装者の男女恋愛が見たいッ!戦姫絶唱シンフォギア SLS 作:ふみー999
過去一早く書きあげることが出来ました!!??何が起きたん!?正直自分でもびっくりしています。毎度毎度このペースで書けりゃいいのになぁ……
とにかくどうぞお付き合いください!!
人里離れた古城に隣接する湖の桟橋の上で少女は水面を眺めて考えていた。昨日、デュランダル襲撃を妨害した立花響が完全聖遺物であるデュランダルを覚醒起動したことについてだ。
(完全聖遺物の起動には相応のフォニックゲインが必要だとフィーネは言っていた。)
悔しさに奥歯を噛みしめる。少女が同じ完全聖遺物であるソロモンの杖を起動するためには半年もかかったのだ。それだというのに立花響はあっという間に成し遂げた。そればかりか無理やり力をぶっ放して見せた。
「くっ化け物め……」
忌々しさと戦慄を覚えて吐き捨てる。少女の手にはソロモンの杖が握られていた。
「このあたしに身柄の確保なんてさせるくらいフィーネはあいつにご執心というわけかよ……」
主が執着する少女に薄暗い嫉妬を覚えずにはいられない。それは自分の過去からくる傷だと少女は理解していた。
思い出されるのは戦場で両親を亡くしたあの日のこと。そしてその日から始まった、拉致された先での飢えと暴力に恐怖し続ける絶望一色の日々のことだった。
思い出すだけで身震いする体を一陣の風が追い立てるように冷たくなぞる。
「そしてまた……あたしは独りぼっちになるわけだ……」
山際から朝日が顔を出した。眩しいその光が一瞬、もう戻らない瞬間を映し出したかに思えて静かに息を飲む。しかしいつまでも呆けてはいられなかった。背後に人の気配を感じたのだ。
「分かっている。自分に課せられたことくらいは。」
振り返るとそこにはフィーネが立っていた。黒いドレスを身に纏い口元には微笑を浮かべている。だが、微笑んでいてもその感情は読み取ることが出来なかった。それでも何を少女に言いたいのかはなんとなく理解することが出来た。
「こんなものに頼らなくともあんたの言うことくらいやってやらぁ」
反発するように持っていたソロモンの杖を投げ渡すとフィーネはなんなく片手でそれを受け止めた。
「あいつらよりもあたしの方が優秀だってことを見せてやる。あたし以外に力を持つ奴は全部この手でぶちのめしてくれる!そいつがあたしの目的だからな!」
杖を投げ捨てた手を固く握りしめ、未だ何も言わないフィーネに啖呵を切った。満足したのかフィーネはただ微笑むだけで背を向けるとその場を後にしていった。
少女は再び湖上を見つめる。水面にはまだ沈み切っていない月が浮かんでいた。そしてその上に立花響とその傍らにいる男の顔が浮かんだ気がして気持ちが余計にささくれ立った。
「……ムカつく野郎だ。ぬくぬくと、何も知らないでいるくせに」
吐き捨てたその言葉は水面の月だけが聞いていたのだった。
二課が管理する総合病院の廊下を一人の風鳴翼はひとり歩いていた。松葉杖と点滴を支えにしてリハビリをしていたのだ。だが、その表情は苦しく息も絶え絶えだった。額には球粒の汗がにじみ体力が回復しきっていないことは誰が見ても明らかだった。
本調子に戻らない体をむち打ちながら翼は夢に見た奏のことを考えていた。
(奏、私も見てみたい。見なければ奏と同じところに立てない。戦いの裏側、向こう側に何があるのか。確かめたいんだ。)
奏が命をかけてまで戦った理由、流生が逃げなかったと言った言葉の意味。それを理解するにはきっと奏と同じものを知る必要があると思った。だから休んでいる場合ではないのだ。傷を治して早く、早く戦いの場へ。そう気持ちだけが鞘走ってしまう。
「くっ」
痛みに悶えてよろけてしまった。そのままガラスにもたれかかりそうになったところを後ろから誰かに支えられた。
「まだ安静にしているように言われてませんでしたか。お嬢?」
「……貴方だって人のこと言えないじゃない。」
振り返ると自分の肩に片手を置いて支え、心配そうに見つめる流生がいた。翼の容体を案じる彼もまた先日の無理が怪我に響き再入院している。そのはずなのだがすでにライダージャケットを身に纏ったいつもの私服姿になっていた。
翼が非難すると流生はなんともないと言わんばかりに鼻を鳴らした。
「骨はもう治ったし。医者からも激しい運動を控えれば問題ないって言われてます。」
「……どんな体しているのよ」
翼の指摘を聞き流し、流生はよろけた翼を支えたまま歩幅を合わせてゆっくりと歩き出した。足取りはしっかりしていてどうやら本当らしかった。
「焦る気持ちも分かりますが体、大事にしてください」
「……ごめん、流生」
「謝ることじゃないですよ」
か細く謝罪を口にすると流生はぶっきらぼうに返事をした。
しばし、二人で廊下を歩いているとふと窓の外に視線が行った。窓からはリディアン音楽院のグラウンドが見え、そこで二人の生徒が走っているようだった。
「あれは……」
「お、ヒビの字か。がんばっているみたいだな」
翼の視線に気づいたのか流生も窓を見てそう言った。流生の言った通りグラウンドでは立花響が真剣な表情でランニングをしている。その表情は翼が知る以前のものとは異なっていた。少しだけだが戦う戦士の顔に近づきつつあるように見えた。
「流生が戦い方を教えたんですって?」
「ええ、まだ修行中ですが筋がいいですよ。少なくともお嬢が抜けた穴をなんとか埋めようと頑張ってくれています」
「そう……」
窓から流生に視線を移すと弟子の自慢をするように得意顔でそう語っていた。翼はヒビの字という彼の呼び方が印象に残った。流生が妙なあだ名で呼ぶ相手は信頼を寄せている相手だけだと翼は知っていたからだ。
それからもう一度グラウンドに目を向けた。一緒に走っている生徒が立ち止まっても響はペースを落とすことなく走り続けていた。
グランドを走りながら響はデュランダルを暴走させてしまった時のことを考えていた。
暴走するデュランダルの力を使った時の感覚、何もかもを壊してしまえという暗い衝動に飲み込まれた。怖いのはその力ではなく、躊躇いもなくネフェシュタンの少女に向かって振りぬいたこと。そしてその結果、止めようとしてくれた深君に怪我をさせてしまった。
「くっ」
罪悪感と焦燥感に駆られて苦悶の声が漏れてしまう。もし、自分にもっと力があれば、もっと強くなっていれば、弱いばっかりに取り返しのつかないことをしてしまう所だった。
先を走っていた未来が息を切らして立ち止まった。それにも気づかず響は止まることなく走り続ける。
「私は、ゴールで立ち止まっちゃダメなんだ。もっと遠くへ……遠くへ!」
自分の内側から湧いてくる気持ちに背中を押されてそれからしばらくの間響は走り続けるのだった。
「響、リディアンに入学してから変わったね?」
ランニングを終えた後、グラウンド脇で体をタオルで拭いていると唐突に未来から話しかけられた。突然の質問に響は目を丸くして答える。
「へ?そうかな……」
口元に指を当てて考えてみるがそんなに変わったとは思えなかった。なかったのだが、変わったというフレーズに少し前に深から言われた言葉を思い出し、にへらと口元が緩んでしまう。
「あ~また深さんのこと考えたでしょう?」
「へ!?い、いやそんなことないよ!」
「明らかに動揺している。ほら、白状しなさい」
からかうように未来は響の赤くなった頬をつんつんと指でつつく。
観念した響は両手の人差し指を合わせながらか細い声で白状した。
「……綺麗になったって言われました」
「あの人本当にそういうことを平気で言うよね。……そういえばホストって甘い言葉で女の人を依存させてお金巻きあげるんだって」
「うん、未来。どうしてその話を今したのかな?」
それではまるで深君が女の人を食い物にする女の敵のようではないか、そんなことないのに。
「こほん、ともかく、自分じゃ変わったつもりはないんだけどな」
咳ばらいをしてそれた話を元に戻した。未来も呆れた表情をしていたがそれ以上は深について言うこともなかった。
「だって前は何かに頑張ったりとかは好きじゃなかったでしょ?それなのに私以上に走りこんで、体を鍛えたりしているんだもん。体にだってこんなに傷も作ってるし」
「あひょ!?未来くすぐったいって!」
シャツの裾をめくって未来はちょんちょんと響のお腹についた切り傷を突っついた。くすぐったさを感じて響は身震いしながら素っ頓狂な声をあげてしまう。
「ねえ、響。やっぱり何か危ないことしていない?ショバ代回収の手伝いとか?」
「どうしてさっきから深君を悪辣ホストにしようとしているのかな!?」
確かに深君は黒服の大人たちと一緒に行動していることは多いけれども、その人たちは日本政府機関の構成員であって立派な公務員なのだ。決して怪しい人たちではない。……ちょっとだけしか怪しくない。
そんな響の心の声が聞こえるはずもなく、未来は「怪しいんだもん」とジト目でつぶやいていた。響は額に汗を垂らしながら苦笑いで答えるしかなかった。
「そんな犯罪めいたことには私も深君も関わっていないから!……ただ」
「ただ?」
「ただ、いつもの人助けだよ。けどね、私がもっと頑張らないと助けられない人助けなんだ」
手を顔の前に持ってきて握りしめる。もっと強くならねば、大事なものを守れない。先ほどまで感じていた焦燥感が再び胸にくすぶってきた。ただ走るだけではちょっと物足りないかもしれない。そう思うとふと流生の姿が浮かんだ。彼ならば何か教えてくれるかもしれない。
「未来、今日は付き合ってくれてありがとう。私、これからちょっと行ってきたいところがあるんだ」
握った拳をもう片方の手に打ち付けて立ち上がる。未来はそんな響を見て少しだけ納得のいかない表情をした後、観念したようにため息をついた。
「分かった。私のことは気にしないで行ってらっしゃい。あんまり遅くならないでよね?」
「うん、行ってきます!」
そういって響は未来と別れてリディアンを後にしたのだった。その背中を未来は見えなくなるまで見続けている。以前自室に訪れた深が言った言葉を思い出した。
(彼女にしかできないことなんだ。だからせめて、彼女が一人で背負わなくていいように力になりたい。)
「———信じて、いいんですか?」
ここにはいない相手に向けた言葉はただ虚しく響いて消えるだけだった。
ラボには深とモチ、一人と一匹だけがいた。薄暗い照明の中でパソコンの液晶と培養カプセルだけが強い光を放って目立っている。
カプセルの中には溶液が満たされ、中をよく見ると小さな欠片が浮かんでいた。先日深が極秘裏に回収したデュランダルの欠片である。国が管理している完全聖遺物の一部を持ち出しての無断実験。他の職員に見つかれば懲罰は免れないだろう。
しかし、弦十郎は広木防衛大臣の繰り上げ法要、先生は本部防衛システムのグレードアップのために指令室にこもりっきりである。危険を承知で実験を行っているのは、遊びに来るかもしれない響を除けば、少なくとも数日間はラボを訪れるような人物はいないだろうと判断したからだった。
壁のホワイトボードに複雑な計算式を記入した後、慣れた手つきでキーボードを叩き、数値を入力していく。他の人が見てもきっと何をしているのか理解もできず首をかしげるだろう。理解できるとしたら了子くらいのものだった。
入力した数値に間違いがないことを確認して深はエンターキーをクリックする。すると、溶液が泡立ち、中に入っているデュランダルの欠片が淡い光を放った。そして、培養カプセルから伸びている管をそのエネルギーが流れてゆき、セットされていた弾丸の中に流れ込んでいく。
エネルギーが流れ込んだ弾丸は徐々に表面が赤くなってゆき温度が上昇しているのが見て取れた。やがてパソコンから警告音が流れるとエネルギーに耐え切れなかったのか弾丸がバンッと音を立てて破裂した。その音に驚いたモチが深の足元に逃げ込む。
「また失敗か……」
強化ガラスで囲んでいたため破片が飛び散ることはなかったが、ケースを開けると蒸気が漏れ出る。散らばった弾丸の破片を集めて廃棄した後、クマのひどい目をこすって倒れこむように椅子に腰かけた。
「ネフェシュタン破壊を可能とする出力と弾丸に注入できる限界値の見極めがこんなにも難しいなんて……はぁ~~~」
実験がうまくいかないことへのいら立ちが籠ったため息をついてしまう。そんな飼い主の様子を見たモチが「元気出せよ」と言わんばかりに膝の上に飛び乗って鳴いた。
頭を撫でてあげるとゴロゴロと気持ちよさそうに喉を鳴らす。しばらくするとその音に引っ張られたのか、深のお腹もぐぅっと大きな音を響かせた。その音に驚いたモチは膝から飛び降りるとそのまま自分のご飯を食べに行ったのだった。
「お腹が空いたまま考え込んでもいい考えは浮かばない、か……」
その様子をぼんやりとした目で見た深はつぶやくと椅子から起き上がり、実験装置にロックをかけ電源を落とすとラボを後にするのだった。
未来と別れて1時間ほどたった後、響は病室の前で見舞い用の花束を手にして緊張していた。病室の名札には風鳴翼の名前が記載されていた。
流生に修行をつけてもらおうと二課を訪れた響だったが、流生は不在だった。どこにいるのかを訊ねようとしたが、弦十郎も了子も深もそれぞれの用事のために不在だった。どうしたものかと立ち往生していたところ、流生は翼の病室に行っていると管制官の藤尭朔也から話を聞いたためこうしてこの場を訪れたのだ。
扉を前にして大きく深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。正直、緊張するなと言われても無理だと響は思った。憧れの人の病室を訪れるというのももちろんあるが、入院前まで翼は響に対してきつい態度をとっていたのだ。回復して目が覚めた翼と合った時また依然と同じようなぎくしゃくした気まずい雰囲気になってしまったらと考えると結構気持ちが重くなる。
「すぅ~はぁ~失礼しますッ」
意を決して病室の暗証番号を入力する。すると軽快な電子音が響いて扉が開かれた。
病室内は広い個室だった。大きな入院用のベッドの上には誰もおらず、閑散としている。室内に入ると換気をしていたのか窓が開かれており初夏のぬるい風が心地よく吹いていた。
「ん?ああ、ヒビの字か」
すると入口から死角になっているところから聞き慣れた流生の声が聞こえてきた。お目当ての人物がいたことに安堵して響は病室に入って流生がいる方を見る。
「師匠、よかった。実は師匠に聞きたいことがあって……」
と、言いかけたところで響は絶句してしまった。病室に入った響が見たのは床に正座している流生だった。そこまではいい。翼さんといい流生さんといいこの二人は妙に和風チックな印象を前々から抱いていた。正座の姿勢も背筋が伸ばされていて綺麗なフォームだった。問題はその流生が持っているものだった。
響が流生の手元を見ているとその視線を感じ取ったのか流生も自分の手元を見る。
「……」
「……」
流生の手にはどう見ても女性用の下着が握られていた。
よく働かない頭を動かして響は考えた。この部屋に入院しているのは風鳴翼。トップアーティストの病室。本人不在の病室。年頃の女性の病室。そこで女性ものの下着を手にしている男性。つまり———
「待て、ヒビの字。考えていることは分かるが一端俺の話を聞いてくれ」
携帯電話を取り出して緊急通報ボタンを押そうとしている響に流生はできる限り刺激しないように淡々と語りかけた。
「大丈夫です
「まさかの名字呼び!?何も大丈夫じゃないだろう!?誤解だ!とにかくひとまず携帯から手を離せ!」
響から携帯を取り上げようとしているのか、流生は片膝立ちでこちらに近づこうとしていた。響はさっと体を半歩下げて携帯を守るように両手で押さえる。
「無駄な抵抗しないでください!自分に武術を教えてくれた恩人が、病室に忍び込んで下着を物色する変態だったなんて!!」
「だから誤解だっつうの!」
流生は無駄な抵抗をまだ続けようとしていた。じりじりと迫る流生の動きに合わせて響は少しずつ扉に戻っていく。
「何を騒いでいるの?」
すると入口に点滴を付けた翼が訝しむような眼を向けてこちらを覗き込んでいた。響はすぐにそばに駆け寄ると翼の手をとった。
「大丈夫ですか!?本当に無事なんですか!?」
「入院患者に無事を聞くってどういうこと?」
突然手を握られた翼は困惑して尋ねてくる。響は翼に残酷な事実を告げるべく変態を指さした。
「だってあれ」
「あ……」
響が指さした先には翼の下着を持った流生がいた。それを見た翼は小さく声を漏らすとうつむいて体を震わせている。可哀そうに、あまりにショックな出来事に悲鳴すら上げらず震えることしかできないだなんて。
「大丈夫です翼さん!身近な人に変態がいたなんてショックかもしれませんが私が付いていますから!!」
響はかばうように変態の前に立つと自分は味方だと傷ついている翼に伝えた。とにかくこの変態から翼を守らなくてはいけない。そんなことを思っているとちょんちょんと翼が響の肩を指で叩いた。
「違うの……その……流生があれを……持っているのは……貴女が考えているような……ことじゃなくて……」
「へ?え?ええっと?」
ものすごく歯切れの悪い言い方で翼は流生の無実を主張している。響は何故そんなことを言うのか分からず首を傾げた。そんな翼と響のやりとりを見て震えていた流生はとうとう限界だった。
「だから下着ぐらい自分で畳めっていつも言ってんだああああああああ!!!」
悲しい心からの絶叫が病室内に鳴り響いたのだった。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
流生君不憫~~でもなんかこういう扱いが似合う気がするのは気のせいかしら……
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次回も頑張って書くぞ!!!