装者の男女恋愛が見たいッ!戦姫絶唱シンフォギア SLS   作:ふみー999

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始めまして、どうも、ふみー999です。
興味を持っていただいてありがとうございます。
5期までのロングラン、頑張りたいと思います。
どうぞお付き合いください。


無印編
第1話 au debut:地獄で奏でられた歌


「えぇ、未来、来られないの?今日のライブ未来が誘ったんだよ?」

 イベント会場から連なったライブ観客の列の中、立花響は友人の小日向未来へと電話をかけていた。誘った友人が急に来られなくなったというのだから思わず叫んでしまう。

「私よく知らないのに・・・」

 ツヴァイウイング、一年前程から活躍し始めた女性ヴォーカルユニットであり、幅広い世代から人気を得ている今話題の歌姫たち。そのライブに運よく未来は当選し、響はよくわからず誘われるままに今日この場所へ来ていた。

 通話を終えた響が上を見るとそのアーティスト二人がスクリーンに大きく映っている。周りの人たちも開始を心待ちにしている様子だ。

 なんだか会場で自分一人だけが場違いなような気がして響はため息をつく。

「大丈夫なの、ヒビキは?」

 その時、自分の名前を呼ばれ響は驚いて振り返る。そこには親子がいた。子どもの方は男の子でどうやらこの子がヒビキと呼んだようだ。歳は自分と同じくらい、もしくは自分よりも1歳ほど年上だろうか。黒髪の穏やかそうな雰囲気に見える。

 母親も同じ黒髪で、見た目は落ち着いて見える。しかし、その表情からはどこか溌剌としたエネルギーを感じる。母親の強さ、のようなものだろうか。そしてそのお腹は大きく膨らんでいた。妊娠しているのだろう。ヒビキとはお腹の中の子のことのようだ。

「安定期に入ったから大丈夫だって言っているでしょう?本当に(しん)はお父さんに似て心配性なんだから」

「いや、心配するでしょう。僕が行きたいって言ったから来たけど、こんなに大勢の人がいるなんて思わなかったし。」

「お医者さんからも大丈夫だって言われているから問題ないって。それよりもあなたの方が心配よ。週明けからテストでしょう、今日来てよかったの?」

「成績いいのは知っているでしょう。抜かりなく、つつがなく、準備は万全だよ。」

 深と呼ばれた少年は腰に手を当て鼻から息を溢す。それを見た母親は両手を腰に当て微笑む。

「ならばよろしい。それなら今日はめいっぱいに楽しんで、そしてお母さんとお腹の中の妹が安心安全に楽しめるように警護するように」

「えー、一応気は配るけどさ。子どもにそんなこと押し付けないでよ、大人でしょ。」

「この子は生意気ね」

 クシャクシャっと母親が深の頭を乱暴にかき回す。男の子も抵抗はするが楽しそうにやりとりをしている。

(いいなぁ)

 見ていた響は少し、羨ましくなった。同じヒビキでもこちらは友達がドタキャンし一人ぼっちである。なんだか一層自分には福が訪れていないように感じた。

「・・・私って呪われてるかも」

 前を向き直して続く長い列を見ながら響は寂しさを感じずにはいられなかった。

 

 

 

 

 舞台裏、これから始まるライブに向けてスタッフたちが最後の確認を行っている。そんな中、コンテナの隅で縮こまっている人影があった。

 晴天のように澄んだ青い髪をした少し気の弱そうな少女、ライブを直前に控えたツヴァイウイングの片翼、風鳴翼。彼女はフードを目元まで深く被り不安げに自分の手を合わせて俯く。するとそこにゆっくりと一人の少女が歩いてやってきた。

「間が持たないっていうか。なんていうか、さ。開演するまでのこの時間が苦手なんだよね」

 夕焼けの空を思わせる赤い髪の勝気な少女、もう一翼である天羽奏がコンテナに腰掛けるのを見て翼は静かにうなずく。

「こちとら早く大暴れしたいっていうのに、そいつもままならねぇ」

「・・・そうだね」

「もしかして翼、緊張とかしちゃったり?」

 か細い返事をする翼をからかうように奏は微笑みを浮かべて問いかける。

「あ、当たり前でしょっ。櫻井女史も今日は大事だって」

「かーっ、真面目がすぎるねぇ」

 照れながらも真剣に答える翼の額を奏はあきれ半分面白さ半分といった様子でからかうように小突く。

 するとそこに長い髪をオールバックにし、赤いスーツを着た大柄の男性がやってきて二人に話しかけてきた。

「奏、翼、ここにいたのか」

「指令」

「こりゃまた弦十郎の旦那」

 弦十郎と呼ばれた男は落ち着いた様子で二人を見つめる。

「わかっていると思うが今日は」

「大事だって言いたいんだろう?分かっているから。大丈夫だって」

 真面目な忠告を行う弦十郎。それを奏は手をひらひらとさせ聞き流す。

「分かっているなら、それでいい。」

 弦十郎は満足といった表情で答えた。するともう一人の足音が三人の下へと近づいてくる。

「姐さんは余裕そうですけど、お嬢はもう少しリラックスした方がよさそうですよ」

 三人が声のする方を見る。そこには一人の少年が両手にカップを持って立っていた。

「お。流生(るい)じゃないか。ご苦労さん」

 奏から流生と呼ばれた少年は持っていた片方のコップを翼へと差し出す。

「お嬢、あったかいものどうぞ。カモミールティーです。落ち着きますよ」

「ありがとう・・流生」

 年頃は翼と同年代。服の袖からは細いながらも鍛え抜かれた腕が覗く。カップを持つ手は血豆を隠すようにテーピングがされていた。黎明の空を思わせる青黎い(あおくろい)髪を短く切り整えている。髪と同じ色をした切れ長の瞳を優しく細め翼を見つめていた。

「お、さすが翼の世話役。気が利くねぇ、それじゃあ私の分をと」

「これは俺のです。」

 奏が流生の手に残っているカップを取ろうとする。すると流生はひょいっとカップを避けてその手を回避した。

「なんでだよ。そこは普通私のだろ!?」

「冗談ですよ。お嬢をからかっていたようだったので、俺が姐さんをからかって帳尻を合わせてみました。」

「だとしたら私をからかったお前は誰がからかうんだよ」

「そりゃ、お嬢でしょうよ」

 2,3回取り合う攻防をした後、奏は流生からカップを奪い取ることに成功した。

 そしてそのまま奏と流生が同時に翼の方を見る。

「私がからかうとか無理よ」

 翼は受け取ったカップをチビチビと飲んでいたが二人からの視線に気づくと慌てて首を横に振った。

 そんな三人の様子を見て弦十郎は静かに笑みをこぼす。

「どうやら、大丈夫なようだな。二人とも頼んだぞ。今日のライブの結果に人類の未来がかかっているからな」

 弦十郎の携帯端末からコールが響く。すぐに弦十郎が出ると女性の声が聞こえてきた。

≪まいどー櫻井了子です。こちらの準備は完了よ≫

「分かった、すぐに向かおう。」

 端末を切ると再度三人を見据える。奏はサムズアップを弦十郎に向ける。

「ステージの方は任せてくれ」

 うむ、と一つうなずき弦十郎は立ち去っていく。それを見送った後、奏は背中を伸ばす。

「さて、難しいことはさ。旦那や了子さんに任せてさ。あたしらはぱーっと」

 言いかけて気づく。翼はまだ、緊張しているのだろう。俯いている。奏はそんな翼を優しく後ろから抱きしめ手を重ねた。

「真面目が過ぎるぞ、翼。あんまりがちがちだとそのうちぽっきり行っちゃいそうだ。」

「奏・・・」

「私の相棒は翼なんだから。翼がそんな顔していると私まで楽しめない。」

 翼は一度奏の方を見る。そして自分の前に膝をつき、二人の手の上に手を乗せた流生を見た。

「お嬢、大丈夫ですよ。お嬢の歌は人を幸せにする歌だ。長年聞いてきた俺が保証します」

「そこはお嬢じゃなくて、私たちだろ?」

「失敬、そうでしたね」

 奏が軽口を言うと流生は肩をすくめて答える。そんな二人の様子を見て翼も自然と笑みをこぼす。

「私たちが楽しんでないとライブに来てくれたみんなも楽しめない・・」

「分かってるじゃないか」

「奏と一緒なら何とかなりそうな気がする。」

 強く宣言する翼に奏と流生はうなずいて答える。

「姐さん、お嬢のこと頼みます。俺は会場の警備に回されているので変な奴がいたら叩き出しておきます」

「任せとけって。そっちも頑張んなよ」

 軽く流生は奏に頭を下げる。そして翼の方を向き奏の時よりも深く頭を下げる。

「お嬢、ご武運を。俺も二人の歌楽しみにしています。」

「うん、行ってきます、流生。行こう、奏」

「ああ、私とあんた両翼そろったツヴァイウイングはどこまでも遠くへ飛んでいける」

「どんなものでも超えてみせる」

 流生は二人から受け取ったコップを隣に置く。そして戦場≪ステージ≫へと向かう二人の背中を見送り火打石を打ちつけた。

 

 

 

 

 立花響は物販に並んでいた。電子決済で会計を済ませペンライトを購入。そして会場へと足を踏み入れる。

「わぁ!」

 そこには広大なステージと今から始まるステージを心待ちにしている大勢のファンがいた。響自身も心が徐々に高揚していくのを感じる。

 座席表を見て自分の席を探し出す。ステージから向かって右側、中段くらいの席が自分の席だった。ワクワクと今から始まるステージを待っているとふと視界の端っこに先ほどの妊婦と少年が見えた。ああ、結構近いところだったんだなとぼんやりと思っていると照明が暗くなる。

 そして、最初の曲のイントロダクションが流れ始め七色の照明がステージを輝かせた。両サイドから一斉に光始めるペンライト。天井から舞い降る羽のエフェクト。その中から二人の歌女が舞い降りた。

 響は自分のペンライトをつけて掲げる。

「いえーい!」

 響の声も歓声の中に混じり会場は熱気に包まれた。

 ここにいる誰もがただただ純粋にこのライブを楽しんでいる。

 

 

「聞こえますか…?」激情奏でるムジーク 天に解き放て

 

 

観客の声が一つになり合いの手を入れる。

二人の歌はそれに呼応するように勢いを増す。

 

 

遥か彼方星が音楽となった…彼の日

 

 

 二人の歌女はステージを駆け抜ける。誰もがその姿を追いかける。

 メインステージへと到達し、天幕が開け夕焼けの美しい空が両翼を朱く照らしだす。

 

 

Yes, just believe 神様も知らない ヒカリで歴史を創ろう

 

 

 会場の熱狂は最高潮に到達する。舞い歌うその歌に奏も、翼も会場にいるすべての人がひとつに繋がったような感覚を響は感じていた。

 

 

二人でなら翼になれる Singing heart

 

 

(ドキドキして、目が離せない。すごいよ、これがライブなんだ。)

 頬を赤らめ、響は今まで感じたことのない感動を覚えた。

 

 

 

 

「まだまだいくぞぉ!!」

 奏の叫びに会場がより一層盛り上がる。限界など知らないかのように最高潮を超えていく。

 流生はそんな会場の中で二人の歌に目を閉じて聞き惚れていた。

「母さん!!やっぱりすごいやツヴァイウイングは!」

 目を開けると、通路上の席で妊婦とその息子さんと思しき自分と同じくらいの年齢の少年がはしゃいだ様子でステージを見つめている。

 流生は自分の腕に目を向ける。そこには電子パネルにグラフが表示されていた。

「当初予定していたフォニックゲインの基準値を突破。どうやら櫻井女史の実験は成功みたいだな」

 安堵のため息をこぼしステージを流生は見つめる。次の曲のイントロがすでに流れ始めていた。

「このイントロだと次はORBITAL・・・」

 瞬間、流生の持つ端末が警告音を発する。そして会場の中心部で爆発が起こった。

「っ!?失敗したのか!?」

 会場正面のアリーナ部分の一部が爆発し周辺から観客たちが悲鳴を上げながら離れていく。

 避難誘導を行うべく流生が駆け出そうとした瞬間、空に異形の影が浮かんだ。

「ノイズッ、だと!?」

 見上げた空には極彩色の化け物が飛翔している。ノイズ、人類のみを炭化し殺す特殊災害。

 その危機がまさにこの会場へと押し寄せてきたのだ。

「みんな逃げろ!ノイズだ!」

 流生が叫ぶのと同時に会場からも昆虫のような形をした巨大ノイズが出現する。

 ノイズは獲物を狩るように観客たちへと襲い掛かる。一人、また一人とノイズに触れた人間が消し炭となって消滅していく。

 飛び交う怒声と悲鳴、数刻前まで命だった灰が宙を舞う。会場は、地獄と化していた。一体のノイズがその身を槍のように収縮させる。そして弾丸のごとき速度で流生へと襲い掛かった。

「っ!」

 流生はぎりぎりで体をひねり攻撃をかわす。しかし、そのすぐ近くにいた観客の一人が避けられず炭へと変わった。

「本部、こちら流生!会場にノイズが出現。応答願う!」

 腕の端末にコールを入れるが一向に繋がらない。

「くそっ、さっきの爆発のせいか!」

 もう片方の手で端末を乱暴にたたく。するともう一体のノイズが迫りくる。攻撃する方法を持たない流生が躱すべく身を構えると

 

Croitzal ronzell gungnir zizzl

 

「!?姐さん!!」

 人として死しても、戦士と生きる戦姫の聖詠が地獄に奏でられた。

 

 

 

 

 

 立花響は、目の前の状況を理解できず混乱し立ち尽くしていた。

 壊れる会場、逃げ惑う人たち、先ほどまでの熱狂は恐慌へと姿を変えている。人の命がいともあっさりと灰となって消えていく。そんな中。

 

 

まぼろし?夢?優しい手に包まれ 眠りつくような 優しい日々も今は

 

 

 綺麗な歌が戦場と化したここに変わらず響いてくる。

 数多いるノイズを緋色の槍が貫き、青い剣が切り裂く。まるで舞踏のように、ともすればこれもライブのパフォーマンスなのではないかと錯覚してしまう。

 

 

We are one 乗り遅れないで 時は 止まってくれない

 

 

 それほどまでに流麗な歌と戦いが目の前にあった。

「あれは・・・え?」

 呆然とする響、するとその手が突然掴まれた。

「君!なにしているの、早く逃げるよ!!」

 声の方を見ると先ほど母親と一緒に列に並んでいた少年が額に汗を流しながら響を見つめている。

「え?う、うん」

 我に返った響が少年と一緒に走り出す。

「深!早く!!」

 走り出した先に少年の母親が大きな声で呼びかけてきていた。

「ごめん、母さん!急っ」

「うわあ!」

 合流した途端、三人がいた会場が崩壊する。瓦礫と一緒にアリーナへと三人は落ちてしまった。

「うぅ…つぅ…」

 響は自分の右足を抑えた。どうやら落下した時に怪我をしてしまったようだった。

「母さん!」

 叫ぶ声を聴いて振り返る。そこには半身が瓦礫に埋まってしまった母を助けようとあがく少年の姿があった。

「貴方たちだけ…でも…逃げなさい」

 母がか細い声でつぶやく。少年は必死に瓦礫をどかそうと力を入れているがびくともしない。そして会場の方をもう一度響が振り向く。そこには落下した三人に気が付いたノイズが襲い掛かろうと迫り来ていた。

 もうだめだと響がきゅっと目をつむる。しかし、襲い来るだろう衝撃は訪れず、槍を構えた奏がノイズを薙ぎ払っていた。

 

 

君ト云ウ 音奏デ 尽キルマデ 止まらずに Sing out with us

 

 

「うぉりゃあああ!!」

 裂ぱくの気合を轟かせ、奏は瓦礫を破壊する。

「駆け出せ!」

 奏に叫ばれた響と少年は母の肩に腕を回すとよろめきながら逃げ始める。

 逃がすまいとするようにノイズが一斉に三人に襲い掛かろうとする。それを奏は槍を回して攻撃を防ぐ。しかし、活動限界を超えている奏のギアは猛攻の前に徐々に損傷していった。

「くぅ!!」

 徐々に押され気味になる奏。そこに追い打ちをかけてノイズの攻撃がさらに威力を増す。

「奏!」

 翼の悲鳴にも似た叫びが響く。奏のギアは攻撃に耐えられず破損しその欠片が後方へと吹き飛んだ。

 その欠片の一部が逃げようとする響の心臓を抉り吹き飛ばす。吹き飛んだ響に巻き込まれる形で少年は瓦礫に頭を打ち付け意識を失い、支えを無くした母親はその場に力なく倒れこんだ。

「おい!死ぬな!!目を開けてくれ!!」

 あまりの出血に体温は下がり、痛覚もまともに働かない中で響は叫ぶ奏の声を聴いた。

「生きるのを諦めるな!」

 朦朧とする意識、かすむ視界の中で自分が目を開けたことに安堵する奏の姿を見た。遠くの方から青黎い髪の少年がこちらに駆けてくるのが見える。少年と奏は何かを言い合い揉めているようだ。しかし、次第に弱くなっていく感覚のせいで何かを話しているかうまく聞き取れない。

 少年は響と吹き飛ばされた少年を担ぐと出口へと向かって駆け出す。

 

 

Gatrandis babel ziggurat edenal

 

 

 そして、命を燃やす最期の歌が奏でられた。響の意識はそこで途絶える。

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。
続き頑張って書きます。
感想いただけると幸いです。

使用楽曲コード:18604455,50075781,50075802,70409412

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