装者の男女恋愛が見たいッ!戦姫絶唱シンフォギア SLS 作:ふみー999
6月中に出したかったのですがまた遅れてしまいました。
とは言え今回でアニメ第8話も終了、1期も終盤です。夏の間にどこまで進めるか頑張っていきますとも!
それではどうぞよろしくお願いいたします。
「師匠ッ!急いで!!」
「分かってる!」
流生と響を乗せたバイクが深たちのいる廃工場を目指して走っていた。オーバーヒート寸前まで加熱されたエンジンが発するけたたましく轟く音が二人の焦燥を表していた。
「姐さんが繋いだ命だ。死なせねぇ、絶対に死なせねえぞ」
流生は自分に言い聞かせるようにつぶやく。2年前に奏が命を賭してまで深たちを救ったのだ。何もできず逃げて姐さんを見殺しにした自分が、深をここで間に合わずに死なせたのでは本当に顔向けができなくなる。それだけは絶対に許されることではない。
限界寸前のエンジンを酷使して流生はスロットルを回してさらに加速する。
するとヘルメットのインカムに再び通信が入った。
『響ッ!』
「未来?未来ッ!今どうなっているの!?」
通信機から小日向の声がして響が慌てて返答する。声と一緒に燃え盛る炎の音と、巨大な破壊音が鳴り続けている。
『深さんが囮になるって飛び出したの!まだ逃げ切れているけどいつまで持つか分からない』
「そんなっ」
未来の報告に響は顔を青くして息を飲み、流生は予想していた最悪の展開に舌打ちをした。深はたった一人でノイズの群れに飛び込んだというのだ。抵抗する力など持ち合わせていないはずの深が、一人で。それはほぼ自殺と言っても過言ではない無謀だ。取り囲まれ炭化して塵になってしまう深を想像してしまい響はすぐにでも変身しバイクから飛び出していきたい衝動に駆られる。
『……よかった、まだ動く』
「未来?」
焦る響の耳に未来が何かを操作しているのか金属がぶつかる軽い音を立てながらつぶやく声が聞こえた。そしてエンジン音が静かに響いてくる。
『……響、ごめんね。深さんのことを大切に想っている響の気持ちを無視して、私は響を遠ざけようとした』
「未来?……何を……」
恐怖を押さえつけながら未来は冷静に響への謝罪の言葉を口にする。
『私も、私にできることで戦う。あの人は絶対に死なせない。私がノイズの気を引いて、深さんのことは絶対助けるから』
響の大切なものを奪わせない。そのために私にもできることを、私の戦いがしたい。
未来の覚悟を聞いた響はうろたえた。
「未来ッ!だめだよ、そんなこと未来にさせられない!」
『このまま、ただ見ているだけじゃ深さんを助けられない!私が何とかするからその間に駆けつけて』
「そんな!何ともならない!」
『じゃあ、なんとかして』
焦りから語気が強くなる響に未来は努めて冷静に返事をした。
「——ッ」
いくら響が止めようとしても未来の決意は揺るがなかった。そして、未来は一人でなんとかしようとしてはいなかった。助力を乞われた響は思わず面食らってしまう。
『危険なのは分かっている。だからお願いしているの——私たちを、助けて?』
険のないきわめて穏やかな物言いで未来は言った。通信はそこで途絶えた。
「未来?未来!!——ッ師匠!!」
「ッ!舌を噛むなよ!!」
聞こえなくなった未来の声に響は泣きそうになりながら流生を急かす。流生は短く答えるとガードレールを飛び越えてビルの屋上へと飛び移りショートカットを始めた。
(未来ッ……深君……)
激しく揺れる後部座席で親友と想い人の名前と顔が頭に浮かび、体を支えるために流生の肩に置いた手に力がこもる。現場までの残り2分が永遠に感じられた。
「冷静になれヒビの字。二人とも生きている。あいつらだって死なねえように踏ん張っているんだ。それを今は信じろ!」
生き残ろうとしている相手のことを信じろ、と焦る響に流生は諭すべく叫んだ。
「師匠……」
バイク屋上の柵を飛び越えて宙に舞う。流生の背中からは絶対に助けるという強い意志が伝わってきた。その流生と通信での未来の言葉に響はハッとさせられた。
「……今ならわかる気がします。あの日奏さんが私に生きるのを諦めるなと叫んでいた理由が」
思い出されるのはあのライブ会場での奏の姿。死力を尽くし、奏は最後まで響たちを救うことを諦めなかった。
戦っているのは自分一人ではない。シンフォギアで誰かの助けになれると思っていたけれどもそれは思い上がりだ。助ける私だけが一生懸命じゃない。助けられる誰かも一生懸命。本当の人助けは自分一人の力では無理なんだ。だから、奏さんは生きるのを諦めるなと私たちに叫んでいたんだ!
「そうだ……私が戦うのは、誰かを助けたいという気持ちは、離れ離れになる恐怖や惨劇を生き残った負い目なんかじゃない。2年前奏さんから託されて私が受け取った気持ちなんだ!」
心に火が灯る。未来や翼に問われたことに今なら迷いなく答えられる。
応えたいんだ、命を救ってくれた奏さんの気持ちに。
守りたいんだ、何気ない、温かくて穏やかな日常を。
助けたいんだ、私を想ってくれる大切な人のことを。
それは全部、自分自身の心から湧き上がってきた私自身の心からの願いだ。
バイクが地面に着地する。深たちがいる燃え盛り黒煙を吐く廃工場は目の前だった。
「……これだからガングニールは」
響の覚悟がこもった叫びを聞いて流生は不敵に笑う。
愚直に、まっすぐに、誰かのために。自分という音を響かせ、奏でて突き進む。決して曲がらず折れない撃槍。そのあり方に今はもういない背中を重ねた。
自分ではない背中にあの人を重ねて
その魂が受け継がれていることが嬉しくて笑ったのだ。
「だったらその胸の想い、歌に乗せて暴れてきな!」
「はいッ!」
響が聖詠を歌う。それと同時に流生は加速しバイクごと工場の中へと突撃した。
「……くっそ……」
逆巻く炎に身を焼かれながら深は火傷するほどに熱くなった手すりを支えに息を切らして立っていた。
周りを見渡せば四方八方をノイズが獲物を狙うようにして取り囲んでいた。逃げ道はもうどこにもない。
絶体絶命、万事休す。
「ここまでか……」
どれくらい時間が経ったか分からないが少なくとも3分近くの時間は稼いだはずだ。響ちゃんを連れた流生さんがまもなく突入してくる。少なくても未来ちゃんは助けられる。そのことに満足感を感じて目を閉じようとした。
「……いや、まだだ」
けれどもそんな満足感はすぐにかき消された。目を閉じようとして脳裏に浮かんだのは父の瞳、母の亡骸、妹の手。
ここで死ぬなど許さない。仇を討てと、家族を壊してまで生きている意味を示せとその全てが深に訴えかけてきていた。それからそれらに塗りつぶされてぼやける太陽の笑みが思い起こされ、そしてかき消された。
「死に場所は、ここじゃない」
目を見開き、今にも襲い掛かろうとするノイズをにらみつける。敵の数は7体、全部が僕に向かって照準を合わせている。逃げ道はない。
活路があるとすれば、懐に仕舞ったリボルバーによる最後の一発。
「……っ」
自分の命の危機であるこの局面でも深はデュランダル弾の使用をためらってしまった。その隙をノイズの一体が見逃さない。
「ッ!しまった」
最初の一体が深に向かって飛び出し、遅れて残りのノイズたちも飛びかかってきた。
飛び出しのタイミングがずれたため攻撃の間に逃げられる空間ができた。最初の一体さえ倒せれば逃げ道はある。
しかし、完全に虚を突かれた深は動き出しが遅れてしまう。もはや懐からリボルバーを引き抜く時間はなかった。
そこに突如、頭上から巨大な影がノイズに向かって落下した。最初の一体がそれに押しつぶされて下敷きになる。
「ッ!今だ!!」
深はすぐにノイズの間を潜り抜け死地から飛び込むように脱出する。床を受け身も取れずに転がりすぐに起き上がり、落下してきたものを確認した。
「フォークリフトッ!?」
ノイズを押しつぶしたものは古びたフォークリフトだった。そんなものが偶然にも落下してきたとは考えられない。深は驚きながら頭上を見た。
「深さんッ!逃げて!!」
見上げた先、上層階には煤けた顔でこちらに向かって必死に叫ぶ未来の姿があった。どうやら未来がフォークリフトを動かして助けてくれたのだ。だが——
「後ろだッ逃げろ!!」
そんな未来の背後にノイズが一体迫りつつあった。深の言葉に未来が振り返ると同時に未来に向かってノイズが飛び掛かる。
未来は何とか逃げようと走り出そうとするが足の痛みに耐えられずに態勢を崩した。
「未来ちゃんッ!」
このままでは未来が逃げられない。気づいた時には深はリボルバーを構えて引き金を引いていた。
深には世界がまるでスローモーションで動いているかのように感じられた。
リボルバーの重い発砲音が轟いたのと、深に向かって再びノイズが飛び掛かってきたのは同時だった。
そして、流生の乗るバイクが窓ガラスを破壊して突入し、深にとって特別な
放たれた弾丸は未来を襲い掛かろうとしていたノイズを粉砕する。しかし、その時の余波によって未来は吹き飛ばされてしまった。
「——ッ」
下は業火。落ちればまず助からない。突き出した灼熱の鉄筋を掴んで未来は痛みに耐えながら何とか上階からの落下を回避する。
しかし、それも長くは続かなかった。手から力が抜け未来は炎の中へと落ちていく。
深もまた、取り囲むように飛び掛かってきたノイズたちに襲われていた。このままでは炭化は免れない。
「ヒビの字は深をッ!」
流生が叫ぶと同時に二人はバイクから飛び降りた。乗り手がいなくなったバイクが横滑りし、炎の中に突っ込む。ガソリンに引火した炎が大爆発を起こした。
その焔に背を照らされながら流生が未来に向かって跳躍する。だが、飛距離が足りない。
「栖ッ!」
すかさず流生は薙刀をぶん投げて壁に突き刺した。そして壁に突き刺さった薙刀で鉄棒をするかのように落下の勢いをそのまま生かし、逆上がりの要領で未来に向かって飛び出した。
落下してくる未来を空中でキャッチすると壁を蹴り安全地帯へと離脱する。
急激な立体起動で朦朧として煤で汚れているものの、未来は足の怪我と手の軽い火傷以外には外傷はなく命に別状はないようだ。
未来の安否を確認して流生はすぐに深達を案じて目線を向けた。
「おおおおおおおおお!」
そこには裂ぱくの気合をいれた叫びを響かせてノイズを屠る響の姿があった。
響は深を守るように拳を構えノイズをにらみつける。突入時には7体いたノイズもすでに半分にまで減っている。
土と煤に汚れた顔で深は自分を守るように立ち歌う響の背を見つめる。その背中を見つめる目には安堵と罪悪感がないまぜに浮かんでいた。
「響ちゃん……」
「——深君、未来を守ってくれてありがとう」
ノイズから目を離さずに響は後ろにいる深に話しかけた。二人が生きていてよかったと泣き出しそうになる気持ちを何とか抑えて感謝を伝える。
未来を助けるために撃った一撃。あれはきっとフィーネと戦うために作ったものだと響は気づいていた。そしてそれが貴重なことも。それを使ってまで深は未来を助けたのだ。
「後は、任せて」
そんな深の優しさが嬉しかった。自分の復讐よりも他者のことを案じてくれる深の優しさに報いたい。
響は深に向かって微笑むとノイズに倒すべく打って出た。
肉薄したノイズに掌底を叩き込み、吹き飛ばす。続いて背後から襲ってきたノイズを掴み、巴投げで先ほど吹き飛ばしたノイズ目掛けて投げ飛ばした。
巴投げの勢いを殺さないまま、腰部のバーニアを吹かすことで急速回転し、3体目のノイズにハイキックを食らわせ吹き飛ばす。
そして響は右手のパワージャッキを限界まで引き上げた。
迫りくる最後のノイズを打ち倒すべく、腰を落とし、腕を構えて待ち構える。脚部のパワージャッキにエネルギーを集中させる。ノイズが響に向かって飛び掛かり地面から足を離した瞬間にため込んだエネルギーを一気に開放する。
弾丸と化した響が飛びかかってきたノイズを逆に押し返し、ノイズごとぶっ飛んでいく。
そして、先ほど投げ飛ばした3体のノイズが折り重なっている場所へ最後のノイズを殴り付ける。腕のパワージャッキを開放、溜め込まれた全エネルギーをノイズに叩き込み4体のノイズを一気に殲滅せしめた。
殴りつけた格好のままに響は最後のフレーズを歌い上げる。燃え盛る炎に照らされて、逆巻く熱風に髪がたなびく。
その後姿を深はただ見つめている。戦場に立つ戦姫を一瞬、綺麗だと思ってしまった。それは深の胸を締め付けるように痛めつけてくるのだった。
ノイズを殲滅してから十数分後、現場は自衛隊車両や消防車両でごった返していた。懸命に消火活動を行う消防士、立ち入り禁止のテープを張って人払いを行う対策起動部1課の面々。そんな忙しなく動き回る人たちの様子を見ながら、必要な治療を済ませた深は人気の少ない壁際にもたれかかって座っていた。
ノイズから逃げ延びるために灼熱の炎に身を焼かれながら命からがら走り続けたのだ。身も心もボロボロでとても立ってはいられなかった。
懐に手を伸ばしてリボルバーを取り出す。シリンダーを外すと空になった最後の薬莢が軽い音を立てて地面に落ち転がっていった。フィーネと戦うために作った最後の一撃だった。もう自分には戦う力は残っていない。
「……なんでだろう」
だが、不思議と後悔は湧いてこなかった。自分の胸の内に驚いて、なんだかよくわからないままに苦笑がこぼれた。
ころころと薬莢が転がっていくのを見ていると誰かの足に当たって動きを止めた。包帯の巻かれた右足に心当たりがあり、顔を上げてみるとそこには未来が立っていた。煤だらけの顔でじっとこちらを見つめてくる。やがて、未来は座り込む深が立ち上がれるようにと手を差し伸べてきた。
「……僕のことが許せないんじゃないの?」
未来のそんな姿に驚き目を丸くして深は訊ねた。響のことを傷つける身勝手な自分に手を差し伸べてくれる理由が分からなかったからだ。
「許せないですよ。響を危険な目に、悲しい目に合わせたことは。でも、私は少しだけ貴方の本心を、本質を知ったから。だから拒絶はしません」
未来はまっすぐに迷いなく深に言葉を投げかける。してしまったことは許せないことでも、そこに至るまでに悩み苦しみそして想い続けたことを知った。そして、誰かのためにと無理をする親友と同じ優しさを持っていることも知った。そのあり方を嫌いにはなれない。だから、過ちがあったとしても許せないとしても、もう拒絶して遠ざけて、存在を否定するようなことはしない。
「自分勝手だったと思うなら、もう響を泣かせないでください。そうしてくれるなら私から言うことはもうないです」
「……強いね、未来ちゃんは」
ありがとう、そう言うと深は未来の手を取って立ち上がる。
立ち上がると人混みをかき分けてこちらにやってくる人影が見えた。その人影は未来と深を見つけると走る速度を上げて二人目掛けて飛び込んできた。
「響ちゃ……うわっ!!」
「ちょ。響!?」
深と未来を抱きしめるように飛び掛かってきた響を支えきれず三人そろって倒れこんでしまう。深が飛び掛かってきた響を見るとその肩は震えていた。
「怖かった……怖かったよ」
連絡を受けてからずっと大切な人をまた失うかもしれない恐怖に響は耐え続けていたのだ。それが安全な場所で二人の顔を見て緊張が解けたのだろう。涙を流しながら響は深と未来を強く抱きしめる。
「心配かけてごめんね響……私も怖かった……」
「ホントだよ……未来が死んじゃうんじゃないかって本気で焦ったんだからね……」
震える響を抱きしめ返して未来は涙をぬぐう。
深も涙を流す響に声をかけた。
「響ちゃん……助けてくれてありがとう。傷つけて、ごめん」
泣かせるなと言われたばかりなのにもう泣かせてしまった。そんな顔をさせたくないのに、自分はやっぱり彼女を傷つけてしまうのか。
「……もう、勝手にどこかに行かないで」
自己嫌悪で沈む心に響の声が響いた。響の声を聞いて深は目を丸くする。響は顔を上げるとそんな深をまっすぐに見つめた。涙で潤んだ太陽のような黄色の瞳が深を捉えて放さない。
「深君がいなくなるのは、もう嫌だよ」
「……うん。約束する。もう何も言わずに消えたりしないから」
これ以上泣いてほしくなんてない。彼女には、太陽に向かって立つ夏の花のような笑顔が一番よく似合うのだ。だから、この約束は守ろう。深はそう心の中で誓って響の髪を優しくなでた。
三人はしばらくの間抱きしめあったまま動かない。その様子を流生と弦十郎は少し離れたところから見守っていた。
「よかったなヒビの字、それに深も。これにて一件コンプリートってか」
腕組みをしながら、ふっと息をこぼして流生は微笑んだ。弟分や弟子たちの仲違い問題もどうやら一件落着したようだ。
「今声をかけるような野暮はしないですよね、おっちゃん?」
流生が声をかけると隣にいた弦十郎はやれやれといった様子で頭を掻いて答えた。
「まあな、デュランダルの反応が出たことやら休業中に拳銃持ち出したことやら深には色々と聞きたいところだが、人命救助の立役者にうるさい小言は言えんだろうよ」
「流石おっちゃん、分かってる~。まぁ深のやつは謹慎にはなるだろうがな」
完全聖遺物を無断で実験利用するは、休暇中に許可なく発砲するは、真面目なようでいて色々とあいつは不良生徒なのだ。少しお灸を添えられた方がいい時もあんだろう。
そんなことを考えていると弦十郎の通信端末が鳴った。画面には櫻井了子と表示されている。
『まいどー櫻井了子です~ごめんね弦十郎君。ちょ~っと車のエンジントラブルで到着が遅れそうなの』
弦十郎が通信に出ると普段通りの口調で了子が話しかけてきた。弦十郎もその報告に淡々と仕事モードで返答する。
「了解した。こちらの人的被害はゼロ。到着次第作業を引き継いでくれ」
『……了解~。それにしても弦十郎君、ちゃんとあの子のこと叱った?まさか何も言わずにいるんじゃないでしょうね』
弦十郎からの報告を聞いた了子は少し押し黙った後、深の行動について言及する。了子の言う通り、深に今のところ注意の一つもしていなかった弦十郎はたじろぐ。
「……まあ人命救助の立役者に今小言を言うのはだな」
『悪いことしたのならきちんと叱りなさいな。そういう所甘いのよ』
弦十郎が言い訳をしようとするとまくし立てるように了子が詰めてきた。流石に見てられないと思った流生が弦十郎に助け舟を出す。
「まあまあ了子姉、今はそっとしておいてあげてくれよ。心配かけさせられて怒りたい気持ちも分かるけどさ」
『流生~今そういう話をしているんじゃないわよ。第一私は心配なんて——』
「被害者ゼロって聞いて息を漏らしてたの聞こえてましたよ?」
先ほど少し押し黙った際、深の無事を安堵したように息を吐いていたことを流生は聞き逃さなかった。そのことを指摘された了子は再び押し黙ってしまう。
『……そうね、そっちは任せるわ。深も帰宅させていいわよ』
先ほどまでとは打って変わって淡々としたそ口調でそれだけ言うと了子は通信を切ってしまった。流生は意外な反応に面食らってしまう。
「ありゃ、怒らせちまったか?」
「……ともかくこっちは了子君が来るまでは俺の方で預かる。流生、響君たちを連れて先に上がっていいぞ。」
弦十郎は少しだけ考え込む様子を見せたが、それ以降は特に気にする様子もなく通信機を仕舞うと現場の指揮を執るべく動き出した。そんな弦十郎に報告し忘れていたことがあったと流生はその背中に声をかける。
「了解です。ってあぁ、そういえば小日向さんから聞きましたが雪音クリス。どうやらノイズの襲撃直前まで小日向さんに保護されていたみたいでした」
友人とはぐれてしまったと未来は流生に相談していた。その友人の名前がクリスだったため驚いた。未来には犠牲者は出ていないと伝え安心させていたが、このまま放置していいことでもないだろう。
「そうか。その件については俺の方で対処する」
報告を受けた弦十郎は立ち止まり空に浮かぶ月を眺める。その背中には単純に紛失した聖遺物を使う少女の保護という任務以外に背負っている何かがあると流生には感じられた。
「……なにか因縁でもあるんですか?」
「やり損ねた大人の責任だ」
弦十郎は静かにそれだけ答えて立ち去るのだった。
最後までお読みいただきありがとうございます。
全然関係ないですけど、青髪、世話焼き、幼馴染って流生君の負けヒロイン要素強すぎません?
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特にコメントお願いします!私を助けると思って!!面白かっただけでもいいですからぁ!
それではまた次回よろしくお願いします!