装者の男女恋愛が見たいッ!戦姫絶唱シンフォギア SLS 作:ふみー999
筆が進んだので今回は早めに出すことが出来ました!
いえ~い、最近空気だった彼が今回は出番が多い!どうなる14話!どうぞ!
あと、前回までのタイトルに話数入れました。何話か分からなくなると嫌なので!
ネフェシュタンの鎧の少女との戦闘で重傷を負った翼と流生はリディアン音楽院近くに設立されている特機部二お抱えの病院に緊急搬送された。
流生は肋骨4本が折れ、内臓にも一部損傷が出ている重傷。絶唱を使用した翼はかろうじて一命をとりとめたものの容態が安定せず絶対安静、予断を許さない状況であった。
「よろしくお願いします。」
翼たちの容態を説明した医師に弦十郎と2課のエージェントたちは頭を下げる。
「俺たちは鎧の行方を追跡する。まずは深のつけた発信機の反応が途絶えた地点に向かう。どんな手がかりも見落とすな!」
号令をかけ、弦十郎たちは病院を後にしていった。
響と深は待合室の椅子に腰掛けていた。響は普段の元気は鳴りを潜め、不安げな表情でうつむいたまま無言でいる。深は設置されている自販機でミルクティーを二つ購入すると響に差し出した。響はそっとそれを受け取った。
「大丈夫、流生さんも翼さんもすぐ元気になるよ」
「……深君、私がしっかりしていないから二人は」
今にも泣きそうになっている響の隣に座り深は違うよと声をかける。
「深君の言うとおり、貴方が気に病む必要はありませんよ。翼さんと流生君が自ら望み、歌い戦ったのですから」
「……緒川さん」
深の言葉に俯いていた響が顔を上げると二人がいる待合室に音もなく入ってきた緒川が深の言葉に続いて話し始めたのだった。
「御存知とは思いますが、以前の翼さんはアーティストユニットを組んでいました。」
「……ツヴァイウイングですよね」
緒川は響の言葉に頷くと自販機で飲み物を購入し、響たちから少し離れたところに座る。
「その時のパートナーが天羽奏さん。今は響さん、貴方の胸に残るガングニールのシンフォギア装者でした。流生君も当時からお二人の付き人としてサポートしていました。2年前のあの日、ノイズに襲撃されたライブの被害を最小限に抑えるため、奏さんは絶唱を解き放ったのです。」
「絶唱……翼さんが使った……」
「……装者への負担を厭わずに、シンフォギアの力を限界以上に引き出す力のことだよ。2年前もそれを使って奏さんはノイズの大軍を一掃した、そうですよね?」
深が補足説明をし、確認するように緒川を見る。緒川は静かに頷き話を続けた。
「はい、しかし絶唱は同時に奏さんの命を燃やし尽くしました。そして流生君は目の前で絶唱を使う奏さんを止めることが出来なかった。そのことを彼は今でも悔やんでいます。」
「それは……私たちを救うためですか?」
響は2年前の記憶を思い出していた。飛んできたガングニールの欠片が胸に刺さってから先のことは朧げだが、誰かに抱えられてその場を後にしたこと、そしてその時に聞こえてきた歌のことは覚えていた。あの場で意識を失った響と深を助けるために奏は絶唱を歌ったのではないか。そして流生は二人を逃がすために、奏が死んでしまうと知っていても止めることが出来なかったのではないか。そんな想像が頭によぎる。
「……」
「……」
響の問いかけに緒川も、そして隣にいる深も無言で返した。それが答えだと、響は自分の想像が当たっているのだと分かってしまう。思わず目を伏せてしまう。
緒川は静かに飲み物を飲むと話を続ける。
「……奏さんの殉職、そしてツヴァイウイングは解散。一人になった翼さんは奏さんの抜けた穴を埋めるべく、がむしゃらに戦ってきました。流生君もそんな翼さんを公私ともに支え続けました。同じ世代の子たちが知ってしかるべき恋愛や遊びも覚えず自分を殺し、一振りの剣とそれを守る鞘として生きてきました。そして今日、翼さんは剣としての使命を果たすため、流生君はそんな翼さんを守るために死ぬことすら覚悟して戦い、歌を歌いました。二人とも不器用ですよね。でもそれが風鳴翼と栴檀流生の生き方なんです。」
緒川の話を聞いて初めて翼と共闘した日のことを響は思い出していた。奏の代わりになると言った自分に流生は殺気と慟哭の混じった眼を向けてきていた。翼も涙を流していた。
その言葉がどれだけ無神経で、二人を傷つけたのだろうか。翼や流生にとって天羽奏はとても大切な人で、そんな大切な人の代わりなんているわけがないのに。
そして誰よりも翼の隣で戦いたかったのは流生のはずだ。奏の代わりになって傷ついている翼を支えたかったのは一番そばで翼を見ていた流生だ。それでも彼は奏の代わりがいないことを知っていた。自分が代わりになど成れないことに苦しんでいた。どれだけ辛い2年間を二人は過ごしたのだろう。欠けた心を押し殺して戦場を駆けてきたのだろう。
それでも流生は頭を下げて翼と一緒に戦ってほしいと頼み込んできた。ガングニールの装者ではなく、立花響に戦ってくれと頼みこんできたのだ。
手にした力に浮かれて、大切なことに気が付けていなかった。
「そんなのひどすぎます……」
気づけば、響の頬には涙が伝っていた。
「そして私は……翼さんや流生さんのこと……何にも知らずに一緒に戦いたいだなんて……奏さんの代わりに成るだなんて……」
ぽたぽたと流れた涙がカップを持つ手に落ちていく。深は何も言わず響の背中をさすった。
「僕も、貴方に奏さんの代わりに成ってもらいたいだなんて思っていません。そんなこと誰も望んでいません。ねえ響さん、僕からのお願いを聞いてもらえますか。」
緒川はまっすぐに響を見て続ける。その声音は穏やかなものだった。
「翼さんのこと嫌いにならないでください。翼さんを、流生君を二人だけで戦わせないであげて下さい。」
「……はい」
涙をぬぐった響ははっきりと緒川の言葉に頷く。気が付けば、長い夜はそろそろ終わりを迎えている。窓の外には夜明け前の青黎い黎明の空が広がっていた。。
響と深が休憩スペースから立ち去った後、緒川は物陰にいる気配に話しかけた。
「……寝ていなくていいんですか?」
話しかけられた男は通路の裏から壁にもたれかかって出てきた。入院服を着た流生だった。
「……これくらいの傷なんてことないですよ……クッ」
「ほら、無理をするから。」
ニヒルに笑い歩こうとするが数歩歩いたところでわき腹を抑えて流生はよろけてしまう。緒川はすぐにそばに駆け寄り体を支えた。
「話を聞いていたんですね」
「自分のせいだなんて考えそうだと思ったからさ……ありがとう慎次兄、立花さんのこと」
「たいしたことはしていませんよ」
優しい笑みで流生からの礼を受け取る。そして流生が目を向けている方、行きたい方向に進めるように補助するのだった。
廊下を少し歩き、流生は翼が寝ている集中治療室の前までやってきた。ガラス越しの翼は包帯を巻かれ顔を見ることすらままならない。
「……また俺は止められなかった。助けに入ったのに逆に助けられちまった。痛かっただろうな……あんなに血を流して、苦しかっただろうな……」
抱きかかえたときの血のぬめりを手にまだ感じるようだった。そんな手で集中治療室の冷たいガラスに触れる。手が阻まれて翼に届かないことがもどかしい。今すぐにでもベットに横たわる翼の手を握りたい、声をかけたい衝動に駆られる。せめてこの思いだけでも届いてくれないだろうか。そんなことまで考えてしまった。
ガラスに薄く映った自分の顔が見える。我ながらひどい顔をしていた。慎次兄が案じるように声をかけてきた。
「流生君、翼さんは」
「分かっています。お嬢が剣として覚悟を持って歌ったことなんて……分かっているんですよ」
慎次兄の気遣いを食い気味に黙らせてしまう。分かっている。お嬢の覚悟も、自分の弱さも。それでも、俺はこんな風にお嬢が苦しむ姿を見たくない。何もしてやれない。いつも見送るだけ。どうしてこうも自分は弱いのか。そう思わずにはいられなかった。
蒼穹を墜ちていく。風が鳴るのを聞きながら青い空に墜ちていく。夢か現かも分からない。けれどもそんなことはどうでもいいものに翼は感じていた。
ふと、自分の近くを誰かが通り過ぎる。驚いて目を開けるとそこにはこちらを見つめる奏がいた。
「……」
後姿のままこちらを見つめる奏。その表情はどこか悲しげに見えた。
「片翼だけでも飛んでみせる!どこまでだって飛んでみせる!!」
そんな奏を安心させたくて翼は叫びかける。それでも奏の表情は暗いままだった。
「だから笑ってよ……奏」
蒼穹が深海に変わる。息が続かず翼はもがきながら深い暗い闇の中へと墜ちてゆく。
それでも自分の半身だった少女に手を伸ばした。けれども何もつかめない。そしてそのまま翼は意識を失った。その直前に、何か温かいものが手に触れた気がしたのは気のせいだったのだろうか。
病院から寄宿舎までの並木道を深と響は並んで歩いていた。二人の間には重い沈黙が流れている。響は自分の足元を見ながら歩いていた。すると、その足元に黒い影がゆっくりと近づいてくる。飼い主に似た黄色い目で響を見つめながらナ~ウと元気出せよと言わんばかりにモチが鳴いた。
「……元気出してだって」
「モチちゃん……うん、ありがと」
しゃがんで響がモチを抱きかかえる。頭を撫でると気持ちよさそうに目を細め、喉を鳴らし始める。ふさふさとした感覚が心地よかった。ふと、モチの背中に涙がこぼれる。押し殺していた感情が再び響はあふれ出してきてしまった。
深は響のとなりにしゃがみ込むとそっとハンカチを差し出す。響はそれを受け取ると涙をぬぐった。
「私がいつまでも未熟だったから……翼さんが、流生さんが……シンフォギアなんて強い力を持っていても私自身が至らなかったから……翼さんたちは強いから戦ってきたんじゃないのに。ずっと泣きながらも押し隠して……悔しい涙も、覚悟の涙も誰よりも多く流しながらずっと、ずっと……」
改めて己の未熟さを呪う。力を得て、深に再会して浮かれていた自分の未熟さを。翼や流生の慟哭に気が付けなかった不甲斐なさを。
俯いていた顔を上げて響は叫ぶ。
「私にだって守りたいものがあるの、だからっ……!」
顔をあげると深に頭を優しくなでられる。深は幼子をあやすような優しい表情で響を見つめていた。
「だからシンフォギアで戦う道を選んだ。そうでしょう?」
落ち着いた声音で深は響が言いたかったことを代弁する。響はこくりと頷いて肯定した。
「……でも私は、奏さんの代わりだなんて勘違いをして……」
「だったら、響ちゃんのまま強くなればいいんじゃないかな?」
「私のまま?」
言われたことを響が問い返すと深は優しく微笑んだ。月明りのような目がまっすぐに響を見つめている。
「うん、そうだよ。奏さんの代わりがいないように響ちゃんだって代わりなんて存在しないんだよ。だから、誰かになるんじゃなくて、響ちゃん自身として成長すればいいんだ。」
「私のままでいていいのかな……」
不安になって言われた言葉をまた繰り返してしまった。自分のままでいて本当にシンフォギアとして通用するのか。翼たちの足をひっぱりまた傷つけてしまうのではないか。そう考えてしまう。
すると深は立ち上がり背中を見せて空を見上げた。
「困っている誰かがいたら、すぐに助けようと手を伸ばす。」
「え?」
突然話し始めた深に驚きうつむいた顔を上げる。朝焼けの空にはまだうっすらと月が浮かんでいた。
「前向きにどんな人にだって笑顔で仲良くなろうとする。」
深は構わず話し続ける。響はなんのことか分からずただそれを聞き続けた。
「未来ちゃんのことが大好きで彼女のすごいところをしっかり見てあげている。ご飯が大好きで、おいしそうな笑顔でどんな料理も残さず食べる。それから——」
それが自分のことを言っているのだと遅れながらに気が付いた。驚いて目を丸くしていると深がゆっくりと振り返る。月にかかる叢雲のような髪が風でゆっくりと動きその奥から優しい月の光が響を見据え直した。
「傷ついている誰かの心に寄り添って、涙を流してあげられる。」
すっと深の言葉が響の胸に入ってきた。心臓が跳ねて、体が少し熱を帯びた気がした。
そんな響に深はそっと手を差し出す。
「ほら、響ちゃんにはこんなにいいところがあるんだから。他の人になるなんてもったいないよ」
笑みを浮かべられて誘われるようにその手を響は掴んだ。
そっとしゃがんだ状態から響は引っ張られ体を起こされる。先ほどよりも近い距離。響は自分よりも高いところにある深の目から目が離せなくなる。
「響ちゃんは、響ちゃんのまま強くなればいいさ」
「うん、ありがとう深君」
二人の間に優しい風が吹く。涙はもう乾き始めていた。
「……ただいま」
響は自分の部屋の扉をゆっくりと開いて中に入る。すでに帰っているだろう未来からの返事はなく照明は消されていた。しかし、リビングの方から少し明かりが漏れていた。
きっと響が帰ってくるのを待っていたのだろう。中を覗くと未来が机に伏して寝ているのが見えた。起こさないように響は未来の布団から毛布を持ってくるとそっと未来にかけてあげる。
「……ん。響?」
「あ、起こしちゃった?」
うっすらと開けた目をこすり未来は響をぼんやりと見ている。響はそんな未来の隣に正座して座るとぱんっと両手を合わせて頭を下げた。
「ごめん未来ッ!約束破っちゃって」
「深さんから連絡は受けていたから。翼さん、リハーサル中に大怪我して入院したんでしょう?大丈夫なの?」
「え?う、うん。絶対安静だって」
どうやら未来には深から連絡が来ていたようだった。頭の中で根回しをしてくれた彼にありがとうと拝む。
「そっか。心配だね。ってもうこんな時間か。学校の準備しちゃおっか。」
未来は体を伸ばすと時計を確認して立ち上がった。そうして机に向かうと振り返って響を見る。
「流れ星、今度は見ようね。約束だから」
「うん、約束。今度は絶対一緒に行こう」
まっすぐに響を見つめる未来の視線に響もまっすぐ見つめ返して約束を交わす。
すると未来はふっと口元に笑みを浮かべた。
「やっぱりちょっと妬けちゃうかも」
「へっ?」
突然何のことか分からず響は変な声を上げた。
「だって響、すっきりした顔している。昨日までさんざん悩んで無理していたのに、今は何をすればいいか分かったって感じ。深さんに何か言われたでしょ?」
図星を突かれた響は頬が熱くなるのを感じた。今度は未来から視線をそらしてしまう。
「そ、そんなことないよ……」
「明らかに動揺している。ほら、白状しなさい」
からかうように未来は響に近づくと赤くなった頬をつんつんと指でつつく。
響は焦った顔をしながらもされるがままだった。
「何でもないってぇ~ただちょっと頭を撫でられただけで……」
「あの人平然とそういうことをするよねぇ……恋愛には鈍そうだけど」
少し深への落胆を感じた様子だったが、満足したのか未来は頬をつつくのを止めてもう一度机に向かった。そして手を後ろで組んだまま伝えたい言葉を響に話す。
「あのね、響。誰に何かを言われたり、自分自身で悩んで考えたりして、出した答えで一歩前進したとしても響は、響のままでいてね。」
「へ?」
突然の言葉にもう一度響は目を丸くする。そんな響の様子にかまわず未来は続けた。
「変わってしまうんじゃなく響のまま成長するんだったら私も応援する。だって響の代わりはいないんだもん。」
そう言って未来はもう一度響を見て微笑んだ。その姿が深と重なる。
—響ちゃんは、響ちゃんのまま強くなればいいさ—
先ほど深に言われた言葉が胸の中に蘇る。
ゆっくりと瞳を閉じてその言葉を反芻する。
「ありがとう、未来。実はおんなじことを言われたんだ。」
目を開いて未来を見つめる。迷いはもう響の中から完全に消えていた。
「そっか……。あ~あ、やっぱり妬けちゃう」
未来は頬を膨らませてすねたような真似をする。響は苦笑して未来を見た。親友がこれ以上すねないように本心を伝える。
「でも、やっぱり未来と一緒に流れ星見たかったなぁ」
「あ、動画で撮っておいた」
「え!見たい見たい!!」
未来がスマホを取り出し録画した動画を響に見せる。しかし、動画には黒色しか映っていなかった。
「ん?何も見えないんだけど?」
「うん、光量不足だって」
「だめじゃん!」
響のツッコミが終わると二人は同時に笑いだす。こんな些細なやり取りが響はたまらなく愛おしく感じた。
(私だって守りたいものがある。)
窓の外はもうすっかり日が昇り眩しい朝日が覗いている。
(私に守れるものなんて小さな約束だったり、なんでもない日常くらいなのかもしれないけれど……)
その朝日の中に、学校や特機部二のみんな、未来、そして深の姿が薄っすらと見えた。
(それでも守りたいものを……守れるように私は私のまま強くなりたい。)
夜は明けて朝日が完全に顔を出す。その日の光は響たちの部屋に明るい陽だまりを作り始めていた。そして空を見上げれば有明の月が静かにこちらを見つめてくれていた。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
深と響が絡むときは未来のお株を完全に奪い取らないことを意識しています。
ひびみく派ではないけど親友としての未来はシンフォギアには大切な要素だと思っているので。あくまでも男女恋愛要素を入れたシンフォギアを目指しています。そのため未来にもちゃんと活躍してほしいッ!とはいえバランスがむずいのは事実、頑張れおれっ!!