装者の男女恋愛が見たいッ!戦姫絶唱シンフォギア SLS 作:ふみー999
明日はついにマリアさんのギアマニアの当選発表……当たってくれ……当たってくれ……
最近は涼しくて過ごしやすくていいですね。ずっとこのままならいいのですけれど…
今回はデート回!のちょっと前まで進みます。
どうぞお付き合いくださいませ!
濡れた体をハンカチで拭き終えた緒川は次の予定があるからと翼と共に休憩スペースを後にしていった。そんな後ろ姿を響や未来、流生が見送る。
「やったー!!翼さんとデートだぁ~!」
「嬉しいのは分かったからあんまりはしゃがないの」
響は翼からデートの予定を了承してもらえたことに両手を上げてはしゃぐ。未来はそんな響をたしなめて声をかけた。そしてちらりと流生の方を見た。
「デート?……お嬢が……デート?デートってなんだっけ。逢引き?誰が?お嬢が?は?」
そこにはうわ言を呟きながら固まっている流生がいた。どうやらデートという言葉のインパクトが強すぎてまだ脳が処理しきれていない様子だった。
「もちろん、師匠も一緒に行きますよね?」
「へっ!?俺!?」
そんな流生の様子などお構いなしに響は上機嫌に誘った。突然のご指名に流生は声が上ずってしまう。普段とはかけ離れまくった狼狽えぶりが面白く、響は流生の肩に手を置きからかい始めた。
「あれあれ、師匠~。一緒に行ってくれないんですか?それなら仕方ないな~。私と未来だけで翼さんと楽しく
翼からの矢印はともかく、流生からは明確に翼への好意があることを響は確信していた。それと流生が煽りに弱いことも今までの付き合いから分かってきている。響は流生を焚きつけるためにも、わざとデートというワードを強調してみせた。
効果はてき面だったらしく、流生は左目をぴくぴくさせながら、深呼吸をしてスマホを取り出した。
「ほぉ~。そう言われちゃ黙ってられねえな。せっかくだ、謹慎中で暇な誰かさんも誘ってみますか。
抜群すぎた煽りを受けた流生は仕返しとばかりにデートを強調し、響の返事を待たずに深へとメッセージを入力する。今度は響が慌てふためく番だった。
「え゛っ!?ちょ、ちょっと待ってくださいね師匠。いや、嫌と言うわけではないんですけど。急にデートとなるとこっちの心の準備が足りないと言いますか。そもそも深君の予定だってあるだろうですしおすし」
他者にはそそのかしたが自分のこととなると尻込みする響だった。響が言い訳めいたことを言っていると無情にも深からの返信がすぐに届いた。
「連絡したけど来れるってよ」
「はやっ!?え?デート?……深君が……デート?デートってなんだっけ。逢引き?誰が?深君が?へ?」
レスポンスの速さに驚きながら、響は混乱のあまり流生と同じことを口走ってしまった。
「ま、せいぜい頑張りな。ヒビの字」
「ちょ、待ってくださいよ師匠~」
からかった結果、逆にからかい返される響なのであった。狼狽える響に満足したのか流生はひらひらと手を振ってその場を後にした。
「響、今のは響が悪いよ……」
そんな師弟のやり取りにため息をつく未来なのであった。
そしてデート当日。誘われる過程でそんなやり取りがあったとはつゆ知らない深は自宅のチャイムが鳴る音で目を覚ました。
予めメッセージのやり取りで流生に迎えに来てもらい一緒に行く約束をしていたのである。時計を見ると集合時間に余裕がある時間帯だった。
「……いま、開けます」
再び鳴ったチャイムの音を聞きながら、眠たい目をこすって深は布団から出て玄関に向かう。布団の上で寝ていたモチは起こされたことが不愉快だったのか深と玄関を寝ぼけ眼でにらんだ後再び眠りについた。
おそらく翼さんたちを待たせないために早めに集合場所に着いていたいという腹積もりなのだろう。そういった細かい配慮ができる点は流生の尊敬できるところだった。現在時刻が朝の4時であることに目をつむればだが。
「……なんで紋付き袴を着ているんですか?」
「お嬢との逢瀬であるぞ?正装せんでなんとする」
玄関を開けるとそこには青い紋付き袴の和風正装に身を包んだ流生が堂々とした出で立ちでいた。そして深の質問に対して何を当然のことを聞いてくるんだとばかりにやたらとキレにいい動きをしながら答えてきた。
「……」
なんだか頭が痛むのは早朝に起きたばかりだからだと深は自分に言い聞かせ、こみかみを押さえて息を吐く。そして覚悟を決めてもう一度流生を見た。
「流生さん、今日はみんなでショッピングモールに行く予定ですよ。着替えてください」
「む、だがな深。嫁入り前の女性と共に出かけるのだからして、きちんとした身なりで馳せ参じるのが男としての礼儀ではないのか」
「その考え自体は間違いではないのですが……。遊びに出かけることを一体なんだと思っているんですか貴方は?というか、その恰好で出掛けたら悪目立ちします。翼さんに恥をかかせることになりますよ?」
「……不承不承ながら了承しよう」
不承不承でなく了承してほしかった。というかさっきから口調がおかしすぎる。どうして武士みたいな口調になっているのか。ますます深は頭が痛くなってきた。
「とにもかくにも、僕も準備しますから。いったん帰って着替えてきてください。もっとラフな格好でお願いします。それと口調も戻しておいてください」
「
「だから~」
流生の眼をよく見ると眼がぐるぐる巻きになっていた。翼とデートをするという現象に対して脳の処理が未だに追いついていない流生なのだが、深がそんな彼の頭の中を知るすべなどなかった。大混乱を起こしている流生の背を見送りながら深は冷や汗を流す。
「大丈夫なのか……あの人」
部屋の奥のベッドの上でモチがナウと鳴いた。駄目だろあいつ、と言っているようにしか深には聞こえなかった。
二時間後、午前6時。流生にたたき起こされたこともあり、二度寝するのもなんだと思った深はシャワーと早めの朝食を食べた後、洗面所で歯を磨いていた。正直若干眠かったためこの後少々仮眠でも取ろうかと思っていたところに再び玄関のチャイムが鳴った。
「……流石に和装では来ないよな」
ラフな格好と言ったから着流しとか着て来る可能性があるなと嫌な予想を立てた深は意を決して玄関を開けた。
そして頭を抱えた。
「どうしたよ深?体調でも悪いのか?」
「う、うん。とりあえず口調が元通りになったことを今は喜ぼう僕」
折れそうになる心を保つためにせめて良くなっている部分もあるのだと自分に言い聞かせる。だって『聖遺物「天羽々切」風鳴翼、推参ッ!』とか書かれた法被を着た男が目の前にいるのだから、そうとでも言わなければやってられなかった。
「聴くがいいッ!防人の歌をッ!!」
そんな深の苦悩など知ったこともなくドヤ顔で何かを言っている流生だった。
「なんですその法被……」
「お嬢の法被だ。全国のアニメディアショップで絶賛発売中。定価4500円だ」
「は、はぁ。良い、法被ですね……いや、そうじゃなくて……」
もうおしまいだよこの人。深の心はほぼ折れかけていた。それでも、こんな格好(決してグッズが悪いわけではないのだが)で行かせて響ちゃんや未来ちゃん、世話になっている翼さんやなにより流生さんに恥をかかせるわけにはいかないと心を鼓舞した。
「流生さん、質問いいですか」
「なんだ?」
「仮にですよ。翼さん以外と流生さんがデートをするとして」
「そんな仮定は存在しないと思うが……」
仮定を食い気味で否定してきた。やだもうこの人めんどくさい。
「いいから聞いてください。デートをすることになったとして今の流生さんの格好でその女性のところへ行ったとしたら相手はどんな感想を抱くと思いますか?」
質問された流生は法被の裾を持ち上げて自分の格好を見まわした後、スンッとした顔で深を見た。
「やばいやつだと思うだろうな?」
「そうですよね?分かっているんですよね?じゃあなんで着てきたんですか!?」
早朝に叫ぶのは近所迷惑だから控えた方がいいのだろうが、どうか許してほしかった。こんなの叫ばずにはいられない。
「……はッ!そういうことなのか?」
そこで深は閃いた。もしかしてこの人、翼さんとデートするという事実を受け入れられず普段と違う翼さんと会う。イコール、ライブに行くと脳内変換しているのでは?
「流生さん、もっと普段着に近い格好に着替えてください。今日は買い出しです」
「今日は買い出し……」
「そうです。デートではありません」
「デートじゃない……」
それならば頭の中のバグを修正して変換させれば珍妙な格好をしてこないのではないか。深からの言葉をおうむ返しした流生はそのままフラフラと深の家を後にした。
またまた2時間後、午前8時。仮眠を終えた深が髪の毛をブラシで整えていると再びチャイムが鳴った。
「三度目の正直、三度目の正直、三度目の正直」
二度あることは三度あると頭によぎるのを無視して深は扉を開けた。そしてガッツポーズをした。
そこにはトレードマークの青いレザージャケットと黒のデニムを着た流生が立っていた。
「いいじゃないですか流生さん!そうですよ、やっぱりその恰好がいいですよ!」
「お、おう。どうした普段着をそんな褒めちぎって。なんか怖いぞ?」
2時間前までの奇行を思い出してほしい。深は喉元まで出かかった言葉を飲み込んでカバンを持って外に出た。実際、鍛えて引き締まった体をしている流生にレザージャケットはよく似合うのだ。これならば一安心だと深はホッと息をついた。
「……流生さん。ちょっと失礼します」
ついたのだが、流生の眼を見て再び緊張が走った。まだおめめがグルグルだったのだ。嫌な予感が深の脳内を走り、深は流生のレザージャケットのファスナーを開けた。そこにはでかでかと防人と書かれた白Tシャツがいた。
「なんですか防人って!?」
「でぃふぇんちゅだ」
「やかましいわ!!」
深は限界だった。悲痛な叫びをあげると流生の手を引っ張り、Tシャツを着替えさせるべく流生の家へと急いで向かうのだった。
時刻は午前9時45分。集合場所の自然公園の中ではすでに翼と響、未来の三人がそろっていた。集合時間は10時のため早めに集まってしまっていたのだ。
「少し、はやく着きすぎたかしらね」
「そうですね……とりあえず響はちょっと落ち着いてよ?」
翼が腕時計で時間を確認していると未来がそれに相槌を打つ。そして、ちらりと隣に居る響を冷や汗を流しながら見た。
「だいじょーぶ。へいきへっちゃらだよ」
明らかに緊張している響を見て翼も少し心配する。翼自身もこういった友人たちとの外出というのは初めてだった。白色のキャスケットで顔を隠し、青いジャケットにショートパンツスタイルのよそ行き用の服を準備して、流生にアイロンがけまでしてもらって今日の外出に挑んでいた。
翼もかなり浮かれて服を選んで着てきたのだが立花はというとそれ以上の熱量が伺えた。
桜色のジャンパースカートに合わせてトレードマークの髪留めもいつもとは違う花をモチーフにしたものに変えている。化粧もしており、主張の強くないアイシャドウに薄いピンクのルージュを唇にひいている。芸能界の知人から聞いていたが今年流行りのナチュラルメイクだ。香水もつけてきているようでほのかにアールグレイとフローラルが重なった清楚な香りがほのかに薫ってきている。
そういったことに疎い翼でも察せられた。これは本気のデートコーデだ。
「立花、一度深呼吸をして落ち着け。殺気が漏れているぞ」
これから決戦に行くのかというような闘気を響から感じた翼は冷や汗を流しながら深呼吸を促す。
「そ、そうですね、すーはーすーはーひっひっふーひっひっふー」
途中からラマーズ法になっていたが、指摘しても余計に混乱するだけかと思い見守ることにした。と、そんな様子の響を見ていて翼は気が付いてしまった。
「立花、背中のところにタグが付いたままになっているぞ」
「えっ!?嘘!未来取って!」
新品を下ろしてきたため、ジャンパースカート首の部分にタグが付いたままになっている。指摘された響は狼狽えながらそのタグを取ろうと悪戦苦闘し未来に助力を頼んだ。頼まれた未来はというと困った顔してタグを見る。
「そんな、今はさみなんて持ってきてないし無理に取ると服が痛むよ」
「そんな~どうにかしてよ~。このままじゃおっちょこいちょいって思われちゃうよ」
「それはもう手遅れではないか?」
翼の無慈悲な指摘を聞きながら、未来の助力が得られないことに響の焦りが加速する。このままではせっかくおしゃれをしてきたというのに、タグをつけたままで深君とデートをすることになってしまう。もし、タグを深に見られてしまっては「あぁ、この子4000円なんだ~」とか思われてしまうかもしれない。そんなことを言われた日には絶唱以上のダメージが心を襲い二度と立ち直れないだろう。
「ソーイングセットの小さいやつでいいか?」
そんな焦っている響の目の前に小さなはさみが差し出された。渡りに船とはこのことだと響は相手の顔も見ないですぐに後ろを向いた。
「助かります!すみませんがこのタグ切ってもらえないでしょうか!」
「……だそうだ。やってやりな」
そう言われた相手が少し困惑した雰囲気を出しているのを背中で感じた。見ず知らずの女に背中のタグを切ってくれと頼まれたのでは確かに困惑するなと少し落ち着いてから気が付き、自分でしますと言おうとした時、首筋に妙に心地の良い手の感触が触れた。
そしてパチンとはさみが音を立ててタグが外された。お礼を言おうと響が振り返りそのまま固まった。
「えっと、これでいいのかな?響ちゃん」
そこには切り取られたタグを持って困ったように笑う深がいた。
「……」
響は硬直したままろくに働かない脳で現状を把握しようとつとめた。目の前には髪の毛と同系色の白みがかった灰色のオープンシャツを着た深がいる。そして手に持っているのは小さなはさみと先ほどまで自分の背中に着いていた商品タグ。
つまりここから導き出される答えはというと、深君が私の首筋に触れてはさみを使ってタグを切ってくれたということですか。そうですかそういうことですか。
「……ピゥ」
「立花ぁ!!!」
「響ぃ!!!」
そこまで考えた瞬間、響の脳がキャパオーバーを起こし、響はポンッと赤面した顔から湯気を出した。そのまま響を案じる翼と未来の叫びを遠くに聞きながら気を失って崩れ落ちてしまった。
「だ、大丈夫!?響ちゃん!」
とっさに響の腰に手を回して深が抱きかかえこむ形で倒れるのを防いだ。わーわーと騒ぐ翼と未来をよそに流生が深の肩に手を置く。
「深、オーバーキルだ」
「何がですか!?」
何が何だか分からない深は本日二度目の悲痛な叫びをあげるのだった。
「オハズカシイトコロヲオミセシマシタ」
「こっちこそ、男の僕があんなことをするのは控えるべきだったね。ごめん、恥ずかしい思いをさせちゃった」
ベンチに座って、火が出ている顔を隠している響に深は苦笑しながら謝罪した。
「まったく、しょっぱなから飛ばしてんな~」
そんな二人をよそに流生は呑気に切ったタグを袋に入れて、ソーイングセットと一緒にカバンの中に仕舞っていた。
「流生、貴方狙ったでしょ」
「さて、なんのことやら」
そんな幼馴染を翼がジト目でにらむが流生は軽くいなしていた。まったくこの男のこういう所は奏に似たのかもしれないと翼はため息をつく。
「とにかく、全員そろったことだし。立花、もう動けるか?」
「あぁ、はい。大丈夫です」
翼に尋ねられた響はちょっと涙目になりながらも顔を上げて答えた。それに満足したのかすまし顔のまま翼は歩きはじめる。
「それなら、時間ももったいないわ。そろそろ行きましょう」
そう言って翼は先にベンチから離れて橋を渡っていった。そんな翼の後姿を見ながらきょとんと響は首をかしげる。
「すっごい楽しみにしていた人みたいだ」
「ふっ、みたいじゃなくてしてたんだろうよ」
響がぽろっとつぶやいた言葉に流生は堪えられないと言った様子で吹き出しながら答えた。昔からこんな風に友人たちと外出するなんてことしたことがなかったのだ。気分としては遠足に始めてきた小学生と一緒だろう。浮かれるなという方が無理な相談だと流生は考えていた。
そんなやり取りが聞こえたのか翼は立ち止まって赤面しながら振り返り叫んだ。
「トラブルがあった分を取り戻したいだけだ!!」
ぴしゃりと言い放つ翼の剣幕に未来や響、深がビクリと肩をすぼめる中、流生だけはそんな翼を微笑ましく見つめる。翼のそんな姿を見ていると、デートと言う言葉に取り乱していた自分が馬鹿らしく思えてきた。今日はただ、この無垢で愛しい主が心から楽しめるように一緒に過ごそうと心に決めた。
「へいへい、御身の御心のままに。せっかくめかしこんで来たんだから早く遊びたいですわな」
「……なによ」
「いえ別に?服お似合いだなって思っただけですよ~」
そう言うと後頭部で腕を組んで翼の隣に流生は歩いて行った。その後も二人で何を笑っているのよ。笑ってないですよ。笑っているじゃない。と言ったいつものやり取りをしながら先に進んでいく。
そんな二人のやり取りを響たちは苦笑しながら見つめていた。
「翼イヤーはなんとやら」
「ハハッ、そうだね。僕たちも行こうか」
そう言って笑い合った後、深と響はベンチから立ち上がり、未来と三人で翼たちを追って歩き始めたのだった。
「そういえば深君。なんだか疲れている顔しているけどどうしたの?」
「……なんでもないよ」
深の眼の下に少しだけクマがあるのを見つけた響が尋ねると深は首を掻きながら答えたのだった。
最後までお読みいただきありがとうございます。
けして法被が悪いわけではございません。デートに着ていこうとしている流生の頭の調子が悪いのです。あの法被ギアマニアで来ている人がいて欲しいなと思いましたけどもう売ってないんですよね……プレミア価格で買うのもちょっと…
次回はついにデート回!男女恋愛がみたいとタイトルでうたっているのですから全力で書かせていただきますとも!!
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