装者の男女恋愛が見たいッ!戦姫絶唱シンフォギア SLS 作:ふみー999
年度末でばたついていて投稿遅くなっています。決してモンスターをハントするのが楽しいからだけが理由ではないのです信じてください。リヴァイ切りが楽しいのがよくない。
次のギアマニア、切歌になりましたね~マリアは次かねぇ
というわけでお付き合いどうぞデース!
ラボでの一件から数時間後の深夜。二課の指令室に現在いるのは弦十郎一人だった。静まり返った部屋に背後の扉が開閉する音が響いた。
「来たか、深」
振り返ることもせず、弦十郎は来訪者の名前を呼ぶ。背中越しにこわばった気配が感じられる。
「先ほど、広木防衛大臣が殺害された。複数の革命グループから犯行声明が出されているが詳しいことは調査中だ」
「ッ!?」
振り返り、深の目からそらさずにそう告げる。聞いた深の顔はますます険しいものになった。
広木威椎、二課やシンフォギアの活動によって生じた他の省庁との軋轢を緩和してくれていた防衛大臣。厳しい発言もあり、時に二課と衝突することもあったが二課のよき理解者であった。そんな人物の突然の訃報に深は息を飲む。だが、それ以上に気になることが深にはあった。
「先生は今どこに?」
「まだ連絡が付かない。」
本部の安全性、および防衛システムについて関係閣僚に説明するため永田町に出向する予定になっていた。響ちゃんと話をしていたことから予定よりも遅れて出立しただろうが、巻き込まれている可能性は少なくない。
「まて、深」
身をひるがえして駈け出そうとする深を弦十郎は呼び止める。その声に深は立ち止まり振り返る。弦十郎は聞きたいことがあると冷静な声で続けた。
「資料は読んだな?発信機の発生させる波形と逆パターンの波形を照射された痕跡が認められた。」
先ほどラボで読んだ資料の内容を改めて弦十郎は深に告げる。深はゆっくりと振り返る。
「僕が内通者だと疑いですか?」
感情の読めない表情で深は問いかける。弦十郎は表情を一時緩めるとその考えを一蹴した。
「まさか、疑っているのならば等の昔に拘束している。聞きたいのは別のことだ。」
今回の主犯は少なくとも2年前のネフシュタン強奪事件から糸を引いている。あの事件の後から聖遺物についての学習を始めた深が主犯と考えるのは無理があると弦十郎は考えていた。もちろん、深が末端として内通している可能性も考えられるのだが、弦十郎にはその可能性はゼロに等しいと思えた。それは深の人柄とノイズに対する憎悪を知っているからだ。
深は押し黙り次の言葉を待つ。何を聞かれるのかおおよその察しがついているようだ。
「外部の人間にあれを破壊できる可能性はあるのか?」
弦十郎の質問に深は目をそらす。それからまた十数秒押し黙った。空調の音が嫌にうるさく深には聞こえた。目を閉じ大きく肩で息を吸う。
「聖遺物について詳しい人間であれば、あるいは可能かと」
そして、首を掻きながらそう答えるのだった。
「……そうか」
腕を組み、目を細めて弦十郎はその言葉にうなずいて答えた。どうやら納得してくれたのだろうと深は受けとりもう一度目を見て話を聞く。
「大臣の襲撃、これは個人の犯行ではない。裏で手を引いている国も大方検討が付く。」
「大臣の後釜を考えれば、米国ですか……」
広木大臣が亡くなった穴を埋めるためにおそらく石田副大臣が繰り上がりで防衛大臣に襲名されることになるだろう。そうなれば親米派の防衛大臣の誕生。米国政府としては日本政府に意向を通しやすくなる。今回、襲撃をする旨味が大きい。
「そうだ。かの国も含め、今後敵が狙ってくるのはデュランダルだろう。どう動いてくるのか警戒していく必要がある。」
「分かりました。本部の防衛システムもう一度確認しておきます。」
深はそう言い残すと今度こそ、了子を迎えにラボを飛び出していった。
指令室は再び弦十郎独りの空間となった。
「外部の人間には破壊は不可能か……」
先ほどの深の言葉を思い出し、ひとり呟く。おそらく、深も自分と同じ人物を疑っている。そして、それを認めたくなくてかばったのだろう。
そう考える理由は、弦十郎が深の人柄と癖を知っていたからだ。
「予想が外れていてくれればいいのだが……」
何かを誤魔化すとき、何かうそをつくとき、深は首を掻く。
弦十郎の祈りの籠った危惧を聞く者は誰もいなかったのだった。
指令室を飛び出した深は廊下を走りながら先ほどの会話について考えていた。
(おそらく、指令は先生を疑っている。)
開発した自分や研究に携わった人物にしか解除できない発信機が破壊されたこと。2年前に奪取されたネフシュタンの鎧を敵が保持していたこと。状況証拠から先生を疑うのも無理はないのかもしれない。
「けど、あくまでも怪しいだけだ……」
自分を鼓舞するようにそうつぶやく。だって人をからかうことがあったとしても人の嫌がることをしない先生が、自分が一番つらいときにそばで支えてくれた先生が、あの優しい先生がノイズを使って人を襲っているなんて考えられないし、考えたくもない。
まだ確実な証拠があるわけではない。指令だってそれは分かっているはずだ。僕以上に先生と交流のある指令のことだから先生がそんなことをする人ではないと知っているに決まっている。
「僕が、潔白を証明する」
決意を言葉にする。そして急いで先生を探そうと走る速度を上げ、曲がり角に差し掛かったところで出てきた人影とぶつかりそうになった。
慌てて足を止めて正面衝突を避ける。
「すみません、急いでいたもので……って先生!?」
「あら、深。どうしたの?そんな慌てて、顔怖いわよ?」
曲がり角から出てきたのは探そうとしていた先生その人だった。こちらの気も知らずおっとりとした口調で尋ねてくる。
「どうしたの?じゃないですよ!さっき広木防衛大臣が襲撃されたって聞いて、先生と連絡が取れないっていうから心配してたんですよ!?」
「え!本当?」
了子は初耳だといった様子で自分のポケットをまさぐる。そして取り出した携帯端末を操作すると人懐っこい笑みを浮かべた。
「あちゃ~これ壊れてるみたいね」
「しっかりしてくださいよ」
あっけらかんと壊れた端末をひらひらと見せてくる了子に深は肩を落とす。そんな深に了子はごめんなさいねと笑って答えた。そして持っているアタッシュケースをポンと叩く
「心配してくれてありがとう。そして政府から受領した機密文書は無事よ。任務遂行こそ広木防衛大臣の弔いだわ。指令室に向かうわよ」
そう言って了子は深を抜き去り指令室へと足を進める。
「……先生ッ!」
「ん?どうかしたの?」
「あ、いや、その……」
その後ろ姿に思わず深は声をかけた。何を言えばいいのか定まらなかったからどもってしまう。
「ともかく、ご無事でよかったです」
そう言って深は自分の首を掻きながら言葉を濁して了子に笑いかけることしかできなかった。
「……」
了子は無言のまま深に近づくと、深が搔いている方とは逆側の首にそっと触れる。
「そうね、貴方にとってはつらい心配をさせちゃったわね」
「……っ」
予想外の言葉に深は目を丸くして驚いた。了子の目を見つめると優しいいつもの先生の眼差しが自分を見ている。家族を失った自分が、親しい人の死に怯えているのだと案じてくれているのが伝わってくる。
(やっぱり、この人が黒幕なわけがない。僕がなんとしてでも証明して見せる。)
確信を得たと自分に言い聞かせるようにそんなことを思った。了子はクスリと笑うと踵を返して再び指令室へと進む。
「さ、早いところ弦十郎君と作戦会議をするわよ。貴方もいらっしゃい」
「はい、先生!」
深も先ほどよりも軽い足取りで了子の後をついていく。信頼と少しの安堵を帯びた眼差しで先を行く背中を見つめていた。
背中ばかりを見ていたから、了子が持つアタッシュケースに付着していた血の跡に深が気づくことはなかった。
人里離れた森の中に古い古城が建っている。だだっ広い敷地の中には人の気配はなく閑散としている。いや、一人だけその孤独な独房の中で荒く息を切らしている者がいた。
暗い城内、本来はダンスホールとして使われていたであろう広い部屋。その部屋には食事をとるための長い机や、実験室のような様々な機械、モニターが陳列されている。だが、それ以上に目を引くのは様々な拷問器具だった。アイアンメイデンには乾燥した血が付着したまま錆臭い匂いを放ち、放置された檻の中には小動物が無残な姿で寝かされている。そんな衛生状態も悪い、露悪的な部屋の片隅に先日、ネフェシュタンの鎧を纏った少女が粗末なベッドに寝かされてうなされていた。
風鳴翼の絶唱を受けたことで傷口から体内に侵食し、増殖しつつあった鎧の破片を除去するため、高圧電流による治療が行われていたのだ。当然、生身で電撃にさらされていた少女の体力は限界を迎え、今は立ち上がることすら難しかった。
「痛みだけが……人の心を繋いで絆と結ぶ世界の真実……」
主に言われた言葉を反芻する。それは主の哲学であり、保護されてから数年間言われ続けていた言葉だった。
「あたしの望みを叶えるには……あいつの言うことを」
額には大粒の汗をかいている。うわ言をつぶやいて、閉じていた目を薄っすらと開ける。電流で意識を失っている間に主はどこかへ行ってしまったようだ。枕元には簡単な食事と水差し、コップが置いてあった。寝かされている体を見ると比較的新しい毛布がかけられている。
「……フィーネ」
ここにはいない主の名をつぶやく。1年前くらいからこういったものをくれることが増えたように思える。電撃で拷問を受けたり、劣悪な環境に一人放置されたりしているわけだが、それでも、自分のために与えられたものがあるのだと思うと、なんだかくすぐったくなって、頬が少しほころんだ。するとなぜか痛みが少し和らいだ気がして少女は目をつぶり再び眠りにつくのだった。
蒼穹に墜ちていく。風が鳴るのを聞きながら青い空へと墜ちていく。ここが夢か現かもわからない。それでも翼は自分はまだ生きているのだとなんとなく理解できた。
(生きている?違う、死に損なっただけ……)
ゆっくりと目を開き、夜よりも暗い空を見上げる。絶唱を放ち、それでも敵を打ち破るに能わず。それどころか流生を案ずるあまりに撤退を渋り、結果的に彼にまで怪我を負わせてしまった。これを無様と言わずして何と呼ぶのか。
「真面目が過ぎるぞ、翼。あんまりがちがちだとそのうちぽっきり逝っちゃいそうだ」
暗い空の中で、後ろから温かい光に包まれた。振り返れば奏があの頃の笑顔のまま翼を抱きしめてくれていた。翼は嬉しさを隠さず抱きしめてくれる奏の腕に手を当てる。触れる奏が温かくて翼は自分の胸の内をポツリポツリと話し始めた。
奏を失って私は一層の研鑽を重ねてきた。数えきれないほどのノイズを倒し、死線を超え、そこに意味など求めずただひたすら戦い続けてきた。
「そして気づいたんだ。私の命にも意味や価値がないということに。」
防人としての使命と言いはり、戦場の中で戦うだけの自分。そうして戦っていても、その先にあるのは次の戦いしかない。であれば、自分の生きる意味など、戦う意味などないのではないか。
「そんな価値のない者に、流生まで突き合わせて、傷つけている……」
2年前のあの日、奏を失った悲しみを私は流生にぶつけてしまった。あの時の流生の表情を私はきっと忘れられない。私に責められて奏を失った原因は自分だと気に病んで、自分を責め続けている。
「流生は……私以上に強くならねばと、戦えなければと思っているよね」
そんな必要はないはずなのに。一度でも油断すれば即死の戦場に彼を立たせ続けている。
だというのに、私は自分が悲しみに折れてしまわないように必死で、流生の嘆きに寄り添おうともしなかった。流生はそんな私の傍を離れず、ずっと支え続けてくれている。それがあまりにも酷いことに思えた。
「奏が言うように、私はきっと弱虫で寂しがり屋なんだ。戦わなくていいって流生に言わなきゃいけないのに。独りぼっちになるのが怖くて、流生が離れて逝くのが嫌でそれすら言うことができない」
そんな弱音をこぼしてしまう。気が付けば辺りは2年前のライブ会場へと変わっていた。あの時と違うのは空が目を焼くほどに赤い夕暮れから星の浮かぶ吸い込まれそうなほど深い夜になっていたことだ。荒れ果てた瓦礫の中で翼と奏は二人背中合わせに座り込んでいる。背中越しに奏が息を吸い込むのが聞こえてきた。
「あいつが欲しい言葉はきっとそんな言葉じゃないと思う」
「でも……」
「あたしは流生のやつが逃げずに戦ってくれたこと、感謝しているんだ」
「え?」
「あいつが戦っているのは、別にあたしに対しての贖罪とか、翼に対しての罪悪感や使命感だけじゃないはずだぜ。それだけであいつは命をかけたりしないさ」
予想していなかった言葉を聞いて翼は振り向いて聞き返す。流生が逃げなかったとはどういう意味なのだろうか。
「奏はどうして戦えたの?」
奏があの時、命をかけたのは何のためだったのか。分からないことだらけで頭を傾ける翼に、奏は微笑んで言った。
「戦いの裏側とかその向こうにはまた違ったものがあるんじゃないかな。私はそう考えてきたし、そいつを見てきた。」
「それはなに?」
「自分で見つける物じゃないかな?」
奏は穏やかに答えた。翼には理解できなくて、詳しく尋ねても奏にはぐらかされてしまう。その返答に翼は眉をひそめ、頬を膨らませる。
「奏は私に意地悪だ。だけど、私に意地悪な奏はもういないんだよね」
けれども、奏はもういない現実を思い出し、うつむいてしまう。所詮これは翼が作り出した幻に過ぎないのだと悲しみが襲ってくる。
「そいつは結構な事じゃないか」
「私は嫌だ。奏に傍にいてほしいんだよ」
だというのに奏はあっけらかんと笑って立ち上がる。翼は振り返って奏に声をかけた。奏は夕焼けのような真っ赤な髪をなびかせて、振り返ることはなくただ静かに笑った。
「私が傍にいるか遠くにいるかは翼が決めることだ」
「私が?」
だったら私は奏が傍にいてくれると信じたい。そう思って生きたい。翼の気持ちに気が付いたのか奏はゆっくりと翼に背を向けたまま歩き出す。
「そら、もう行ってあげな。」
見上げると薄っすらと地平線に日が昇りつつある。夜明け前、朝の白と夜の黒が混ざった黎明の空。青黎いその色は翼にとってたった一人を表す色だった。
「……温かい」
その色へ右手を伸ばすとなぜかほのかに熱を感じた。
「もう夜が明けるぜ」
満足そうにそう言い残すと奏は、日の光の中へと溶けて消えていったのだった。
翼が目を開けると白い天井が見えた。心電図の規則正しい音と、遠く微かにリディアンの生徒たちが歌っているだろう校歌が聞こえてくる。開いた窓から吹き抜けてくる風が優しくて心地よかった。自分が病室のベッドに寝かされているのだとぼんやりとした頭で理解するまで十数秒かかった。
不思議な感覚だった。まるで世界から切り取られて自分だけ時間がゆっくりと流れているかのよう。
(あぁそうか。私、仕事でも任務でもないのに学校休むの初めてなんだ。精勤賞は絶望的か……)
今までこんなにもゆっくりとしたことがなかったのだとふと気づいて頬が緩んだ。学校を休み、仕事も任務も気にせずにただ体を休めている時間。どうやら自分はこの時間が思っていたよりも嫌いではないらしい。
(心配しないで奏。私、貴女が言うほど真面目じゃないから。ぽっきり折れたりしない)
夢の中で奏に言われた言葉を思い出し彼女が傍にいると信じて語り掛ける。
「だからこうして、今日も無様に生き恥を晒している……」
信じても静かに涙が頬を伝った。寂しさも悲しさも消えてくれはしないのだろう。頬を拭おうとして右手が動かないことにそこで初めて気づいた。なにかに押さえつけられているようだった。
「……流生?」
自分の手元を見てみるとベッドに頭を預けている流生がいた。ゆっくりとした呼吸を繰り返しながら眠っているようで、その両手は翼の右手をしっかりと握りしめていた。机を見ると広げられたノートや水筒などが置かれていた。長時間、見舞いをしてくれている途中で疲れて寝てしまったのかもしれない。
「……ん、やべ、寝てた」
名前を呼ばれたことに気が付いたのか流生はピクリと握る手に力が籠る。そのまま顔をあげると軽く頭を振って眠気を覚まそうとしている。
「……っ!お嬢!」
そして翼が目を覚ましていることに気が付くと座っていた椅子から立ち上がり翼の顔を覗き込む。意識を取り戻したことへの驚きから安堵、何かを言おうとして言葉に詰まり、今にも泣きそうとその表情がコロコロと変わっていく。そして流生は寝ている翼を覆いかぶさるように抱きしめた。
「流生、苦しい……」
強く抱きしめられて翼は思わずうめいた。すると抱きしめる腕の力が少しだけ弱まる。けれども流生は翼から離れることはなかった。
「よかった……本当によかった」
嗚咽交じりの声が翼の耳元で鳴る。ひたすらに自分の身を案じてくれていたのだと文字通り、痛いほどに伝わった。だから奏にも言われたけれど、彼にまず言わなければいけないことは謝罪ではないと思った。
「ただいま、流生。心配してくれてありがとう」
「……はい、おはようございます。お嬢」
抱きしめた腕を離して流生は翼を見つめた。そして、自分も泣いているのに翼の頬を流れる涙を拭って微笑んだ。頬に触れた手は、夢の中と同じでとても温かかった。
最後までお付き合いいただきありがとうございました!
いや聞いてくださいよ。翼さんの夢のシーン考えるのめちゃめちゃ苦労したんですよ
なんか最初納得いかなくて何回か書き直してました……あ~すんなりと浮かんでくれる頭が欲しい……
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