装者の男女恋愛が見たいッ!戦姫絶唱シンフォギア SLS 作:ふみー999
お待たせしました!大変遅くなってしまい申し訳ございません。
書く内容を慎重に考えていたことと、リアルが忙しくて時間が取れずこんなに遅れてしまいました。
ちょっと今回短めでしたが、予定していたところまで書くと長くなるので分けました。続きは鋭意製作中でございます。
UA15000人突破しました。ご覧いただきありがとうございます。今後もお付き合いいただければと思います!
硝煙が立ち込める銃を握ったまま深はすぐに未来のもとへと駆け出した。だが、深が近づく前にもう一体別のノイズが銃声を聞きつけて未来たちを襲おうと飛び掛かってくる。
「ッ!」
引き金を引く。放たれた虎の子のデュランダル製弾頭がノイズに直撃すると刹那のうちに爆ぜ、その内包したエネルギーを放出する。そのエネルギーは位相差障壁すら打ち破り飛び掛かろうとしていたノイズを灰燼と化した。
「深……さん……」
「こっちに!」
足を引きずる未来を近場の廃工場へと誘導する。深は後ろを警戒しつつ未来の背後を守りながら一緒に進む。廃工場の入り口前までやってきたところでまた別のノイズが2体、二人を殺さんと襲ってきた。
未来をかばうように前に出て引き金を引く。飛び掛かろうとしてきた一体を仕留めはしたが、もう一体が二人目掛けて投槍のように飛び込んできた。
「伏せてッ!」
未来を抱きしめるように倒れこみ深はその攻撃を回避する。攻撃を外したノイズはドラム缶が密集している地点へと突っ込んだ。中からどろりとした液体が染み出している。
「このぉ!!」
深はそのノイズに目掛けて引き金を引いた。飛び出した弾丸はノイズを塵と化し、そしてその火花が足元の液体に引火して大爆発を起こす。
「きゃあっ!!」
爆発に驚き悲鳴をあげる未来に覆いかぶさってかばい深も頭を守る。爆風が収まると辺りは黒煙と炎に包まれていた。
だがそれ以上にその炎の向こうから次々とノイズがゆっくりとこちらへと向かってきている。
「中に!今はそれしかない」
立ち込める煙を振り払って二人は廃工場の中へと逃げ込む。煤けた空気にせき込みながら廃棄された瓦礫や機材の山を抜けて、事務所だったのだろう仮設部屋の中へと逃げこみ扉を閉めて二人は身を潜めた。
物陰に座り込み隠れながら辺りの様子をうかがうと外からは炎が燃え盛る音とノイズが獲物を探して這いずり回る音が響いてくる。しかし、こちらに近づいてくる様子はなくどうやら爆炎にうまく紛れられたことで二人を見失ってくれていたようだった。しばらくは見つかることはないだろう。
「——司令、聞こえますか?」
『深か?どうした?』
即座に深は自分の持つ通信機を取り出し弦十郎へと連絡をした。幸いなことに弦十郎はすぐに通信に出てくれた。
「DB-01地区の廃工場にノイズの襲撃を受けて避難しています。周辺にはノイズ多数、火災も発生中。未来ちゃんも、一緒です。」
『——ッ!分かったただちに響君を向かわせる。到着までなんとしてでも持ち堪えるんだ』
端的に深が現状を報告すると即座に状況を理解した弦十郎が指示を出し通信が切れた。これで何とかなるはずだ。
「——ッ」
未来は自分の足を抑えて痛そうにしていた。見れば先ほど鉄筋で切ってしまった箇所から血が流れ続けている。
「足、貸して」
深は自分の腕を吊るしていた三角巾を取り外し、右手の包帯を解いた。まだ少しだけしびれがあるが動かせないことはないと数回開閉して判断する。
未来は少しだけ躊躇したあと素直に右足を深の前に出した。深は自分のハンカチを未来の足に当て、三角巾を使って応急処置をする。
「これで応急処置は済んだはずだ」
「……ありがとう」
「……うん」
治療を終え、状況がひとまずひと段落すると二人の間に気まずい沈黙が流れた。話をしようと深は覚悟を決めてきた。話をするべきだったと未来は後悔をしていた。
「「……あの」」
だから、異口同音に言葉を発してしまったのは必然だったのかもしれない。
「えっとごめん。何、かな?」
「いえ、深さんからどうぞ……」
さっきとはまた別の気まずさを感じてまた押し黙ってしまう。先に沈黙を破ったのは深だった。
「どこまで響ちゃんから僕のことは聞いているの?」
「……お父さんのことは、聞きました」
「そうか……。言い訳にしかならないけれど、話してもいいかな?」
「……なら隠さず全部話してください」
深は怖がりながらも決意しまっすぐに未来を見つめる。未来もそれに答えて小さく頷いた。ありがとう、約束する。と消え入りそうな声で深は語り始めた。
「1年前、あのノイズの襲撃が誰かによる意図的なものだと知って、僕は復讐しなければならないって思った。家族を奪った相手が許せなかったから。でも、本当は恨みだけが理由じゃなかったんだ……」
「……それは何だったんですか?」
ここから先は響ちゃんには話さなかった、話せなかった胸の内だ。
「僕のせいで、家族が壊れたんだから。せめて、敵討ちをしなくちゃいけないって思った。ライブに行きたいって言った僕が、母さんとヒビキを守れなかった僕が、狂っていく父さんに気づけなかった僕が、ただ、のうのうと生きていていいわけがないから」
家族を壊したのだから、せめて仇を討ちその責任を取らなければいけない。自分だけが何もかも忘れて幸せな道を歩いていくなんてことは許されると思えなかった。
「そのためだったら響を利用してもいいって思っているんですか?」
強張った固い声で未来は己のうちに広がる憐憫を押さえつけて問いかけた。深は違うと首を振って天井を仰ぎ見た。
「逆だよ。彼女を巻き込みたくなかった。響ちゃんには復讐なんて暗い道ではなく、明るい日向の道を歩いて行ってほしかったから。何も言わずに消えて、僕のことなんか忘れてくれることが最善だと思ったんだ」
「響は、貴方のことを忘れた日なんて一度もなかったです。毎日毎日、ずっとずっと貴方を探して傷ついていました。いっそ、きっぱりと別れを告げてくれればよかったのに」
せめて、もう会えないときっぱりと別れを言ってくれればと未来は思ってしまう。そうすれば、この1年間、真綿で首を締め続けられるような痛みを響が感じることはなかったのに。未来は奥歯を噛みしめて深を見つめる。
深は未来と目を合わせて、そして項垂れた。
「……会えなかったんだ。会ったら彼女はきっと僕の傷に気づいてしまう。隠し通せる自信がなかった。……いやこれも言い訳だな。もう一度会ったら覚悟が鈍ると思った。勇気が僕にはなかったんだ」
「……自分勝手ですね」
「うん……その通りだよ」
その痛々しい深の姿に未来は絞り出すように叱責する。深は後悔をにじませた顔をして震えながら瞳を閉じた。
「そうですよ。今だって巻き込みたくないって言っているのに響を戦いから、貴方自身から遠ざけようとしない。貴方はいったい何がしたいんですか?」
響を傷つけたことへの怒りと深への憐憫が混ざって未来は自分の感情が分からなくなってきていた。傷つけたくないと言いながら傷つけて、会えないと言いながらこうして今一緒にいる。深の真意が分からなくて混乱しているのだ。
「……それこそ、自分勝手な理由だよ」
瞳を開けた深は自嘲気味につぶやいた。自分の弱さに心底呆れている。
「響ちゃんがガングニールに覚醒したあの日。画面越しに彼女を見て、気がついたら現場に向かっていた。もう一度会う資格なんてないのに、声をかけるべきではなかったのに。それでも、会いたいって思ってしまったんだ」
二課にスカウトされている時だってもっと本気で止めることはできたはずだった。彼女が翼さんとの関係がうまくいかない時にシンフォギアを辞める選択肢を出してあげることだってできたはずだった。
「一度会ったら、もう遠ざけることができなかった。せめてもう少しだけでも一緒に居たい。あと一日、あと一日だけと、そう思ってしまった」
月に照らされた叢雲のような灰色の前髪を乱雑に掴んでかきむしりながら深は本音をこぼした。
以前流生に響をヒビキと重ねていると言われたことがある。きっとその通りなんだと思う。妹がもし生きていたのなら、生きて成長して元気でいてくれたなら、きっと毎日こんな風に幸福だったのだろうと思ったから。けれどもそれだけじゃない。
「あの子は僕にとって救いなんだ。あの子の笑顔は、可愛くて暖かくて優しくて、見ているこっちも微笑んでしまう」
母と妹を失った嘆きの中で、事件後の孤独の中で、あの笑顔に出会えたことがどれだけの幸福だったか。あの日、溺れる響と出会った日。助けられたのは僕の方だったんだ。
「あの笑顔にどれだけ救われたか」
再び失うのが怖い。だからまた遠ざけることができない。言ってしまえばそんな情けない我が儘が未来の疑問に対する深の答えだったのだ。
「……」
深の答えを聞いた未来は、自分の心に浮かぶ感情に名前を付けることが出来なかった。何も知らなかった時に感じていた怒りとは違う。かといって深を同情し、憐れんでいるのかと言われるとそれも違っていた。怒りたいけれども怒れない。悲しいけれども憐れみだけを抱くこともできない。振り上げた手の行き場を無くしてしまったようなそんな気持ちだった。
ただ、深が響のことを心から大切にしているのだということだけは信じることが出来た。大切に想っているからこそ傷つけてしまうことだってあると言った緒川の言葉を思い出す。今ならその言葉を素直に飲み込めた。だから、ああそうかと胸に浮かんだ言葉を受け入れることも出来た。
「同じ、だったんですね私たち」
未来は2年前ライブに響を誘った。響を傷つけたくなくて深から遠ざけた。それは決して響を悲しませたくてしたことではない。けれども結果を見れば響に辛いものを背負わせてばかりだ。それは傷つけたくなくて遠ざけた深と変わりはしなかった。
「これから深さんは、どうしたいんですか?」
未来は最後の質問を深に投げかけた。傷つけて、それでも大切に想っている。それならば貴方は響に対してどう向き合おうとしているのか、と。
「僕は———ッ!?」
だが、深が答えを話す前に外から大きな爆発音が響いた。深が隠れながら窓の外を確認すると周辺にいたノイズが工場の人が隠れられそうな場所を破壊して回っていた。
どうやら見つからない深たちに業を煮やしてしらみつぶしに破壊しているようだった。
ノイズには感情がない。本来であれば見つからない時点でノイズが目星もつけずに襲撃してくることはないはずだ。それがノイズ自ら深たちを探している。それはノイズを操る者の明確な殺意を感じ取ることが出来た。
「……」
頭に浮かびそうになった悪い考えを振り払い、深は懐に仕舞っていたリボルバーを手に取り、シリンダーを開いて空の薬莢を捨てる。残ったデュランダル弾はあと一発だけだった。
「……っだめだ」
その一発を見て深は奥歯を強く噛みしめた。この一発は撃てない。撃てば、フィーネに対抗する手段を全て無くすことになる。相対してもいないこの局面で使ってはいけない。
だが、外の様子を見ればノイズの破壊活動は勢いを増している。ここが見つかり襲撃されるのも時間の問題だった。
「このままじゃジリ貧だ……」
その時、深の通信機が呼び出し音が鳴った。深はすぐにその通信に出る。
「こちら槙野!」
『ッ!深君、未来、無事!?』
通信機の向こうから響の焦った声が聞こえてくる。時間で言えば一日くらいしか経っていないのに、随分と長い間聞けていなかったような気がする彼女の声。こんな状況だというのにその声を聞いて嬉しいと思ってしまう自分を戒めて深は端的に状況を確認した。
「まだ隠れられている。見つかってないけど、時間の問題だ。そっちは?」
すると、バイクのエンジン音と共に流生の声が割って入ってきた。
『後3分でヒビの字は送り届ける!それまではなんとしてでも粘って生き延びろ!』
3分という言葉を聞いて深は振り返って窓を見ながら冷静に状況を確認した。ノイズによる破壊行為で火の勢いはさらに強まっている。ノイズの破壊速度を考えればこのままここにいたでは救援には間に合わない。ならば未来と共にノイズに見つからないように隠れてこの場を脱出するか。これも現実的ではない。ただでさえ成功率は低いし、未来は足を負傷している。
「……これしかない」
「深、さん?」
熟考して、あらゆる可能性を考慮して深は覚悟を決めた。手にしたリボルバーを懐に仕舞い、通信機に話しかける。
「未来ちゃんは廃工場の仮設事務所の中にいます。火の手が近い。流生さん、突入後すぐに救助をお願いします」
『……ッ!おい深!お前まさか……馬鹿な真似は止せ!!』
『深君ッ!』
二人が叫びながら制止するのを無視して深は通信を切った。そして未来の手を取り通信機を手渡す。
「二人が救助に来たらこれで居場所を伝えるんだ」
「深さん。貴方まさか……」
未来も深が何をしようとしているのか察したのか青ざめた顔で深の手を握り返した。
「無茶です!この火の中でどれだけノイズがいると思っているですか!」
「無茶かもしれないけど無理じゃない!」
深は語気を強め未来を見据えて言い放つ。そして優しく自分の腕を掴む未来の手をほどいた。
「君が死ねば、響ちゃんは悲しむ。大切な人が死ぬ痛みなんて、味合わせたくない」
母と妹を亡くした絶望を僕は生涯忘れないだろう。ここで未来が死んでしまえば同じ絶望に響が堕とされる。そんなものを響に背負わせたくなかった。
「1年前のあの時と気持ちは変わってないですか?」
自分のことを度外視して語る深に未来は不安を隠せずに問いかけた。1年前に聞いてしまった河川敷での彼の独白。響には決して見せない隠した本音が脳裏によぎったからだ。深もその言葉がなにか忘れていなかったのか見開いた目を哀しそうに細めた。
「……もうその気持ちがないと言えば、嘘になる」
帰ってきた返答に未来は顔をしかめた。そんな未来に、けれども。と深は言葉を続けた。その眼に迷いはなかった。
「僕にできることをしたい。彼女が戦うのなら、それを支えられるように。響ちゃんが一人で背負い込まないでいいように、僕にできる戦いをしたい。それが僕の答えだ」
傷つけて、それでも大切だった。だから、彼女を守りたい。彼女の守りたいものを守りたい。そのために今自分にできることを。
「大丈夫、僕はこんなところで死ぬつもりはないよ」
「……あっ」
静かに深は微笑んで立ち上がると振り返ることなく外へと駆け出した。
「こっちだノイズ!!僕はここにいるぞ!!!」
燃え盛る炎に全身が焼かれる痛みを感じ、黒煙に喉を焼かれて咳き込みながら深は叫んだ。
深の姿に気が付いたノイズたちは破壊活動を止めて深に狙いを定めて動き出した。飛翔型は体を槍のように尖らせ高速で体を貫こうとしてくる。人間型は飛び掛かりその両手の刃物で切り裂こうとしてきた。
その全てを走り、時には転がることで深は回避し続ける。一撃でも喰らえば即死のマラソンを未来がいる場所からできるだけ遠ざけようと続けた。
こんなところで死ぬつもりはない。そもそも、こんなところで死んでいい資格なんてない。だから、響たちが救援に来るまでのこの3分間を、絶対に繋ぐ。
炎に照らされた深の瞳には覚悟が危うく輝いていた。
「……っ」
逃げ続ける深の後ろ姿を未来は絶句して見続けていた。駆け出す前に見せた深の笑顔に意識の外から殴られたような衝撃を受けたからだ。
似ていたのだ。その笑顔はあまりにも似ていたのだ。
似ていたのだ。その後ろ姿はあまりにも似ていたのだ。
へいきへっちゃらと笑って、誰かのために自分を傷つけても頑張ってしまうそんなお日様に。哀しさを抱えた深の姿は、さながら日の光が反射して輝く月のようだった。
「そうか、私……」
嫌いなのかとクリスに尋ねられた時、うまく答えられなかった。けれども、今なら答えられる気がした。大好きな親友と同じ優しさを持った彼のことを私は当の昔に認めていたのだ。1年前に響から話を聞いていた時から親しくなりたいと、響の傍にいてほしいとそう思っていたのだ。
だから彼を死なせたくない。死なせてはいけない。そう未来は強く思った。そのために自分にできることが何かないか。未来は辺りを見渡してあるものが目に入ったのだった。
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