装者の男女恋愛が見たいッ!戦姫絶唱シンフォギア SLS   作:ふみー999

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どうもふみー999です。
ゴールデンウイークなどなかった。毎日仕事でした(泣)
忙しさ&今後の展開の構成を見直していたら遅くなりました~

未来さんが絡むと遅くなるのはそれだけ大事な要素ということですね

お気に入り登録、50件突破ありがとうございます!皆さん読んでいただいていて本当にうれしいです!

というわけで今回もお付き合いください。どうぞ!


第25話 Schmachtend:迷い、悩み、振り返る

 二課本部へと至る長いエレベーターの中で翼と流生は黙して立っていた。

「槙野のこと、まだ怒っているの?」

 その沈黙を破って翼は苛立ちを隠しきれていない流生に声をかける。すると流生は目をつぶったまま答えた。

「当たり前です。あいつは前々からてめぇの命を軽く見すぎている。姐さんが救った命だってのにそれを忘れやがる。復讐ってのはどうしてこうも人を変えちまうかね」

 フィーネを前にした深の姿は奇しくも、ギアを身に纏うと誓った幼き頃の奏に似ていた。それが余計に腹立たしい。流生は呆れるように大きなため息をついた。

「姐さんが、いったい何のために戦ったと思っているだか」

「……何のために戦った、か」

流生の言葉を繰り返した後、押し黙った翼は奏のことを考えていた。

(奏が何のために戦ってきたのか今なら少し分かる気がする。だけど、それを理解するのは正直怖い)

 人の身ならざる自分に受け入れられる事柄なのか。剣である自分には分不相応な物なのではないかと怖気づいてしまう。

(自分で人間に戻ればいい。それだけのことじゃないか。いつも言っているだろうあんまりがちがちだとぽっきりだってなんてまた意地悪を言われそうだ……)

 奏が言いそうなことを考えて、思い悩んでできた眉間のしわが和らいだ。

「確かに姐さんならそんなことを言いそうですね」

 目を開けると流生も片眼だけを開いて眉間のしわを取り、懐かし気に笑っていた。どうやら考えていたことが口に出ていたようだ。

 奏の口調を真似していたのを聞かれ恥じらいで頬が少し赤くなる。だが、せっかくだからと自分の考えていることを翼は流生に打ち明けた。

「病院で眠っている間、奏が戦った理由をずっと考えていた。けれど今更、私が戻ったところで何ができるというのか。いや何をしていいのかすら分からないの」

「『好きなことをすればいいんじゃねえの。簡単だろ?』ってあの人なら言うと思いますけどね」

 翼の独白を聞いて流生は泣いている子をあやすように優しく微笑む。そして翼がしたように奏の口調を真似て助言をする。からかわれているようでちょっとだけ悔しかった。けれどもそれ以上に言葉の意味するところの方が気になった。

「好きなこと……もうずっとそんなことを考えていない気がする」

 流生の助言を聞いた翼は瞳を伏せて考えた。かつて自分にも夢中になれる何かがあった気がする。

「私の好きなことって一体……」

「え?バイクと歌でしょう」

 翼が思い悩んでいると流生は当たり前のこととばかりに言い切った。ろくに考えた様子もなく言い放つ流生に呆れた目を翼は向けた。

「それは貴方の趣味じゃない。」

「いやいや、俺がそれを好きになったのはお嬢、あんたの影響でしょう」

 流生は呆れられたことに不服を感じたのか組んでいた手をほどいて顔の横で振りながら弁明した。

「私の?」

「そうですよ、免許を特別にもらって、鼻歌まで歌って一番はしゃいでいたの忘れたんですか?」

 流生に言われて思い出した。当時15歳だった私はノイズ撃退の移動手段として特別にバイクの免許を取得することを許されたのだ。非番の日に遠出をしようとバイクをガレージで整備していて、知らず歌っていた鼻歌を奏に聞かれた。そういうのなんかいいよなって言って奏はからかいながらも微笑んでいた。

「……そうだったかしら」

 自分の浮かれた様子を思い出して、認めるのが恥ずかしくて忘れたふりをする。

「姐さんと俺に鼻歌聞かれて赤面してたの忘れてないですからね」

 けれども流生はそんなことお見通しとばかりに一番痛いところを的確についてきた。恥ずかしさからそれ以上言うなとにらみつけて言外に言う。流生はやれやれといった様子で肩をすくめた。

「忘れたっていうなら、今度バイクで出かけますか?見晴らしのいい峠でも走れば思い出すでしょう」

「……いいかもしれないわね」

 エレベーターが二課に着いたために停止する。開いた扉を通りながらなんとなしに翼がそう言うと流生が後についてきていなかった。振り返るとエレベーターの中で鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして固まっていた。

「どうしたのよ?」

「いや、断られるもんだとばかり思ってたので」

 特に何か変なことを言ったつもりはなかったと翼が困惑していると、固まっていた流生がハッとしてエレベーターから出てくる。

「やっぱりちょっと変わった。いや、戻りましたね」

 流生は嬉しさに目じりを下げて翼を見る。以前までの翼であれば、剣にそんなことをしている時間など必要ないと言って提案を切り捨てていただろう。響と出会って影響を受けて流生がよく知る昔の翼のものに心持ちが戻っているのだと感じた。翼は流生が何を思って戻ったというのかあまり理解できていない様子で首をかしげている。そんな姿が愛おしかった。

「まぁ、またガングニールにとられちまったのはちと不服だがな……」

「え?」

「なんでもないですよ。それより、行くっていうなら弁当作っておきますよ。何入れて欲しいです?」

 なんでもいいですよとおどけて流生が提案すると、翼は顎に指を置いてしばし考えた後ポツリとつぶやいた。

「…‥‥さん……ナー」

「え?」

「……タコさんウインナー」

 流生が聞き返すと翼は恥ずかしそうにリクエストを出した。お弁当の代表的なメニューとはいえ随分と可愛らしいものをと流生は微笑ましく思った。

「……クスッ。御意のままに」

 わざと大仰な身振りで要望を受け入れて流生は再び歩き出す。しかし、そんな流生の様子に不服があるのか翼は立ち止まってじっと流生を半眼でにらみつけ目で追った。

「今笑ったでしょう?」

「笑ってないですよ」

 不満げに指摘する翼に流生は振り返らず歩き続けながら答える。後頭部に両手を当てて呑気な様子だった。そんな流生に翼はさらに不服なようで頬を膨らませる。

「笑ってた」

「笑ってないですってば。子供みたいで可愛いリクエストだなんて思ってもないですよ」

「やっぱり笑っているじゃないの!ちょっと待ちなさい流生!!」

 からかうような軽い口調で流生が答えると翼は恥じらいに顔を赤くしながら流生の後を追って走り出した。その後も二人はやいのやいのと笑った笑ってないと言い合いながら廊下を歩いていくのだった。

 

 

 

 

 メディカルチェックを終えた響はMRIから立ち上がろうとしてふらついてしまった。すぐに了子が体に手を回して支える。

「無理しないの。深刻な外傷はないけど、常軌を逸したエネルギー消費で体が疲弊しているんだから。休息が必要なのよ」

「私、呪われてるかも……」

 ふらつく体を支えられながら響はうなだれていた。

「気になるの?お友達のこと」

「……はい」

 友人である未来が戦闘に巻き込まれ、響は自分の正体を知られてしまった。そのことを案じているのだと、了子は響が心配していることが何なのかすぐに理解してフォローに入る。普段通りの明るい声でなんでもないかのように説明した。

「心配しないで大丈夫よ。緒川君達から事情の説明を受けているはずだから」

「……そう、ですか」

「機密保護の説明を受けたらすぐ解放されるわよ」

「はい……分かりました。それと、あの」

 それでも不安は拭えきれず、響は前で組んだ手を握り締めた。未来のことももちろん心配だったがもう一人、心配な人物がいる。深のことだ。響が目を覚ました時、響とは別のメディカルルームに搬送されていた。響が見た時には全身に怪我をしていて、右手が痙攣していた。戦闘後の処理でごたついていたためろくな会話もまだできていなかった。

「……安心しなさいな、発砲の負荷で右手がちょっと麻痺しているのと、翼ちゃんの一撃で火傷や擦り傷はあるけどそれ以上に深刻な怪我はしてないわ」

「……正直びっくりで。深君が生身でノイズを操る相手に挑むなんて……」

「あの子の悪い癖よ。熱くなると周りが見えなくなっちゃうところ。後で逢ったら響ちゃんからもガツンと言ってやりなさい。多分それが一番効くだろうから」

「……はい」

 了子は世話の焼けると言わんばかりに肩をすくめてため息をついている。その様子から怪我はたいしたことはないのだろうと思えたが、搬送されたときの深の顔が響は忘れられずにいた。見たことがないくらいに怖い表情をしていたのだ。

 響が俯いているとメディカルルームの扉が開いた。流生と翼がやってきたのだ。

「師匠、翼さん」

「息災か、ヒビの字」

「ブリーフィングのため発令所に来てほしいと指令から言付かってきました」

 流生は響の容態を気にして声をかける。思っていたよりも外傷がないことに安堵していた。翼はそのやりとりを見た後本題を了子に告げる。話しかけられた了子は腕を組んで気安く答えた。

「はいはい、今行きますよ。それにしても翼ちゃん。貴女も病み上がりなのに無茶したわね」

「独断については謝ります。ですが、仲間の危機にふせっているなどできませんでした」

「……えっ?」

 翼の仲間という言葉が自分を指していると一瞬遅れて気が付いた響は驚きながら翼の方を見る。翼は了子に向かってまっすぐ見て続けた。

「立花は未熟な戦士です。半人前ではありますが戦士に相違ないと確信しています」

 その様子を隣で見ていた流生が両手を後頭部で組んで小さく口笛を吹いた。

「おぉ~、お嬢がデレた。たくっもっと早く認めてやりゃ醜態曝さないで済んだかもしれないってのゴフォッ!?」

 空いていた流生の腹に翼の肘鉄がクリティカルヒットした。

「完璧には遠いが立花の援護くらいなら戦場に立てるかもな」

「翼さん……私、頑張ります!」

 肘鉄の威力を確かめるように腕を振るった後、翼は響の方を向きなおすと微笑みかけた。響も翼が自分を認めてくれたことを感じ取った。そして、真摯にその思いを受け取るべく姿勢を正して翼を見つめ返す。

「お嬢……あんた……みぞ……入ったって……ヒビの字も、無視、すんな」

「流生~今のは貴方が余計なことを言うからよ。まったく、それじゃあ行きましょうか」

 床に丸くなって痙攣している流生を置いて、女性陣三人はミーティングに参加すべくメディカルルームを後にしたのだった。流石に響は少しだけ流生に同情した。

 

 

 

 

「まったく無茶しやがって」

「すみませんでした。余計な心配をおかけしました」

一方発令所では仁王立ちする弦十郎の前で深が深々と頭を下げていた。頭の包帯は巻きなおされ、痙攣していた右手は吊るされ固定されている。痛々しいその姿を見て弦十郎はため息をつきながら深を諭す。

「深、家族を壊されたお前の怒りは分かる。だがな。それに飲まれてしまえば、成すべきことも成せなくなるぞ。」

「……はい」

「まったく……」

 頭を下げたまま深は弦十郎の言葉に返事をした。しかし、その表情は誰にも見えない。弦十郎は本当に理解しているのかと不安を感じずにはいられなかった。

朔也は説教がひと段落したと見計らい現状の問題点をつぶやいた。

「それにしても、まさかイチイバルまで敵の手に……そしてギア装着候補であった雪音クリス」

「聖遺物を力に変えて戦う技術において我々の優位性は完全に失われてしまいましたね」

 あおいもそれに続く。二人の言う通り現状はかなり深刻なものだった。ネフェシュタンの鎧にイチイバルまでもが相手方に渡っているということはこちらのかなり深い部分にまで敵の手が入り込んでいることを意味する。

「敵の正体……フィーネの目的は……」

「……」

 弦十郎が眉をひそめ、フィーネの名を出すと深は小さく息を飲み弦十郎から目をそらした。何かを知っているような様子に見える。

「深、お前……」

「深刻になるのは分かるけど、シンフォギアの装者は二人とも健在。頭を抱えるにはまだ早すぎるわよ」

 深に弦十郎が問いかけようとすると、ちょうどそのタイミングで了子が響たちを引き連れて発令所へと入ってきた。ひとまず弦十郎は了子からの報告を優先することにした。

「了子君、響君のメディカルチェックの結果は?」

「ん~そうね~」

問われた了子はというと指を口元に持って行き考える素振りを見せたかと思うと唐突に響の胸を口元に置いていた指で突っつく。

「のあ~~~~!?!?!?なんてことを!!」

(深君も見ているのに!?)

セクハラを受けた響は絶叫を上げながら腕で胸を隠し了子から距離を取る。ちらりと深の様子を見るが特にこちらを気にする様子もなく別の方向を見ていた。それはそれでちょっぴり凹んだのだった。

「響ちゃんの心臓にあるガングニールの破片が、前より対組織と融合しているみたいなの。驚異的なエネルギーと回復力はそのせいかもね~」

「融合ですか?」

「大丈夫よ、貴女は可能性なんだから~」

「よかった~」

 融合と聞いて一瞬不安になった響だったが、了子の言葉に安堵して肩の力を抜いた。

「……融合」

 しかし、その一方で翼はその言葉にひっかかりを覚えていた。戦闘中雪音クリスはダメージを負った際、ネフェシュタンの鎧に侵食されかけていた。もし、相手方も響と同じように聖遺物と融合することで力を得ることが出来るのだとしたら、それはとてつもない脅威足りえる。

ちらりと翼が隣を見ると深刻な表情をした流生と目があった。同じことを流生も考えていたようで、静かに流生も頷いてくる。

「……」

 そんなやりとりを静観していた深がふっと発令所から立ち去ろうと入り口の方へと静かに歩いて行った。

「ちょっと待ちなさい、深」

 了子はそんな教え子を引き留める。声音は先ほどまでの明るい調子ではなく、厳しいものになっていた。声をかけられ深は立ち止まる。他の人たちも了子の口調を前に押し黙った。

「貴方、何か言うことはないかしら?」

「……」

 尋ねられた深だったが何も言わず立ち尽くしている。そんな様子に了子はむっと眉をひそめる。

「貴方、移送作戦の時にも言ったわよね?自分を大事になさいって。それなのに拳銃一つで挑むなんて何を考えているの?無謀なことをするのもほどほどに——」

「どうして——」

 了子の言葉を遮るように深が言葉を発した。その声は震えていた。背中越しでは表情は見えなかったが、悲しんでいるような、怒っているようなそんな複雑な声音に聞こえた。

「どうして、僕を心配するんですか」

 それだけ言うと返事を待たずして深は発令所を後にした。遮られてしまった了子はあっけにとられていたが、やがてハッとすると困惑を隠すように苦笑いをした。

「えっと、あはは反抗期かしらねあの子ったら」

「……私、追いかけてきます!」

そんな深の様子を心配して響が後を追いかけて発令所を後にした。弦十郎はその様子を静観した後、静かに目を閉じた。

「深のことは響君に任せるとしよう」

「そうね……大丈夫かしら」

「……どうだろうな」

 弦十郎はうっすらと目を開けると心配する了子の背中を見る。いぶかしむように眉を顰めると再び目を閉じたのであった。

 

 

 

 

 深を探しに廊下に出た響だったがどこにいるのか見失ってしまった。

「モチちゃん?」

きょろきょろと深を探して右往左往していると曲がり角にモチを見つけた。モチは響と目を合わせるとついてこいと言うように首を振って曲がり角を進んでいった。

モチに導かれるように進んでいくと人気のない休憩スペースに差し掛かった。

「……深君」

その休憩スペースの椅子にうなだれるように深は座っていた。

「……移送の作戦変更を知らなかったはずだ。知る方法がない。だから違う……もし、把握する方法があったら?いや、そんなものない……あってたまるか。やめろ、これ以上考えるな、いや考えろ、仇が近くにいるかもしれないんだぞ」

 深は響に声をかけられたことにも気が付かずに独り言をつぶやいている。そんな深にモチが近づき、心配するように足元で鳴いた。

「モチ?……響ちゃん」

モチに呼びかけられたことで顔を上げた深はようやく響の存在にも気づいたようだ。響と目が合った後、すぐにまた俯いて黙り込んでしまった。その状態で沈黙が続く。1分か2分後に深は口を開いた。

「……ごめん」

「え?」

「未来ちゃんを巻き込んでしまった。それに、戦う相手でも話し合いたいって響ちゃんの気持ち。蔑ろにした」

「深君……」

 謝辞する深の背中が痛々しいほど小さく響には見えた。肩も震えて溢れそうになる感情に耐えているのが伝わってくる。

「響ちゃんならまずは話し合おうってそう言うって分かっていたのに。だめだね僕は……」

泣き出しそうな顔を響に向けて深は力なく笑う。それは1年前に父がいなくなった時の自分のようだと響は感じた。気づけば響は深を背中から抱きしめていた。

「響ちゃん?」

「デュランダルの闇に飲まれたとき、とても怖くて苦しかった。今の深君も苦しそうだよ。無理に隠さないで」

 戸惑う深に響は今自分が感じている思いを素直に告げる。苦しそうと言われた深が息を飲むのが分かった。

「抱えきれない思いは全部出していいって前に言ってくれたよね?私も全部受け止めたいから」

 かつて、父を失った悲しみを魔法の言葉で誤魔化そうとした自分に深がしてくれたように、私に心配をかけまいとする彼を今度は自分が支えたかった。

「だから、貴方が抱えているものを聞かせて?」

「……」

 口元に手を当てて深は何も言わずに震えていた。告げるべきではないと止める自分の理性と、打ち明けてしまいたいという心が葛藤しているのだと響には分かった。だから、響は抱きしめる腕に力を籠める。告げていいのだと伝えるために。

「……聞いていて気持ちのいいものじゃないよ?」

 ぼそりと観念したように深がつぶやく。ようやく打ち明けてくれたことに少し嬉しさを感じながら響は返事をした。

「それでも知りたいんだ。深君がどうして戦っているのか。何と戦っているのか」

 君に嘘をついた、と深は話し始めた。

「……僕が二課に入ったのは人助けのためなんかじゃないんだ」

 深は自分の過去を話し始めたのだった。

 




最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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