装者の男女恋愛が見たいッ!戦姫絶唱シンフォギア SLS   作:ふみー999

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どうもふみー999です。
UA合計2万人突破ありがとうございます!!!!!こんなにも多くの人に見てもらえるとは思っておらず感激です!!
これからもどうぞ本作をよろしくお願いいたします。

さて、グッドなニュースとバッドなニュースがございます。
グッドなニュースはGEARMANIA、無事参加してきました!!本番も、その後の二次会もみんな喉酷使しすぎでガラガラになっていましたがものすごく楽しい時間を過ごしました。改めてお世話になった適合者の皆様にお礼申し上げます。
Twitterとかに動画上がっているのでよかったら見てみてください。前列の方で頭にアクションカメラを巻いている男がいたらそいつがルパンこと私です。

さて、バッドなニュースは何かと申しますとUSBに保存していた本作のデータが全部吹っ飛びました。
なんとか復旧ソフトを使って原稿といくつかのメモはサルベージできたのですが、肝心かなめのプロットを書いたエクセルデータが破損してしまい、プロットがまっさらな状態になってしまっています。改めてプロットを作り直すことも考えると、今後ますます投稿頻度落ちそうで萎えています……
頑張って書きますが、どうかご了承くださいませ。後、余裕があったらエールください……

自分語りが長くなってしまいましたが、今回もお付き合いください、どうぞ!


第35話 portamento:向き合うとき

「翼さん~師匠~早く早く~」

「まったく、あの三人はどうしてあんなに元気なんだ?」

「遊ぶって意外と体力いるんだな……」

 夕暮れ時、買い物を済ませた後の5人はショッピングモールを後にして高台にある公園へと足を運んでいた。結構な高さにある公園までは階段を歩いていくしかなく、一日の疲れもあって翼と流生は階段途中で一息入れていた。それを先に行った響が急かすように手を振って声をかけてくる。

「二人がへばりすぎなんですよ」

「今日は慣れないことばかりだったから」

  ようやく階段を登りきり一息をつくとそんな二人に対して響と未来がそれぞれ声をかけてくる。未来の慣れないことという言葉に翼は自分の今までのことをふと振り返った。

「防人であるこの身は常に戦場にあったからな……。本当に今日は知らない世界ばかりを見てきた気分だ」

 夕暮れ時の公園に初夏の涼し気な風が吹いて木がそよそよと鳴った。そんな様子に翼は思わず頬を緩めて微笑を作った。どこまでも穏やかで優しい時間が流れている。ここは自分が生きている戦いの中とはあまりに違うのだ。

「そんなことありません」

 そんなことを考えていると突然立花が手を引いて公園の展望デッキまで翼を引っ張っていった。

「お、おい立花何を……?」

 連れられた翼は目の前の光景に息を飲んだ。目下には夕日に照らされた街がどこまでも広がっている。そんな街を見下ろして響は指を指し、腕を広げながら翼に伝えたい言葉を紡ぐ。

「あそこが待ち合わせした公園です。みんなで一緒に遊んだところも遊んでないところも全部翼さんが知っている世界です。昨日に翼さんが戦ってくれたから、今日にみんなが暮らせている世界です。だから知らないなんて言わないでください」

 投げかけられた言葉に目を丸くした後、翼は一瞬うつむいてしまう。けれども、もう一度広がる街を見下ろした。

 街を照らす夕日から奏の言葉が聞こえてきた気がした。

(戦いの裏側とか、その向こう側にはまた違ったものがあるんじゃないかな。あたしはそう考えてきたし、そいつを見てきた)

「……そうか、これが奏の見てきた世界なんだな」

 戦いの裏側には、多くの人の営みがあった。今日翼がしたように、ただ友人と遊び、家族と笑い合う。そんな当たり前でどこにでもある普通の幸福があった。

以前立花は言った。何気ない日常こそを守りたいのだと。奏もきっと同じものを見ていたのだ。

答えを得て、心が晴れ渡るようなすっきりとした気持ちだった。

手すりに手をついて身を乗り出して街を見下ろす。自然と自分が笑顔になっていることに気が付いた。

あぁ、ここから見える景色は本当に———

「綺麗だな」

声がして隣を見ると、流生が横に立っていた。先ほどまでいたはずの立花はというと槙野たちを連れて少し離れたところにいる。こちらを見て親指を上げていたが何なのだろうか。

「たく、ヒビの字は……」

呆れたように苦笑して流生は再び街を見下ろす。そして、吹き抜ける風にそっと目を閉じた。

「久しぶりに聞きましたよ、お嬢の十八番」

 そして、からかうような、でもどこか安堵したようなそんな口調で先ほどまでいたカラオケでの話を持ち掛ける。初めて行ったカラオケで幼少期からずっと好きだった演歌『恋の桶狭間』を皆の前で披露したのだ。

久しぶりだったが立花たちもかっこいいと好意的に受け入れてくれた。そのことを思い出し、風の心地よさも相まって鼻歌でも歌ってしまいたい気分になりながら流生に返事をした。

「歌うのも久しぶりだったから。歌えて気持ちよかった」

「ッ……そうですかい」

 流生は薄っすらと目を開けてちらりと私を見た後、クスリと笑って再び目を閉じた。

その言葉を最後に流生も私も何も言わず、ただ街を眺めた。幼少期からお互いのことを知っている間柄だ、特段に気まずさは感じなかった。むしろ、久しぶりに彼とこうした時間を過ごすことに居心地の良さすら感じて、気持ちも落ち着いてきた。

「ずっと……流生に謝りたかったんだ」

 だからこそ、ずっと言えなかったことを話すなら今だと思った。

 流生はゆっくりとこちらを向くと何も言わずに私を見つめてくる。私が話し始めるのを待ってくれていた。

「2年前のあの日、私は流生に奏が死んだ責任を押し付けてきつく当たってしまった。ごめんね……流生だって辛かったのに私は自分の弱さを貴方に押し付けた」

「……姐さんが死んだのは俺のせいです」

 私が見つめると流生はその黎明の瞳を逸らし、水平線の向こうに見える決して届かない夕日を哀しげに見つめていた。

「あの日、俺が戦えていれば、足手まといになんてならなければ……姐さんが一人で全部抱えて逝っちまう必要もなかったんだ」

 悔やむ心を隠さずに今にも泣きそうな顔をする。そうして、流生は自分の手を夕日に向かって伸ばした。

「俺が弱くなければ……」

 彼が見つめる先、緋色の夕日を私も見つめる。あの日、足手まといになったのだと流生は自分を責めている。だから、私が伝えなければいけない言葉があるのだ。

「……病院で眠っている間、夢の中で奏と会ったの。奏は言っていた、流生が逃げずに戦ってくれたことを感謝しているって」

「俺が、戦った?」

 流生は目を見開くとぎこちなく私の方を向き、私の言った言葉の意味を問いかけてくる。

コクリと頷いて話を続けた。

「最初は私もその言葉の意味が分からなかった。けれど、今日この景色を見て分かった気がする。戦ったというのはきっと自分のするべきことを逃げずに成し遂げたということ」

 ねぇ流生?と見開かれたその黎明の眼を再び見つめて問いかける。

「正直に聞かせてほしい。雪音クリスと初めて戦った時、流生は私たちが撤退していれば自分も無傷で逃げられたのではないの?」

「それはまあ、五分五分だったと思いますが……」

 それは謙遜だと私は思った。雪音クリスが初めて現れたあの夜、攻撃を完ぺきにいなし続けた流生であれば撤退は容易だったことだろう。背中に守るべきものが無ければ……。

「あの時の私は流生を案ずるあまり撤退する選択肢を取れなかった。結果、囮として攻撃をされて、流生にかばわれて、状況を悪化させた」

 失いたくないという気持ちがあの時の私の判断を鈍らせた。つくづく冷静ではなかったと反省を禁じ得ない。

 それに比べて流生はどうだ。

「2年前の流生は奏を案じて悔やんでも、逃げ遅れた立花たちを救うことを選んだ。選ぶことができた。そして、そんな流生がいてくれたから、奏は最後まで自分の守りたいものを護るために戦えた」

あの日、あの場所には逃げ遅れた立花と槙野がいた。誰かが逃がさなければ助けることは難しかったはずだ。そして助けられなければ、たとえ奏が無事だったとしても決して、奏自身が自分を許せなくなっていたはずだ。それは奏の魂を殺すことと同義。流生は奏の誇りを守り切ったのだ。

「自分をどうか誇って。貴方は奏が命を懸けてでも守りたかったものを護り抜くために戦った。敵と相対するよりも辛い、自分との戦いをしたの」

 自分の大切な人を置いて見知らぬ誰かを助ける。それは誰にだってできることではない。その選択をすること自体が心を斬り殺すほどに辛いことだと私は身をもって知っていた。

 想像しただけで締め付けられるような痛みを覚える胸を押さえ、目頭が熱くなるのを感じながら私は流生に微笑みかける。彼がもらうべき賞賛は主である自分が伝えるべきことなのだから。

「流生は、誰よりも強いわ」

「……」

 投げかけた言葉を聞いて、その黎明の眼がより一層見開かれる。何かを言おうとしているのか口が数回開いては閉じてを繰り返していた。息をするのも難しいのか浅くなった呼吸音を鳴らして、流生は私に背を向けて天を仰いだ。

「……俺は、足手まといじゃないですか?」

 発した言葉は震えていてかすれていた。つられて私の声も上ずってしまう。

「当たり前じゃない。昔も今も、流生がいてくれて助かったことがどれだけあるか」

 普段の生活でも、戦場でもずっと貴方は私を支えてくれていた。私も奏だって、足手まといだなんて思うわけがない。

 震えるその背中を羽が落ちてくるように優しくさすった。

「貴方を私は、誇りに思うわ流生」

「……ッ、そう……ですかい……」

 その言葉を最後に流生も私も何も言わず、ただ空を眺めていた。夕暮れの空。もう記憶の中にしかいないあの人によく似た緋色の空を。

 

 

 

 

 しばらくして翼たちは公園のベンチに移動していた。

「実は今日みんなに渡したいものがあったんだ」

 翼がそう言うのに合わせて流生はカバンから封筒を取り出した。そして中に入っていたチケットを人数分取り出し、響たち三人へと手渡す。そのチケットにはPOPSTAR MUSIC FESTIVALと記載されておりライブのチケットだと分かる。

「これって復帰ステージ!?」

 翼が渡してくるライブのチケットということはそう言うことなのかと響が尋ねると翼はコクリと頷く。

「アーティストフェスが10日後に開催されるのだが、そこに急遽、ねじ込んでもらったんだ」

「なるほど」

「倒れて中止になったライブの代わりというわけだな」

 未来ももらったチケットを興味深げに眺めていた。響もなんとなしにチケットの裏を眺めた。

「翼さん……ここって」

「……立花や槙野にとっても辛い思い出のある会場だな……」

 響は少しだけ動揺してしまった。ライブが行われる予定の会場に覚えがあったからだ。忘れはしない。2年前ツヴァイウイングのライブが行われたステージ。そして響たちがノイズの襲撃を受けた場所だった。

 翼や未来、流生は心配そうに響を見つめる。彼女にとってここは忌むべき場所、トラウマを抱えていても仕方がない場所だったからだ。正直、断られても仕方がないと翼も流生も考えていた。

「ありがとうございます翼さん」

「響……」

 けれども、響は二人の予想に反してまっすぐに笑みすら浮かべて翼を見据えてきた。

「いくら辛くても過去は絶対に乗り越えていけます。そうですよね翼さん!」

その視線から目をそらすと同じようにこちらを向いてきた流生と目が合った。流生はまた観念したような笑みを浮かべて頷く。翼もそれに頷き返して再び響の眼を見返した。

「そうありたいと私も思っている」

 翼と響が見つめ合い微笑み合っている横で深はチケットから目をそらして、ここから見えるライブ会場を目を細めて見つめていた。

「槙野はどうだろうか……」

「……」

翼が問いかけるのにも答えずに深は固まったままでいる。その顔には表情というものはなく今、何を考えているのかその場にいた誰もが分からず、深の次の言葉を待つばかりだった。やがて深は目を閉じて自分を落ち着かせるように深呼吸をする。

「深君……」

「……大丈夫です。僕も、止まったままでいるのは良くないって分かっていますから」

 心配して響が声をかけるとようやく深は静かに目を開いて会場から目を離さずに答えた。

 答えて、そして口元に笑みを作り、自分の首を掻きながら響たちの方を向いてくるのだった。

 

 

 

 

 ライブ当日、リハーサルを終えた翼は流生と緒川と一緒に会場の関係者通路を歩いていた。

「お疲れさまでした、お嬢」

「リハーサルいい感じでしたね」

 すると向こうから拍手と共に、身なりの整った初老の男性が歩いてきた。

「トニー=グレイザー氏!」

その人物が誰か分かると流生はすぐに頭で組んでいた両手をほどき姿勢を正す。

 緒川は驚いてその相手の名前を呼んだ。

「メトロミュージックのプロデューサーです。以前翼さんの海外進出展開を持ち掛けてきた」

「なかなか首を縦に振ってくれないので直接交渉させていただきにきましたよ」

 緒川は彼が誰なのかを翼に説明すると、グレイザーは静かに翼を見つめて声をかけた。

「ミスターグレイザー、その件については正式に……」

 緒川が強引な交渉を持ち掛けてくるグレイザーを制止しようとしたが、翼は静かに手を上げてそれを止めさせた。

「翼さん?」

「……」

 翼の行動に緒川は驚き、流生は翼の次の言葉を待って後ろで控えていた。

「もう少し、時間をいただけませんか?」

「つまり考えが変わりつつあると?」

「……」

 グレイザーはそれ以上答えない翼の眼を見て納得がいったのか表情を柔らかくした。

「そうですね、今の君が出す答えであればぜひ聞かせていただきたい。今夜のライブ楽しみにしていますよ」

 それだけ言うとグレイザーはその場から立ち去って行った。翼はその後ろ姿を決意の籠った瞳で見送るのだった。

 

 

 

 

 ライブが始まる30分前ほど、響と深は二人で会場へと向かって歩いていた。

「ごめん、深君。私がのんびりしていたばかりに」

 せっかくチケットをもらったというのに色々と準備や人助けをしていたら開場時間に遅刻しそうになっていた。そんなところに様子を心配した深が迎えにやってきてくれたのだ。ちなみに、未来はというと先に準備を済ませすでに会場入りしている。

「ううん、開始までまだ時間があるし焦らなくても大丈夫だよ」

 両手を合わせて謝罪する響に深はいつものように笑みを浮かべて答えた。

「でも、深君は大丈夫なの?その今日のライブ……」

 先日の様子を見ていた響は心配そうに深に再確認した。あの時、響は、過去は乗り越えていけると宣言した。けれども、深は母と父、そして生まれる前の妹をあの事件で亡くしたのだ。彼の場合は失ったものが多すぎる。簡単に乗り越えられるものではないということは響にも分かっていた。

 響の隣で微笑んでいた深は、尋ねられると普段よりも早い速度で歩き始めて響を置いて先を歩き始めた。

「逃げるのではなく、向き合って初めて解決することもある。この間の未来ちゃんとの件で僕はそれを痛感したから」

「深君……」

「だから僕は大丈夫だよ。ちゃんと乗り越えてみせる。それに久しぶりの翼さんの大舞台だからね、きちんと応援しないといけないでしょう?」

 体で隠れてしまっていたが右腕を胸元へと持って行っていた。そして、背中越しにためらいながら答えた。けれども、すぐに立ち止まり振り返るといつもの優しい笑みを浮かべて深は響を見つめてくる。その表情には先日の公園で見たような不穏さは見られなかった。

「そっか。それじゃあ今日は目いっぱい楽しもうね!」

「うん、そういえばペンライトを持ってきてなかったけど物販にあるかな?」

「どうかな?前の時はあったし多分あると思うんだよね。それより翼さん今日は何を歌うんだろう?深君ってそういえばどの曲が好きなの?」

「僕?僕は……ッ!?」

 安心して朗らかな会話をし始めた矢先に二課から普及されている響の通信機が呼び出し音を響かせた。それが意味することを即座に理解した響と深はすぐに表情を切り替えて通話に出る。

「はい、響です。深君も一緒です」

≪ノイズの出現パターンを検知した≫

 港方面にノイズが出現したという弦十郎のひっ迫した声が通信機越しに聞こえてくる。二課の指令室からのけたたましいアラート音もかすかに聞こえてくる。

≪翼や流生にもこれから連絡を——≫

「司令、現場には私一人でお願いします」

≪ッ!≫

 弦十郎の言葉を遮り響が単独で作戦を決行しようとしていることを告げる。弦十郎の息を飲む声が聞こえてきた。

「今日の翼さんは自分の戦いに臨んでほしいんです。あの会場で最後まで歌いきってほしいんです。お願いします」

 今日の翼さんは奏さんを失った辛い過去を乗り越えるために戦おうと、歌おうとしているのだ。そしてその姿を誰よりも見届けてあげなければいけないのは流生だ。そんな大切なライブに水を差すような真似を響はしたくなかった。

≪……やれるのか?≫

「はいッ!」

 響の決意を感じ取った弦十郎は改めて一人でできるのかと気合を入れるべく問いかけてくる。響は迷いなど一切なく決意を込めて答えた。

 そうして通信が切れ響は端末をポケットへと仕舞う。

「荷物は僕が預かっておくよ」

「ありがとう深君。先に会場に行っていて。私もすぐに片づけていくから!」

 響のカバンを持っておくと深は手を差し出して言った。響は頷いて通学カバンを預けると現場に向けて走り出す。

「あ、ちょっと待って響ちゃん」

「へ?」

 呼び止められるとは思っていなかった響が声を上げて振り返る。深はポケットから何かを取り出すと響の手を取りそれを握らせた。

「一応、お守りみたいなもの。持っておくと後々楽だからさ」

 響が手を開くとそこには一発の弾丸があった。真鍮特有の鈍い金色が街頭によって光って見えた。普通の弾丸のようで特に何か見た目で変なところはない。

「ありがとう深君!それじゃあ行ってくるね!」

「うん、大丈夫だと思うけど十分気を付けて!」

 弾丸をポケットに入れて響は今度こそ現場に向けて走り出した。

「……」

 深はそんな響を姿が見えなくなるまで見送り続けた。そして完全に姿が見えなくなったのを確認すると貼り付けていた笑顔を顔から消した。

「さて……」

 数キロ先に見えるライブ会場を見て小さくため息をつく。自分の手足を見ると微かに震えていた。響ちゃんの前ではよく平静を装えたと自分を褒めたいくらいだった。

「向き合わなきゃ……駄目だよな……」

 死んだ母の亡骸とその腹から飛び出た妹の小さな手が突然フラッシュバックしてしまう。お前のせいだと呪う父の声が幻聴として聞こえてきた。あの会場を見るたびにこの症状に深は襲われていた。

 まともに立っていられず、近くの壁にもたれかかりそのまま座り込んだ。それでも、響から預かったカバンだけは汚れないように抱きしめていた。

地面に放り投げられている自分のカバンの中からソラナックス錠を取り出して無理やり口に押し込んで飲み込む。

 荒れた呼吸を落ち着かせようと額に拳を当ててそのまましばらく動けないでいた。額に拳を当てるとカチャリと響がくれたブレスレットが目の前で音を立てて揺れた。深はそれに意識を向けて自分を落ち着かせる。

「向き合え、向き合うんだよ……逃げるな、罪から逃げるな」

 助けられなかった自分の罪から逃げるなと己を呪うように何度も何度もつぶやいた。そうしながら、震える足を鞭打って立ち上がると深は幽鬼のような足取りでライブ会場へと向かっていくのだった。

 




最後までお付き合いいただきありがとうございました。

感想、コメント、評価、お気に入り登録よろしくお願いします。
毎回感想乞食してますが、プライドなどなく乞食していくんで覚悟してください。感想くださいよろしくお願いします~~

※描写が不足部分があり加筆しています。2025/08/14
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