えたようだった。
(……頃合いだな。さて、どう撤退するか)
乱れてきている呼吸を整えつつ、流生は冷静に状況を再確認する。目の前には自分に怒りを向けている少女、背面にはダメージが抜けきらず倒れている
「……殿は俺だな。生きて帰れるかね……」
そして、お嬢を連れて立花さんに撤退してもらいその間の時間稼ぎを自分がするということで結論が出る。これまでは相手の攻撃をうまく流せて来ていたが、相手は完全聖遺物を身に纏い、こちらは生身。技量で補っても力の差は歴然。そして鎧は超回復も持ち合わせているとなってはジリ貧である。正直、殿を務めて生き残れるのか不安だ。ここで命が尽きてもおかしくはないだろう。お嬢と立花さんを守って死ぬことになるやもしれない。
「てめぇ、何を嬉しそうに笑っていやがる?」
そんな考え事をしていると少女が流生に問いかけてきた。問われて流生は自分の顔に意識を向ける。知らず知らずのうちに口角が上がっていたようだ。口角を戻して少女を見据える。少女の向こう側に暁のようなオレンジ色の背中が見えた気がした。
「近づけているって思えてんのかね……」
少女に聞こえない声でそうつぶやくと、流生は再び口角を上げ大きな声で少女を挑発する。
「ネフェシュタンの鎧なんてたいそうなものを身に纏っていても大したことがなくて楽だなって思ったんだよ」
「……見え透いた嘘ついてんじゃねえぞ。息が上がってきているじゃねぇか?」
先ほどまで頭に血が上っていた少女は響がノイズを倒し終わったのを確認するとどうやら冷静さを取り戻したようだった。的確に自分と流生の戦力差を言い当て余裕の笑みを浮かべる。
「正直、戦うなって言われても納得いかなかったんだが、認めてやるよ。」
「ハン、褒められたって嬉しかないな。んで?素直に引いてくれるのかい?」
「まさか!……なりふり構わずやってやるよ」
少女から獰猛な笑みと慢心が消えたのを流生は感じ取る。薙刀を握る手に力を籠め直して流生は叫んだ。
「立花さん!お嬢を連れて逃げろ!」
流生が叫ぶと同時に少女がエネルギー弾を流生に目掛けて投擲する。地面を抉り急接近する光弾を流生は横に飛び回避する。だがしかし、少女の攻撃は一撃では止まらない。
「おらおらおら!!」
「くそっ、気づきやがったか!」
次から次へと連続で少女は光弾を休むことなく打ち出す。流生はひたすら回避に専念せざるを得なかった。超高熱を持つ光弾に流生の体や薙刀は受け流すまで耐えることができない。そのためこれまでも流生は光弾だけは受け流さずに回避を選択してきた。それを少女に見抜かれたのだ。
それでも、右に、左に、時に飛び越え光弾の雨を避け、流生は少女に接近しようと試みる。
「そんだけ大技使いまくれば隙だらけになんだろう!!」
大振りの隙をついて一気に距離を詰めようと流生は駆ける。少女は次弾を装填しているが動き回るこちらに狙いをつけるよりも接近する方が早い。そう流生は確信する。
しかし———
「……チッ」
少女は小さく舌打ちをすると流生とは別の方向を見たのだった。
「翼さん!」
流生と少女が激闘を繰り広げている最中、ノイズを何とか撃破した響は倒れ伏した翼を助けるべく駆け寄っていた。翼はなんとか自力で立ち上がろうとしているが痛みに耐えかねて地に倒れそうになる。響は翼に肩を貸して支える。
響に肩を支えられた翼は戦う流生と少女、そして自分を支える響きを交互に見て押し黙る。響には何かを葛藤しているように見えた。
「……私のことはいい。狙いは貴女だ、早く逃げなさい。」
「そんなことできません!翼さんも」
心配する響の腕を振り払って翼が叫ぶ。
「私は剣だ!たとえここで折れて果てるとしても、敵に背を向けておめおめと逃げられるものかッ!」
それに、と翼は剣を杖にしてよろけながらも戦いの場に赴こうとする。
「流生が……流生が一人で戦っているのに置いていけるわけがない……流生まで失うわけには……」
「翼さん……でも今の私たちじゃ足手まといになるだけです!」
「ッ!?」
説得する響を翼はにらみつける。だがすぐにうつむいてしまう。翼もそのことを自覚している。だからこそ、迷い立ち止まってしまっている。
「翼さん!…ッ!?危ない!!」
響が翼にどう声をかけるか逡巡している刹那、二人の正面が突如明るくなった。
響と翼が顔を上げると少女から放たれたエネルギー弾が二人目掛けて飛んできていた。
「くッ!?下がれ!」
気づいた瞬間、翼は響の前に立ってかばい、攻撃を受けようとする。直撃は避けられない距離、避ければ立花が負傷してしまう。翼は覚悟して自分を襲うだろう攻撃の衝撃に備えた。
「————ッ」
エネルギー弾が爆発し、爆風が発生する。しかし、翼は自分を襲う痛みをいつまでも感じない。閉じかけていた目をゆっくりと開くと爆風の中から一振りの薙刀が無残にも粉々になった姿でパラパラと地面に落ちている。そして、その向こう、薙刀を投擲し二人をかばったのであろう、大きく振り切った態勢のまま、流生がこちらを見ている。そんな流生と翼は目が合った。敵の間合いの中で致命的な隙をさらして、それでも満足気に口元に笑みを浮かべ微笑みかける。主である自分に向かって。
「ッ!流生!!」
そんな致命的な隙を少女は見逃さない。少女の蹴りを横腹に受け、流生はサッカーボールのように地面を転がりながら生えていた木にぶつかる。その衝撃で口から血を吐きながらそのままうつ伏せに倒れ伏した。
「くっ……卑怯な……マネ…しやがって……」
「まだ意識があんのかよ。言っただろう、なりふり構わずやってやるってな」
肺から空気が全部抜け、呼吸もままならない。流生は体を動かそうとしても全身の骨と筋肉が悲鳴を上げ思うように動かせなかった。おそらくあばら骨が数本折れて肺に刺さっている。
「てめぇ……まじかよ」
とどめを刺そうと流生に近づいた少女は思わず呻くようにつぶやいてしまう。流生の傷は明らかに致命傷。意識があるのが奇跡に等しい。
だとしても、流生は立ち上がる。フューフューと肺から空気が抜ける音を立てながら少女をにらみつける。大切なものを奪わせないと吠え立てるように。
そんな流生の姿に少女は恐怖を覚えた。一歩後ずさってしまう。
だからこそ、少女は横から飛んでくる短刀に気が付くのが一瞬遅れてしまった。
「ッ!?チィ!!」
慌てて鞭を使って短刀を薙ぎ払う。飛んできた数本の短刀はそのまま打ち上げられ地面に刺さった。
飛来してきた方角を見ると剣を杖に立っている翼とその後ろにいる響がいた。
「だめだ……逃げろ、お嬢」
聞こえないくらい小さな声で流生が呻く。しかし、そんな流生の願いは届かない。
お嬢が歌を口ずさむ。忘れたくても忘れられない、流生にとっては絶望の歌が聞こえる。
「お前、歌うつもりかよ、絶唱をッ!?」
鎧の少女は翼が何をしようとしているのかを察知し回避しようとする。
しかし———
投げられた短刀が少女の影を縫い付けて離さない。
「こんなもので私の動きをッ!やらせるかよ好きに勝手に!」
少女は拘束から抜け出そうと力を籠める。それでも抜け出すことあたわず。
掲げた剣をゆっくりと納刀し翼は少女へと近づいていく。
一歩一歩確実に、覚悟の籠った眼差しが少女を捉えて離さない。
流生は満足に動かない体をむち打ち翼の下へと翔ける。けれどもどれほど足を踏み出そうともまるで届く気配がない。主までの距離があまりにも遠く感じた。
少女に近づいた翼は少女の肩に手を置く。優しく、抱擁するかのように。その表情もどこか穏やかなものだった。
翼の口から一条の血が流れると紫色のエネルギーの奔流が辺り一帯に押し広がっていく。
駆け寄ろうとしていた流生も、見ていることしかできなかった響もその威力に押し飛ばされる。中心地にいた少女もその威力のほとんどを受けて吹き飛んだ。あたり一面に爆発の衝撃で土煙が舞う。
そこに一台の車が急行してきた。車は響の隣で止まると中から弦十郎と了子、そして深が急いだ様子で出てくる。
「響ちゃん!無事かい?」
「深君……翼さんが……」
響が指さす先を深が見ると粉塵が引き始めていた。その中から身に纏う鎧が全身ひび割れ倒れる少女と爆発の中心地で立ち尽くす翼の姿を黙視することが出来た。。
「ガッアガァア!?」
ミシミシと嫌な音を立てて少女が纏う鎧は損傷を修復しようとしているのか、少女の体を侵食し始めていた。
「チィ!」
そのことに気が付いた少女はダメージの抜けきっていない体を起こして立ち上がり流生に蹴り飛ばされた杖を回収しようと翼たちから遠ざかる。
そして地面に突き刺さった杖を回収しようと手を伸ばす。
「——ッ!?」
しかし、すぐに杖を掴むことはできなかった。乾いた音が2回響いたと思うと杖を取ろうとした腕に横なぎの衝撃が走り伸ばした手がはじかれてしまう。銃弾が手に当たり掴もうとした腕をはじいたのだ。弾丸が飛んできた方向を見るとハンドガンを構えたまま深が少女をにらみつけていた。
「てめぇ!……ッくそが!」
少女はとっさに反撃を試みようとする。しかし、鎧の浸蝕が思った以上に進んでおりそれを断念し杖を回収すると夜の闇に飛び去って行った。
「貴方も無茶をするわね」
「ようやく出てきた首謀者の尻尾です。みすみす逃す手はないですから」
少女の姿が見えなくなったのを確認した後、了子があきれたように深に話しかける。深はハンドガンを下ろしながらそれに答えた。そしてポケットからタブレットを取り出す。画面のマップには高速で移動している赤い点滅が映し出されていた。
「データは調査部に送ります。それよりも今は……」
端末を仕舞った深は爆発の中心地を見つめる。そこには立ち尽くす翼とそれよりも遠くで倒れる流生の姿が見えた。
「翼さん!!流生さん!!」
「無事か!翼!流生!」
二人を心配し弦十郎と響が翼たちの方へと駆け寄る。
「……私とて人類守護の勤めを果す防人……」
声をかけられた翼がゆっくりと響たちの方を振り返る。身に纏うアーマーはボロボロで足元には翼が流したであろう血が滴り落ちその顔は血涙と吐血で赤く染まっていた。
「こんなところで…‥折れる剣じゃありません」
焦点の定まらない瞳をこちらに向けて翼は無理に微笑む。そして、限界だったのだろう。糸が切れた人形のように膝から崩れ落ちた。
しかし、気を失った翼は地面に倒れることはなかった。いつの間に近づいてきたのか、倒れる翼を後ろから流生が抱きかかえていた。
流生も重傷で口から血を流している。しかし、そんなものにかまうものかと強く翼を抱き支えている。
薄っすらと翼の目が開き、流生と目が合う。
「よかっ……た……無事……だった……」
それだけ言うと少し微笑み、再び目を閉じて今度こそ翼は意識を失った。
翼を支える流生の手に力がこもる。
「……馬鹿野郎……また俺は……」
絞り出すようにかすれた声で流生はつぶやく。泣き出しそうな声音だった。流生は翼を抱えたまま立ち上がると弦十郎の下へと近づく。
「おっちゃん、お嬢を……病院へ」
弦十郎は流生から翼を受け渡されると流生の身を案じる。
「流生、お前もすぐに———流生ッ!」
翼を受け渡したことを確認すると流生もまた限界を迎え倒れてしまう。自分を案じる弦十郎や深、響たちの声がどこか遠くで鳴っているように感じる。
「……翼」
意識が消えゆく中で流生は翼の名前をつぶやき、意識を失った。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
感想、評価いただけると励みになります。
お待ちしております。